肌の美しい人を見ると、「あの透明感のある肌は、どうやってつくられたのだろう?」と知りたくなりますよね。
しかし、そうは思っても、見ず知らずの人にスキンケアの話を切り出すことはできませんよね。
ここでは、そんな願望をもつ全女性のために、透明感のある美しい肌をつくるためのスキンケアの基本をレクチャーします。
ところで、全女性の永遠の憧れなどといわれる「透明感のある肌」という日本語は、どのような肌を意味するのでしょうか。
「透明感=透き通る感じ」から、透き通るような肌というイメージにはなるのですが、実際に肌がスケルトンになるわけはありません。
それは、美容の分野で具体的な言葉で表すと、「血行がよくて明るく、うるおいがあってキメが整った肌」ということになります。
そうした透明感のある肌には、肌がもっている3つの機能が大きくかかわっています。
まずは、肌の基本構造と3つの機能を解説してから、美肌づくりに必要なスキンケアの基本を紹介しましょう。
目次
1. 美肌をつくる3つの機能
1-1. 再生する機能
1-2. 保湿する機能
1-3. 弾力を保つ機能
2. 透明感のある肌をつくるスキンケアの基本
2-1. クレンジング
2-1-1. とてもリスキーなクレンジング
2-1-2. 肌にやさしいクレンジング方法
2-2. 洗顔
2-2-1. 透明感に欠かせない「しっかり洗顔」
2-2-2. 洗顔料の選び方と洗顔方法
2-3. 保湿ケア
2-3-1. 化粧水では保湿できない
2-3-2. セラミド配合の美容液を継続使用
2-4. エイジングケア
2-4-1. コラーゲンを増やすケア
2-4-2. カギとなる酸化と糖化
2-5. UVケア
2-5-1. 紫外線が肌にあたえる影響
2-5-2. 日焼け止めにたよらない紫外線対策
1. 美肌をつくる3つの機能
透明感のある肌をつくるのは、肌に本来備わっている3つの機能です。
この3つの機能をよい状態に保つことができれば、美肌への道が開けるわけです。
ところが、これらの機能は、間違ったスキンケアや加齢によって簡単に低下してしまうので、本来の機能を維持するためには日々の努力が必要とされます。
まずは、肌の基本的な構造と、これらの機能を知ることからはじめましょう。
1-1. 再生する機能
私たちの肌は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という3層の構造になっています。
表皮は外的な刺激や異物侵入から体を守り、真皮は肌のハリや弾力を維持し、皮下脂肪は断熱材やクッションのような役割をもっています。
表皮の厚さは平均0.2ミリ程度で、外側から「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4つの層で構成されています。
真皮のすぐ外側に位置する基底層では、細胞分裂によって次々と新しい表皮細胞が生まれ、後から生まれた細胞によってじょじょに外側へと押し出されていきます。
押し出された表皮細胞は形が歪んで有棘層となり、さらに押される力で扁平になって顆粒層となり、14日後には死んで、核のない平べったい角質となります。
角層では平べったくなった角質がレンガのように14~20層も重なり、また14日ほどかけて肌からはがれ落ちていきます。
この肌の再生機能を「角化」もしくは「ターンオーバー」と呼び、ターンオーバーのおかげで、肌がトラブルに見舞われても美しさを取り戻すことができます。
ターンオーバーは長くなりすぎても、短くなりすぎてもいけません。
長くなってしまうと古い角層が肌に残るので透明感は失われ、短くなるとまだ成長しきれていない表皮細胞が角層に現れて、肌荒れなどの原因になります。
ターンオーバーは、加齢やストレスなどによって長くなり、肌の乾燥、紫外線、酸化などによって短くなってしまうことがあります。
1-2. 保湿する機能
角層は、角質がレンガのように重なり、そのすきまをセメントのように細胞間脂質がうめて、強固な防御壁をつくっています。
これは「角層のバリア」と呼ばれる機能で、外的刺激や異物侵入から体を守ると同時に、肌の水分を逃がさずに保つという大切な役割があります。
人間の体は、常に体内から皮膚を抜けて水分が蒸発しています。
真皮や表皮には、体内から蒸発しようとする水分をつなぎ止めて保水する機能があるのです。
透明感のある肌に欠かせないうるおいは、肌の表面に広がる「皮脂膜」、角質内にある「天然保湿因子(NMF)」、角質の間をうめている「細胞間脂質」の3つが保水することによってもたらされます。
