「クエン酸」という文字を目にしただけで、唾液がわいてくるという人も多いのではないでしょうか。
レモンや梅干しを連想するからですよね。
クエン酸は、レモンやミカン、グレープフルーツなどの柑橘類、梅干しなどに多く含まれている有機化合物。
有機化合物とは炭素を含む化合物の総称で、クエン酸は化学的に合成されたものが粉末で販売されており、食品添加物として酸味をプラスする、保存性を高めるためのpH調整剤として配合するといった使用法があります。
ここでは、日常生活の中でクエン酸を効果的に使う方法を紹介します。
口からの摂取による「体内での作用」以外に、「汚れをゆるめる」「抗菌」「消臭」「クモリとり」という4つの化学作用に分類し、15の使用法をピックアップしました。
4つの化学作用については、「酢」と同様の働きをするものですが、「匂いがないこと」「酸性物質を意図的に残せること」がメリット。
また、日常生活においては重曹と組みあわせることで、効力を発揮することが多いのも特徴です。
目次
1. 体内における作用
① 腎臓結石の予防
② 高血圧の改善
③ ミネラルの吸収を高める
2. 汚れをゆるめる作用
④ 排水溝のぬめりとり
⑤ バスタブの湯アカを浮かせる
⑥ 襟や袖口の汚れを浮かせる
3. 抗菌作用
⑦ まな板の抗菌消臭
⑧ キッチンの油汚れ落とし
⑨ 畳をきれいにする
4. 消臭作用
⑩ 電気ポットの匂いとり
⑪ トイレの消臭
⑫ ペットの粗相を始末
5. 錆びやくもりをとる作用
⑬ 蛇口の水アカをおとす
⑭ シンクをピカピカにする
⑮ 鏡やガラスのくもりをとる
まとめ
1. 体内における作用
長い間、体内におけるクエン酸の働きといえば、まず疲労回復があげられていました。
ところが、近年になって疲労回復効果は疑問視されるようになっています。
まず、エネルギー生成の中心的役割を果たすクエン酸回路というしくみを活性化させるという点ですが、外部から摂取したクエン酸がそのままエネルギー生成に使われるという科学的根拠がないのです。
これは、口からコラーゲンを摂取しても、体内で分解されるために、そのまま皮膚のコラーゲンにはならないことと似ていますよね。
もうひとつの理由は、クエン酸が疲労物質である乳酸を分解するという点で、乳酸が疲労物質ではなくエネルギー源だとする見解が一般的になっている現在、疲労回復という効能はあてはまらないのです。
ですから、筋トレの後などにクエン酸を摂取しても、疲労回復の効果なしと考える人が増えつつあります。
ここでは実証されている作用による3つの効能を紹介しましょう。
① 腎臓結石の予防
腎臓結石や尿路結石は、腎臓でカルシウム、シュウ酸、マグネシウム、尿酸などが結合してできるものと考えられています。
結石の中でも、もっとも多いのがシュウ酸とカルシウムが結合してできる「シュウ酸カルシウム結石」で、全体の80%を占めるのですが、クエン酸には、尿の中でシュウ酸とカルシウムの結合を抑える作用があるのです。
クエン酸は体内に入るとアルカリ性に変わって体内の酸を中和するので、クエン酸を多く含むアルカリ性食品である柑橘類の果物や梅などを積極的に摂取することで、結石を予防することができます。
② 高血圧の改善
クエン酸は血圧の上昇を抑えることがわかっています。
ホルモンの中には血圧を上昇させるものがあり、そのひとつであるアンギオテンシンⅡは血管を収縮させる作用で血圧を上昇させます。
クエン酸は、このアンギオテンシンⅡの働きを調整して血圧の上昇を抑制。
血管をやわらかくするので、毎日摂取することによって、動脈硬化を予防する働きも期待できます。
