ドライアイを自分で治すことはできないと思っていませんか?
ドライアイは、目の表面で乾燥が起こる病気で、治療が必要とされます。
目薬で根治させることは難しいともいわれています。
しかし、自分で症状を改善させることは可能です。
程度にもよりますが、セルフケアで症状が気にならないように治すことができますし、医療機関で治療を受けたとしてもセルフケアが必要ないということはありません。
ここでは、ドライアイのセルフケアを「10の知恵」として紹介します。
ドライアイの症状や原因を理解し、セルフチェックで自分の状態を把握していただいてから、トレーニングや食べ物、生活の見直しによって改善する方法を解説、メガネやコンタクト、目薬といったアイテムの選び方を解説します。
最後には、ドライアイにかんする最新医療の概要も掲載しました。
ぜひ、ドライアイの改善に役立ててください。
目次
1. ドライアイの症状を理解する
1-1. 目を守る涙の正体
1-2. ドライアイの3タイプ
2. ドライアイの原因を知る
2-1. 環境とテクノストレス
2-2. 目の疾患
3. 自己チェックで自分の状態を知る
3-1. まばたきチェック
3-2. 症状チェック
4. ドライアイの改善でこんなに変わる
5. ドライアイを改善するケア
6. ドライアイを改善する生活
7. ドライアイを改善する食べ物
8. メガネとコンタクトの選び方
9. 市販目薬の選び方
10. 最新医療の現状
まとめ
1. ドライアイの症状を理解する
ドライアイは、単に目が乾くという症状だけではなく、「目がゴロゴロする」「目を開きにくい」「目が疲れやすい」「光がまぶしい」「充血する」「目が痛い」、さらには「頭痛や肩こり」「イライラやうつの気分」といった目以外の身体や心の症状にまで悪化します。
まずは、涙が目を守るしくみや涙の正体を理解しておきましょう。
1-1. 目を守る涙の正体
ひとつの液体として「涙」と呼ばれる物質は、目の外側から水分の蒸発を防ぐ「油層」、水分と「分泌型ムチン」からなる「液層」、涙を目の表面に薄く均一に広げる働きがある「膜型ムチン」という3層から成り立っています。
ムチンとは、粘膜細胞から分泌されて身体のいたる部分に存在し、粘液を構成する粘性の物質。
近年の研究では、このムチンが涙の質に大きくかかわっていることがわかってきました。
上下まぶたの裏にあるマイボーム腺からは油分が、上まぶたの裏にある涙腺からは水分が、目の表面にある粘膜上皮からはムチンが分泌され、涙はまばたきによって目の表面に広がり、目の鼻側の上下にある「涙点」から涙小管を経て鼻の奥にある鼻涙管へと排出されます。
涙の95%を占める液層は、目の表面を覆う角膜へ栄養を補給し、感染予防や角膜の傷を癒すといった重要な働きをしています。
1-2. ドライアイの3タイプ
ドライアイには、次の3つのタイプがあり、原因や症状が変わってきます。
① 涙液分泌減少型
涙の量が減少するタイプで、加齢や自律神経の乱れが主な原因。
自己免疫疾患である「シェーグレン症候群」が原因であることも。
② 涙液蒸発促進型
涙の蒸発量が増えるタイプで、加齢や炎症によってマイボーム腺の働きが低下することに原因があります。
加齢以外では、生活習慣や環境的な要因があり、「マイボーム腺機能不全」とも呼ばれます。
③ BUT短縮型
十分な量の涙はあるのに、目の表面に広がる涙の膜が途切れやすいタイプで、ムチンの働きが低下して涙の質が不安定になっていることに原因があると考えられています。
ドライアイは放置しても失明する心配はないとされますが、目の表面を傷つけてしまい、痛みや視力の低下を引き起こしますから、セルフケアを続けても症状が長引く場合には眼科の受診が必要です。
2. ドライアイの原因を知る
ドライアイは、中年の女性に多くみられ、加齢、生活環境、ストレスといった原因以外に、降圧剤などの薬や自己免疫疾患なども関係しているといわれています。