その割合は、皮脂膜が2〜3%、天然保湿因子が17〜18%、細胞間脂質が80%程度になり、細胞間脂質で水分をキープしているのが、主成分である「セラミド」です。
セラミドは水分を挟み込む構造によって、体外に蒸発しようとする水分を角層でつなぎ止めているので、セラミドが減ってしまうと肌の水分が不足して乾燥状態になります。
1-3. 弾力を保つ機能
厚さが2ミリ程度である真皮は、コラーゲンというタンパク質の線維が網目状のネットワークをつくり、そのところどころをエラスチンという線維が補強して、ベッドのスプリングのような構造をしています。
そのすきまを埋めているのが、ヒアルロン酸などのゼリー状物質で、ヒアルロン酸も肌から蒸発しようとする水分を取り込む、強力な保水物質です。
肌のハリや弾力を生み出している、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などは「線維芽細胞」と呼ばれる細胞でつくられますが、それ自体は細胞組織ではありませんから細胞分裂で増えるものではなく、生成には長い時間を要します。
透明感のある肌がもつハリや弾力を維持するためには、線維芽細胞の活性を落とさないことが一番よいのですが、線維芽細胞は加齢とともに衰え、40代後半になるとコラーゲンやエラスチンはほぼ生成されなくなってしまいます。
コラーゲンの減少や変性は、シワやたるみの原因になるので、早い時期からのケアで予防することが大切です。
2. 透明感のある肌をつくるスキンケアの基本
ここからは、美肌をつくるのに必要な3つの機能を低下させないことを目的とした、スキンケアの基本ポイントを解説しましょう。
2-1. クレンジング
肌の汚れは、メイク剤、ホコリや排気ガスといった大気中の微粒子、古い角質や酸化した皮脂など、水溶性の汚れと油溶性の汚れが混在しています。
こうした様々な汚れを落とすのが、洗顔の目的。
その中でも、とくに油性のメイクを肌から浮かせて洗い流すのがクレンジングの目的です。
2-1-1. とてもリスキーなクレンジング
クレンジングをした後に洗顔を行う「ダブル洗顔」が、肌によくないといわれるのは、洗剤や洗顔料などに多く含まれる界面活性剤という添加物が、肌にダメージを与えるからです。
界面活性剤にはいろいろな種類がありますが、洗浄剤に配合される目的は、本来混ざることのない水と油を仲介して混ざる状態にすることです。
洗浄力の強い洗浄剤は、界面活性剤が強力に働くことになるので、それだけ肌のダメージは大きくなります。
界面活性剤は、洗顔料だけでなくほとんどの化粧品にも含まれている添加物ですが、中でもクレンジング剤は強力なものが配合されており、スキンケアの中でもっとも肌にリスキーなアイテムなのです。
しかし、油性のコスメを使う以上、水では洗い流せませんから、できるだけ肌へのダメージを抑えた「ゆるめのクレンジング」を行い、その後に洗顔で、肌に残った汚れをしっかり洗い流すダブル洗顔が、基本となります。
2-1-2. 肌にやさしいクレンジング方法
クレンジング剤には、リキッドタイプ、オイルタイプ、クリームタイプ、ジェルタイプなど、いろいろなものがあります。
クレンジング剤を選ぶときに大切なのは、洗浄力と肌のダメージのバランスです。
透明感のある肌を維持するためには、洗浄力の強力なものは避けたいですし、逆に弱すぎるものは、メイク汚れを落とそうとこすってしまいがちなので、これもよくありません。
比較的バランスがよいのは、洗い流すクリームタイプか、乳化したジェルタイプです。
メイク剤が集中する目元や口元には、ポイントメイクリムーバーをすすめる人もいますが、とくに皮膚が薄くてデリケートな目元に、強力な洗浄剤を使うのは考えものです。
美肌のためには、薬局などで扱っている精製オリーブオイルで目元や口元のメイクを軽くぬぐってから、顔全体のクレンジングを行いましょう。
クレンジング剤は、できるだけ肌にのせている時間を短くすべきで、40秒から長くても1分以内には終わらせます。
完全にメイクが落ち切っていなくても、肌から浮いていれば問題ありません。
ぬるま湯で流したら、少々ヌルついていても気にせず洗顔に移ります。
クレンジングについては「美白によいクレンジングと洗顔-知らなければいけない10の真実」という記事も参考になるかもしれません。
2-2. 洗顔
洗顔は、朝晩の1日2回行います。
夜のクレンジング後に行う「おやすみ洗顔」と、朝起きたら最初のスキンケアとなる「おはよう洗顔」です。
