ニキビができると、痕が残るのではないかと憂鬱になりますよね?
なんとかして痕を残さずに治したいと思うものです。
ニキビは10代の人にできるもので、年齢を重ねてからできるものは「吹き出物」と呼んで区別するようなこともありますが、実は同じ症状の肌トラブルなのです。
ニキビケアの基本となるのが洗顔。
ところが、「肌の油分 (皮脂)はしっかり落としたほうがいい」、はたまた「油分は落としきらないほうがいい」と、巷にはいろいろな洗顔方法が紹介されていて、悩んでしまいます。
ここでは、ニキビができるしくみを解説してから、正しいニキビケアの洗顔法を解説します。
さらに、ニキビの改善に向けて、洗顔と同時に実践したいケアを紹介します。
目次
1. ニキビは毛穴が皮脂でつまってできる
1-1. 毛穴の構造
1-2. アクネ菌の過剰繁殖
1-3. ニキビが進行する4つのステージ
1-4. 大人ニキビの原因は角質肥厚
2. 大人ニキビには1日2回の洗顔
2-1. 洗顔のしすぎはニキビを悪化させる
2-2. 肌の負担が大きい界面活性剤
2-3. クレンジングには要注意
2-4. 固形石けんでやさしく洗顔
2-4. 洗顔後はビタミンC誘導体配合の化粧水
2-5. 仕上げは油分が少ない保湿美容液
3. 洗顔だけで大人ニキビは改善しない
3-1. 最低6時間の睡眠をとる
3-2. 便秘を解消する
3-3. ターンオーバーを高める食生活
3-4. 日焼け止めやリキッドファンデを使わない
1. ニキビは毛穴が皮脂でつまってできる
ニキビは、毛穴に過剰な「皮脂」がつまってしまい、炎症を起こしている状態です。
思春期のニキビも、大人のニキビも、これは変わりません。
しかし、なぜ皮脂がつまってしまうのかという原因に違いがあります。
ニキビを改善するためには、この原因を知る必要があります。
ニキビができて悪化するメカニズムと、大人ニキビの原因を解説しましょう。
1-1. 毛穴の構造
肌の表面には、「毛孔」と呼ばれる毛穴や、汗を分泌する「汗腺」の出口である「汗孔」があります。
肌は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3層構造になっており、皮下組織には、汗腺や、毛孔の根本にあたる「毛球」があります。
毛穴の真皮部分にあるのが、皮脂を分泌する「皮脂腺」です。
皮脂腺から分泌された皮脂は、毛穴から出て角層の表面に広がり、肌のうるおいを維持する働きがあるので、「天然のクリーム」などと呼ばれます。
ところが皮脂が過剰な状態になると、脂性肌となり、肌トラブルを起こしやすくなります。
皮脂の分泌量は、気温が高くなると増加し、年齢的には10代から20代にかけての思春期に急増して、その後は徐々に減少していくのが一般的です。
そして、実は皮脂腺から分泌された皮脂が毛穴から体の外に出るという構造が、ニキビという肌トラブルの最大の要因なのです。
1-2. アクネ菌の過剰繁殖
過剰に分泌された皮脂と「角質」が混ざると、毛穴づまりを引き起こします。
角質とは、表皮のもっとも真皮側に位置する「基底層」で生まれた表皮細胞が、次々と押し上げられて、肌の表面である「角層」に溜まったもので、「角質細胞」とも呼ばれます。
角質はすでに死んだ細胞で、やがて肌からはがれ落ちます。
表皮のこの代謝を「ターンオーバー」、または「角化」と呼び、若い人の肌ではおよそ28日の周期になっています。
皮脂が過剰になると、毛穴周辺ではがれた角質と混ざってしまい、毛穴から排出されにくくなって毛穴づまりを起こします。
ここで、毛穴に存在している常在菌のひとつである「アクネ菌」が、過剰になっている皮脂を養分として異常繁殖してしまうのです。
そうすると、血液中の白血球が異常繁殖したアクネ菌を減らすために、毛穴の中で攻撃します。
これが炎症の正体です。
1-3. ニキビが進行する4つのステージ
毛穴の炎症によってできるニキビには、4段階の進行過程があります。
痕を残さないためには、早い段階で治療することが重要です。
ステージ1
過剰になった皮脂と角質が混ざったり、角質が異常に厚みを増してしまう角化異常を毛穴の出口周辺で起こしたりして、毛穴をふさいでしまいます。
ステージ2
皮脂がつまって毛穴がふくらみ、アクネ菌が異常繁殖します。
これが、白くプツプツした、いわゆる吹き出物ができた状態で、「白ニキビ」と呼ばれます。
