肌のタイプ分類でよく聞くのは、「普通肌(ノーマルスキン)」、「脂性肌(オイリースキン)」「乾燥肌」あるいは「乾性肌」(ドライスキン)、「混合肌(コンビネーションスキン)」の4つでしょう。
これに、「乾性脂性肌(オイリードライスキン)」を加える人もいるかも知れません。
こうした肌のタイプ分類には、敏感肌が入らないことがほとんどです。
実際、少し前まではスキンケアの本などでも、「敏感肌という肌はない」と言われることが少なくなかったのです。
皮膚科の教科書にも「敏感肌」は登場しないと言います。
医学的には敏感肌は定義されていません。
ところが、アンケート調査を行うと自分を敏感肌だと思っている人は多く、敏感、あるいはやや敏感と答える人が7割を超えるという報告もあります。
現在では、敏感肌は無視できない存在となってきているのです。
ここでは、現在言われている敏感肌について紹介します。
目次
1. 肌タイプの基本の分類
1-1. 肌タイプのチェック方法
1-2. ノーマルスキン
1-3. オイリースキン
1-4. ドライスキン
1-5. コンビネーションスキン
1-6. オイリードライスキン
2. 敏感肌ってどんな肌?
2-1. 敏感肌の現状
2-2. 敏感肌の特徴
2-3. 敏感肌の6つのタイプ
2-3-1. 乾燥肌
2-3-2. 肌荒れ過敏肌
2-3-3. 大人にきび
2-3-4. かぶれ
2-3-5. 光かぶれ
2-3-6. アトピー肌
3. 敏感肌の原因
3-1. 皮膚のバリア機能
3-2. バリア機能と角質層の働き
3-3. バリア機能の低下と皮膚の乾燥の関係
1. 肌タイプの基本の分類
肌タイプは、何から決まるのでしょうか?
肌の状態を決めるおもな要素はふたつあります。
ひとつが皮脂量、もうひとつが保湿能力です。
皮脂量
皮脂とは、皮膚にある皮脂腺から分泌される脂質と、表皮から生まれる脂質を合わせたものを指します。
皮脂のほとんどは皮脂腺から分泌される脂質でできています。
皮脂は汗と混じり合って「皮脂膜」をつくります。
皮脂膜は皮膚の表面を覆っていて、水分の蒸散を防ぐ役割を果たしています。
皮脂が多すぎると肌はべたつき、少ないと肌はざらついたり、かさついたりします。
保湿能力
保湿能力とは、肌がうるおいを生み出して保つ働きを指します。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれていますが、うるおいを保つ働きはこのうちの表皮、中でも一番外側にある厚さ0.2mmほど角質層が担っています。
1-1. 肌タイプのチェック方法
ほとんどの人は、「自分の肌タイプはわかっている」と思っているでしょう。
でも、自分の肌タイプを誤解している人は意外に多いのです。
季節や体調などによって、肌タイプが変わることもあります。
肌タイプは簡単に調べることができます。
まずは、自分の肌タイプをチェックしてみましょう。
<肌タイプのチェック方法>
・石けんや洗顔料を使って洗顔する。
・タオルで顔の水分を拭き取る。
・そのまま10分待つ。
・つっぱり感やかゆみなどの違和感をチェックする。
・鏡を見て、目の下や目尻の小ジワをチェックする。
・あぶらとり紙をTゾーンと頬に10秒押し当てる。
1-2. ノーマルスキン
洗顔後10分まではつっぱり感やひりつきがなく、Tゾーンも頬もあぶらとり紙に脂がつかない人はノーマルスキンです。
ノーマルスキンは、皮脂はベタつかない程度の適度な量で、みずみずしくしっとりしている肌です。
皮脂量と水分量のバランスが整っているので、肌トラブルをおこしにくく、ベーシックなスキンケアで十分なタイプです。
年齢を重ねると肌の保湿力は低下していくので、保湿ケアを足すとよいでしょう。
1-3. オイリースキン
洗顔後10分まではつっぱり感やひりつきはないものの、Tゾーンも頬もあぶらとり紙に脂がつく人はオイリースキンです。
オイリースキンは、皮脂量が多く、保湿能力も高い肌です。
肌がテカりやすく、毛穴が開きやすいという特徴があります。