メイク汚れだけでなく、皮脂や古くなった角質を落とすことによって、ターンオーバーの低下を防ぎます。
2-2-1. 透明感に欠かせない「しっかり洗顔」
夜のクレンジング後に行う「おやすみ洗顔」は、クレンジングで残ったメイク汚れをキレイに洗い流します。
また、朝の「おはよう洗顔」は、肌に広がった皮脂膜を洗い流します。
朝はメイク落としがないので、水かぬるま湯で洗顔するという人もいますが、寝ている間も毛穴の中にある皮脂腺から皮脂の分泌は続いていますから、洗い流す必要があります。
皮脂膜を完全に洗い流してしまうと、肌が乾燥するのではないかと思われるかもしれませんが、健康な肌は30分もすればまた皮脂膜が広がりはじめます。
皮脂は時間が経って酸化すると、過酸化脂質となって、ニキビなど毛穴トラブルの原因になりますから、1日2回、しっかり洗い流しましょう。
2-2-2. 洗顔料の選び方と洗顔方法
洗顔料も、いろいろなタイプが販売されています。
洗顔料選びで大事なことは、自分の肌質に合った洗浄力で、使い続けられる低刺激なものを選ぶことです。
洗浄に必要な界面活性剤だけでなく、香料や保湿成分など様々な添加物が配合されているのもありますが、肌をキレイに洗い流してしまいますから、どんな成分が配合されていてもあまり期待できません。
余計な添加物は必要ないので、シンプルな固形タイプの石けんがおすすめです。
固形石けんは、洗浄力も選べるので、使ってみて肌にしっくりくるものを選びましょう。
米ぬか石けんもおすすめです。よろしければこちらの記事も併せてお読みください→「美白と保湿に期待大! しっとりすべすべ米ぬか石鹸」
「洗顔は泡が命」などといいますが、泡の量は片手のひらにのるレモン1個分くらいが適量です。
額から鼻へのTゾーンになじませてから、頬からアゴにかけてのUゾーンへ広げ、泡の滑りを利用して指が肌をこすらないようにするのが大事なポイントです。
2-3. 保湿ケア
肌にうるおいを与える保湿ケアは、スキンケアの要です。
肌の透明感は、十分な水分がなければ実現できません。
とかく、かん違いの多い保湿ケア。
正しいケア方法を身につけて、肌美人を目指しましょう。
2-3-1. 化粧水では保湿できない
保湿ケアには化粧水が欠かせないと思っていませんか?
化粧水信仰ともいえるような、日本人の化粧水好きは、欧米の女性から見ると奇異に映るようです。
化粧水は成分のほとんどが水。
水だけでは、肌につけてもすぐに蒸発しますが、美容成分を配合して水分の蒸発を防ごうとするのが化粧水です。
しかし所詮は、水溶性の成分を少し配合した「水」であることに変わりません。
ビタミンCの吸収力を高めた「ビタミンC誘導体」が配合された化粧水でも、角層のほんの表面だけを湿らせて、ほとんどの水分はすぐに蒸発してしまいます。
問題は、肌にある水分も蒸発させてしまうことです。
化粧水の使いすぎは、保湿になるどころか、肌を乾燥させてしまうので注意しましょう。
2-3-2. セラミド配合の美容液を継続使用
肌の保湿に必要なのは、水分でも油分でもなく、水分を蓄える保水物質なのです。
その代表が、角層の細胞間脂質にあるセラミドです。
セラミドにはいろいろな種類がありますが、本来は油溶性の成分なので、化粧水に配合することは困難です。
美肌の保湿ケアに最適なのは、「セラミド2」「セラミド3」などのように番号がついた「ヒト型セラミド」をいくつか配合した美容液です。
美容液は有効成分を高濃度で配合したものですから、高価なものが多く、デートの日やここ一番という日だけに使う人がいますが、そういう使い方は効果を発揮しません。
長期にわたって継続使用することが、肌本来の保湿機能を高めることにつながるのです。
保湿美容液でケアした後に、乳液やクリームを使う必要はありません。
油分でフタをするというスキンケアが主流であった時代もありますが、現代の皮膚科学では、肌トラブルの原因になる余計な油分を肌に与えることはNGです。
2-4. エイジングケア
肌の老化は誰もが避けられないもので、40代後半から顕著になっていきます。
その主な原因は、ターンオーバーが長くなって再生能力が落ちることと、真皮のコラーゲンが減って弾力性を失うことにあります。
ですから、エイジングケアの目的は、これらの機能低下をできるだけゆるやかにして、美肌を維持することです。
2-4-1. コラーゲンを増やすケア
ハリや弾力を失った肌は、真皮のコラーゲンを増やさなければいけませんが、これは簡単なケアではありません。
コラーゲンは食べ物や飲み物で口から摂取しても、腸でアミノ酸に分解されるので、コラーゲンの材料にはなるかもしれませんが、そのまま真皮のコラーゲンにはなりません。
