「ピーリングをしてみたいけど、肌を傷めてしまうのでは?」と、二の足を踏んでいる人は多いですよね?
「古い角質を削り取る」と聞けば、少し怖い思いがしてもムリはありませんね。
そこでここでは、ピーリングとはどのようなものかという根本的な疑問を解消すべく、ピーリングの現状を紹介します。
“peel”とは、「野菜や果物の皮」、またはその「皮をむく」という意味の英語です。
美容分野では、角質という「皮」を除去するケアを「ピーリング」と呼びます。
現在、大きく分けて、薬剤を使用する「ケミカルピーリング」とレーザー治療の1つである「レーザーピーリング」の2種類が行われています。
この2種類のピーリングについて、最新の情報をお届けしましょう。
目次
1. 古い角質を除去するピーリング
1-1. 肌の基本構造
1-2. 表皮のターンオーバー
1-3. 角層のバリア機能
1-4. 角質肥厚とは?
1-5. ピーリングの種類と効能
2. ケミカルピーリング
2-1. セルフケアのピーリング
2-1-1. 有効成分のAHAとは?
2-1-2. 売れ筋の3アイテム
2-2. クリニックのケミカルピーリング
2-2-1. 有効成分のBHAとは?
2-2-2. 治療の流れ
3. レーザーピーリング
3-1. レーザー治療の現状
3-2. レーザーピーリングの概要
3-2-1. カーボンピーリングとは?
3-2-2. 治療の流れ
1. 古い角質を除去するピーリング
ピーリングで取り去る「角質」とはどのようなものか、なぜピーリングで取らなければいけないのか、皮膚の基本構造からわかりやすく解説しましょう。
1-1. 肌の基本構造
人間の皮膚は、全身を覆っている、体内最大の臓器です。
その重さは皮下脂肪をのぞいて体重の16%程度、体重が60キロの人であれば、10キロ近くもあることになります。
これは皮下脂肪を含まない重さですが、皮膚は3層構造でできており、もっとも内側の「皮下組織」は、そのほとんどが皮下脂肪から成り立っていますから、それが加わればさらに重さは増します。
一番内側の皮下組織は、外部の衝撃から体を守るクッションの役割や、体温を保持する機能を担っています。
皮下組織の外側は、「真皮」と呼ばれる部位で厚さは2ミリ程度、タンパク質の線維である「コラーゲン」が70%を占めてネット上の構造をつくり、そのところどころを同じくタンパク質の線維である「エラスチン」が補強して、水分をたっぷり含んだジェル状のヒアルロン酸などがすき間を埋めています。
真皮は肌にハリと弾力を与えており、加齢でコラーゲンが減少したり劣化したりすると、肌はハリを失っていきます。
また、真皮には毛細血管があり、老廃物や二酸化炭素を排出する機能をもっています。
真皮の外側は「表皮」で厚さは0.2ミリ程度、体の表面にあたり、外部から細菌やウイルスなどの異物侵入を防ぐ保護機能や、体内から蒸発する水分をつなぎとめて肌にうるおいを与える保湿機能を担っています。
1-2. 表皮のターンオーバー
表皮のもっとも真皮に近い部分は「基底層」と呼ばれ、ケラチノサイトという細胞が細胞分裂を行っています。
分裂した細胞は、片方が基底層に残って細胞分裂を続け、もう片方は表皮の外側へ向かい、後から生まれる細胞によって押し出されていきます。
基底層の外側は表皮細胞がゴツゴツしている「有棘層」で、その外側は、表皮細胞が押しつぶされて扁平になった「顆粒層」となります。
やがて表皮細胞は死んで、核のない角質細胞(単に「角質」とも呼ぶ)になり、「角層」を構成します。
角層は、わずか0.02ミリ程度の厚さしかありませんが、ペラペラに薄くなった角質が15~20層にもレンガのように重なり、その間を「細胞間脂質」がセメントのように埋めて、強固な防御壁をつくっています。
角質は後からできた角質に押し出され、肌からはがれ落ちて役目を終えます。
ケラチノサイトの細胞分裂から、角質の剥離までのサイクルを「ターンオーバー」または「角化」と呼び、その日数は20代の若くて健康な肌で30日程度とされます。
1-3. 角層のバリア機能
角層の防御壁は、外部からの刺激や異物侵入を防ぎ、体内からの水分蒸発を防いでいます。
外側と内側、両面から体を守るこの働きは、「角層のバリア機能」と呼ばれます。
真皮のヒアルロン酸も、強力な保水力で体内から蒸発する水分をつなぎとめて、ジェルの状態を保っています。
表皮で肌のうるおいを保っているのは、毛穴の中にある皮脂腺から分泌された皮脂が肌の表面に広がった「皮脂膜」、角質の中に存在するアミノ酸を主成分とした「天然保湿因子(NMF)」、細胞間脂質の40%を占める「セラミド」の3つです。
表皮は20%の水分を保持していますが、その割合は、皮脂膜が2〜3%、天然保湿因子が17〜18%、セラミドが80%程度とされており、セラミドの状態が肌のうるおいを左右する大きな要因となっているのです。
表皮の「ターンオーバー」が乱れたり、「バリア機能」が失われたりすると、様々な肌トラブルを引き起こします。
角質のバリア機能については「10分でわかる「角質」-肌のバリアをつくる無核化した表皮細胞」でも詳しくご説明しています。
1-4. 角質肥厚とは?
