歳をとるにつれて「最近物忘れがひどくなってきたかも…」と感じてきたり、周りの人から「物忘れひどくない?」と言われてハッとした経験はありませんか?
年齢とともに物覚えが悪くなることは加齢による正常な反応なのですが、急に物忘れを自覚した時は「病気かもしれない」と心配になってしまいますよね。
そこでこの記事では、最近物忘れを感じ始めてきた方に向けて、物忘れの原因・チェックリスト・対策などをまとめて解説していきます。
脳をいつまでも若々しく保ちたい方は必見です!
目次
1. 物忘れはなぜ起きる?4つの原因
1-1. 加齢による正常な物忘れ
1−1−1. 加齢による物忘れのチェックリスト
1−2. 認知症による物忘れ
1-2-1. 認知症による物忘れのチェックリスト
1−3. 脳の病気による物忘れ
1−3−1. 脳の病気の兆候を知るチェックリスト
1-4. ADHD(大人の発達障害)による物忘れ
1−4−1. ADNDのチェックリスト
2. ひどい物忘れを解消する3つの対策
2-1. 毎日7時間半の睡眠をとる
2−2. 30分ごとに小休憩をとる
2−3. 仕入れた情報をアウトプットする
3. 年代別に意識したい物忘れ対策
3−1. 30代の物忘れ対策
3−2. 40代の物忘れ対策
3−3. 50代の物忘れ対策
まとめ
1. 物忘れはなぜ起きる?4つの原因
物忘れには、主に以下の4つの原因があります。
①加齢による物忘れ
②認知症による物忘れ
③脳の病気による物忘れ
④ADHD(大人の発達障害)による物忘れ
まずはそれぞれの物を忘れてしまう仕組みを知り、簡単なチェックリストを試してみましょう。
自分がどの物忘れに当てはまるのか、今後どんなことに気をつければいいかをイメージしながら読んでみてくださいね。
1-1. 加齢による正常な物忘れ
人間の筋肉や免疫力といった体の機能は、加齢とともに少しずつ衰えていきます。
例えば筋肉は、筋トレをすることである程度の力を維持できますが、年齢による衰えには逆らえませんよね。
これと同じように、脳も歳をとるほど老化していき、記憶力などの機能は徐々に衰えていきます。
加齢による物忘れは「その出来事は覚えているけど詳細を思い出せない」という特徴があります。
例えば買い物をしに行き、頭で覚えていたものを全部買ったと思って帰宅した直後に、買い忘れた商品を思い出したという経験はありませんか?
これは、「脳は買う物を覚えていたけれど、それを思い出す力が衰えたため買い忘れてしまった」という、加齢による物忘れの典型的な特徴なのです。
後ほど解説する「認知症」による物忘れの場合は、商品を買ったこと自体を忘れてしまうため、同じ物を何回も買ってくるといった症状が起こります。
つまり後から思い出すことができる物忘れは、少なくとも認知症による物忘れではない可能性が高いと言えます。
また、加齢による物忘れは「ゆるやかに進行する」という特徴があります。
脳梗塞などの脳の病気の場合は急にひどい物忘れを自覚しますが、加齢の場合は突然物忘れがひどくなることはありません。
1−1−1. 加齢による物忘れのチェックリスト
①自分が忘れっぽくなってきたことを理解している
②体験そのものは覚えているが、その詳細は忘れている
③着替えや歯磨きなど、長年の習慣や行為に支障がない
上の3つに当てはまる場合、加齢による正常な物忘れの可能性が高いと言えます。
加齢による物忘れは生活習慣を変えることで改善が可能です。
後ほど紹介する「物忘れの3つの対策」も、併せてチェックしてみてくださいね。
1−2. 認知症による物忘れ
物忘れの病気としてまず思い浮かぶものは「認知症」ではないでしょうか。
認知症は、記憶力だけでなく思考力・計算力・学習能力・判断能力といった脳の様々な能力が衰えていく病気です。