まだ炎症を起こしていないので、この段階で治せば痕が残ることもありません。
ステージ3
ふくらんだ毛穴の中や周辺で、白血球がアクネ菌を攻撃します。
毛穴は炎症を起こした状態になり、赤くはれるので「赤ニキビ」と呼ばれます。
ステージ4
白血球とアクネ菌の戦いは、毛穴の壁を壊して周囲の皮膚組織まで広がって炎症が大きくなり、大きくなった赤ニキビがつぶれると膿が出ます。
ここまで進行すると、毛穴周辺の皮膚組織が壊れて陥没してしまい、ニキビ痕が残ります。
1-4. 大人ニキビの原因は角質肥厚
思春期のニキビは、過剰な皮脂の分泌が原因です。
しかし、大人のニキビは、水分と油分が不足している乾燥肌の状態でもできます。
これは、毛穴のつまる原因が、毛穴出口周辺の角質が厚くなることにあるからです。
ターンオーバーの低下などにより、排出されずにたまった角質が厚くなって毛穴をふさいでしまうのです。
出口がふさがれてしまうので、皮脂の分泌は多くなくても少しずつ蓄積していきます。
この「角質肥厚」を起こす要因は、ホルモンバランスの乱れや免疫力の低下など、いくつもの要因が複雑にからみあっているといわれます。
2. 大人ニキビには1日2回の洗顔
ニキビケアは、肌に余計な油分を与えないことが鉄則です。
ですから、洗顔で肌の油分を落とすことが不可欠になります。
角質肥厚が起こっている大人ニキビには、「朝晩2回のさっぱり洗顔」が有効です。
その理由と、具体的な洗顔方法を解説しましょう。
2-1. 洗顔のしすぎはニキビを悪化させる
脂性肌が原因ではない大人ニキビの場合、1日に何度も洗顔をして皮脂を落とす必要はありません。
肌を洗いすぎると、乾燥させてしまいます。
肌の乾燥が続くと、角質肥厚が起こりやすくなります。
ですから、過剰な洗顔は、かえって毛穴をつまりやすくすることになり、ニキビを悪化させてしまうのです。
洗顔の回数は、朝と夜の2回で十分です。
ただし、その2回は皮脂をしっかり落とす必要があります。
寝ている間にも皮脂は分泌され、時間が経つと酸化して肌トラブルの原因になるからです。
乾燥による大人ニキビと、改善方法については「乾燥肌のニキビを改善する5つのケア-大人ニキビの原因と対策」でも詳しく解説していますので、乾燥によるニキビにお悩みの方はこちらもぜひご覧ください。
2-2. 肌の負担が大きい界面活性剤
洗浄剤や化粧品には、水と油を混ざりやすくする「界面活性剤」という化学物質が使われています。
表皮の一番外側、肌の表面にあたる「角層」は、角質細胞が何層にも重なるレンガのような構造になっており、その間を細胞間脂質が埋めて、外部の刺激から肌を守る防護壁の役割と、肌から蒸発する水分をつなぎとめて、うるおいを保つ役割を果たしています。
これが「角層のバリア」と呼ばれる機能ですが、角層の厚さはわずか0.02mm。
とてもデリケートな部位なのです。
界面活性剤は肌への刺激が強いので、角層を壊してしまい、細胞間脂質の半分近くを占めて水分を保持しているセラミドという物質を溶かします。
ですから、できれば界面活性剤を肌につけないほうがいいのですが、メイクや油汚れを洗い流すためには、油分と水分を混ぜる「乳化」という工程が必要なのです。
界面活性剤は必要悪のようなものです。
洗顔にも使わないわけにはいかないので、極力、肌への刺激を抑えながら皮脂を洗い流すことがポイントとなります。
2-3. クレンジングには要注意
通常、メイクをした日は、夜の洗顔をする前にクレンジング剤でメイク落としをします。
クレンジングは洗顔以上に、肌への負担が大きいので要注意です。
実は、美容アイテムでもっとも界面活性剤が多く使われて、肌への刺激が強いのはクレンジング剤なのです。
ニキビの改善や予防を考えるのであれば、とくに肌への刺激は抑えなければいけません。
洗顔とセットで、肌に優しいケアを考えましょう。
毛穴の皮脂や汚れを落としたいからと、洗浄力の強いオイルタイプのクレンジング剤を使うのはNGです。
肌への負担が比較的少ないのは、洗い流せるクリームタイプのクレンジング剤です。
さらに大事なことは、クレンジング剤が肌にのっている時間を短くすることです。
時間が経てば経つほど、角層は傷んでいきます。
W洗顔が基本ですから、クレンジングだけでメイクをきれいに落とす必要はありません。
少しヌルついているくらいで問題ありませんから、洗い流す時間も含めて、クレンジングは1分以内に手早くすませましょう。