とくに大きな要因となっているテクノストレスと、ドライアイを起こす目の病気を解説しましょう。
2-1. 環境とテクノストレス
パソコンのモニターやスマートフォンなどを長時間見つめると、まばたきの回数が減ってドライアイを起こしやすくなります。
近年のオフィスワークや通勤環境で多く見られる、こうしたLEDや液晶モニターなどによって発生するストレスは「テクノストレス」と呼ばれるもの。
テクノストレスは、ドライアイだけではなく首や肩のコリによる上半身の血流悪化、座ったままでいることによる下半身の血流悪化という全身の不調を招き、ストレス反応によって自律神経のバランスを崩し、精神的な障害へも進行してしまいます。
目の乾燥を防ぐオフィス環境や、モニターを使う作業はこまめな休憩をとりながら長時間続けないことが求められています。
2-2. 目の疾患
油分を分泌するマイボーム腺が詰まってしまう「マイボーム腺梗塞」は、ドライアイと密接にかかわっています。
軽症の場合はホットアイマスクやマッサージによって改善しますが、重症になると器具を使って油の塊を排出させる治療が必要になります。
まばたきがうまくできない「瞬目不全」は、きちんと目が閉じられないので、涙の働きを阻害します。
自分は閉じているつもりでも閉じていない場合には、医師に相談して原因を調べなければいけません。
まぶたが痙攣する「眼瞼けいれん」も、涙を十分に出すことができなくなります。
痙攣を抑えるボトックス注射を定期的に打つ治療が行われます。
また、眼精疲労や白内障、緑内障といった疾患でもドライアイの症状が現れるので、目の疾患が原因だと思われる場合には、早めに眼科を受診したほうがいいでしょう。
3. 自己チェックで自分の状態を知る
「なんだか最近、目が乾く」、または眼科でドライアイだと診断されたという人は、自分の目がどのくらい悪化しているのか知りたりものですよね。
ここで紹介する2つのチェック方法は、そのときの状態を反映しますから、一度行うだけでなく、セルフケアを続けながら何度も行ってみましょう。
自分のドライアイが改善されているのか、はたまた悪化しているのか知ることができます。
3-1. まばたきチェック
どれくらい「まばたき」をガマンできるかをチェックしてドライアイの程度を調べます。
① ストップウォッチを用意したら、鏡に向かって目を大きく見開きます
② その状態で何秒間ガマンできるか調べます
・10秒未満の場合は強度のドライアイ
・30秒未満であれば軽度のドライアイ
・30秒以上ガマンできればドライアイの疑いは低い
3-2. 症状チェック
次の8項目で自分の症状が当てはまるかどうかチェックします。
① 目が乾いた感じがする
② 目がゴロゴロする
③ 目に何となく不快感がある
④ まぶしく感じる
⑤ 目が疲れる
⑥ 目が重たく感じる
⑦ 物がかすんで見えることが多い
⑧ コンタクト、パソコン、エアコンのいずれかを使用
・チェックが0個でドライアイの疑いはなし
・1~2個でドライアイの疑いあり
・3個以上でドライアイの疑いが強い
4. ドライアイの改善でこんなに変わる
ドライアイが改善されると、これまでにあげてきた様々な症状が改善されることになります。
具体的にいくつか示しておきましょう。
① 物が見やすくなる
ドライアイを治すと実用的な視力がアップします。
これは1.0とか1.5などという視力とは違い、目の表面にあったキズが治ることによって光の乱反射が改善され、まぶしさが軽減してものが見やすくなるのです。
② 目の乾きやゴロゴロがとれる
目は外気と接しているために光や風の影響を受けやすく、簡単にゴミやチリが入ってしまいます。
そういう器官である目を守っているのが涙なので、ドライアイが治ると乾いた感じやゴロゴロする感じから解放されるのです。
③ 目の疲れやかゆみがとれる
