「余分な体脂肪を落としたいけど、厳しいダイエットはしたくない」
そう思っている人は多いですよね?短期間で厳しいダイエットをすると、心配なのはリバウンドです。今まで何度もダイエットとリバウンドを繰り返してきたという人もいるでしょう。
リバウンドしにくいダイエットとは、どのようなものなのでしょうか。そのカギは、ある程度の時間をかけて体の基礎代謝を上げることにあります。
ムリなダイエットをせずに、目指すのは1カ月で1キロの体脂肪を落とすこと。5キロが目標であれば半年、10キロが目標であれば1年という時間をかけて体をつくるのです。
ここでは、基礎代謝となにかを解説し、ムリなく基礎代謝を上げる習慣の基礎を食事と運動の両面から紹介します。
目次
1 基礎代謝とは
1-1 基礎代謝が下がっていると脂肪は減らない
1-2 基礎代謝が高いとはどういう状態か?
1-3 基礎代謝に大きな影響を及ぼす体内作業
2 脂肪がうまく燃えない3つの理由
2-1 防衛本能が働いてしまう食事
2-2 慢性疲労やマンネリ化する運動
2-3 筋肉が固まって代謝が下がる
3 基礎代謝を上げる食事の基本7選
基礎代謝を上げる食事1 ご飯は最低1日3杯食べる
基礎代謝を上げる食事2 夕食を2分割する
基礎代謝を上げる食事3 タンパク質は脂質とのバランスを考える
基礎代謝を上げる食事4 野菜は1日400グラム
基礎代謝を上げる食事5 水は1日に最低2リットル飲む
基礎代謝を上げる食事6 塩分と脂肪の摂取を減らす
基礎代謝を上げる食事7 ストレスを解放する食事は週に4回まで
4 基礎代謝を上げる運動の基本4選
基礎代謝を上げる運動1 重要なのは筋肉のバランス
基礎代謝を上げる運動2 有酸素運動で脂肪を燃やす
基礎代謝を上げる運動3 基本のストレッチは3パターン
基礎代謝を上げる運動4 本格的な筋トレはしない
まとめ
1 基礎代謝とは
基礎代謝を上げることによって体脂肪を落とす方法の本来のゴールは、目標体重ではなく、代謝を安定させて体重や体型を維持する日常生活にあります。
食事制限だけにたよる間違ったダイエットをすると、食べたらすぐ太る体になってしまいます。
しかし、この方法に成功して体脂肪をコントロールできるようになれば代謝が上がるので、食事の量を増やしても太りにくくなります。食べられるものの幅が広がって、食事の質を上げることもできます。
「筋肉を増やすことが代謝を上げる」という間違った発想の運動は、体に大きな負荷をかけるので苦痛をともないます。
正しく基礎代謝を上げれば、日常生活内の運動量でも十分に脂肪を燃焼することができるようになるのです。それではまず、「基礎代謝とはなにか?」ということから解説していきましょう。
1-1 基礎代謝が下がっていると脂肪は減らない
「基礎代謝」とは、生命活動を維持するために体が自動的に行っている活動のことです。1日に消費されるエネルギー量は、成人男性で約1500キロカロリー、成人女性で約1200キロカロリーとされています。
この基礎代謝は、生活環境や自分が置かれた状況によって日々変動します。
人間の体は、生命維持の危機を察知すると元の状態に戻そうとする「ホメオスタシス(恒常性維持機能)」というシステムをもっています。たとえば運動量がその人間の安全ゾーンを超えると、基礎代謝を下げてエネルギーの消費量を抑えるようになるのです。
基礎代謝が下がった状態でムリな運動や食事制限を続けると、防衛本能が起動して脂肪をできるだけ体内に温存しようとします。この状態で体重が減ると、脂肪ではなく筋肉を落とすことになり、典型的なリバウンド体質になってしまうのです。
1-2 基礎代謝が高いとはどういう状態か?
