瞑想をしたことがあるけれど、うまくいかずに挫折してしまったという人は案外多いのではないでしょうか。
難しく感じる瞑想ですが、その導入に音楽を取り入れてみませんか。意識を音楽に集中させることで、瞑想状態に入りやすくなることがわかるはずです。
まずは瞑想音楽を聴いてみてください。
▼優しいピアノの音です
https://youtu.be/xASNN9oQGPI
▼クリスタルボウルの音です
https://youtu.be/yyXf4vqRk9g
▼自然の音です
https://youtu.be/UWLZhQgbxNw
瞑想によってストレスが軽減し、人間関係が円滑になり仕事のパフォーマンスが上がるということから瞑想を取り入れた社員研修をおこなう欧米の企業が増えています。インテル、ゴールドマンサックス、アップルなどの有名企業も社員研修に瞑想を取り入れるほか、社員には日常生活の中でも瞑想することを推奨しています。
仕事の面だけではありません。瞑想によって原因がハッキリしない身体の不調が改善されることがわかっています。不眠、頭痛、肩こりなどの不快な症状が瞑想によってスッキリとなくなることがあるのです。
瞑想のメリットはわかっていても、日常生活の中に瞑想を取り入れている人は少ないと思います。ひとことで瞑想といってもその方法や状態には違いがあります。リラックスが目的なら瞑想音楽を用いることで楽に瞑想ができるようになるかもしれませんね。
「こうしなくてはいけない」「この状態にならなくてはいけない」というように堅苦しく考えず、まずは気楽に瞑想音楽を聴いてみるのはいかがでしょうか。瞑想音楽を楽しむうちに自然とリラックスして瞑想状態になり、身体の不快な症状が改善されていくことでしょう。
目次
1. 日常に瞑想音楽を取り入れる
2. 瞑想に効果的な音楽とは
3. 瞑想音楽につかわれる音
4. 日本人向け瞑想音楽
5. まとめ:瞑想音楽で心の安定を
1. 日常に瞑想音楽を取り入れる
1-1. 仕事、勉強に集中したいとき
瞑想に誘導するための音楽は眠くなってしまうという印象がありますが、仕事や勉強に集中したいときに活躍する瞑想音楽もあります。
静かな勉強部屋よりもざわついたカフェの方が、勉強や仕事がはかどったことがあるという経験を持つ人も多いでしょう。
日本の脳波の研究では第一人者である志賀一雅氏によると、アルファ波が検出されるのはリラックスしているときだけではないということですから「アルファ波=リラックス状態」とよく言われていますがそれは間違いなのだそうです。
ただしアルファ波は集中しているときにも多く検出されます。集中したいときにアルファ波へ誘導してくれるような瞑想音楽を使うことも効果的です。
人によって眠くなる傾向の音楽は違いますから、いくつか試してみて自分が集中しやすくなる曲をみつけておくと良いですね。
1-2. リラックスして眠りにつきたいとき
寝付きが悪い人は眠りにつくときに瞑想音楽を取り入れると良いでしょう。
雨音などリズムが一定の自然の音が入っているものはとくに眠りを誘うようですよ。
是非試してみて欲しいのは、瞑想音楽に人の声が入っているものです。瞑想に誘導するために呼吸のペースや力の抜き方などをゆっくりとささやいてくれるというタイプのCDがおすすめです。
人の声にはそれぞれ好みがありますから、瞑想関係のCDブックの中から、自分が聴きやすい声のものをみつけると良いですよ。
▼雨の森の自然音
https://youtu.be/eN9razXbrLw
1-3. 気持ちを落ちつける必要があるとき
仕事などで気持ちを落ちつける必要があるときにも瞑想音楽が役立ちます。
これから大切な提案をお客様にするとき、大勢の人の前で話をするとき、何かミスをしてしまったとき、腹が立ってカッとしてしまったときなどに瞑想音楽を聴いてみてください。
できれば5分程度の時間を作って目を閉じて聴くと良いですよ。
気持ちが落ちつき、冷静な自分を取り戻すことができるはずです。このようないざという時のために使えるような、自分にピッタリの瞑想音楽を普段から携帯すると良いでしょう。
1-4. 運転時などには聴かないこと
瞑想音楽の中には眠気をもよおしたり頭がぼんやりしたりするものもありますので、運転中や機械の操作中など、緊張が必要な場面では聴かないようにすべきです。
