妊娠中や、これから妊娠を望む女性にとって大事な栄養素である葉酸。
女性向けにたくさんの記事が書かれているし、葉酸サプリメントの種類も豊富です。
でも、葉酸が必要なのは、女性だけではありません。
パートナーと一緒に、赤ちゃんの誕生を待ち望んでいる男性にも、意識していただきたい栄養素なのです。
妊活の助けになるだけでなく、ほかにも嬉しい効果が期待できます。
目次
1. 葉酸とはどんな栄養素か
1-1. ビタミンBの一種
1-2. 細胞を作るサポーター
1-3. 1日に必要な葉酸量
2. 男性の機能をサポートする
2-1. 正常な精子を作る
2-2. 勃起不全の改善
3. 男性機能サポートのために効果的な栄養素
3-1. アルギニン
3-2. 亜鉛
3-3. セレン
3-4. ビタミンB群
3-5. ビタミンEやリコピンなどの抗酸化成分
4. 期待できる健康上の効果
4-1. 造血効果
4-2. 動脈硬化や心筋梗塞の予防
4-3. うつ病の改善や認知症の予防
5. 葉酸の効果的な摂り方
5-1. 葉酸を多く含む食べ物
5-2. 食事から十分に摂れない場合はサプリを検討
5-3. 禁煙推奨。お酒は控えめに。
1. 葉酸とはどんな栄養素か
まず初めに、葉酸とはどんな栄養素か簡単に説明しましょう。
1-1. ビタミンBの一種
葉酸は、ビタミンB群に属する栄養素です。水に溶けやすい性質(水溶性)で、逆に油脂には溶けにくい性質をしています。そのため、余分に摂って使われなかった分は、体外へ排出されます。
1-2. 細胞を作るサポーター
葉酸はさまざまな酵素の働きを補助し、たんぱく質や核酸が正しく合成されるようサポートします。新しい細胞を正確に作るために欠かせない栄養素なのです。
特に胎児の成長には不可欠ですから、妊娠中や妊娠を望む女性には、吸収しやすいサプリメントで葉酸を補うよう厚生労働省が推奨しています。
1-3. 1日に必要な葉酸量
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2015年版』によれば、1日に必要な葉酸量は、成人男性の場合240㎍です。
1日3食、バランスの良い食事をしていれば、男性の場合は必要な葉酸が摂れている……と考えられています。(ちなみに、妊娠中の女性は「食事で240㎍+サプリメントで400㎍」が推奨摂取量です)
とはいえ、朝食を食べない、昼は外食、夜は飲み会と、食事がおろそかな男性も少なくありませんよね。油断は禁物です。
栄養学から見た葉酸については「健康をつくる葉酸の5つの効果」でも詳しくご紹介していますので、こちらもご参考にしてください。
2. 男性の機能をサポートする
細胞の分裂や増殖をサポートする葉酸は、老若男女、すべての人にとって大切な栄養素です。特に、パートナーと一緒に赤ちゃんを待ち望む男性にとっては、以下の重要な効果もあります。
2-1. 正常な精子を作る
正常な細胞分裂を促す葉酸は、正常な精子を作るためにも重要です。精子に異常があると、妊娠そのものに結びつかなかったり、胎児に先天的障害が出たりします。
実は健康な男性でも、1~4%くらいの割合で精子の染色体異常が発生しています。精子は作られる過程で何度も分裂を繰り返しますが、その途中、うまく分裂できないものが一定数出てしまうのです。
しかし、葉酸の摂取量が多いとこの割合が低くなる、という研究報告があります。
2-2. 勃起不全の改善
また、勃起不全の男性は血液中の葉酸量が少ない、という研究報告もあります。2015年にトルコの医師たちによって発表されたものです。
勃起不全の男性を重度、中度、軽度の3グループに分け、勃起不全ではない男性グループと併せて血中成分を調べたところ、テストステロン(男性ホルモン)やコレステロールなどには大きな差はなかったものの、葉酸濃度にはっきり差が見られたとのことです。
重度のグループほど血中葉酸濃度が低く、逆に勃起不全でないグループは血中葉酸濃度が高かったことから、葉酸量が勃起不全に関係する可能性が指摘されました。
3. 男性機能サポートのために効果的な栄養素