そうかといって、肌の外からつけても、分子が大きいので角層に浸透しませんし、そもそも化粧品が浸透するのは角層だけと法律で定められており、真皮にまで浸透するものはないのです。
ですから、コラーゲンを増やすためには、線維芽細胞を活性化させて、コラーゲンの材料となるタンパク質やビタミンCを摂取する必要があります。
しかし、加齢で活性が落ちてしまった線維芽細胞を復活させるのは容易なことではないので、コラーゲンやエラスチンを減らさないケアが重要なのです。
2-4-2. カギとなる酸化と糖化
肌を老化させる三大要因は、「紫外線」「酸化」「糖化」といわれます。
肌の酸化とは、体内で発生する活性酸素が、タンパク質やDNAを傷つけて、肌がもつ機能を低下させてしまうことです。
体内には活性酸素を除去する抗酸化物質が備わっています。
しかし、加齢や体調を崩すことによって効果が落ち、肌も酸化しやすくなってしまいます。
肌の酸化を防ぐためには、ビタミンA、C、Eなどの抗酸化物質が多く含まれた食材を取るように心がけましょう。
また、タンパク質と糖が結びついて硬くなり、「AGEs(終末糖化産物)」と呼ばれる物質になることを「糖化」といいますが、コラーゲンやエラスチンはタンパク質ですから、糖化するとAGEsが増えて肌は弾力を失います。
糖化を遅らせるためには、糖質(炭水化物)を取りすぎない食生活が求められます。
2-5. UVケア
肌の老化を進める要因の80%は、紫外線だといわれます。
紫外線は、美肌をつくる3つの機能を低下させる最大の要因でもありますから、UVケアは保湿ケアと並んでデイリースキンケアの2本柱です。
2-5-1. 紫外線が肌にあたえる影響
紫外線は波長の長さによって、A波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)の3種に分けられ、C波は大気中のオゾン層で吸収されてしまいます。
地表まで届くのはA波とB波で、A波は真皮まで到達するのでコラーゲンやエラスチンに悪影響を与えて弾力性を低下させ、B波は表皮を刺激して角層を傷つけ、保湿機能や再生能力を低下させて、メラニン色素の生成を促します。
角層の基底層にあるメラノサイトという細胞から生成されたメラニンは、表皮細胞とともに押し出されていき、通常は角質といっしょにはがれ落ちますが、ターンオーバーが低下したり、メラノサイトの暴走でメラニンの過剰生成が続くと、色素沈着を起こしてシミの原因になります。
2-5-2. 日焼け止めにたよらない紫外線対策
UVケアには、日焼け止めが欠かせないアイテムと思われがちです。
しかし、日焼け止めには、紫外線を吸収して熱エネルギーとして放出する「紫外線吸収剤」か、紫外線を散乱させて肌への透過を防ぐ「紫外線散乱剤」のどちらかが添加されており、どちらも使い続けると肌へのダメージが大きくなるのです。
比較的、肌の負担が少なくてすむのは散乱剤の方だといわれていますが、最近は、肌に触れないようマイクロカプセル化した吸収剤なども開発されているので、一概には判断できなくなっています。
スポーツやレジャーで紫外線に長時間当たることがわかっている場合は、サンプルを腕などに塗って試してみて、自分の肌に合うもので適度なUVカット効果があるものを使いましょう。
そうでない、日々のUVケアは、日傘や帽子、UVカット効果が高いパウダータイプのファンデーションなどを活用して、できるだけ日焼け止めを使わないケアを心がけましょう。
使うと決めた日は、十分な量を使って2時間程度で塗り直し、夜にはしっかり洗い流します。
まとめ
透明感のある肌をつくるために必要とされる、ターンオーバー、保湿、弾力という3つの機能を低下させないスキンケアの基本を解説してきました。
ここでは触れませんでしたが、食事、運動、入浴、睡眠といった生活習慣も、大きな意味ではスキンケアの一環です。
ここで解説したポイントを意識して、シンプルなデイリースキンケアを続けることと同時に、良質なタンパク質と緑黄色野菜を重視した食事や、毎日の適度な運動、心身をリラックスさせて肌を健康に保つ入浴や睡眠にも気を配りましょう。
透明感のある肌は、健康な心と体がベースになければ、手に入れることができません。
【参考資料】
・『素肌美人をつくる トータルスキンケアBOOK』 幻冬舎 2015年
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 2014年