基礎代謝の計測は二酸化炭素の排出量や、酸素の消費量で行われます。
あとで詳しく述べますが、体内の呼吸循環や消化循環といった体内作業と呼ばれるものの稼働率が高いと、酸素を多く消費し、二酸化炭素を多く排出します。これが基礎代謝の高い状態です。
基礎代謝を上げるためには筋肉をつけるべきという考え方が浸透していますが、筋肉をつけるのは、基礎代謝を上げる手段のひとつにすぎません。
筋肉の量を増やすことが、そのまま常に基礎代謝の高い体づくりにつながるわけではないのです。どんなに筋肉の多い人でも、体内作業の稼働率が下がれば基礎代謝は落ちます。逆に筋肉の少ない人でも、体内作業の稼働率が上がれば基礎代謝も上がるのです。
1-3 基礎代謝に大きな影響を及ぼす体内作業
筋肉で基礎代謝のエネルギーが消費される割合は38パーセント、それ以外の消費が62パーセントを占めています。そして、この62パーセントを消費しているのが、自律神経によってコントロールされる、前に述べた体内作業なのです。
体内作業は次のようなものがあり、互いに影響し合って生体を維持しています。
・呼吸循環
・血液循環
・消化循環
・体温調整
・睡眠と覚醒の循環
これらの体内作業がスムーズに循環できる環境をつくり、基礎代謝を上げて体脂肪を落とすことが、この方法の目的です。
2 脂肪がうまく燃えない3つの理由
がんばってダイエットしているのに、思うように体脂肪を落とすことができないという人は、基礎代謝が落ちていることに問題があります。
その原因は3つに大別されます。
2-1 防衛本能が働いてしまう食事
従来のダイエットでは、基本とされた5大栄養素をバランスよくとる食生活をして、適度な運動もしているのに体脂肪が思うように落ちないという人は、「内臓疲労」の状態にあると考えられます。
前の食事の消化作業が終わっていないのに次の食事をすると、体内作業が追いつかなくなり、ホメオスタシスによる防衛本能が働いて、基礎代謝を落としていると考えられるのです。
逆に食事の間隔が空きすぎていても代謝は下がります。血糖値が下がりすぎると、はやりホメオスタシスが働いて基礎代謝を落としてしまうのです。
食事の間隔が空きすぎると、脳が飢餓状態を察知して食欲を増大させたり、食べた物の吸収率を上げたりするので、毎日、小さいリバウンドを起こしていることになります。
防衛本能が働いてしまうと、脳は非常事態という判断を下しますから、筋肉を削ってどんどん脂肪を蓄えようとするのです。
2-2 慢性疲労やマンネリ化する運動
毎日1万歩のウォーキングをしているのに思ったように体脂肪が落ちないという人は、疲労の回復が間に合わなくて慢性化してしまい、防衛本能が働いて基礎代謝が下がっていると考えられます。
運動量を高めることにこだわると、疲労の状態を見落としがちです。基礎代謝を上げるための運動は、筋肉を増やすことが目的ではありません。防衛本能が働かない安全圏内で運動を続けて体内作業の稼働を上げることが目的です。
毎日適度な運動をきちんと続けているのに体脂肪があまり落ちないという人は、毎日の運動がマンネリ化してしまい、体への刺激が慢性化している可能性があります。この状態でもホメオスタシスが働いて、エネルギーの消費量が上がらなくなってしまいます。
基礎代謝を上げるためには、疲労が残らない運動量を基準にして、疲労度を観察しながら調節する必要があるのです。
2-3 筋肉が固まって代謝が下がる
食事や運動に問題があってホメオスタシスが働くと、体は筋肉の収縮運動を制限して消費エネルギーを抑えようとします。
多くの場合は、太ももの筋肉、お尻から腰回りの筋肉、肩回りの筋肉となどが連鎖して固まってしまいます。こうして起こる腰痛や肩こりは、代謝が落ちている状態なのです。
防衛本能が働くと、基礎代謝を抑えるために、まず筋肉を固めます。この状態が続くと慢性的な基礎代謝の低下を招き、どんなに食事制限や運動をしても体脂肪は落ちなくなってしまいます。
3 基礎代謝を上げる食事の基本7選
基礎代謝を上げる食習慣とは、防衛本能が働かないようにする食事が基本です。体脂肪を燃やして防衛本能が働かない「油」「塩」「糖分」の安全ゾーンは、次のような量が目安になります。
・脂質・・・1食15グラム、1日に50グラム以下
・塩分・・・1食3.5グラム、1日に10グラム以下
・糖分・・・1回の食事、デザートで10グラム、1日に20グラム以下
基礎代謝を上げる食事1 ご飯は最低1日3杯食べる
炭水化物が不足すると体のエネルギー源をストップさせてしまい、代謝を低下させるので1日に3杯は食べるように心がけましょう。これが脂肪を燃やすために必要な最低限のガソリンの量だと考えてください。
炭水化物の中には糖質が含まれていますが、糖分を摂りすぎて太るのではないかと心配する必要はありません。