ターンオーバーは、加齢とともに長くなり、40代では60日もかかる場合があります。
また、体調の悪化や間違ったスキンケアなどによっても乱れ、長くなりすぎても、短くなりすぎても、肌トラブルの原因になります。
ターンオーバーが長くなると、はがれ落ちるはずの角質がいつまでも肌の表面に残ってしまいます。
すると、角質は厚みを増して硬くなり、肌は透明感を失ってくすんで見えるようになります。
また、厚くなった角質が毛穴をふさいでしまい、ニキビなどの毛穴トラブルを引き起こします。
さらに表皮には、基底層のメラノサイトという細胞が、紫外線から身を守るために生成したメラニンという色素があり、通常は役目を終えたメラニンが角質と一緒にはがれ落ちるのですが、ターンオーバーが長くなるとこの色素も残ってしまい、シミの原因になります。
この状態を「角質肥厚」と呼びます。
角質肥厚を改善するためには、古い角質を取り去る必要があるのです。
一方、ターンオーバーが短くなりすぎるのは、スキンケアなどで角層を傷めてしまい、肌がバリア機能を回復しようとして、ターンオーバーを早めてしまうことが原因です。
この状態になると、成熟していない表皮細胞が角層まで出てきてしまうので、バリア機能が正常に働かず、乾燥や肌荒れを悪化させるという悪循環に陥ってしまいます。
乾燥や肌荒れは、正しい保湿ケアを行わなければ改善しません。
1-5. ピーリングの種類と効能
角質肥厚を改善するために行うケアの代表的なものが「ピーリング」です。
ニキビ痕のクレーターや、シミやシワ、毛穴の開きに対しても有効です。
薬剤で古い角質をやわらかくして取り除く「ケミカルピーリング」は、クリニックで行われていたケアでしたが、近年は、自宅で手軽にセルフケアできる様々なピーリングコスメが販売されて普及しています。
ピーリングと同様に、角質ケアに用いるコスメには「スクラブ」や「ゴマージュ」というものもあります。
スクラブは、「こすって磨く」という意味の単語で、細かい粒子を利用し、研磨剤の要領で古い角質を除去するものです。
また、ゴマージュにも「こする」という意味があり、植物由来のハーブなどを細かくした粒子で角質を除去します。
「ダイヤモンドピーリング」と呼ばれるものも、ダイヤモンドの微粒子を利用して角質を削り取るケアで、セルフで使用できる器具も販売されていますが、クリニックでの治療が中心になります。
美容医療におけるレーザー治療は、日本では1970年代からはじまった歴史をもちますが、2000年以降、急速な進歩を遂げて、脱毛からいろいろなエイジングケアへと用途を広げてきました。
その中には角質の除去をするものもあり、「レーザー治療のバリエーション」として扱うクリニックもあれば、「レーザーピーリング」という名称で扱うクリニックも出てきたのです。
ここでは、代表的なピーリングとして、「ケミカルピーリング」と「レーザーピーリング」を取り上げて、詳細を解説します。
2. ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌につけることによって、酸の力で古い角質をやわらかくして取り除くケアです。
市販のピーリングコスメを利用して自宅でできるもの(=セルフピーリング)と、クリニックで受けるものに大別できます。
2-1. セルフケアのピーリング
ピーリングコスメは、いろいろな種類が市販されています。
洗い流すタイプのクリームやジェル状のものは、肌への刺激が少ないのが特徴。
ローションなどコットンで拭き取るタイプは、肌をこすることになるので、角層を傷つける可能性が高く、シミなどの原因をつくってしまうことがあります。
ゴマージュも同様に肌をこするので、洗い流すピーリング剤と比較すると、肌に負担をかけやすくなります。
2-1-1. 有効成分のAHAとは?