ドライアイで目の表面が乾き、ものが見にくくなると、レンズである水晶体を調節する毛様体という筋肉がなんとかピントを合わせようと動きます。
この状態が続くと目が疲れて重さや痛みを感じるようになるのです。
また、花粉やホコリが目に入ることで起こるアレルギーも改善されます。
④ 頭痛や肩こりがとれる
ドライアイのせいだと気づきにくいのですが、頭痛や肩こりの原因になっていることが少なくありません。
目の疲れが全身の疲労感につながっていることも多々あります。
⑤ 美しい目になる
ドライアイが治ると充血がとれて、黒目が大きくなり、目がパッチリ美しく見えます。
充血を放置すると、目の表面にできたキズを治そうと白目部分の血管が伸びて、黒目が小さくなってしまうのです。
⑥ イライラやうつの気分が晴れる
目の不調や疲労感が続けば、メンタルにも影響を及ぼすことは容易に想像できますよね。
5. ドライアイを改善するケア
ドライアイの改善に効果的なセルフケアを4つほど紹介します。
① ホットアイ
市販のホットアイマスクを使用してもいいですし、タオルを温めて行うこともできます。
タオルを2本濡らして絞り、交互に電子レンジで温め、目の上に置いて冷めたらもう一方のタオルに替えます。
1日1回か2回、5分間続けましょう。
② パームアイ
仕事の合間などでホットマスクを準備できないときには、手のひらをこすり合わせて温め、軽く両目を包むようにケアします。
③ まぶたのマッサージ
マイボーム腺から油分をしっかり出すためのマッサージ。
人差し指の腹で両目のまぶたを外、中、内側と3か所、上下へなでます。
次に上下のまぶたを内側から外側へとなで、仕上げは親指と人差し指でまぶたの縁をつまんで油分を絞り出しましょう。
温めてから行うと効果的、上下のまぶたを同様に。
④ ギュッパ体操
目をギュッと閉じたらパッと開く。
これを10回繰り返して、油分を出すと同時に、目の周囲にある眼輪筋という筋肉をストレッチします。
6. ドライアイを改善する生活
ドライアイのケアは、普段の生活を見直すだけでも効果が上がります。
見直しのポイントは次のような事柄。
① エアコンの風が目に当たらないようにする
② 暖房は湿度が保てる石油ストーブやオイルヒーターで
③ 加湿器は特定の部屋だけでなく住環境全体で使用
④ テレビ、パソコン、スマホの使用時は、まばたきを増やす
⑤ パソコンのモニターは背筋を自然に伸ばして目と同じ高さに
⑥ 寝る1時間前からは、LEDやスマホの使用を避けて間接照明に
⑦ 目の際のメイクで油分の出来をふさがないよう、3ミリ程度離す
⑧ 全身の血流を良くする適度な運動を欠かさない
7. ドライアイを改善する食べ物
ドライアイを改善する食生活のポイントは、「水分」「タンパク質と脂質」「抗酸化成分」の3点です。
① 意識して水分をとる
とくに朝起きたとき、入浴の前後、食事の際には、コップ1杯の水を飲むようにします。
② 十分なタンパク質と良質な脂質
全身の細胞や器官、ホルモンや粘液などの材料となるタンパク質は、ドライアイの改善にも重要です。
涙に含まれるラクトフェリンもタンパク質の一種。
牛乳や乳製品に多く含まれており、腸内の善玉菌を増やして粘膜の状態を整える働きがあります。
涙の質には油分が重要だということはすでに解説しましたが、同じ油分でも「オメガ3系脂肪酸」は、LDL(悪玉コレステロール)を減らしてHDL(善玉コレステロール)を増やすと同時に、涙の質をよくしてくれます。
代表的なオメガ3系脂肪酸である「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA(エイコサペンタエン酸)」はサプリメントで摂取しても効果的。
③ 細胞のダメージを軽減する抗酸化成分
・ビタミンA、C、E
・サケ、イクラ、エビなどに多く含まれるアスタキサンチン
・ブルーベリーに含まれるアントシアニン