糖質には、果物に多く含まれる果糖などの「単糖類」、砂糖などの「少糖類」、デンプンなどの「多糖類」があります。単糖類や少糖類は血糖値の急上昇と急下降を引き起こすので、中性脂肪の合成を活発にしたり、代謝を低下させたりして、体脂肪を溜める原因になります。
しかし、多糖類は緩やかに血糖値が上がるために、代謝が安定して体脂肪を溜めにくくなるのです。
基礎代謝を上げる食事2 夕食を2分割する
夕食が遅くなりがちな人は、夕食を2分割して食事の回数を増やしてください。
食事は「次の食事までに胃の中が空っぽになっている」ことが基本です。油、塩、糖分が安全ゾーンを超えない400~600カロリー程度の食事では、4~6時間で防衛本能が働かなくなります。
たとえば、7時に朝食、12時に昼食、18時に夕食という食生活であれば、それぞれの間隔で消化できるメニューを選べばいいのです。
しかし、多くの人は夕食がもっと遅い時間になり、昼食から夕食までに時間が空きすぎてしまいます。そうなると、血糖値が下がりすぎて、つい食べ過ぎることが多くなってしまいます。これは小さいリバウンドです。
この状態を解決するために、18時に炭水化物中心の食事をとり、22時頃にタンパク質のおかずと野菜中心の食事をとるようにするのです。
基礎代謝を上げる食事3 タンパク質は脂質とのバランスを考える
タンパク質は必須の栄養素ですが、過剰な摂取は体脂肪を溜めてしまうので要注意です。一般人がタンパク質を摂取する目安は、「体重1キロに対して1グラム」、アスリートでその倍とされています。
体重が60キロの人であれば、1日に60グラムのタンパク質が必要になります。多少の個人差はありますが、これを下回ると代謝が低下し、上回ると脂肪に変換されて体脂肪になります。
一方、脂質は、1日のトータルが50グラムを超えると体脂肪として蓄積します。ですから、おかずは、タンパク質と脂質の含有量を考えた方がいいのです。
しかし、いちいち脂質の量を考えながらタンパク質の量を計算するのでは大変。そこで、あまり神経質にならず、1日単位ではなく3日単位でおおよそのバランスを考えるようにするのです。
数値的にラフにはなるでしょうが、思考にも食事にもゆとりができるので効果は上がります。
3-4 野菜は1日400グラム
体脂肪を落とす食習慣では、野菜をしっかりとることも重要です。ビタミン、ミネラル、繊維質が充実して代謝を促進します。
野菜は3つに分類されます。トータルで1日400グラムを目標としてください。
1 色の薄い淡色野菜・・・1日200グラム
2 色の濃い緑黄色野菜・・・1日100グラム
3 キノコや海藻など繊維質の多いもの・・・1日100グラム
しかし、これもあまり神経質になってはストレスを溜めてしまいますから、3日単位でだいたいのバランスを考慮すれば問題ありません。
野菜をたくさん食べているのに代謝が上がらないという人は、ドレッシングや調味料で塩分や脂質が多くなっていないかチェックしてください。
基礎代謝を上げる食事5 水は1日に最低2リットル飲む
十分な水分摂取は代謝のアップに欠かせません。1日に2リットルを目安にしてください。
ただし、1日に3回の食事で摂取する水分量は平均800ccといわれますので、頭の片隅に置いておきましょう。
実際に飲むのは1日に1~2リットル、最低でも1リットルと考えましょう。
基礎代謝を上げる食事6 塩分と脂質の摂取を減らす
余分な体脂肪を落とすために減らさなければいけないのは、炭水化物ではなくて塩分と脂質です。この基本を忘れなければ、基礎代謝のアップが楽に進められます。
塩分や脂質の摂取量を意識するだけで、運動や仕事の疲れが驚くほど早く抜けるようになります。
体内の塩分濃度が濃くなると体は水分を溜め込み、体をむくませることで体内塩分濃度を薄めようとします。そうなると、体内作業の循環がスムーズにいかなくなるのです。
脂質は必須栄養素のひとつですが、意識して摂取しなくても一般的な食事で十分とれています。簡単に安全ゾーンをオーバーしますから注意してください。
基礎代謝を上げる食事7 ストレスを解放する食事は週に4回まで
太りやすい食べ物や6時間以上の消化時間がかかるものは、「非日常食」と考えて、週4回までにしましょう。
美味しいけど脂質や塩分や糖分が多い食べ物は、全面禁止にしてしまうと味気ない毎日になってしまいます。ガマンするストレスで代謝が下がってしまうのでは意味がありません。
禁止にするのでなくて、スペシャルな食事として楽しみにすればいいのです。それで毎日の努力がムダになってしまうことはありません。
4 基礎代謝を上げる運動の基本
消費エネルギーを効果的に高める運動は、「有酸素運動」「筋トレ」「ストレッチ」の3つをバランスよく組み合わせることによって行うことができます。
ここで解説するそれぞれの運動の基本的な考え方を基に、自分に合ったバランスを見つけていきましょう。