眠気やぼんやりしてしまうといった症状は人によって違います。
例えばクラシック音楽を運転中に聴くことで運転に集中できるという人もいれば、クラシック音楽全般は眠くなってしまうという人もいます。
生まれ育ってきた環境でそれまでに耳にしてきた音、音楽はひとそれぞれ違いますから音楽に対する反応もそれぞれ違うのですね。
眠気を誘うおそれのある瞑想音楽は、運転中は避けた方が良いでしょう。
2. 瞑想に効果的な音楽とは
音楽はピッチ(音の高低)とリズム、楽器の音色、ハーモニーなどで成り立っています。瞑想に効果のある音楽はどのようなものか様々な角度から検討してみました。
2-1. 音楽の波動と脳波
音楽の中のピッチも人の脳波もHzという単位で表すことができますが、音のピッチが脳波に直接どのような影響を与えるかははっきりしていません。
「バイノーラル・ビート・フリークエンシー」といって、左右の耳で聴く違うピッチの音の周波数の差が脳波の活動内(0.5~20Hz)に治まる限り、同調化が起こることはわかっています。
しかし例えば聴いた音のピッチの差が4Hzだったとしてもすべての人が4Hzの周波数帯で起きる活動を見せるわけではなく、また、影響を受けやすい人と受けない人がいるというのです。
ここでは、音楽のピッチの周波数と人の脳の周波数について説明しておきましょう。
音のピッチの周波数の単位Hzは1秒間に音が振動する数のことで、数字が増えると音は高く聞こえます。
生物に聴くことができる音の周波数 ・ヒト (20~20000Hz)
・イヌ (15~50000Hz)
・コウモリ(1000~120000Hz)
・イルカ (150~150000Hz)
※ヒトは子どもほど高音が聞こえ、歳を取るほど高温が聞こえなくなります。通常、一般の大人が聞こえるのは14000~15000Hzまでのようです。
人の脳は振動しながら電磁気の周波数を発しています。この周波数もピッチ同様にHzという単位で表すことができます。
ヒトの脳の周波数と状態
◆ベータ波(14~20Hz)
覚醒している状態で生まれる脳波。外界の刺激に対して注意が向いているときに強く出る。
◆アルファ波(8~13Hz)
白昼夢を見ている状態や瞑想中に強く出る。
◆シータ波(4~7Hz)
強い創造的なイメージが湧いている状態で出る。いわゆるトランス状態。
◆デルタ波(0.5~3Hz)
深い昏睡状態や無意識の状態。深い瞑想状態でもデルタ波が出ることがわかっている。
◆高ベータ波(20~30Hz)
過剰に運動している状態や何かを心配している状態で出る。
◆ガンマ波(30~80Hz以上)
熟練した瞑想者から検知された。短時間で考えをまとめるとき、体験の内容を整理するときなどに出る。
(参考)
「奇跡を引き寄せる音のパワー」ジョナサン・ゴールドマン
※日本の脳波研究第一人者の志賀一雅氏の研究では、アルファ波にも3段階の質があり、上記のような人の状態は一例に過ぎないとわかってきています。
2-2. 瞑想の状態と音楽
音楽を聴くことが瞑想状態への誘導となることは、近年科学的に証明されてきました。
脳内でつくられるエンドルフィンという快楽ホルモンは血液検査で検出することができますが、脳がアルファ波のときに分泌されていることがわかっています。
これまでは音楽療法に関する臨床実験といえば、主に口頭質問により被験者の主観的な意見が採用されていて、科学的に証明されたとはいえませんでした。
しかし近年、音楽を聴くことによってドーパミンやエンドルフィンが分泌され、ストレスホルモンであるコルチゾルが低下するといったことが測定されています。
個人差はあるにしろ、音楽を聴くことで脳を瞑想状態へ誘導できるということがわかってきたのですね。
※「心を動かす音の心理学」斎藤寛 (ヤマハミュージックメディア)参照
2-3. リラックスできる音楽の条件
瞑想にはリラックスが必要です。リラックスできる音楽の条件には個人差があり、「自分が心地よいと感じる音楽」がリラックスできる良い音楽といえます。
なぜなら、生まれてから(胎教も含めると生まれる前から)今まで生きてきた環境が「心地よいと感じる音楽」を形成しているからです。
