体脂肪を落とすために運動をしていても、いろいろな疑問がありませんか?
「ジョギングとウォーキングはどちらが体脂肪を効果的に落とせるの?」
「雪国に住んでいるので、冬の間はウォーキングができない……」
人はそれぞれ生活環境や体の状態によってできる運動も違えば、得意な運動も違います。そもそも好きでなければ、楽しくなければ、同じ運動やスポーツを続けることはできません。
ダイエットも同じで、体脂肪を落とすのにいいとされる有酸素運動にも、いろいろな種目があります。ここでは代表的な7種目の運動を比較し、解説します。
自分に合った方法で体脂肪を効率よく落として、健康な体を手に入れてください。それでは、運動で体脂肪を落とすしくみから解説していきましょう。
目次
0 運動で体脂肪を落とすしくみ
0-1 体脂肪とは?
0-2 基礎代謝と活動代謝
0-3 有酸素運動と無酸素運動
体脂肪を落とす運動1 ジョギング
1-1 スロージョギングでエネルギー消費
1-2 距離走よりも時間走が効果的
体脂肪を落とす運動2 ウォーキング
2-1 気軽に始めて続けられる運動習慣
2-2 効果的な歩き方
体脂肪を落とす運動3 トレッキング・登山
3-1 ジョギングとウォーキングの中間的な有酸素運動
3-2 登山・トレッキングの効果的なコース選び
体脂肪を落とす運動4 スイミング
4-1 水泳の長所と短所
4-2 速度アップよりも泳ぐ時間を延ばす
体脂肪を落とす運動5 筋力トレーニング
5-1 適切な負荷の運動を選ぶ
5-2 有酸素運動との併用で高まる脂肪燃焼
体脂肪を落とす運動6 ゴルフ
6-1 ラウンド中は大股で歩くと効果的
6-2 ほかの運動を始めるきっかけになる
体脂肪を落とす運動7 スキー
7-1 インターバルトレーニングのゲレンデスキー
7-2 有酸素運動に適しているクロスカントリー
まとめ
0 運動で体脂肪を落とすしくみ
「肥満」とは、体重の問題ではなく、「体脂肪」が多い状態のことです。
人間の体は、主に「水分」「筋肉・骨」「脂肪」から成り立っています。平均的な割合は、水分が50~60%、筋肉・骨(タンパク質・糖質・ミネラル)が20~30%、脂肪が15~25%です。
ダイエットは体重を落とせばいいと思っている人が多いのですが、筋肉や骨の量まで減らしてしまうと健康を害することになります。体重が減ったからといって、体脂肪が落ちているとは限らなのです。
正しいダイエットとは、体重を落とすことよりも体脂肪を落とすこと。そこで、食事習慣や睡眠習慣といった生活習慣とともに欠かせないのが「運動習慣」です。
0-1 体脂肪とは
体脂肪とは、体内にある脂肪のことです。
一般的に体重に占める体脂肪の量は、男性で15~19%、女性で20~25%が正常値とされます。この数字が体脂肪率です。男性で25%、女性で30%を超えると脂肪のつきすぎとされ、生活習慣病の危険が出てきます。
一方で、体脂肪は体内で重要な役割も果たしています。
人間の体は、生命維持に必要なエネルギーが食事からとれないときに、蓄えてあるエネルギーを燃やします。脂肪は糖質やタンパク質に比べて2倍以上のエネルギー量を持っているので、効率よくエネルギーを蓄えておくことができます。
脂肪は脂肪細胞という細胞の中に蓄えられますが、脂肪細胞の重量の85%を占めます。また、皮下脂肪には寒さや暑さから体を守り、外部から受ける衝撃をやわらげる働きもあります。
ですが、内臓脂肪や血液中の脂肪が増えると、高脂血症や心臓病など、様々な病気の原因になるのです。
0-2 基礎代謝と活動代謝
「代謝」とは、栄養素の分解と合成をしたり、エネルギーに変換して消費したりする働きのことです。消費エネルギーは、3つの代謝の合計量です。
1. 基礎代謝
何もしなくても、生命維持のために行われている呼吸や血液循環などによるエネルギー消費で、全体の60~70%を占めます。
2. 活動代謝
体を動かすことによるエネルギー消費で、全体の20~30%を占めます。
3. 食事誘導性熱代謝
食事をすることによるエネルギー消費で、全体の10%程度です。
こうしてみると、基礎代謝で消費するエネルギー量がとても多いことがわかります。基礎代謝の高い人は、何もしていなくても食べたエネルギーをより多く消費するので体脂肪を溜めにくくなり、低い人はエネルギー効率が悪いので体脂肪を溜め込みやすいのです。
正しいダイエットとは、余分な摂取エネルギーを減らすとともに、消費エネルギーを増やして体脂肪を燃焼させ、さらに基礎代謝を上げて体脂肪が蓄積しにくい体をつくることにあります。