重要なのはムリをしないことです。運動量もあまり神経質にならず、3日単位、1週間単位で考えましょう。
基礎代謝を上げる運動1 重要なのは筋肉のバランス
代謝を高める運動に求められるのは、筋肉を増やすことではなくて、全身の筋肉の連動性です。筋肉が固まって連鎖が起こり、代謝が落ちている状態を続けると、次のような症状がでてきます。
・体型が崩れる
・満腹感など食の感覚が麻痺する
・運動不足でも不快感を感じなくなる
・体脂肪が増えても気づかない
・慢性疲労でも不快感を感じなくなる
立ち姿勢が猫背や反りすぎの人は、筋肉の連動性がうまくいっていなくて腹筋を使っていない状態です。全身の筋肉の連動性を意識しないと、この状態をずっと続けることになり、いくら運動をしてもエネルギー消費の低い体になってしまいます。
基礎代謝を上げる運動2 有酸素運動で脂肪を燃やす
運動習慣の柱となるのは、ゆったりとした運動を長時間繰り返す「有酸素運動」です。ウォーキング、ジョギング、スイミング、サイクリングなどが有酸素運動です。
同じ動作を繰り返すと、体内作業が安定して、脂肪を効果的にエネルギーへと変換できます。
有酸素運動で脂肪を燃やす1 ウォーキングのメリット
もっとも手軽で効果的な有酸素運動であるウォーキングには、次のようなメリットがあります。
・血液循環が促進される
・脂肪燃焼の効率を上げる
・疲労が回復する
・腸の動きが促進されて便通が安定する
ただし、真夏や真冬に外でウォーキングすると逆効果になることがあります。暑すぎたり寒すぎたりという環境を無視して体を動かすと、防衛本能が働いて筋肉を固めてしまうのです。
暑い日、寒い日、雨の日などは、室内でエアロバイクなどのエクササイズを行うようにしましょう。
有酸素運動で脂肪を燃やす2 有酸素運動は週300分以内にする
代謝を上げながらウォーキングをするのであれば、1週間に200~300分を目安にしましょう。
1日に1万歩歩くと、1週間で500~600分歩くことになります。これでは一般的な人には運動量が多すぎます。一般的な人の平均値から考えると、週に300分以上の有酸素運動をすると疲労回復が追いつかなくなって代謝が落ちるとされます。
しかし、週に300分の有酸素運動では、週に80~100グラム程度の脂肪しか燃焼させることができません。
1カ月で1キロの体脂肪を落とすためには、週に200~300グラム落とさなければいけないのです。残りの100~200グラムを落とすのが、ストレッチと筋トレということになります。
基礎代謝を上げる運動3 基本のストレッチは3パターン
ストレッチ自体も全身の筋肉の連動性を意識して行います。
どこでも目にする「太もも前面のストレッチ」「お尻のストレッチ」「肩のストレッチ」の3パターンが基本となります。これらのストレッチを「骨盤と背骨の曲げ伸ばし」と「腹圧」でコントロールします。
・伸ばしたい部分がしっかり伸びているか
・腹圧がかかっていて、へその下に重心が落ちているか
長く行う必要はありませんので、それぞれ上の2点が確認できたら脱力してOKです。慣れればひとつが2~3秒で完了します。
これを有酸素運動の前後などに1日数回行いましょう。ストレッチを行うことで、筋肉に溜まった乳酸を取り除いて疲労回復を促すこともできます。
基礎代謝を上げる運動4 本格的な筋トレはしない
ここで必要な筋トレは、「筋肉をつけるための本格的なトレーニング」ではありません。筋肉のバランスを整えて、体内作業をスムーズにすることが目的の筋トレです。
これもどこでも目にする、「クランチ」「スクワット」「バックエクステンション(上体反らし)」「膝つき腕立て」の4つが基本です。
それぞれの筋トレは3~5回で十分、ストレッチと並行して行います。日常生活で維持できない筋肉をつけてしまうと、その筋肉を維持するためのトレーニングを続けなければいけなくなってしまいます。そのトレーニングを怠ると、すぐに体重が増える体になってしまうのです。
代謝を上げるために必要なのは、筋肉質の体ではなくて、健康で引き締まった体です。
まとめ
ここでは、基礎代謝を上げて体脂肪を落とすための、食事と運動の基本的な考え方を解説してきました。さらに、目標達成に応じたスケジュールを組むことによって綿密な体脂肪コントロールが可能になります。
大きく「習慣破棄期」「脂肪燃焼期」「代謝安定期」の3期に分けることから始まり、それぞれ前半後半に分ける、さらには週ごとのスケジュール表を作成するなど、細かく管理して目標達成に近づける手段もあります。
しかし、ここで解説した3日単位、1週間単位の食事習慣や運動習慣には、必要以上にやり込まない、やりすぎないという大きな意味がありますから、まずは楽な気持ちで初めてみてはいかがでしょうか。
【参考資料】
『体脂肪コントロールトレーニング』(主婦の友社・2011年)
『格闘家に学ぶ体脂肪コントロール』(ベースボールマガジン社・2009年)