それぞれの国の民族音楽は、他の国の人が聴くと耳慣れなくて違和感を覚えることもあります。つまり、ある人にとっては懐かしく心安まる音楽であっても、別の人にとっては落ちつかない気持ちになる音楽になり得るということですね。
3-4. 日々の瞑想でもたらされること
瞑想をすることで脳がアルファ波になり、脳内麻薬とも呼ばれる快楽ホルモンのエンドルフィンが分泌されます。これを日々続けることでストレス耐性が強くなることがわかっています。
瞑想によって分泌されたエンドルフィンは、ストレス物質のコルチゾルを減少させます。
とくに自然の少ない都市部での生活では、気をつけていても自然とストレスは溜まっていきます。
瞑想の習慣を持つことでそうしたストレスを解消することができるため、仕事の効率が良くなったり、人に気を遣う余裕ができて人間関係が円滑になったりするといえるでしょう。
3. 瞑想音楽につかわれる音
3-1. クリスタルボウル・シンギングボウルなど
瞑想に効果的な音として、クリスタルボウルやシンギングボウルの音が挙げられます。
クリスタルボウルを叩くと「こい~~ん」という長い響きの音を奏でることができます。また、マレットという棒で擦って音を出すと「ふぉ~~ん~ふぉ~~ん」というような、澄んでいて強いビブラートのかかった不思議な音を長く奏でることができ、この音は不思議と人の心を静かにさせます。頭が空っぽになる感じです。
▼クリスタルボウルの演奏
https://youtu.be/xQlEkJFcGP8
チベットの宗教で使われているシンギングボウルも同様に、叩いたり擦ったりして不思議な響きのある音を奏でることができます。
▼シンギングボウルの演奏
https://youtu.be/s2Ojgx4WVNQ
日本の仏教でつかわれている「おりん」も、「チーン」という高い澄んだ音で心を落ちつかせることができます。
▼おりんの音色
https://youtu.be/jv9bEkF1_no
3-2. 自然界の音
鳥のさえずり、滝の流れ落ちる音、川のせせらぎ、海の波音、森の木々の葉が風でそよぐ音など、自然界の音も瞑想音楽にはよく使われます。
▼自然界の音
https://youtu.be/6zjCvwj1UgQ
人が脳で「快」「不快」を感じ分けるとき、脳のもっとも古い部分が使われています。それは爬虫類の脳にもある、生命の維持に関わる部分です。
自然界には人が生きるために必要な水や食物、きれいな空気などがあるために、生命を維持する機能を持つその古い脳は自然界の音を聴いたとき「快」を感じるのですね。
また、ご存じのように音は空気の振動ですが、人の耳には聞こえない振動(不可聴領域の音)も人には聞こえていないだけで自然界には多く存在しています。
人が「快」を感じる不可聴領域の音が溢れているのも自然界です。
3-3. ピアノ・ハープなどの楽器
ピアノやハープなどの楽器も瞑想音楽によく使われます。
ピアノは鍵盤からつながったハンマーが弦を叩くことによって深く優しい音色を奏でることができますし、ハープも人の指で弦を鳴らすことで優しく心に響く音を奏でることができます。
▼ハープの瞑想音楽
https://youtu.be/Tiye0BqxJS4
もちろん他の楽器が瞑想音楽に使われることもありますが、楽器としては音域が広く多くの人が耳慣れているピアノがもっとも多く使われているはずです。
瞑想音楽には決まったメロディがないぼんやりとした音のつながりというものもあります。メロディがない方が瞑想に集中できるという人もいれば、こうした楽器によって美しいメロディが奏でられている方が瞑想に集中できるという人もいるということになりますね。
3-4. オルゴール
オルゴールのメロディも瞑想音楽として使われます。
▼オルゴールの瞑想音楽
https://youtu.be/cwKN-qsfuVE
オルゴールは薄い金属板を突起ではじくことで美しい音を奏でています。優しく響く、耳を邪魔しない音なので店舗などのBGMとしてさりげなく流されていることもありますよね。
そもそもオルゴールが広まったのはその音色が聴いていて心地よい、リラックスできる音だったためでしょう。
瞑想の目的は深いリラックス効果ですから、リラックスできる音を用いて瞑想の導入にすることは理にかなっていますね。
【コラム】 シンギングボウル・クリスタルボウルって買えるの?