認知症による物忘れの特徴は、先ほど少しお伝えした通り「記憶自体がなくなってしまう」ことです。
これは健康な人でも起こる物忘れですが、その頻度が高くなってきたり他人から何回も指摘される時は、認知症の初期症状を示している可能性が高いと言えます。
1-2-1. 認知症による物忘れのチェックリスト
①物忘れがひどくなってきたことを自覚していない
②記憶や体験したこと自体を忘れてしまっている
③着替えや歯磨きなど、長年の習慣や行為に支障が出ている
このチェックリストに当てはまっている人は、加齢ではなく認知症によって物忘れがひどくなっている可能性が考えられます。
認知症は高齢者の病気と思われがちですが、比較的若い40代以降の方でもアルツハイマー型という種類の認知症を発症することがあります。
周りの人にチェックリストのような物忘れを指摘されたり、自分の周りに認知症のような物忘れをしている方がいる時は、まずは病院を受診して専門医に診断をしてもらいましょう。
認知症は、早期発見・早期治療がとても大切です。
1−3. 脳の病気による物忘れ
急に物忘れがひどくなり、そのことを自覚している方は、脳腫瘍や硬膜下血腫といった脳血管系の病気のサインである可能性が考えられます。
もし脳血管の病気だった場合は、物忘れ以外にも頭痛や手足のしびれといった症状が現れます。
物忘れ以外に体にも症状が出ている時は、すぐに病院にかかり、CTやMRIによる検査を受けましょう。
1−3−1. 脳の病気の兆候を知るチェックリスト
【脳腫瘍】…頭痛、吐き気、体の片側が麻痺する、視力低下、表情が引きつる
【慢性硬膜下血腫】…頭痛、吐き気、手足のしびれ、けいれん、意欲が低下する
【水頭症】…頭痛、吐き気、倦怠感(だるさ)、食欲がなくなる
脳血管系の病気のほとんどは、頭痛や吐き気・麻痺が主な特徴です。
急にひどい物忘れを感じた時は「脳の病気かもしれない」と一瞬でも疑うことで、早期発見・早期治療につながります。
1-4. ADHD(大人の発達障害)による物忘れ
日頃から物忘れが多かったり、同じミスを繰り返してしまったり、約束の時間を守れないことなどで悩んでいる方は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)が原因かもしれません。
ADHDは近年までは子どもの障害と考えられていましたが、大人になってからこの症状を自覚し、ADHDと診断される方も増えてきました。
ADHDは「注意力や集中力が保てない」という特徴があります。
そのため、複数の行動を同時に行うことが苦手だったり、部屋の片付けができなかったり、約束を忘れてしまうことがよく起こります。
この集中力や注意力が散漫であるという特徴から、物をよく忘れてしまうこともあるのです。
1-4-1. ADHDのチェックリスト
①約束を忘れたり、集合時間に遅れることが時々ある
②順序通りに行う作業が苦手で、他人よりひどく苦労すると感じる
③長時間座っていなければならない時に、手足を動かしたりそわそわしたりと落ち着かないことがよくある
④目の前の課題を避けたり、遅らせることがよくある
⑤急に活動的になったり、何かに駆り立てられるように行動することがよくある
以上の5つの項目がすべてではありませんが、このチェックリストがまるで自分のことのように感じられる方は、ADHDの特性を持っている可能性があります。
ADHDは、服薬などで上手に付き合っていくことができる特性です。
もしADHDを疑った時は、最寄りの心療内科などを受診して、専門医に相談をしてみましょう。
2. ひどい物忘れを解消する3つの対策
物忘れがひどくなってきた時は、脳にストレスが溜まり「脳疲労」を起こしている状態です。
つまり物忘れを解消するためには、この脳疲労を解消してあげることが一番のコツです。
