日本の人口の約6分の1にあたる、約2000万人がドライアイを患っていることは知っていましたか?
パソコンを常用する事務系の仕事をしている人では、4人に3人がドライアイだといわれます。
ドライアイがこれほど蔓延している原因は、目を酷使せざるを得ない現代の生活環境。
ですから、生活の環境や習慣を改善すれば症状を緩和させることができて、自分で治すことも可能なのです。
ここでは、自分でできるドライアイ対策で、早めの効果が実感できるものを紹介します。
多くの人は、ドライアイが「涙が少なくて目が乾燥する病気」だと思っていますよね。
これは間違いではないのですが、ドライアイには「涙が少ない」こと以上に、「涙の質が悪い」という原因があります。
ドライアイは「涙器の病気」に分類されるので、まずここで、涙のしくみを簡単に理解しておきましょう。
涙の主成分は、眼球の上方にある「涙腺」から分泌された「涙液」で、98%が水分、残り2%はタンパク質など。
涙腺では、血液から液体成分だけを抽出して目の表面に放出しています。
涙は、まぶたの内側にある「ゴブレット細胞」から分泌される「ムチン」という粘液が、涙液にとろみをつけて蒸発しにくくし、外気と接する外側は、上下のまぶたにある「マイボーム腺」から分泌された油分がカバーする、という3層でできています。
目の表面を覆った涙は、目頭にある「涙点」に入り、「涙道」を通って鼻腔に放出され、ノドで体内に吸収されます。
この涙の3層構造を維持することと、涙が目の表面に留まるようにすることが、ドライアイ対策の目的となります。
目次
効果が実感できるドライアイ対策15選
① アイマスクやホットタオルで目を温める
② メイクで油分の出口をふさがない
③ マイボーム腺マッサージ
④ 眼輪筋ストレッチ
⑤ ドライアイに効くツボ刺激
⑥ 市販の目薬で症状を緩和する
⑦ パソコン仕事は姿勢に気をつける
⑧ スマートフォンは目に優しいモードで
⑨ メガネやゴーグルでブルーライト対策
⑩ コンタクトレンズの見直し
⑪ エアコンの風を目に受けない
⑫ 加湿器で目の高さを保湿する
⑬ 脂質はオメガ3系脂肪酸で
⑭ 抗酸化成分を摂取する
⑮ ラクトフェリンで腸活
まとめ
効果が実感できるドライアイ対策15選
① アイマスクやホットタオルで目を温める
涙液の原料は血液。
また、ムチンや油分を分泌する器官が正常に働くためには、血流によって酸素や栄養がしっかり届けられている必要があります。
ですから、血流の改善は、ドライアイ対策の基礎となります。
とくに目の周囲の血流改善は、速効性のある対策です。
市販のホットアイマスクや、ホットタオルを目に当てて、5分間温めましょう。
ホットタオルは2~3本用意しておき、冷めたら交換します。
何も道具を使わずに、手のひらを10回くらいこすり合わせて温め、目を覆うようにやさしく当てるパームアイも効果があります。
目の周囲の血流改善とともに、マイボーム腺からの油分の分泌を促す効果もあります。
固まった油を温めて溶かすイメージですね。
② メイクで油分の出口をふさがない
女性の場合は、アイメイクをドライアイ対策の一環として考えなければいけません。
アイメイクがドライアイを悪化させている例では、アイライナーを目の際ギリギリに引いて、油分の出口であるマイボーム腺をふさいでしまっているケースがよくあります。
アイラインは、目の際から3ミリくらい離して引くようにしましょう。
もうひとつ多いのが、ファンデーションが目に入ってしまう例。
上まぶたにファンデーションをつけすぎてしまうと、それが落ちて目に入ったり、マイボーム腺をふさいだりするので、まぶたのメイクは細かいところまで気を使いましょう。
また、メイク落としのクレンジング剤がまぶたや目を傷めるケースも多いので、できるだけ肌の負担が少なくて相性のよいアイメイクリムーバーを探し、目に入らないように気をつけて使いましょう。
③ マイボーム腺マッサージ
上下のまぶたにあるマイボーム腺は、油分が固まったり代謝が悪化したりしてつまってしまうことがあります。
まぶたをマッサージすることによって、つまりを解消することができるので、ぜひ習慣化しましょう。
最初に、人差し指の腹でやさしく上下のまぶたをこすります。
上まぶたを上から下へこすりながら、外側から内側へ。
下まぶたを下から上へとこすりながら、外側から内側へ。
次に上まぶたを内から外へと横に数回なでて、下まぶたも同様に。
最後に、人差し指と親指で上まぶたを横からつまんで、きゅっとやさしく絞ります。
下まぶたも同様に絞りましょう。
このマッサージで、マイボーム腺から油分が出てきます。
涙液の表面に油分を流して、蒸発しにくい涙へと質を向上させるのです。
ホットアイで温めてから行うと、さらに効果的!