基礎代謝について、もっと詳しく知りたい方は『基礎代謝を上げる食事と運動 | ムリなく体脂肪を落とす』もぜひ参考にしてみてください。
0-3 有酸素運動と無酸素運動
体脂肪を落とすための運動は、体脂肪を効果的に燃焼させる「有酸素運動」と、そのための準備段階である「無酸素運動」に大別されます。
しっかり呼吸できる程度のゆっくりとした動きを続ける有酸素運動は、脂肪の燃焼に必要な酸素を多く体内に取り込むことができます。
最初の40秒ほどは酸素を使わずに筋肉に蓄えられている糖質を燃やし、その後は酸素を使って筋肉中の糖質を燃やします。それが使い尽くされると血液中の糖質をエネルギー源とします。こうした運動が20分ほど続くと、脂肪をエネルギー源とするようになるのです。
筋肉に負荷をかけるトレーニングは筋肉量を増やすのに適していますが、慣れていない人が急にトレーニングをして大きな負荷をかけると、筋肉や関節を痛めてしまいます。軽めの負荷で毎日少しずつ行う筋トレを心がけましょう。
健康的に体脂肪を落とすためには、有酸素運動と無酸素運動の両方が必要です。
体脂肪を落とす運動1 ジョギング
「ジョギング」とは、ゆっくりとしたランニングです。
とても効果的な有酸素運動ですが、体には大きな負担がかかるので、体調のチェックを欠かさないようにしましょう。
1-1 スロージョギングでエネルギー消費
一般的な平地のウォーキングでは、1kmの移動で、体重1kgあたり0.5kcalのエネルギーを消費します。ランニングの場合は、1kmの移動で、体重1kgあたり1kcalのエネルギーを消費するので、同じ距離を移動すれば、ウォーキングの倍のエネルギーを消費することになります。
通常のランニングは時速8キロ以上、それ以下のスピードだとジョギングとされます。ジョギングでも、歩くのと同じような時速4~5キロのスピードで移動するのが「スロージョギング」です。
スロージョギングでもランニングでも同じ距離を移動すれば、ウォーキングの2倍のエネルギーを消費することがわかっています。エネルギー消費にスピードの差はあまりないのです。
ランニングはきつくて続かない人でも、歩く速度と変わらないスロージョギングであれば一気にハードルは下がります。
最初は、半分スロージョギングで半分はウォーキングという方法でも、同じ距離のエネルギー消費はウォーキングの1.5倍になります。
1-2 距離走よりも時間走が効果的
ジョギングは走る距離を決めて行うのではなく、走る時間を決めて行いましょう。
ジョギングのエネルギー消費には体の重さが影響します。ジョギングを続けて体重が落ちてくると、一定距離を走った場合のエネルギー消費量は減ってきますが、体が軽くなって楽に走れるようになるため、同じ時間内に走れる距離は伸びるのです。
同じ距離でジョギングを続けているとエネルギー消費量は減っていきます。しかし、同じ時間のジョギングを続ける場合には、走る距離が伸びるので、1回あたりのエネルギー消費量を減らさないで続けられるのです。
体脂肪を落とす運動2 ウォーキング
生活習慣病の予防や、筋肉維持の目的で高齢者にも人気が高いウォーキングは、代表的な有酸素運動です。
なによりも長時間続けることが容易なので、ムリをせずに体脂肪を落とすことができます。
2-1 気軽に始めて続けられる運動習慣
時間や場所をさほど選ばずにできるウォーキングは、日常生活の中に取り入れて習慣化することが容易です。
最初は「いつもより少し多めに歩く」という気持ちで始めればいいので、手軽に体脂肪を燃やすことができるのです。
活動代謝を高めることによって体脂肪を落とす以外にも、「HDL(善玉)コレステロールを増やす」「血管の弾力や柔軟性を取り戻す」「心肺機能高める」といった基礎代謝を活性化する要素が多いのも特徴です。
2-2 効果的な歩き方
体脂肪を落とす目的でウォーキングを行う場合には、次のポイントが歩き方の基本となります。
・普段の歩きよりもやや歩幅を広くする
・背筋を伸ばす
・目線はまっすぐ前、やや遠くを見る
・肩の力を抜いてリラックスして歩く
・ヒジを曲げて腕を軽く振る
・カカトから着地して、しっかり地面をキックする
また、「歩くだけ」とはいえ、ウォーミングアップとクールダウンのストレッチは、ケガ防止、疲労回復などのため、必ず行うようにしましょう。
自分に合ったウォーキング方法について、もっと知りたいという方は『時間じゃない!しっかり効果を出す<目的別>ウォーキング法』もぜひご覧ください。