朝起きたときに肌がベタついたり、洗顔してもすぐに顔の表面に皮脂が浮いてきたりします。
気温と湿度が高い夏には、にきびができやすくなる場合もあります。
オイリースキンの原因のひとつとして、脂っぽいものをよく食べることが挙げられます。
また、スキンケアで皮脂を取りすぎることもオイリースキンの原因になります。
1-4. ドライスキン
洗顔後10分経つと、つっぱり感やひりつきを感じて、Tゾーンも頬もあぶらとり紙に脂がつかない人はドライスキンです。
皮脂の量が少なく、保湿能力も低い肌です。
きめは細かいものの、小ジワは目立ちやすく、肌を少しひっかいただけでも赤くなります。
朝起きたときに顔がかさついたりします。
外的な刺激に弱く、炎症をおこしやすいのも特徴のひとつです。
ドライスキンを招く原因は大きく3つ挙げられます。
皮脂量の低下、天然保湿性因子(NMF)の低下、角質細胞間脂質の減少です。
1-5. コンビネーションスキン
洗顔後10分経つと、部分的につっぱり感やひりつきを感じて、頬のあぶらとり紙には脂がつかず、Tゾーンのあぶらとり紙に脂がつくタイプです。
コンビネーションスキンは、その名前の通り、脂っぽい部分と乾燥している部分が混在する肌です。
Tゾーンはテカったりベタついたりするのに、口や目、頬はかさついています。
胸元や背中の中央など、皮脂の多い場所にはにきびができやすいのですが、肌トラブルは比較的起こしにくい肌です。
30歳を過ぎると、ホルモンの関係もあって、コンビネーションスキンの人が増えると言われています。
コンビネーションスキンの原因は、外的な要因と内的な要因があるとされています。
外的な要因としては、紫外線、エアコンによる乾燥、たばこやアルコール、食生活などが挙げられます。
内的な要因としては、ストレスやホルモンの乱れが挙げられます。
1-6. オイリードライスキン
4つの基本の肌タイプには含まれませんが、5つめの肌タイプとして挙げられることがあるのがオイリードライスキン(脂性乾燥肌)です。
インナードライスキン(乾燥性脂性肌)と呼ばれることもあります。
洗顔直後は肌がかさつくけれど、しばらく経つとベタついてくる人はオイリードライスキンです。
皮脂量は十分あるものの、保湿能力が低い肌です。
毛穴が開きやすく、にきびができやすいタイプです
肌にハリがなく、細かいシワが多いという特徴があります。
オイリースキンの人が若いころのスキンケアを続けていると、オイリードライスキンになりやすいと言われています。
2. 敏感肌ってどんな肌?
皮膚科学の世界では、敏感肌の定義はまだ定まっていません。
実際、人によって敏感肌のとらえ方もさまざまです。
中には、敏感肌を肌質が繊細できれいな肌と考えている人もいるようです。
ここでは敏感肌の現状と、敏感肌の概念について説明します。
2-1. 敏感肌の現状
肌が敏感、あるいはやや敏感と感じている人は多くいます。
これは日本人だけに限った話ではありません。
フランス・パリの皮膚及び感覚調査研究センター(C.E.R.I.E.S.)で行われた調査でも、女性の半数以上、男性でも3割以上が敏感肌と自覚していたという結果が得られています。
化粧品の世界でも、ドクターズコスメと呼ばれている皮膚科専門医のアドバイスを受けて作られている敏感肌用のスキンケア製品が多く登場しています。
2-2. 敏感肌の特徴
敏感肌の特徴としては、まず顔の皮膚がさまざまな刺激に対して反応しやすいことが挙げられます。
化粧品やトイレタリー用品を繰り返し使ったり、長い間使い続けたりすることで、皮膚が赤くなったり、乾燥したり、かゆくなったり、ピリピリする痛みを感じたり、皮膚がフケのようにはげたりするという訴えが見られます。
こうした症状は、「敏感肌体質」というような何らかの素因を持った人におこると考えられています。
ただし、敏感肌体質というだけでは、敏感肌の症状が出るわけではありません。
不規則な生活や疲労の蓄積、ストレス、さまざまな皮膚への刺激などが加わって、敏感肌の症状がおこると考えられています。
なお、敏感肌には、季節や体調などによって、一時的に皮膚に不調が生じるケースも含まれています。