男性が妊活を意識するとき、不足しないよう気をつけて欲しい栄養素は、葉酸のほかにもあります。ぜひ覚えておいてください。
3-1. アルギニン
精子の材料はたんぱく質です。たんぱく質はアミノ酸で構成されており、アルギニンはアミノ酸のひとつです。
体内で合成できないので、食べ物などから摂り入れるしかありません。大豆や納豆、豆腐、鶏肉、魚などに多く含まれます。
材料がなければ精子も作れませんから、アルギニンを含むたんぱく質食品はきちんと摂りましょう。
3-2. 亜鉛
さまざまなホルモンの合成、分泌調整に関わる栄養素です。また、精子の活動を活発にします。
亜鉛が不足すると、男性の場合、精子の質が低下したり、前立腺障害のリスクが高くなったりすると言われています。
亜鉛は女性も不足しやすい栄養素で、免疫力低下や味覚障害などにつながるので気をつけましょう。
牡蠣、牛肉、ゴマ、アーモンドなどに多く含まれています。
また、亜鉛はアルコールの分解もサポートします。お酒を飲む機会の多い人は、亜鉛の消費量も多いと考えられるので、不足しないよう注意が必要です。
3-3. セレン
セレンは精子の形成や運動に関わる栄養素です。また、精巣の発達やホルモンの分泌を促します。
体内に入ったセレンは、半分以上が精巣に集まります。強い抗酸化効果があり、活性酸素が精子を傷つけるのを防ぎます。
精液中にも多く含まれており、射精するたびに一定量失われることになります。
不足が気になる方は、牡蠣、カツオ、マグロなどを意識的に食べてみてください。
このようにセレンは必須の栄養素ではありますが、摂りすぎると毒になります。セレンの摂取推奨量は成人男性で1日30㎍。上限量は400~460㎍です(年齢によります)。
3-4. ビタミンB群
ビタミンB群は、食物からエネルギーを生成したり、ストレスに対抗するホルモンを作ったりと、脳や身体を回復させるのに頼りになる栄養素群です。
ストレスや睡眠不足で性欲や身体の機能が低下すると、妊娠にもつながりにくくなります。
食事がおろそかになっている、という自覚がある男性は、葉酸も入っているビタミンB群サプリメントを活用して、日々の栄養補給をするのも良いでしょう。
中でもビタミンB12は、葉酸が赤血球を増殖させるときに補佐をする、欠かせない成分です。
魚介類やレバーに含まれる栄養素なので、ベジタリアンの人などは特に、不足しないよう注意してください。
3-5. ビタミンEやリコピンなどの抗酸化成分
身体に摂り入れた酸素は、一部が活性酸素になります。活性酸素はウィルスや細菌などと戦ってくれる反面、増えすぎると正常な細胞にも酸化ダメージを与えてしまいます。
精子はこの酸化にとても弱く、量や質が低下しやすいと言われています。
酸化ダメージを防止する働きをするのが、抗酸化成分です。例えばナッツや卵黄などに多く含まれるビタミンE、トマトに多いリコピン、青魚や大豆などに含まれるコエンザイムQ10などがよく知られています。
また、ビタミンCにも抗酸化作用があります。葉酸が効率よく働くのを助ける栄養素でもあるので、ビタミンCの多い野菜や果物も意識的に摂りましょう。
4. 期待できる健康上の効果
正常な細胞分裂を促進する葉酸には、男性機能の向上以外にも、期待できる健康効果があります。
4-1. 造血効果
葉酸は、赤血球のもと(赤芽球)を正常に増やす働きをしています。赤芽球が正常に作られないと、赤血球も正常に作られず、結果的に貧血になってしまいます。
赤血球の寿命は約120日なので、常に新しい赤血球を作らなければならず、葉酸はいつでも必要とされます。
新鮮な血液が十分に循環すれば、身体の隅々まで酸素や栄養が行き渡りやすくなります。肩こりなどが改善されることもあるでしょう。
4-2. 動脈硬化や心筋梗塞の予防
葉酸は、動脈硬化や心筋梗塞の予防にも効果があります。
代謝の過程で生まれるホモシステインという物質は、血栓の原因になるなど、体内でさまざまな悪影響をもたらします。
葉酸は、このホモシステインを無毒化するときに使われる成分のひとつなので、不足しないようにすることで、動脈硬化や心筋梗塞などの予防につながるのです。
4-3. うつ病の改善や認知症の予防