認知症や病気による物忘れは病院の受診が必要ですが、加齢や疲労による物忘れは生活習慣を整えることで改善が可能です。
ここからは、今のひどい物忘れを解消しクリアな記憶を保つための3つの対策をご紹介します。
2-1. 毎日7時間半の睡眠をとる
物忘れを起こす脳の疲労物質を減らすためには、やはり「睡眠」が最も効果的です。
人は寝ている間に、必要な記憶を覚えておき不要な記憶を忘れるといった記憶の整理を行います。
寝る時間をしっかりと確保できていないと、この記憶の整理が間に合わず、覚えておきたいことを定着できずに物忘れにつながってしまいます。
物忘れを解消したい方は、まずはしっかりと眠ることから始めてみましょう。
物忘れ対策のための睡眠時間は、7時間半がベストです。
人の眠りは、約90分ごとにレム睡眠(記憶を定着させる睡眠)とノンレム睡眠(脳や体の疲労を回復させる睡眠)の周期を繰り返し、この周期が終わるタイミングで起きるとスムーズに目覚めることができます。
この90分ごとの周期のうち、6時間では疲労物質を十分に取り除けず、9時間もの睡眠時間を毎日確保することもなかなか難しいことから、物忘れ対策に最適な睡眠時間は7時間半となります。
まずは十分な睡眠時間を確保して、1日中働いた脳をしっかりと休めてあげましょう。
2−2. 30分ごとに小休憩をとる
2時間も3時間も集中し続けられる人は「すごい!」と感じるものですが、脳の疲労や物忘れのことを考えると、何時間も集中し続けるのは良いことではありません。
人の集中できる時間はもって1時間ほどと言われていて、それ以降は徐々に集中力が下がっていき、記憶の定着率も下がっていきます。
その原因の1つが、脳に疲労が溜まっていくからです。
この疲労物質を溜めないように、仕事や勉強中は30分に1回、5分ほどの小休憩をとりましょう。
休憩時間を確保できないほど忙しい方でも、僅かな時間を見つけて意識的にぼーっとして脳を休めてみてください。
何時間も集中して仕事終わりにまとめて休むより、こまめに休憩をとるほうが集中力が続き、覚えておきたいことも脳に定着しやすく物忘れを解消できます。
次の仕事や勉強・家事からは、こまめに休憩をとることを意識してみましょう。
2−3. 仕入れた情報をアウトプットする
記憶が定着(インプット)したかどうかを確認する最も確実な方法は、誰かにその情報を説明(アウトプット)できるかどうかで判断できます。
他人に上手に説明するためには、まず自分がその物事をしっかりと覚えておかなくてはいけませんよね。
そのため物忘れを解消するには、例えば小説や映画の感想を友達に話すなど、情報をアウトプットすることもとても効果的です。
誰かに伝えるというひと手間を加えることで、脳は「この情報は大事だ!」と判断して、記憶に積極的に定着させようとします。
また口で説明することで、目だけでなく耳からも情報を入れられるため、その情報の定着率がさらに上がり、物忘れの解消につながります。
特定の物事を覚えておきたい時は、誰かに話す(アウトプットする)ことを前提に情報や知識をインプットをしてみましょう。
3. 年代別に意識したい物忘れ対策
ここからは30代・40代・50代のそれぞれの方に向けて、年代別に意識したい物忘れ対策を解説していきます。
ご自身が当てはまる年代の対策は、日常生活の中で特に意識してみましょう。
3−1. 30代の物忘れ対策
30代から物忘れを自覚し始めた方は、上で解説した通り、仕事が忙しかったり人間関係などのストレスが原因で「脳疲労」が溜まっている可能性があります。
脳が疲労し続けていると、脳の老化や認知症の発症を早めるとも言われています。
この脳疲労の初期症状が「ひどい物忘れ」であり、働き盛りだったり家事・育児に追われる30代の方は、脳疲労を溜め込まない生活を心がけることが将来の物忘れや認知症対策につながります。