体脂肪を落とす運動3 トレッキング・登山
トレッキング(山歩き)や登山は、ウォーキングの一種に位置付けられます。
一般的に、歩行時間が3~4時間程度で負担度の軽い運動がトレッキング、それよりも負担度の高いものを登山と呼ぶことが多くなっています。
3-1 ウォーキングとジョギングの中間的な有酸素運動
登山のエネルギー消費量は、初歩的なものではウォーキングとジョギングの中間程度、本格的なものではジョギングよりも高くなります。
平地のウォーキングに比べると、坂道の上り下り、不整地の歩行、荷物の重さ、長時間の歩行といったエネルギー消費を増やす要素があり、特に下りではウォーキングの2倍近い筋力を必要とします。
運動強度が高い登りでは、ウォーキングよりも歩行速度を50~60%、一定時間内の歩数を60~70%、歩幅を70~80%に抑える必要があります。下りでは、運動強度は落ちますが、筋力の負担が増えます。
加齢による脚の筋力低下を防ぐためには、ウォーキングよりも効果的な運動とされます。
3-2 登山・トレッキングの効果的なコース選び
体力に応じたコースの選択には、次のような目安があります。
1. 初心者向け
標高差が500m以下、歩行時間が4時間以下
2. 一般向け
標高差が500m~1000m、歩行時間が5~6時間
3. 健脚向け
標高差が1000m以上、歩行時間が7時間以上
注意しなければいけないのは、健脚向けのコース、その中でも下りのときにトラブルが多く発生しているという点です。
これからトレッキングや登山を始めるという人は、必ず初心者向けのコースから始めて、体が慣れたら一般向け、さらに自信がある人は健脚向けのコースというようにアップグレードしていきましょう。
また、トレッキングや登山は、通常の生活の中で頻繁にできるものではないので、日々のウォーキングと組み合わせて楽しむようにします。
体脂肪を落とす運動4 スイミング
スイミングは競技種目としてだけでなく、健康な体づくりのために子どもから高齢者まで親しむことができる有酸素運動として、広く普及しています。
4-1 水泳の長所と短所
水中という特殊な環境で行う水泳には、体脂肪を効果的に落とすための長所がいくつもありますが、その一方で生命に危険が及ぶ短所もあります。それぞれをまとめると以下のようになります。
長所
・ゆっくりした泳ぎは有酸素運動なので、心肺機能の向上が期待できる
・水中では水圧を受けるので、呼吸筋が鍛えられて呼吸機能が改善する
・水圧と水温の作用で、血管の収縮、拡張機能が改善して体温調節機能が向上する
・陸上よりも少ない心拍数で同じ量のエネルギー消費を行うことができる
短所
・水中で行うので、溺れる、飛込み事故、排水口での事故などの危険がある
・水圧や水温の作用で、脳血管系、心血管系にかかわるトラブルの危険がある
また、陸上で行う運動よりもウォーミングアップが重要であることは言うまでもありません。
4-2 速度アップよりも泳ぐ時間を延ばす
体脂肪を落とすための水泳は、泳ぐ速度を上げることよりも、泳ぐ時間を増やしていくことを目標にしましょう。
最初は5~10分、週3回を目安として徐々に時間を延ばしていき、運動習慣となったら30分程度まで増やします。
水泳時のエネルギー消費量は、前に進むためのエネルギー消費と浮くためのエネルギー消費を合計したもので、浮くためのエネルギーはスピードにかかわらずほぼ一定なのです。
速度は遅くても長時間続けられる泳ぎが、体脂肪の抑制や心肺機能の向上には効果的です。
体脂肪を落とす運動5 筋力トレーニング
基礎代謝を上げるための筋力トレーニングは無酸素運動です。
運動自体で燃焼するのは脂肪ではなくタンパク質や糖質ですが、代謝を上げることで体脂肪が蓄積しにくい体をつくるために、無酸素運動を行います。
5-1 適切な負荷の運動を選ぶ
筋トレは、筋力や技量に応じて適切な負荷をかけるための器具が必要です。マシンやダンベルを使用する本格的な筋トレは、専門のトレーナ-の指導下で行いましょう。
本格的な筋トレに代わって人気を集めているのが、器具を使わず、筋肉に軽めの負荷をかけながらゆっくりと行う「スロートレーニング(スロトレ)」です。
筋肉に負担をかけ続ける「ノンロック」という方法によって、高い負荷をかける筋トレと同じような効果が得られるスロトレは、1日10~15分、週3~4回続ければ基礎代謝のアップにつながります。
5-2 有酸素運動との併用で高まる脂肪燃焼
