あなたは「自分は敏感肌だ」と思いますか?
「合わない化粧品が多いから肌が敏感だ」と思っている人も、「肌トラブルを起こしやすいから敏感肌」という人もいるでしょう。
日本にとどまらず、世界的に見ても、肌が敏感だと思っている女性は多くなっています。
まだ医学の世界では敏感肌の定義は定まっていませんが、敏感肌はさまざまな刺激に対して反応しやすくなるため、肌トラブルをおこしやすい肌と言えそうです。
敏感肌になると、愛用していた化粧品で肌トラブルを起こすこともあります。
敏感肌の原因を知って、適切なスキンケアで肌トラブルを予防しましょう。
目次
1. 皮膚の持つ3つの役割
1-1. バリア機能
1-2. 体温調節機能
1-3. センサー機能
2. バリア機能とターンオーバーの関係
2-1. ターンオーバーってどんなもの?
2-2. ターンオーバーの周期の乱れと肌トラブル
3. 乾燥肌と敏感肌の関係
3-1. 乾燥肌を引きおこす原因
3-1-1. 皮脂量の低下
3-1-2. 天然保湿因子(NMF)の減少
3-3-3. 角質細胞間脂質の減少
3-2. 日本人と肌の乾燥
4. 敏感肌のスキンケアの基本
4-1. 化粧品の見直し
4-2. 敏感肌にとってのスキンケアの間違いをチェック
4-2-1. クレンジング
4-2-2. 洗顔
4-2-3. その他
4-3. 敏感肌のための保湿ケア
4-3-1. 保湿剤の種類と特徴
4-3-2. 保湿ケアの方法
1. 健康な皮膚が持つ3つの役割
実は皮膚は臓器のひとつで、特定の機能を持っています。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層からなっていて、脂を出す皮脂腺や汗を出す汗腺、乳汁を出す乳腺、爪、毛を備えています。
このような皮膚の持つ機能とはどんなものでしょうか?
皮膚の役割は大きく分けて3つ挙げられます。
1-1. バリア機能
敏感肌とも関係の深い機能が「バリア機能」です。
これは体外からの異物による刺激、異物や病原体の侵入などから体を守る働きのことです。
紫外線による刺激で、DNAが損傷を受けるのを防ぐ役割も担っています。
表皮の一番外側にある角質層では、きちんと並んだ角質細胞の間を細胞間脂質が埋めて、刺激や異物の侵入を防げるようになっています。
また、バリア機能のひとつとして、体内にある水分の蒸散を防ぐ働きもあります。
1-2. 体温調節機能
汗を出す汗腺は大きくふたつに分けられます。
ひとつは特定の部位にある「アポクリン汗腺」、もうひとつが全身にある「エクリン汗腺」です。
このうち、体温調節機能を担うのがエクリン汗腺です。
体温が上昇したときには、エクリン汗腺から汗を分泌して、体温を下げています。
反対に気温が下がって寒いと感じたときには、真皮にある立毛筋という筋肉が縮みます。
すると皮膚の表面が「鳥肌が立った状態」になって、体外への熱の放出を最小限にとどめることができるのです。
なお、アポクリン汗腺からの汗は、緊張したときや不安があるときなどに分泌されます。
1-3. センサー機能
皮膚には、軽く接触した感じ(触覚)、痛み(痛覚)、温かさ(温覚)、冷たさ(冷覚)、硬く押しつけられる感じ(圧覚)、かゆみ(痒覚)などを感じる働きがあります。
皮膚には、こうした感覚を受け取る「受容器」があるのです。
皮膚のおもな受容器は次の5つです。
メルケル細胞
表皮にあるメルケル細胞は感覚細胞のひとつで、指や毛根部、口の中に多く見られます。
自由神経終末
真皮の上層から表皮内に伸びている自由神経終末は、触覚、温覚、痛覚、痒覚を感じます。
乾燥肌や敏感肌、よくかいている場所では、自由神経終末は角質層のすぐ下まで伸びていて、刺激を感じやすくなっています。
マイスネル小体(マイスナー小体)
真皮にあるマイスネル小体は、触覚を感じます。
マイスネル小体は、手のひらや足の裏、唇などに見られます。
ファーター・パチニ小体
真皮の深層や皮下組織にあるファーター・パチニ小体は、深部の圧覚や振動を感じます。
ルフィニ小体
ルフィニ小体は、皮膚が引っ張られたことによる緊張を感じます。
ルフィニ小体は、手の指や足の裏の皮下組織、関節の周囲に見られます。
2. バリア機能とターンオーバーの関係
敏感肌と関係が深い皮膚の機能がバリア機能ですが、これを維持するうえで欠かせない皮膚のしくみがあります。
それが「ターンオーバー」です。
2-1. ターンオーバーってどんなもの?