うつ病の治療や、認知症の予防に葉酸は効果があるのではないか、という研究報告がいろいろ発表されています。
例えば国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究では、うつ病患者の4人に1人が、血液中の葉酸値が低いという結果でした。
そこで抗うつ剤だけを投与したグループと、抗うつ剤+葉酸を投与したグループで10週間の様子を見たところ、葉酸を投与したグループの方が、より大幅なうつ症状改善の数値が出たとのことです。
また、認知症につながる一因とされる、ホモシステインを無毒化する際、葉酸が有効なのは知られてきています。
実際、認知症患者に葉酸を投与したところ、ホモシステインの血中濃度が下がった、認知機能が改善された、というような実験結果が多数報告されています。
5. 葉酸の効果的な摂り方
葉酸は普段の食事から摂り入れることができます。
効果的に摂り入れるためのポイントがあるので、気をつけてください。
5-1. 葉酸を多く含む食べ物
ほうれん草から発見されたので「葉」という文字が名前についていますが、野菜などの植物性食品だけでなく、動物性食品からも摂ることができます。
植物性食品では、ほうれん草、枝豆、アスパラガス、いちご、アボカドなどが、葉酸を豊富に含みます。
動物性食品の場合は、豚や牛などのレバーに豊富に含まれています。
葉酸は水溶性なので、茹でると食品から多くが流出します。効果的に摂るなら、茹で汁ごと食べるスープなどがおすすめです。
葉酸を多く含む食べ物については「積極的にとりたい葉酸を多く含む9つの食品」でもご紹介していますので、ご参考にしてください。
5-2. 食事から十分に摂れない場合はサプリを検討
胎内で子どもを育てる女性と違って、男性の場合、バランスの良い食事を心がけていれば、葉酸が極端に不足することはありません。
ですが、普段あまり野菜や果物を食べない人、口内炎や肌トラブルが起きている人などは、葉酸を含むビタミン類の摂取が足りていない可能性があります。
まずは食生活を見直し、改善しましょう。
それでも足りない、不安だと感じる場合には、サプリメントを併用するのもひとつの手です。
サプリメントを飲み始めたら3ヶ月は続けてください。精子が作られ成熟するのに約80日かかるためです。
効果があらわれてくるのは、その頃からです。
ただし、サプリメントに入っている葉酸は、食品中の葉酸より吸収しやすい形になっています。多ければ良いだろうと、素人判断で過剰に摂ることはやめましょう。
マウスでの実験ですが、葉酸やビタミンB12、亜鉛などを大量に増やした食事を6週間与え続けたところ、生まれた子供の記憶能力などに悪影響が出た、という報告もあります。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によれば、葉酸の耐容上限量(これを超えると副作用の危険がある)は、成人男性で1日900~1000㎍となっています。
葉酸のサプリメントについては「葉酸サプリを選ぶ4つのポイントと、おすすめ葉酸サプリ8選」の記事でも、詳しくご紹介しています。
5-3. 禁煙推奨。お酒は控えめに。
飲酒や喫煙、睡眠不足などは活性酸素を生み出しやすいので、健康のためにできるだけ控えていくのが理想です。
特に男性機能の向上を期待しているなら、せっかく摂り入れた葉酸が、ほかのところで大量消費されてしまうのは損です。
お酒も、葉酸の吸収を妨げるので、ほどほどに。
まとめ
女性にとっての重要性が語られることの多い葉酸ですが、男性にとっても摂取するメリットがある栄養素です。
妊娠を目指すカップルの男性も、パートナーと一緒に、葉酸に注目してみてください。
栄養を意識して食生活を整え習慣づければ、子供を授かり、年を重ねた後も、健康でいられる可能性が高くなるでしょう。
【参考資料】
・『医療従事者のための完全版機能性食品ガイド』 講談社 吉川敏一・辻智子監修 2009年
・『子宝サプリ』 自由国民社 小浦ゆきえ著 高橋敬一監修 2014年
・『日本人の食事摂取基準2015年版 策定検討会報告書』 厚生労働省