肌への負担が少ないクレンジングの詳しい方法については「美白によいクレンジングと洗顔-知らなければいけない10の真実」でもご紹介しています。
2-4. 固形石けんでやさしく洗顔
ニキビ肌の洗顔料には、添加物の少ない固形石けんが適しています。
固形石けんは、洗浄力の強いものから弱いものまでそろっており、自分の肌に合わせて選べるのも特徴です。
クリームタイプの洗顔料は、肌への刺激がどの程度のものなのか判断が難しく、手軽に使える泡タイプと同様に、界面活性剤が多く配合されているものがあるので、選ぶのが簡単ではありません。
一般的に泡立ちがよい洗顔料には、界面活性剤が多く配合されています。
リキッドタイプやパウダータイプは肌に優しいことをうたっていても、やはり製品によっては界面活性剤が多く配合されているものがあります。
泡を立てないミルクタイプは、洗浄力が弱いので、肌をこすってしまいがちです。
こうしたことから、自分に合ったものを選びやすく、安心して使えるのは、シンプルな固形石けんということになるのです。
ニキビケアは、「いじらない、つぶさない」も基本です。
肌をこすらないようにして、指の腹でくるくると泡をころがすように洗いましょう。
泡は肌への摩擦を防ぐもので、指が肌を傷めないためにあるものですが、大量に使う必要はありません。
正しい洗顔方法を身につけましょう。
① ぬるま湯で手と顔をぬらす。
② 洗顔料を泡立てる。泡の量は、片手のひらに乗るレモン1個分程度。
③ TゾーンからUゾーンへ指の腹でクルクルと泡をのせていく。
④ 目元と口元を中指と薬指でやさしく洗う。
⑤ 37~38度のぬるま湯を使い、手で肌に触れない感覚で、すすぎ残しがないようていねいにすすぐ。
泡立てネットを使用する場合は、水をたっぷり足しながら泡立ててください。
乾燥がひどいときは、クレンジングをしなくてすむメイクを心がけ、洗顔料を使わずにぬるま湯ですすぐだけにして、2~3日様子をみましょう。
洗顔が終わったときに、肌に軽いつっぱり感があるくらいの、「さっぱり洗顔」を実践してください。
2-4. 洗顔後はビタミンC誘導体配合の化粧水
洗顔後は、ビタミンC誘導体を配合した化粧水を肌になじませます。
ビタミンCには、皮脂の分泌を抑制する働きがあります。
さらに、ニキビ痕の赤みを薄くする働きもあります。
ところが、水溶性であるビタミンCは、そのままだと角層に浸透しません。
そこで、リン酸と結合させることにより、ビタミンCを安定させて肌に浸透しやすくしたものが、ビタミンC誘導体です。
ニキビ肌には、洗顔の後の保湿ケアが大事ですが、化粧水はあくまでも余計な皮脂の分泌を抑えるためのニキビケアと考えてください。
2-5. 仕上げは油分が少ない保湿美容液
洗顔の後は、化粧水だけで終わらせてはいけません。
化粧水はほとんどが水ですから、肌につけると蒸発します。
そのときに肌の水分まで蒸発させてしまい、肌をかえって乾燥させてしまうのです。
洗顔の後を締めるスキンケアは、美容液による保湿ケアです。
保湿することで肌にうるおいを与えてやわらかくし、毛穴のつまりを予防することができます。
美容液にはいろいろなタイプがありますが、セラミドやヒアルロン酸などの保水成分を高濃度で配合した保湿美容液を選んでください。
ニキビ肌には、油分の少ないものが向いています。
3. 洗顔だけで大人ニキビは改善しない
大人ニキビの主な原因である角質肥厚は、思春期のニキビと同じケアでは改善しません。
ニキビケアの基本である洗顔とともに、生活リズムを整えることやストレスケアでホルモンのバランスを整えたり、食事で肌のターンオーバーを高めたりというケアが必要です。
3-1. 1日最低6時間の睡眠をとる
睡眠不足は、ホルモンバランスを乱す原因になります。
快適な睡眠時間には個人差がありますが、最低でも1日6時間以上の睡眠をとりましょう。
毎日、だいたい同じ時間に就寝起床することも大事で、夜の12時半くらいまでに眠りにつくと、深い睡眠ができるといわれます。
体の代謝リズムを司っている体内時計は、朝起きて紫外線のような強い光を浴びることでリセットされます。
人間の体内時計は、人によって24時間よりも少し短かったり長かったりします。
だから、毎朝リセットして地球の自転周期である24時間に合わせることで、健康な生活リズムを得られるといわれています。