ターンオーバーとは、皮膚の新陳代謝のことです。
すりむいたり、ひっかいたりした皮膚も時間が経てばきれいな皮膚に戻りますよね。
これは、ターンオーバーによって、皮膚の表面の細胞が一定のサイクルで入れ替わっているためです。
表皮の下の方にある基底層では、「角化細胞(ケラノサイト)」という細胞が細胞分裂して、新しい細胞を生み出しています。
新しくできた細胞は、徐々に上に押し上げられていき、皮膚の表面に至ります。
皮膚の表面にたどり着いた細胞は核のない角質細胞となって、バリア機能を担うのです。
ターンオーバーの周期は、28日前後が理想的とされています。
2-2. ターンオーバーの周期の乱れと肌トラブル
ターンオーバーの周期は、さまざまなものに影響を受けます。
周期に影響を与えるものとしては、紫外線、季節、食生活、睡眠不足、ストレス、加齢、ホルモンバランスなどが挙げられます。
ターンオーバーの周期は、20歳を過ぎると徐々に遅くなっていきます。
ターンオーバーの周期が遅くなると、皮膚の表面に古い角質細胞が残り、溜まっていきます。
古い角質細胞は水分を抱え込む力がなくなっているため、皮膚の乾燥を招きます。
シミやくすみ、シワの原因にもなります。
一方、ターンオーバーの周期が速まると、皮膚の表面に未熟な状態の細胞が出てきてしまいます。
刺激によるダメージを受けやすくなって、乾燥肌になったり、肌荒れをおこしたりしやすくなったりします。
ターンオーバーの周期は遅くなっても、早くなっても、バリア機能の低下に繋がります。
その結果、肌トラブルをおこしやすくなるのです。
3. 乾燥肌と敏感肌の関係
バリア機能の低下は、乾燥肌を招きます。
乾燥肌になると、バリア機能はさらに低下していきます。
バリア機能の働きが弱まったところに化粧品やシャンプー、洗剤、衣類、ホコリ、花粉などの刺激が加わると、肌に違和感やかゆみ、ヒリヒリする痛みを感じたり、かさついたり、肌荒れをおこしたり、かぶれたり、にきびや湿疹ができたりといった敏感肌の症状が出ることがあります。
乾燥肌を放置すると、敏感肌になってしまう可能性があるのです。
3-1. 乾燥肌を引きおこす原因
肌はバリア機能によって、乾燥からも守られています。
乾燥肌を引きおこす原因は、大きく3つ挙げられます。
3-1-1. 皮脂量の低下
バリア機能を担うもののひとつに、皮脂膜があります。
皮脂膜は、皮脂と汗などが混ざってできたものです。
皮脂膜は弱酸性なので、殺菌作用も持っています。
皮脂膜の材料のひとつ、皮脂の分泌が減ると皮脂膜が薄くなったり、できなくなったりします。
女性では20代に皮脂の分泌量のピークを迎え、その後は少なくなっていきます。
また、代謝が低下すると皮脂の分泌も少なくなります。
3-1-2. 天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor=NMF)の減少
角質細胞内にあるNMFは水分を捕まえて離さないという性質を持っています。
NMFのおもな成分は、アミノ酸類、乳酸、尿素、ミネラル塩などです。
NMFの減少を招くものとしては、日焼け、睡眠不足、ストレス、加齢などが挙げられます。
NMFは顔を洗ったときなどに流出しやすい物質でもあります。
3-3-3. 角質細胞間脂質の減少
角質細胞間脂質は、並んだ角質細胞の間を埋めている物質です。
レンガを繋ぐモルタルのように、角質細胞同士を繋ぐ役割を果たしています。
角質細胞間脂質のおもな成分は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などです。
水分の層と脂質の層が交互に重なった「ラメラ構造」をつくり、異物の侵入や水分の蒸散を防いでいます。
角質細胞間脂質が少なくなると、角質細胞と角質細胞の間にすき間ができてバリア機能が低下し、体内の水分が蒸散しやすくなってしまいます。