④ 眼輪筋ストレッチ
人間の顔には20以上の筋肉があって複雑に動きながら、いろいろな表情を作り出しています。
こうした顔の筋肉の総称を表情筋といいますが、その中でも両目をぐるっと囲むようにしてあり、まぶたを動かしているのが眼輪筋と呼ばれる筋肉。
眼輪筋は表情をつくり出すと同時に、目の表面に涙を広げる「まばたき」という大事な動作を行っています。
ドライアイの人は、まばたきが少ない傾向にあり、眼輪筋が収縮して硬くなっていることがひとつの原因となっているので、眼輪筋をストレッチでやわらかくして血流を改善しましょう。
やり方は簡単で、両眼をギュッと閉じたらパッと開くという動作を10回ほど繰り返すだけ。
これだけでも、目の表面に涙が広がって少し楽になる実感がありますよ。
⑤ ドライアイに効くツボ刺激
血流改善といえば、東洋医学のツボ刺激。
目の疲れを緩和して血流を改善する、目の周囲にあるツボを紹介しましょう。
・攅竹(さんちく)・・・眉頭のくぼんだ部分
・魚腰(ぎょよう)・・・眉毛の真ん中あたり
・太陽(たいよう)・・・眉尻と目尻の中間地点から指1本外側のくぼんだ部分
・睛明(せいめい)・・・目頭のすぐ内側やや上方のくぼんだ部分
・承泣(しょうきゅう)・・・目の下の骨の中央部分
痛くなる手前の強さで押したら、ゆっくりと力を緩める要領で、それぞれのツボを人差し指で5秒間ずつ押していきます。
頭部への血流を悪化させる、首や肩のコリを解消するツボもドライアイには効果的ですから、自分が楽になるポイントをいくつか覚えておくといいでしょう。
⑥ 市販の目薬で症状を緩和する
これだけドライアイを患っている人が多いのですから、ドライアイ用の目薬もいろいろなものが市販されています。
ドライアイ用の目薬は、目をうるおして乾燥を改善するものを選びましょう。
眼科でドライアイと診断された場合に出される点眼薬は、保湿成分としてヒアルロン酸が配合されています。
市販の目薬にもヒアルロン酸を配合したものがありますし、コンドロイチンなどで涙の粘度を上げて蒸発を防ぐものもあります。
刺激が強いものや添加物が多いものは、ドライアイを悪化させる可能性がありますから、あくまでも保湿を目的としていて、余計な成分は配合されていないものが適しています。
防腐剤が入っていないものは使用期限が短くなりますから、あまり量の多いものではなくて、細かく使える安価なものがいいでしょう。
⑦ パソコン仕事は姿勢に気をつける
パソコンやスマートフォンは、ドライアイを悪化させる大きな要因となっているのですが、仕事で使っている人にとっては必須アイテムですから、うまく付き合う対策を考えましょう。
パソコンやスマホのモニターは、発光体を見続けているのですから、長時間使用していると目のダメージが大きくなり、眼輪筋も緊張して収縮し、血流が悪化します。
さらに悪いのは、首を前に出して上目使いになる姿勢で、本来は湾曲している首から背中にかけての脊椎がまっすぐになってしまうので、ストレートネックと呼ばれます。
ストレートネックは、眼精疲労、頭痛、肩こりが慢性になり、ドライアイも悪化させます。
デスクでパソコン仕事をするときの理想的な姿勢は、背筋を自然なS字に伸ばして座れるイスを選び、顎を軽く引いて、目と同じ高さから少し低い位置にモニターがあるような位置関係。
モニターが下になりすぎると首が前に出てしまいがちなので、台などでモニターの高さを調節しましょう。
モニターまでの距離があるほど、目の負担は少なくてすみます。
⑧ スマートフォンは目に優しいモードで
スマートフォンも、今や使わずに生活するのが難しい状況になっていますよね。
手にもつスマホはどうしても近い距離で見ることになるので、できるだけ距離をとって見るような習慣をつけましょう。