ピーリングコスメの選び方で大切なのは、「AHA(アルファヒドロキシ酸)」もしくは「フルーツ酸」が配合されているという表示です。
フルーツ酸と呼ばれることもある「AHA」は、クリニックでのピーリング剤や市販のピーリングコスメに広く用いられているグリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸などの天然由来成分で、比較的少ない刺激で効果が得られるのが特徴です。
クリニックで主に使われる薬剤である「BHA(ベータヒドロキシ酸)」よりも、角質除去効果は落ちますが、安心して使え、水溶性の成分なのであらゆる肌タイプに使用できます。
ただし、低刺激とはいっても、酸で角質を溶かすことに変わりはありませんから、使用法を守ることが重要で、通常は1週間から2週間に1回のケアを行いながら肌の様子をみます。
2-1-2. 売れ筋の3アイテム
① Miimeow(ミメオ) ピーリングジェル
洗い流すジェルタイプで、アルブチンやビタミンCが配合されており、石油系界面活性剤、エタノール、鉱物油、合成着色料、パラベン、合成香料を添加してない「6つのフリー」を押し出しています。
比較的おだやかな効果で安心して使える点と、余計な成分を配合せずに価格を抑えたことが、好評価を得ているポイントです。
メーカー:U STYLE
容量/価格:150ml / 1800円(参考価格)
② Remei(リメイ) インバスピーリングジェル
“in bath”タイプなので、風呂場で濡れた手で使え、全身に使えてシャワーで洗い流せる、新感覚のピーリングコスメとして人気があります。
ヒアルロン酸、コラーゲン、3種のセラミドを配合した保湿効果と、ローズマリー、カミツレ花、ラベンダーのオーガニック植物成分が特徴。
エタノール、鉱物油、パラベン、香料、着色量は無添加です。
メーカー:アンドシーム
容量/価格:250ml / 1980円(参考価格)
③ 肌〇 アクアモイスチャーピーリング
こすることなく肌になじませるだけで効果があり、毎日でも使用できる低刺激が特徴。
老化角質と老廃物だけに反応して、バリア機能をもつ角質は残す機能があります。
保湿成分としてヒアルロン酸を配合し、旧表示指定成分、合成着色料、パラベン、石油系界面活性剤、防腐剤、鉱物油、エタノール、シリコーン、合成香料、動物由来成分という10成分が無添加で、全身に使用することができます。
メーカー:アイ・ドット・クオリティ
容量/価格:150g / 2800円(参考価格)
2-2. クリニックのケミカルピーリング
クリニックで受けるケミカルピーリングは、セルフピーリングよりも数段効果が高く、イオン導入やレーザー治療などと併用することで、さらに高い効果を狙う治療も可能です。
「セルフピーリングでは思うような効果が得られなかった」、「安心して医師にピーリングをしてもらいたい」といった人には有効な手段となります。
2-2-1. 有効成分のBHAとは?
クリニックのケミカルピーリングは、高濃度のグリコール酸などAHAを使用するものと、サリチル酸というBHA(ベータヒドロキシ酸)を使用するものがあります。
BHAは、脂溶性で毛穴に浸透しやすいのが特徴で、AHAよりも深部にまで作用するために、効果は高くても赤みや炎症などの副作用が出てしまうケースが多々ありました。
しかし、最近は分子量を大きくするマクロゴールという成分を配合することによって、酸が皮膚の深部まで浸透するのを防ぎ、副作用を軽減したピーリング剤が使用されるようになっています。
2-2-2. 治療の流れ
クリニックや使用するピーリング剤によって方法や手順が異なる場合もありますが、一般的には次のよう流れになります。
詳細は、クリニックで確認しましょう。
① クレンジング・洗顔
メイクを落とし、肌表面の汚れを落とすために洗顔をします。
② 薬剤を塗る
顔にピーリング剤を塗り、5分程度の時間をおきます。
③ 薬剤を落とす
拭き取りか洗顔によって、ピーリング剤をきれい落とします。
④ クーリング
炎症を抑えるために、冷やしたガーゼなどで顔全体を冷却します。
⑤ 帰宅
ポイントメイクのみ行って帰宅できます。
3. レーザーピーリング
レーザー治療の1つであるレーザーピーリングは、薬剤を使用しないので、敏感肌の人でも受けられるのが特徴です。
レーザー特有のものとして、軽い痛みや熱感をともなう場合もありますが、冷却しながら行う方法や、麻酔を使用するケースもあります。