こうした抗酸化成分は身体のダメージを軽減し、老化を防ぐので、ドライアイにも効果的だといわれています。
8. メガネとコンタクトの選び方
メガネは伊達メガネであっても目を守る効果があります。
目の周りを保湿する機能をもっているドライアイ用のメガネがおすすめ。
コンタクトレンズは黒目を覆うので、メガネよりも保湿してくれているような気がします。
しかし、ドライアイを悪化させてしまうことが多いので注意が必要です。
目に汚れが残らないように1日使い捨てのものを選び、目が疲れたときはメガネに替えるようにしましょう。
コンタクトの材質は、近年、性能を高めているシリコンハイドロゲル素材がベスト。
長く使用するコンタクトを使っている場合は、菌が繁殖しないよう、ケースを毎月新しいものに替える必要があります。
9. 市販目薬の選び方
ドライアイのケアで市販の目薬を使用するときは、次の事柄に注意してください。
① シンプルな成分構成
ドライアイの目薬は目を保湿することが目的ですから、充血をとる成分や抗菌剤など余計な成分が入っていないものを選びましょう。
充血をとる成分は一時的に効果が出ても、副作用があって逆に充血しやすくなってしまうものがあるので気をつけなければいけません。
② 安価で細かいパッケージ
ドライアイのケアには小まめにどんどん使える目薬が適しているので、高価なものより安価で小さなものが向いています。
一度開封したら劣化しますから、できれば10日程度、長くても1カ月以内には使い切るようにします。
③ 保湿成分が表示されている
保湿が目的ですから、成分表示に保湿成分があるものを選びます。
医療用のものには「ヒアルロン酸」と「油分」が必須成分として配合されていますが、市販のものでもこの2つの成分が配合されているものがあります。
④ 防腐剤の添加がないもの
目薬を長持ちさせる防腐剤は、目の表面を傷つけて炎症させてしまいます。
また、コンタクトの上からさすと防腐剤がレンズについてしまい、透明度が落ちることになります。
成分表示で防腐剤がわからない場合は、「10日使い切り」「1個1個使い切り」といった表示があるものを選びましょう。
10. 最新医療の現状
ドライアイは様々な疾患を引き起こす病気ですから、セルフケアで改善できないと感じたら眼科を受診する必要があります。
最後に、最新医療の現場で行われている治療法を紹介しておきましょう。
① 目薬
近年はドライアイ用の新しい目薬がつくられて、高い効果をあげています。
主に使用されているのは、「ヒアレイン」「ヒアレインミニ」などの「ヒアルロン酸製剤」と、粘膜を強くする「ムコスタ」、涙の質を改善する「ジクアス」です。
② 涙点プラグ
涙が目から鼻に抜ける排出口をふさいでしまう非常に簡単な手術治療ですが、施術後に涙が出過ぎてしまう人もいます。
③ アテロコラーゲン注入
異物を嫌う人には、涙の排出口にコラーゲンを注入して固める方法も。
コラーゲンはしばらくすると溶けてしまうので、繰り返し行う必要があります。
④ 涙点閉鎖
プラグやコラーゲンで効果が上がらない人には、涙の排出口を焼いたり縫ったりしてふさいでしまう方法もあります。
確実に涙を堰き止めることができますが、元に戻すのは難しいというデメリットも。
まとめ
ドライアイは、ただ目が乾くだけでなく、いろいろな症状を引き起こす怖い病気だということがわかっていただけたことと思います。
頭痛や肩こりをはじめとして身体のいろいろ不調で悩んでいる人、頭が重く気分が晴れなくてつらい思いをしている人は、ドライアイを疑い、自己チェックをしてみましょう。
自分がドライアイであることがわかったら、ここで紹介した10の知恵を役立ててください。
【参考資料】
・『本当は怖いドライアイ』 平松類 著 時事通信出版局 2017年
・『図解 やさしくわかる目の病気』 小沢忠彦 監修 ナツメ社 2017年