いろいろな体の反応に応じて分泌されるホルモンは、規則正しい生活によってバランスを整えることができ、そのベースとなるのが安定した睡眠なのです。
安定した睡眠を取るための秘訣は「質の良い睡眠になる3つの習慣ーぐっすり寝てスッキリ起きる」でも詳しくご紹介しています。
3-2. 便秘を解消する
便秘をすると腸内で悪玉菌が増えてしまい、アンモニアやアミン、硫化水素といった有害物質を生みだします。
これらの毒素は、腸壁から吸収され、血液によって全身に運ばれて、生活習慣病や免疫力の低下などを引き起こします。
毒素は肌にも大きなダメージを与えて、ニキビや肌荒れの原因となります。
さらに、腸内でビタミンをつくる働きが低下して、ニキビを悪化させてしまいます。
便秘は、食物繊維をしっかりとる食事で改善しますが、ガンコな場合は便秘薬を使用してでも解消しましょう。
3-3. ターンオーバーを高める食生活
食事によってターンオーバーを活性化させることで、角質肥厚を予防します。
代謝を高める栄養素には、タンパク質、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化物質、亜鉛などがあります。
肉や魚、大豆などに多く含まれるタンパク質は、人間の体を形成するすべての細胞の素となります。
肌の健全なターンオーバーには欠かせない栄養素です。
過剰な活性酸素によって肌が酸化すると、ニキビだけでなくシミやシワなど様々な肌トラブルを引き起こします。
酸化を防ぐ抗酸化物質は食事でとることが可能で、その代表的なものが、ビタミンAとして扱われることもあるベータカロテン、ビタミンC、ビタミンEなどです。
緑黄色野菜や植物油に多く含まれています。
牡蠣や豚レバー、煮干しなどに多く含まれる亜鉛は、細胞分裂をスムーズにする働きがあるのでターンオーバーに欠かせないミネラルです。
ニキビの予防だけでなく、過剰になったコラーゲンを分解してニキビ痕を改善する働きもあります。
3-4. 日焼け止めやリキッドファンデを使わない
ニキビ肌は、とにかく肌への刺激を抑えて、余計な油分を与えないスキンケアが求められます。
スキンケアに欠かせない紫外線対策も、この点に注意しなければいけません。
紫外線対策は、メラニン色素を抑制する「シミのケア」として考えられることが多いのですが、ニキビケアにも1年中欠かしてはいけないものです。
しかし、問題は日焼け止めが肌に強い刺激を与えることです。
紫外線を反射したり、吸収したりして肌に届くことを防ぐ日焼け止めの有効成分は、角層を傷めてしまいます。
ですから日焼け止めの使用は、レジャーやスポーツで、長時間にわたって紫外線を浴び続けなければならないときだけに限定しましょう。
日常は、日傘や帽子をうまく活用して日焼け止めを使わないようにするのです。
パウダータイプのファンデーションは、水分を含まないので防腐剤などの添加物が少なく、粒子が密集しているのでUVカット効果が高いという特徴があります。
リキッドタイプのように水分を含むものは、防腐剤の配合が必要になりますし、乳液状のベースに顔料を混ぜるので、界面活性剤が多く配合されています。
肌への刺激が少ないパウダーファンデーションで日焼け止めを兼ねてしまえば、一石二鳥です。
まとめ
大人のニキビは、原因が単純ではないことが多いので、短期間で治すことは難しいものです。
一時的に症状が改善しても、生活習慣やストレスケアといった根本的な問題が解決されていなければ、再発を繰り返すケースが多いのも特徴です。
毎日2回の洗顔を基本として、焦らず気長に根本的な改善を目指しましょう。
角質肥厚には、セルフピーリングで古い角質を除去することも効果的です。
自分の肌に合った強さのピーリング化粧品で、週1~2回のケアを試してください。
陥没しているようなニキビ痕は、美容皮膚科で10回程度のケミカルピーリングを受けると、改善することがあります。
【参考資料】
・『新版 今さら聞けないスキンケアの正解』 主婦の友社 2015年
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 2014年
・『皮膚のトラブルが治らないときの本』 小学館 2009年
・花王スキンケアナビ
http://www.kao.com/jp/skincare/structure.html