また、尿酸や中性脂肪を低くする効果も認められているので、痛風や脂質異常症の予防や改善にも役立ちます。
③ ミネラルの吸収を高める
クエン酸は、ミネラルの吸収を高める効果も実証されています。
カルシウム、マグネシウム、鉄といったミネラルは、水に溶けないので不溶性ミネラルと呼ばれますが、クエン酸と結合することによって水溶性になります。
この作用がキレート効果と呼ばれるもの。
アスリートがクエン酸を摂取するのは、疲労回復物質を分解したりエネルギー生成を高めたりすることよりも、栄養素の吸収を高めることに意味があります。
ミネラルの吸収を助けるので、肌にもよい影響を与えることが知られ、さらに酸のパワーで古い角質を溶かすピーリングにも用いられます。
2. 汚れをゆるめる作用
酢やクエン酸は、重曹とともに掃除や洗濯で大活躍するアイテム。
汚れの成分にしみこんで落ちやすくする「浸透・剥離・溶解作用」は、酢の作用としてよく知られていますが、クエン酸にも同様の作用があります。
とくに、結晶性で頑固にこびりついた水アカなどの汚れにはとても有効。
この作用を活用する使い方を3つほど紹介しましょう。
なお、販売されているクエン酸にはグレードがあり、薬用、食用、掃除用と別れています。
安心して使うために、ぜひ食用以上のグレードを選びましょう。
掃除に使用するクエン酸液は、水200mlにクエン酸小さじ1杯を入れてよく溶かし、スプレー容器に入れて使用します。
④ 排水溝のぬめりとり
排水溝のぬめりは、重曹と温めた酸のパワーで浮かせて熱湯で洗い流します。
重曹は天然素材ですからたっぷり使用しても安心。
十分な量を排水溝に振りかけてください。
濃くしたクエン酸液や酢を耐熱容器に入れ、電子レンジで加熱したものをかけて発砲させたら、数分おきましょう。
ぬめりが分離しやすくなりますから、熱湯をかけて洗い流します。
この、「重曹と温めた酸で放置してから熱湯で流す」というパワフル攻撃を数回繰り返せば、頑固な悪臭の原因にもなるぬめりがきれいに落ちます。
⑤ バスタブの湯アカを浮かせる
湯アカがこびりついてしまうバスタブは、重曹と酸のダブルパワーで毎日清潔に保ちましょう。
約4%の重曹水溶液を湯アカ部分にスプレーしたら、その上にクエン酸液をスプレーして発砲させ、しばらく放置。
スポンジで泡と湯アカをこすり落としたら、水で洗い流してください。
仕上げに、しっかりからぶきをして水分をとるのが、ピカピカに保つコツ。
この掃除方法は、大理石のバスタブには向きません。
⑥ 襟や袖口の汚れを浮かせる
襟や袖口の頑固な皮脂汚れ落としは、重曹+クエン酸液の発砲作用で汚れを浮かせるのがポイント。
重曹を水で溶いた重曹ペーストを襟や袖口の汚れ部分に直接塗ってなじむまで放置します。
生地によくなじんだところで、クエン酸液か酢をたらして泡立たせてください。
汚れが浮いてくるので、あとはいつものように洗濯機で洗いましょう。
いつまでも白さを保ちたいシャツなどは、この発砲ケアで清潔に保てます。
3. 抗菌作用
酢には雑菌を増やさない「抗菌・静菌作用」があることはよく知られていますが、クエン酸は臭いを気にせずに同じ作用を得ることが可能。
安全な抗菌剤として、いろいろな場面で使用できます。
70度以上に温めたり、塩と組み合わせて使ったりすることで、「抗菌・静菌作用」が高まりますから、使う場所によって工夫してください。
⑦ まな板の抗菌消臭
雑菌が繁殖しやすいまな板は、重曹とのWパワーで抗菌消臭します。
まず、まな板の表面に重曹をふりかけ、上からクエン酸液をスプレーしましょう。
汚れを包み込んだ泡が次第に消えていきますから、5分から10分放置した後に熱湯で洗い流してください。