ドライアイの対策としては、画面の明るさを抑えることも大事。
最近のスマホには、ダークモードやブルーライトカットモードなど目に優しい機能がありますから、発色やキレイさの問題はあるでしょうが、できるだけ照度は落としたいものです。
暗い中でパッと明るいモニターを見るのは、瞳孔が開いているところにLEDの強い光を当てることになるので注意が必要。
LEDの光は、眼球の奥にある網膜まで達して目に大きなダメージを与えます。
⑨ メガネやゴーグルでブルーライト対策
仕事でパソコンを使う人の間では、ブルーライト対策が常識になりつつあります。
ブルーライトは、人間の目で見ることができる光でもっとも波長が短い青の光。
強いエネルギーをもっていて目に大きなダメージを与えます。
ブルーライトをカットするメガネやゴーグルを使っている人も多いことでしょう。
フルーライトカットのメガネを購入する場合には、ぜひ「UVカット+ブルーライトカット」のものを選びましょう。
日本人はサングラスをオシャレアイテムとして考えがちなのですが、欧米では紫外線から目を守るUVケアのツールとして昔から使われています。
紫外線は、ブルーライトよりさらに波長が短くて、目には見えない光。
ブルーライト以上に、目にダメージを与えます。
UVカットもブルーライトカットも、レンズの色は関係ありません。
色が濃いのにUVカット機能が低いものは、暗い中でLEDを見るのと同じく、瞳孔が開いている状態で紫外線を目に入れてしまうので、とても危険です。
クリアレンズでUVカット機能90%以上のものが安心ですね。
⑩ コンタクトレンズの見直し
コンタクトレンズを使用している人は、ドライアイが悪化しやすいので、目の保湿を考えた製品選びをしましょう。
コンタクトレンズは、装着時に水分をたっぷり含んでいても数時間経つと乾燥してきて、目の表面の涙も吸収して目を乾燥させてしまうのです。
ドライアイ対策でコンタクトレンズを選ぶ際のポイントは2つ。
ひとつは、表面が乾きにくくて水の蒸発が少ないもの。
もうひとつは、水となじんで涙が目の表面に広がりやすいものです。
各メーカーから新機能で保湿力をアップした製品が出ていますから、新しいものをよく検討してみましょう。
いずれにしても、ドライアイ対策にはこまめなケアが欠かせません。
⑪ エアコンの風を目に受けない
ドライアイを悪化させる生活必需品の代表がエアコンです。
温暖化で夏の気温が高くなった近年は、エアコンの有無が生死を分けることすら出てきました。
夏のエアコンの使い方では、エアコンの風が目に入らないようにするのがポイント。
直接の風を受けないように風量や風向きをうまく設定しましょう。
扇風機でも、風が目に入れば乾燥するのは一緒です。
空気が乾燥する冬は、エアコンの使用によってさらに湿度が下がり、ドライアイが悪化します。
暖房は、可能であれば風が出るエアコンやファンヒーターではなくて、石油や電機のストーブ、オイルヒーター、床暖房などを使いましょう。
オイルヒーターは、乾燥を防ぐ効果が大きく安全性も高いので、近年は人気が高い暖房器具になっています。
⑫ 加湿器で目の高さを保湿する
空気が乾燥する冬に欠かせないのが加湿器ですよね。
加湿器もいろいろなタイプがありますが、部屋全体を加湿するものは床に置くタイプがほとんど。
ドライアイ対策では、加湿する範囲と高さが重要です。
住居内は、できるだけ広い範囲を加湿できるようにしましょう。
そのためには、大型の加湿器が必要になるかもしれませんが、ドアを閉めて限られた部屋だけを加湿してもすぐに乾燥してしまいます。
高さとは、「目の高さ」のこと。
床に置いてある加湿器に表示される湿度は、その場所のその高さのものですから、離れた位置にいて、しかも目の高さになると、まったくあてになりません。