2-3. 敏感肌の6つのタイプ
敏感肌の症状はさまざまです。
皮膚科的に見ると、次の6つに分けることができます。
2-3-1. 乾燥肌
乾燥肌は、敏感肌の前段階と考えられています。
一般にドライスキンと呼ばれる状態です。
乾燥によって皮膚のバリア機能が低下しているため、化粧品やシャンプー類、洗剤、衣類、ホコリ、花粉などによって刺激を受けると、敏感肌の症状が出ます。
乾燥肌については「乾燥肌の正しいスキンケア-4つのステップでカサカサ肌を改善」の記事で詳しく取り上げていますので、乾燥肌が気になる方はこちらの記事もぜひ読んでみてください。
2-3-2. 肌荒れ過敏肌
肌荒れ敏感肌は、敏感肌に多く見られる脂漏性(しろうせい)皮膚炎のことです。
肌荒れやフケ症は軽度の脂漏性皮膚炎になります。
脂漏性皮膚炎は、Tゾーンや小鼻の脇、耳の後ろ、頭部のほか、胸やうなじ、背中の上の方など、皮脂の分泌が過剰な部分におこります。
症状としては、皮膚が剥がれ落ちたり(落屑)、皮膚が赤くなって盛り上がったり(紅斑)します。
春先や秋口など季節の変わり目におこりやすく、発症を繰り返すことが多い病気です。
肌荒れ過敏肌では、脂漏性皮膚炎以外ににきびなどが見られる場合もあります。
2-3-3. 大人にきび
大人にきびは、正式には「成人ざ瘡」と呼ばれています。
ざ瘡がにきびを指します。
にきびは脂腺性毛包にできるものです。
脂腺性毛包とは、大きく発達した脂を出す腺(脂腺)を複数持つ毛根を包む組織(毛包)です。
脂腺性毛包は、皮脂の分泌を活発に行っていて、炎症をおこしやすいという特徴を持ちます。
顔や首、胸、背中に多く存在しています。
大人にきびは、思春期に多く見られる思春期にきびと異なり、Uゾーン(顔の輪郭部)にできることが多いのが特徴です。
大人にきびについては「大人のニキビには1日2回の洗顔-原因は毛穴まわりの角質肥厚」という記事で、原因と対策をご紹介していますので、ぜひ併せてお読みください。
2-3-4. かぶれ
かぶれは、正式には「刺激性接触性皮膚炎」と呼ばれています。
化学物質や植物など、何らかの物質が皮膚に接触することでおこる湿疹性の炎症反応です。
原因となる物質に触れてすぐに、湿疹や皮膚炎がおこるのが特徴です。
アレルギー反応ではないので、誰でもおこる可能性があります。
症状はさまざまで、刺激が弱ければ熱さを感じたり(灼熱感)、刺激を感じるだけの場合もあります。
皮膚のバリア機能が低下していると、普段使っている化粧品でも症状が出ることがあります。
なお、原因となる物質に触れてから、1〜2日後に湿疹や皮膚炎がおこった場合は、刺激性接触皮膚炎ではなく、アレルギー性接触皮膚炎の可能性があります。
2-3-5. 光かぶれ
光かぶれは、正式には「光線過敏症」と呼びます。
光線過敏症は、日光に過敏に反応して、皮膚炎をおこします。
日光に当たりすぎると、日焼けをおこして、肌が赤くなったり、水ぶくれができたり、肌が黒くなったりします。
光線過敏症は、通常なら問題にならない量の日光を浴びただけで皮膚に炎症をおこしてしまいます。
症状は日光に当たった場所に現れます。
よく見られるのは、額や鼻の頭、頬の高いところ、耳たぶ、Vゾーン(首から胸)などです。
2-3-6. アトピー肌
アトピー性皮膚炎は、超敏感肌ということもできます。
アトピー性皮膚炎はアレルギーによっておこるものと思われがちですが、それ以外にも重要な側面があります。
アレルギー以外の側面としては皮膚のバリア機能の低下や、ストレスなどで強いかゆみを感じやすくなることが挙げられます。
かき崩し(掻破)がおきやすく、掻破行動が習慣化して癖になりやすいことが症状の悪化に繋がっています。
この嗜癖的掻破行動もアレルギー以外の側面の重要なもののひとつです。
3. 敏感肌の原因
敏感肌は、刺激に対して過敏に反応する肌ですが、その症状の現れ方はさまざまです。
敏感肌になるおもな原因として、皮膚のバリア機能の変調が挙げられます。
皮膚のバリア機能とはどんなものなのでしょうか?