脳疲労を予防・解消する最も効果的で楽な方法は、「ぼーっとする時間を作る」ことです。
世の中には脳や体をリフレッシュさせるためのいろんな情報が溢れていますが、「運動して汗をかかなきゃ!」「脳にいい栄養をとらなきゃ!」とあれこれ考えたり、スマホで必死に情報収集したりすることは、かえって脳疲労が溜まる原因となってしまいます。
人間の脳は、ぼーっとしている時も次にすべきことを思考していると言われています。
つまり、あえて何もしない時間を作ることで脳の疲労を和らげながら、次の行動をスムーズに行うこともできるのです。
日常生活が慌ただしい30代の時こそ、意図的にぼーっとする時間を5〜10分だけでも作り、脳を時々休めてみてください。
その時間で頭の中で情報が少し整理されて、物忘れを防ぐことができますよ。
3−2. 40代の物忘れ対策
40代は、加齢による物忘れやアルツハイマー型認知症など、物忘れを自覚したり他人から指摘されることの多い年代です。
また更年期に入り、女性ホルモンのバランスが乱れることで物を忘れてしまうこともあり、「今までこんなことなかったのに…」と物忘れに最も悩む年代ではないでしょうか。
40代の物忘れ対策で大切なことは、脳と体にとって刺激的な生活を心がけること。
若い年代から発生する物忘れの原因は、アミロイドβペプチドと呼ばれる脳の老廃物と言われています。
年齢を重ねるほどこの老廃物が排出されにくくなり、物忘れを起こしたり認知症にかかりやすくなるのです。
そこで意識したいことが、新鮮で刺激的な活動です。
例えば、
・運動してストレスを解消し、脳を定期的にリフレッシュさせる
・お風呂に浸かって脳の血流を増やし、老廃物の排出を促す
・旅行にでかけたり友達とよく話して、脳に新鮮な刺激を与える
上記のような行動を心がけることで、脳を年相応に、あるいは年齢より若々しく保つことができます。
特に40代は、加齢による体の衰えを自覚しやすく、運動すること自体が億劫になったり、外出する意欲が下がってしまう時期でもあります。
この消極的で刺激の少ない生活は、40代の物忘れの一番の原因です。
運動が苦手な方は、読書や映画鑑賞など自分の好きな趣味に打ち込むこともおすすめです。
そうした新鮮な刺激を自分に定期的に与えてあげて、物忘れを解消し若々しい脳を保ちましょう。
3−3. 50代の物忘れ対策
50代の最も効果的な物忘れ対策は、健康的な日常生活を送ることです。
・1日3食しっかり食べる
・適度な運動を定期的に行って体を刺激する
・外出時はおしゃれをする
・よく眠り脳の疲労物質を溜め込まない
上記のような健康的な生活習慣を毎日意識することが、物忘れの一番の対策です。
50代になると、加齢による物忘れは若い時よりどうしても感じてしまうものですよね。
加齢というどうにもできないことに一喜一憂するのではなく、体や脳の衰えを受け入れながらも、今の自分にできること・やりたいことを最大限に楽しみましょう。
そんな自分の趣味や好きなことをしっかりと楽しむために、普段からの健康的な生活が欠かせません。
若い頃ほど無理ができないからこそ、毎日の心がけが今後の人生を豊かにする土台となります。
年相応の物忘れを受け入れて、今できることを楽しむ。
これが50代に意識したい物忘れの解消法です。
まとめ
物忘れは誰でも年相応に起こるものですが、友達や同年代の人よりひどい物忘れを自覚したり他人から指摘された時は、脳を休めるなどの対策が必要です。
加齢による物忘れであれば、毎日の心がけで改善が見込めます。
もしこの記事を読んで「何かの病気かもしれない」と感じた時は、病院を受診しましょう。
この記事が、あなたの物忘れの悩みを解消するきっかけになれたら嬉しいです。