湿度計を目の高さに置いて保湿するのがベストです。
⑬ 脂質はオメガ3系脂肪酸で
ドライアイ対策では、食生活の見直しも欠かせません。
涙の重要な成分であるムチンは、糖とタンパク質が結合した糖タンパク質であり、蒸発を防ぐのはマイボーム腺から分泌される油分です。
これだけでも、タンパク質と脂質が不足すれば、涙の質は落ちることがわかりますよね。
マイボーム腺から油分がしっかり分泌されないと、すぐに涙液が蒸発してしまうので、とくに良質な脂質の摂取は重要です。
「良質な脂質」とは、「LDL」が全身に運んだ、細胞膜の材料となるコレステロールの余りを回収する「HDL」が増える「オメガ-3系脂肪酸」と呼ばれる脂質。
青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、動物性のオメガ-3系脂質。
クルミに多く含まれるα-リノレン酸は植物性のオメガ-3系脂質で、食用油では亜麻仁油やエゴマ油に多く含まれています。
⑭ 抗酸化成分を摂取する
ドライアイ対策で外せないものに、活性酸素対策があります。
活性酸素は酸素が体内で使われると発生する物質で、強力な酸化作用をもっています。
細菌やウィルスを殺す免疫機能がある一方で、正常な細胞や器官まで傷つけてしまい、老化やいろいろな病気の原因をつくるリスキーな物質。
もちろん目に関連する細胞も酸化ストレスで傷つきます。
身体には抗酸化力が備わっているのですが、有酸素運動をしたり紫外線を浴びたりするだけでも活性酸素は体内で増えてしまい、ストレスによっても増えることがわかっています。
ですから、抗酸化成分が多く含まれる食品の摂取が健康には欠かせません。
代表的な抗酸化成分には、ビタミンA、C、E、カロテノイド、ポリフェノールなどがあります。
こうした成分を意識して摂取することで、ドライアイも改善されます。
⑮ ラクトフェリンで腸活
最近注目されている健康法に「腸活」がありますね。
実は、腸活とドライアイには深い関係があります。
腸活は、腸内フローラと呼ばれるビフィズス菌などの善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、腸の粘膜を健康な状態にすることが目的。
これは体中の粘膜を健康な状態にすることにつながり、目も粘膜ですから、涙器や涙の状態を改善することができるのです。
内臓脂肪を減らす効果があるとされるラクトフェリンは、涙液に含まれていることから、目薬にも配合される糖タンパク質。
牛乳や乳製品から摂取でき、サプリメントも市販されています。
まとめ
最後に、ドライアイが判断できるチェックポイントを掲載しておきましょう。
① 目がよく乾く
② 目がゴロゴロする
③ 目に何らかの不快感がある
④ 光をまぶしく感じやすい
⑤ 目が疲れやすい
⑥ ものがかすんで見える
⑦ 目が重たく感じる
⑧ コンタクト、パソコン、エアコンのいずれかを使用している
ここで紹介したドライアイ対策を予防に
この8つのチェックポイントのうち、当てはまるものが1個あればドライアイの疑いがあり、3個以上だと疑いが強い状態とされます。
ドライアイの疑いがない人は、ほとんどいませんよね。
ぜひ、ここで紹介したドライアイ対策を予防にも活用してください。
参考資料
・『本当は怖いドライアイ 「様子を見ましょう」と言われた人のために』 平松類 著 時事通信社出版局 2017年
・『目の病気ビジュアルBOOK』 本庄恵/丸林彩子 編 メディカ出版 2017年
・参天製薬 サイト
https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/eyecare/lecture/lecture01.jsp