筋トレの直後に有酸素運動を行うと、短時間のうちにより多くの脂肪を燃焼させることができます。無酸素運動は、終了後の数時間は代謝がアップして体脂肪が燃えやすくなっているという特徴があります。
ジョギングは、「有酸素運動 + 無酸素運動」なので、エネルギー源の多くを糖質でまかないますが、ウォーキングは「有酸素運動」なので、より脂質を多く燃焼します。
カロリー消費はジョギングの方が多くなりますが、脂肪燃焼はウォーキングの方が高効率なのです。
体脂肪を落とす運動6 ゴルフ
ゴルフは「歩くスポーツ」といわれます。
18ホールのプレーには通常約4時間程度の時間を要しますが、その間にボールを打っている時間は2~3分だけで、歩いている時間が多いからです。
6-1 ラウンド中は大股で歩くと効果的
コースの状況やプレーの技量によって異なりますが、通常は1ラウンド18ホールで約1万4000~2万歩を歩きます。1日1万歩を目標とするウォーキングよりも、はるかに多くの体脂肪を落とすことができます。
脂肪燃焼には、ラウンド中の歩行スピードが需要。速度を上げれば酸素の摂取量が増え、分速70mを下回るような低速では効率が悪くなります。
1歩あたりのエネルギー消費量は、速度によらず歩幅で決まるので、ラウンド中は大股で速く歩くようにすると、より脂肪を燃焼させることができます。
6-2 ほかの運動を始めるきっかけになる
中高年ゴルファーには、ジョギングやウォーキングを習慣としている人が多いことが知られています。年齢を問わず、自分の体力に応じて楽しめるゴルフは、シニア層の生涯スポーツとして人気があります。
ただし、ウォーキングなどのように、いつでもどこでも、というわけにはいきません。頻度を上げるには、時間的な余裕や金銭的な負担が必要とされます。
それだけにコースに出たときは思いっきり楽しみたいと、誰もが考えます。だから、ゴルフを楽しむ体づくりのために、ほかの運動を続けようとする人が多いのです。
体脂肪を落とす運動7 スキー
積雪のある時期が長い雪国では、ジョギングやウォーキングを続けることができなくなって、生活習慣病の予防や筋力維持が難しくなります。
そうした雪国で親しまれているスキーは、体脂肪の燃焼にとっても重要な運動です。スキーには競技スキーと、日常的に親しまれているレクリエーションスキーがあります。
レクリエーションスキーは、アルペン系のゲレンデスキーと、歩くスキーであるクロスカントリースキーに分かれます。
7-1 インターバルトレーニングのゲレンデスキー
リフトに乗ってから滑走するゲレンデスキーは、運動と休息を繰り返す「インターバルトレーニング」なので、心肺機能と持久力を高める有酸素運動です。また、脚部への負担が継続するので筋力の向上にも効果があります。
斜面における滑走、回転を中心とするゲレンデスキーは、「重力」によって落下する運動ですから、自分の筋力で移動する運動とは異なり、移動のための主なエネルギーは外部からもらえます。逆に自然のエネルギーを調節する筋力や心肺機能が求められるのです。
そのために筋力が低くてもスピード感や回転の楽しさを味わうことができますが、転倒や衝突の危険がともなうので、十分な技術を習得する必要があります。
7-2 有酸素運動に適しているクロスカントリー
専用の板を使用して平地や上り斜面を走行するクロスカントリースキーは、誰でも容易に、長時間行うことができる、寒冷地における最高の有酸素運動です。
近年ではスキーマラソンが普及して、距離別の種目が設定されているので、気軽に参加できるスポーツになっています。
競走ではなく、雪上を自由に滑走するクロスカントリースキーは、雪の中で仲間とハイキングを楽しんだり、自然を感じたりするレクリエーション要素の高いスポーツです。
まとめ
あなたにとって最適な運動が見つかりましたか?
体脂肪を落として健康な体をつくるための運動は、有酸素運動と無酸素運動の両方が必要である理由がおわかりいただけましたね。
さらに重要なことは、エネルギー摂取の方法である「食事」を同時に考えることです。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが大事なのですから、消費を増やすと同時に余分なエネルギーを摂取しないことも重要なのです。
効果的な運動習慣と食事習慣の相乗効果で、体脂肪が蓄積しにくい体をつくりましょう。
【参考資料】
『メタボリックシンドロームに効果的な運動・スポーツ』(ナップ・2011年)
『体脂肪 無理せず減らして健康的にやせる』(主婦の友社・2001年)