3-2. 日本人と肌の乾燥
実は日本人の肌には、表皮が薄いという特徴があります。
表皮が薄いということは、水分保持能力が低いということです。
また、熱いお風呂に長く浸かる、脂を落とす力の強いボディソープで体を洗うなども、肌を乾燥させる原因となります。
こうしたことから、日本人では肌が乾燥しやすい人が多いのです。
そのため、日本人のスキンケアでは、乾燥を防ぐ「保湿」が重要なテーマとなります。
乾燥防ぐためのスキンケアについては「乾燥肌の正しいスキンケア-4つのステップでカサカサ肌を改善」の記事も参考にしてみてください。
4. 敏感肌のスキンケアの基本
敏感肌は、刺激に対して反応をおこしやすくなっています。
間違ったスキンケアをしていると、敏感肌を悪化させてしまいます。
正しいスキンケアで、敏感肌の改善を目指しましょう。
4-1. 化粧品の見直し
まず、何が原因で敏感肌の症状が現れているのかを突き止めることが大切です。
使い慣れている化粧品で症状が出ることもあります。
シャンプー類やボディーソープ、洗顔料、化粧品などが敏感肌に対応しているものかどうかを確認しましょう。
対応しているものではなかった場合は、いったん、使うのを止めましょう。
現在では、皮膚科医が監修した敏感肌対応の化粧品の開発が進んでいます。
敏感肌対応の化粧品は、皮膚に刺激を与えやすい保存料、アルコール、香料、色素などをできるだけ使わないようにしたものです。
こうしたものの中から、自分の肌に合うものを選んで使いましょう。
<肌に刺激を与える可能性のある成分>
・保存料や防腐剤
・アルコール
・香料
・色素
・泡立ちをよくするための成分
※合わなかった化粧品に含まれる上記の成分をチェックしておき、次に使う化粧品はそれらを含まないものを選ぶようにしましょう。
4-2. 敏感肌にとってのスキンケアの間違いをチェック
正しいと思っているスキンケアに、間違いがあることが少なくありません。
間違ったスキンケアは、敏感肌の症状を悪化させる可能性があります。
自分が間違ったスキンケアをしていないか、チェックしましょう。
4-2-1. クレンジング
<チェックポイント>
・コットンやスポンジを使って拭き取っている
・オイルクレンジングをしている
クレンジング剤は肌質との相性を考えて選ぶ必要があります。
拭き取りタイプやオイルタイプ、ゲルタイプは肌への刺激が比較的強いものです。
乾燥肌や敏感肌の人には向いていません。
また、クレンジング剤を肌の上に長くとどめないように気をつけてください。
4-2-2. 洗顔
<チェックポイント>
・オイル洗顔あるいはスクラブ洗顔、酵素洗顔をしている
・洗顔ブラシやスポンジ、ガーゼなどを使って洗顔している
・洗い流すときには熱いお湯を使う
余分な角質を取り除く酵素タイプは肌の乾燥を助長する可能性があるので、避けた方がよいでしょう。
オイルタイプ、スクラブタイプなどの洗顔料も肌への刺激が強いので、敏感肌には向きません。
肌に刺激にならないように洗うこともポイントです。
洗顔料はよく泡立てて、泡でマッサージするように洗いましょう。
42℃以上の熱いお湯に長時間浸かると、角質層がふやけて皮脂や保湿成分が溶け出してしまいます。
肌への刺激を避けるためにも、洗顔時には熱いお湯は使わずに、ぬるま湯で洗い流すとよいでしょう。
洗顔後は余分な皮脂が取り除かれて、摩擦に弱くなっています。
洗い終わったら、タオルで顔を押さえるようにしてやさしく水分を取り除きましょう。
4-2-3. その他
<チェックポイント>
・頻繁に顔を剃る
・炎症がおきているときにピーリングする
・無理な毛穴の角栓除去
上記のようなことは肌の刺激となるので避けましょう。
スキンケアについては「正しいスキンケアとは-肌のしくみと3ステップのデイリーケア」の記事もぜひ参考にしてみてくださいね。