プラスチック製のまな板には、重曹を塗ってラップでパックして少々置いておくと、頑固な汚れも落とすことが可能。
酢の原液を使うと、より強力な抗菌作用を得ることができます。
⑧ キッチンの油汚れ落とし
除菌に気を使いたいキッチンまわりは、油汚れを落とすと同時にしっかり除菌消臭したいものです。
コンロは、調理で油が飛び散り、焦げ付きもあるので頑固な汚れが重なりがち。
重曹とクエン酸で早めのケアが、きれいに保つコツです。
飛び散って間のない油には、重曹をかけて指で馴染ませてから布でサッと拭きとり、仕上げはクエン酸液をスプレーして硬めに絞った布でふいてください。
時間が経って固まってしまった汚れは、重曹に水を加えてペースト状にしたものを歯ブラシなどにつけてこすり、仕上げは濃くしたクエン酸液か酢を薄めたものをスプレーします。
IHヒーターの天板は、重曹ペーストを塗ったらクシャクシャに丸めたラップで円を描くようにこすってください。
仕上げはコンロと同様に、クエン酸液か薄めた酢をスプレーしてから、絞った布で拭きとります。
⑨ 畳をきれいにする
畳は重曹を使用すると黄ばんでしまうので、クエン酸が有効。
掃除機でゴミやホコリをとったら、クエン酸液を布にスプレーして拭き上げるだけです。
畳の表面を傷めないよう、目に沿ってやさしく拭くのがコツ。
クエン酸液を畳に直接スプレーするのは避けましょう。
フローリングの床も、クエン酸液で汚れ落としと抗菌処理ができます。
畳と同じように掃除機をかけてから、布にスプレーして拭き上げてください。
頑固な汚れには重曹を水で練ったペーストが有効ですが、オイル仕上げのフローリングには使えないことを覚えておきましょう。
4. 消臭作用
酸性の物質である酢やクエン酸は、アルカリ性の悪臭を中和して消臭する作用があります。
トイレのアンモニア臭、魚の生臭い臭い、タバコの悪臭などは、酸のパワーで中和することができるのです。
酢がもつ独特の刺激臭は時間がたてば消えますが、臭いを気にせず使えるクエン酸は、使用している最中でもスッキリした空気を保つことが可能です。
⑩ 電気ポットの匂いとり
電器ポットの中は、水アカや嫌な臭いが着きやすく、気がつかないで使っていて、ある日愕然とすることがありますよね。
酸のパワーで汚れと臭いをとって、毎日きれいな状態で使いましょう。
電気ポットに満タンの水を入れてクエン酸液を加え、沸騰させたら2時間放置。
中の水を捨てたらスポンジでこすって汚れを落とし、何度か水を入れてすすぎましょう。
電気ポットの水アカは、水道水に含まれる石灰が固まったものですから、酸が有効なのです。
しつこい水アカは、スポンジに重曹をつけてこすってから水洗いをします。
「クエン酸洗浄モード」があるポットは、取り扱い説明書に従ってください。
⑪ トイレの消臭
便器についた頑固な汚れや、水面部分につく輪ジミは、重曹と酸のダブルパワーで落とすと同時にアンモニア臭も消臭しましょう。
便器についた汚れや輪ジミ部分に重曹をたっぷり振りかけたら濃いクエン酸液か酢をスプレーして発砲させます。
そのまま5分放置してから、トイレブラシでこすってください。
便器まわりに飛び散った尿による汚れは、時間がたつと弱酸性からアルカリ性へと変化します。
すぐにとる場合には、重曹水溶液をスプレーすれば臭いと一緒に汚れもとれますが、時間がたってしまった汚れにはクエン酸液のスプレーで中和させるのが効果的です。
⑫ ペットの粗相を始末
カーペットやクッションなど、洗いにくいものの上に犬や猫が吐いてしまったり、お漏らしをしてしまったときにも、重曹と酸のダプルパワーが効きます。