3-1. 皮膚のバリア機能
皮膚には、体外にある異物が体の中に入るのを防ぐ働きがあります。
これを皮膚のバリア機能と呼びます。
バリア機能によって防がれるものとしては、細菌やウイルスなどの病原体、紫外線によるダメージなどが挙げられます。
さらにバリア機能は、水分が体の外に逃げるのを防ぐ役割も担っています。
3-2. バリア機能と角質層の働き
皮膚は、上から表皮、真皮、皮下組織の3層からなっています。
バリア機能で一番重要な役割を果たしているのが表皮です。
表皮には、0.2mmほどの厚さの角質層があります。
角質層の表面は、皮脂と汗などが混ざってできる皮脂膜で覆われています。
角質層には角質細胞がきっちりと並んでいて、すき間をセラミドを主成分とする角質細胞間脂質が埋めていて、外部からの刺激が体内に届かないようになっています。
角質層にある天然保湿因子(NMF)も、体内から水分が蒸散するのを防ぐのに一役買っています。
3-3. バリア機能の低下と皮膚の乾燥の関係
バリア機能のひとつに、水分が体の外に逃げるのを防ぐ役割があります。
角質細胞と角質細胞間物質が詰まっていた角質層も、皮膚が乾燥するとすき間ができてしまいます。
すると、外部の刺激が体内に入り込みやすくなってしまいます。
角質細胞間脂質の量も減ってしまうため、うるおいを保つ力も落ちてしまいます。
バリア機能が低下すると、皮膚はより乾燥しやすくなってしまうのです。
皮膚の乾燥が進むとバリア機能はさらに低下して、敏感肌を招いてしまいます。
まとめ
現在の日本では、敏感肌と感じている女性が多くいます。
敏感肌の医学的な定義はまだ定まっていませんが、刺激に対して反応しやすい肌と言えそうです。
皮膚のバリア機能が変調をおこすことで、敏感肌を招くと考えられています。
敏感肌の前段階とも言えるのが、ドライスキンです。
皮膚のバリア機能とドライスキンは相関関係にあります。
敏感肌になるのを防ぐには、ドライスキンの段階で洗いすぎに注意して、きちんと保湿ケアを行うことが大切なのです。
ドライスキンの保湿ケアについては「3つの保湿成分で乾燥肌対策-乾燥のしくみを理解して保湿ケア」という記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考資料】
漆畑修『敏感肌の診療 スキンケアの指導からタイプ別の治療法まで』(メディカルレビュー社、2016年)
高瀬聡子・細川モモ(著)『いちばんわかるスキンケアの教科書』(講談社、2014年)
スキンケア大学『医師が教える正しいスキンケア大全』(宝島社、2016年)
エンゾウ・ベラルデスカ、ヨアヒム・W・フルール、ハワード・I・メイバック(編)『敏感肌の科学 その症状と生理学的メカニズム』(フレグランスジャーナル社、2007年)
小林美咲(監修)『図解がまんできない!皮膚のかゆみを解消する正しい知識とスキンケア』(日東書院本社、2017年)
『これが最新 赤ちゃんのスキンケアがよくわかる本』(主婦の友社、2016年)