4-3. 敏感肌のための保湿ケア
敏感肌のスキンケアで重視すべきポイントは「保湿」です。
敏感肌で悩む人の多くは保湿が不足していることで、かゆみや炎症をおこしています。
皮膚のバリア機能が低下している敏感肌では、角質層の水分を保つ働きを回復させることがとりわけ大切なのです。
4-3-1. 保湿剤の種類と特徴
皮膚科で処方される保湿剤に使われるおもな成分は5つあります。
それぞれの特徴を知って、肌の状態に合わせて使い分けましょう。
セラミド
セラミドは角質細胞間脂質のひとつで、水分保持機能、水分蒸散防止作用、バリア機能を持っています。
細胞間脂質が多いと、肌は健康でうるおいのある状態を保てます。
セラミドは、最も保湿に効果があるとされる成分のひとつです。
尿素
尿素は水分保持機能、水分蒸散防止作用を持っています。
ただし、肌のバリア機能を低下させるという特徴があります。
炎症をおこしているところに塗ると刺激を感じることがあるので、注意が必要です。
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質は、水分保持機能を持っています。
刺激が少なくて保湿力が高いのが特徴で、全身に使うことができます。
高齢者では、まず、ヘパリン類似物質で水分を補う必要があります。
ビタミンE
ビタミンEは、水分保持機能を持っています。
ワセリン
ワセリンは、水分蒸散防止作用を持っています。
皮脂膜に類似した膜を作って、水分が蒸散するのを防ぎます。
ワセリンは、乳児や幼児の肌の保湿に向いています。
思春期以降(高齢者を除く)はにきびができやすくなるので、注意が必要です。
4-3-2. 保湿ケアの方法
化粧水をたっぷり付ければ保湿できると考えていませんか?
化粧水は肌に水分を補う役割を持っています。
しかし、保湿成分を多く含んでいるわけではないので、補った水分を保てるようにするケアが必要なのです。
なお、化粧水で注目の保湿成分としては、セラミドがあります。
化粧水で補った水分を保てるようにする働きを持つのが保湿美容液です。
基本的に保湿美容液は化粧水を塗った後に使います。
製品によって使う順番が異なる場合もあるので、説明書に従って使ってください。
仕上げにワセリンやミネラルオイルなどの油脂成分を使って、水分の蒸散を防ぎましょう。
まとめ
敏感肌は、刺激に対して敏感に反応してしまう状態の肌です。
ヒリヒリしたり、かゆみを感じたり、突っ張るなどの違和感があったりするのは、肌が乾燥して、バリア機能が低下していることでおこると考えられています。
敏感肌の改善には、乾燥対策を行って、バリア機能を整えることが大切です。
肌に刺激の少ない敏感肌対応の化粧品から肌に合うものを選んで、保湿をきちんと行いましょう。
また、生活習慣を見直し、バランスのとれた食生活を心がけてください。
肌に炎症がおきている場合は、皮膚科を受診しましょう。
敏感肌については、「敏感肌ってどんな肌?」という記事でも詳しくご紹介しています。ご自身の肌が敏感肌がどうかチェックしたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。
【参考資料】
漆畑修『敏感肌の診療 スキンケアの指導からタイプ別の治療法まで』(メディカルレビュー社、2016年)
高瀬聡子・細川モモ(著)『いちばんわかるスキンケアの教科書』(講談社、2014年)
スキンケア大学『医師が教える正しいスキンケア大全』(宝島社、2016年)
エンゾウ・ベラルデスカ、ヨアヒム・W・フルール、ハワード・I・メイバック(編)『敏感肌の科学 その症状と生理学的メカニズム』(フレグランスジャーナル社、2007年)
小林美咲(監修)『図解がまんできない!皮膚のかゆみを解消する正しい知識とスキンケア』(日東書院本社、2017年)