汚れたところを見つけたら、吐いたものや便はこすらないように取り除き、クエン酸液をたっぷりスプレーし、その上から重曹を振りかけて乾くまで放置します。
重曹が乾いたら掃除機できれいに吸い取りましょう。
これも酸で中和するので、強い臭いも消臭することができます。
5. 錆びやくもりをとる作用
酢やクエン酸には、金属製品の「錆び」や「くもり」を落とす「還元作用」と呼ばれるパワーがあります。
なかなかとれない鉄や銅の錆びとくもりは、酢やクエン酸液を振りかけることで、元のピカピカの状態に戻すことが可能。
しつこい汚れには、ペーパーにたっぷりしみ込ませて張り付けたらしばらく放置するのがコツ。
クエン酸液の濃さや放置する時間を工夫してみましょう。
⑬ 蛇口の水アカをおとす
ピカピカにしておきたくても、すぐにくもってしまうのがキッチンや洗面台などの蛇口。
これもクエン酸液が有効ですが、仕上げに重曹を使うのが、ホテルのようなピカピカ感を維持するコツです。
クエン酸液をキッチンペーパーにしみ込ませて、蛇口の金属部分に巻き付けます。
そのまま2~3時間放置したらペーパーをとって拭きとりましょう。
ホテル並みに仕上げるスペシャルコースは、ここで水を含ませたスポンジに重曹を振りかけて蛇口をこすり、最後に乾いた布でからぶきします。
⑭ シンクをピカピカにする
ステンレスのシンクは、重曹の細かい粒子と酸のパワーでピカピカにします。
シンクに重曹を振りかけたら、スポンジに水を含ませてこすります。
クモリがとれたら水で洗い流し、仕上げはクエン酸液をスプレーして拭きとりましょう。
頑固な水アカは、濃いクエン酸液か酢をキッチンペーパーにしみ込ませて張り付けたら、1時間ほど放置。
汚れが浮いてくるので、塩大さじ2に酢小さじ1を加えたペーストをスポンジにつけて磨いてください。
塩の研磨作用と酸のパワーでピカピカにすることができます。
⑮ 鏡やガラスのくもりをとる
金属だけでなく、鏡やガラスのくもりにも、クエン酸液が有効です。
スプレーしてからやわらかい布で拭きとるだけ。
とくに鏡は、拭いた跡が残りがちですが、クエン酸液のスプレーだったら拭いた跡も残らず、ピカピカにすることができます。
洗面台から姿見、卓上ミラーから手鏡まで家じゅうの鏡をピカピカに保てば、気分よく自分を見ることができて、気持ちも晴れ晴れとします。
食器棚やサイドボード、液晶テレビの画面などもクエン酸液でピカピカになります。
頑固な汚れがつきがちな窓ガラスは、重曹の水溶液をスポンジにつけてこすってから、クエン酸液をスプレーしてみましょう。
まとめ
クエン酸や酢のパワーは、重曹と組み合わせることで、より強力な効果を発揮することがおわかりいただけましたね。
クエン酸には、ここで紹介した「体内での作用」「浸透・剥離・溶解作用」「抗菌・静菌作用」「消臭作用」「還元作用」という5つの作用以外にも、「リンス作用」と呼ばれるものがあります。
これは、重曹や石けんで洗濯して粒子や界面活性剤などのアルカリ性成分が残ってしまったとき、すすぎにクエン酸液を使うと酸で中和するので、残った石けんの成分を油脂成分に戻し、うるおいを与えながらサラッと仕上がるというもの。
掃除や洗濯でより強い効果を得たい場合には酢を使用した方がいいケースも多いのですが、記事中でも紹介したように、クエン酸は臭いを気にしなくてよいというのがメリットです。
酢の匂いが苦手だという人も多いですよね。
クエン酸を常備して、健康と快適ライフに役立ててみませんか?
【参考資料】
・『重曹、お酢、クエン酸の使いこなしバイブル』 岩尾明子 著 主婦の友社 2018年
・『[最新版]食品添加物 ハンドブック』 渡辺雄二 著 ビジネス社 2020年