シンギングボウルもクリスタルボウルも購入できます。
クリスタルボウルは石なので重く、落としたり強い衝撃を与えたりすると割れてしまいますので注意が必要です。
シンギングボウルは金属ですのでクリスタルボウルよりは軽く、壊れにくいです。手のひらにのせて鳴らすことのできるサイズもあります。
音に好みがあると思いますが、何かひとつ欲しいというならシンギングボウルの方がお手軽かも知れませんね。
シンギングボウルは小さいものなら1万円前後からあります。和音(ハーモニー)でより深い音を出したい場合はセット販売(10万円程度~)もあります。
アマナマナ
http://www.amanamana.com/
クリスタルボウルの最大メーカーはアメリカのクリスタルボウル社です。単品で1万円台~、セット販売はやはり10万円以上します。
こちらはショップで音を試して購入できますよ。
マニマナ
http://manimana.com/
4. 日本人向けの瞑想音楽
瞑想につかうような、リラックスできる音楽の種類は人によって違います。
生まれ育った環境によって耳にしてきた音が違うためです。
日本人がリラックスできる和の音楽も瞑想向けといえるでしょう。
4-1. 日本のクラシック雅楽の「管絃」
和の楽器で演奏される雅楽の音楽「管絃」は、日本人にとって瞑想音楽といえます。
雅楽の表現には「管絃」「舞楽」「歌謡」という3つの形態があります。楽器を奏でるのが「管絃」です。
管楽器
笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)
弦楽器
琵琶(びわ)、箏(こと)
打楽器
太鼓、鞨鼓(かっこ)、鉦鼓(しょうこ)
▼雅楽の演奏
https://youtu.be/b1bpw8pK160
こうした和の楽器は20年ほど前から雅楽師の東儀秀樹さんの活躍によって注目されています。
多くの楽器が使われますがオーケストラのような指揮者はなく、お互いの空気を読むアンサンブルとして演奏されます。
日本で暮らしていても、人によっては一年に数回しか耳にしないかも知れませんね。神社などで耳にすることの多いあの独特の「ふぉ~わ~」という音楽を聴くとなぜか神聖な気持ちになるものです。
4-2. 禅宗の修行に使われていた尺八
一尺八寸の寸法でつくられていたことから「尺八」と呼ばれるようになった竹製の笛の音色も、日本人にとっては心を落ちつける瞑想音楽として使えるでしょう。
尺八は、もともとは普化宗(ふけしゅう)という禅宗で修行のために虚無僧が演奏していたものだそうです。明治時代に普化宗が廃止されて一般にも広まり、今は古くからある日本の楽器として演奏されています。
2オクターブほどの音域があり、メロディを奏でることもできるため現代の音楽を尺八で演奏しているCDなども出ています。
竹に穴をあけただけというシンプルな楽器ながら、自然の風音を思わせるような渋い音色は不思議に心が落ちつきます。
▼尺八の演奏
https://youtu.be/BEJQ8jBcsnI
4-3. 和の空気をつくる琴・三味線
日本の代表的な弦楽器である琴の音色もまた、日本人にとって心安まる瞑想音楽になります。
曲によっては激しくかき鳴らすこともありますが、琴爪で弾くように鳴らす静かな曲はその場の空気を一瞬で和の雰囲気にしてしまいます。
三味線もまた、情熱を込めてかき鳴らすことも多い楽器ですが爪弾く弾き方の優しい音色は日本人の心に染み入ります。
どちらも普段あまり耳にしない音ですが日本人にとってはとても落ちつく音色といえるでしょう。
▼琴と三味線の和風ヒーリング音楽
https://youtu.be/BbjgkQ-eP_k?list=RDhflKXC_gcGw
5. まとめ:瞑想音楽で心の安定を
瞑想を習慣にしたい人にとって瞑想音楽は、スムーズに瞑想へ誘導してくれるものとして役立つことがわかりました。
瞑想というと座禅のように静かに座って行わなければいけないと考えている人も、もしも瞑想が続かないようならこうした瞑想音楽をかけることでうまくいくようになるかもしれません。
一日の中で深くリラックスする時間をつくるという意味なら、静かに目を閉じて瞑想音楽を聴くことでも充分に瞑想と同じ効果を得ることができるでしょう。
さらに、瞑想音楽を生活の中に上手に取り入れることで集中できる環境をつくったり、短い時間で心を安定させて落ちつかせたりすることもできます。
そうして心が安定することで、不眠や頭痛、肩こりなどの身体の不調も改善されていくようです。
雅楽の音楽、尺八や琴などの和楽器も、日本人にとっては耳にすると心が静かになる音ですよね。CDなどもありますから試してみると良いでしょう。
音楽は臨床的に治療に使われるようになってきています。また、あまり知られていませんが日本の病院でも海外の病院でも手術室には音楽が流されています。
無音の状態よりもリラックスでき、疲れにくく集中が続くのだそうです。
私たちももっと耳から入る音に意識を向けることで、より快適な暮らしやすさが手に入るのだと思います。
【参考書籍】
「音楽運動療法入門」野田燎(工作舎)
「クリスタルボウル・ヒーリング(上・下)」リーニー・ブローティー(国際語学社)
「自己治癒力」ジーン・アクターバーグ(日本教文社)
「心を動かす音の心理学」斎藤寛(ヤマハミュージックメディア)
「奇跡を引き寄せる音のパワー」ジョナサン・ゴールドマン(KKベストセラーズ)
「音楽好きな脳」ダニエル・J・レヴィティン(白揚社)
「雅楽千三百年のクラシック」上野慶夫(富山新聞社)
「雅楽~僕の好奇心」東儀秀樹(集英社新書)