ケミカルピーリングが表皮の角層に作用するのに対し、レーザーピーリングは角質を除去するとともに真皮層にも働きかけて、コラーゲンやエラスチンの生成を促して肌のハリや弾力を取り戻す効果があります。
3-1. レーザー治療の現状
レーザー治療は、専門の装置でレーザー光を患部に当てることによって、皮膚の正常な部分は傷つけずに目的の部分だけを焼いて治療するものです。
表皮だけでなく、真皮のトラブルでも治療可能です。
レーザー光にはいくつも種類があり、光の波長や強さ、皮膚のどこまで届くかといったことが異なるので、トラブルの性質に適した機器を選ぶことが重要です。
美容医療に用いられる主なレーザーの種類には、次のようなものがあります。
① CO2(炭酸ガス)レーザー
強いエネルギーで表皮を焼き、ほくろやイボの除去に適しています。
② ルビーレーザー
メラニン色素に反応して吸収、基底層でメラニンを生成するメラノサイトを破壊し、シミやソバカス以外にも、青アザや刺青の除去にも用いられます。
③ YAGレーザー
ルビーレーザーよりも深部に届くので痛みも強く、深いシミやアザ以外に、静脈瘤などの治療にも用いられます。
④ アレキサンドライトレーザー
毛に含まれるメラニンに反応して毛を焼き、毛根周囲の細胞を破壊するので、主に脱毛用として用いられます。
⑤ 色素(ダイ)レーザー
赤い色素に反応するレーザーで、赤アザや赤ら顔の治療に用いられます。
⑥ フラクショナルレーザー
レーザーの照射範囲をより狭くできるタイプで、「アブレイティブタイプ(皮膚の剥脱を行うもの)」と、「ノンアブレイティブタイプ(皮膚に対して熱ダメージを与えるだけで、皮膚の剥脱は行わないもの)」の2種類があります。
シミ、シワ、たるみのほかに、外科手術後のキズ治療にも使われます。
・「Qスイッチ」と「パルス」
「Qスイッチ」は、光エネルギーを溜め、ストロボのようにインターバルをおいて照射するタイプで、出力が強いのが特徴。
「パルス」は、一定の時間、レーザー照射を続ける方法で、Qスイッチより出力が弱く、皮膚の表面に作用するのが特徴です。
3-2. レーザーピーリングの概要
レーザーピーリングとして行われている治療には、ロングパルスアレキサンドライトレーザーを使用するもの、QスイッチYAGレーザーを使用するもの、ロングパルスYAGレーザーを使用するものなど、クリニックによって機器はいくつかに分かれます。
皮膚科や美容皮膚科でよく取り入れられているレーザーピーリングの施術法としては、「カーボンピーリング」と呼ばれるものがあります。
3-2-1. カーボンピーリングとは?
カーボンピーリングは、黒いカーボン(炭素)の粒子を含んだジェルを顔に塗ってレーザーを照射する手法です。
レーザー光が黒い色素に反応することを利用して角質を剥離し、熱作用によって真皮のコラーゲンやエラスチンを増やす効果があります。
3-2-2. 治療の流れ
クリニックによって違いはありますが、一般的な治療の流れは次のようになります。
① カウンセリングと診察
前もって皮膚の状態を確認し、肌質に合った治療方針を決めます。
② クレンジング・洗顔
施術当日は、まず、メイクをきれいに落とします。
③ 施術
レーザーから目を保護するゴーグルを装着し、カーボンジェルを塗ってからレーザーを照射します。(治療時間は15分程度)
④ 施術後
メイクをして帰ることができます。
まとめ
クリニックで行うケミカルピーリングは、1回5000円から2万円程度と、使用する薬剤によって費用にはかなり幅があります。
効果を実感するためには、2~4週間に1回、合計5回以上の治療を受ける必要があります。
レーザーピーリングは、シミなどのレーザー治療がピンポイントで行うのに対して顔全体のケアになるので、費用は1回2万円から4万程度と高くなります。
レーザーピーリングは、1回でも効果が実感できるケースが多いとされますが、回数を重ねることによってより効果がはっきり現れるので、1カ月に1回の施術を5回程度続けることを推奨するクリニックが多くなっています。
まず、セルフピーリングにトライして、自分の肌がどう変化するか確かめてみましょう。
また、「ピーリングをおすすめする理由|その効果と成分について」の記事もぜひ参考にしてみてください。
【参考資料】
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 吉木伸子 2014年
・『本当に正しい大人のスキンケア』 主婦と生活社 吉木 伸子 (監修) 2008年
・アットコスメ web site
・うえだ皮フ科内科クリニックweb site
・有楽町美容外科クリニックweb site