黒ずんだ肌のくすみがあると、人に与えるイメージが悪くなるのではないかと思い、何事にも自信がもてなくなりますよね。
顔色が悪い、肌に透明感がない、なんとなく肌の色がさえないといったときに、「肌がくすんでいる」という表現を使う人が多いと思います。
しかし、肌のくすみには、原因や種類がいろいろとあるのです。
まず、角質が厚くなって肌全体が黒ずんで見える「角質肥厚タイプ」。
次に、乾燥によって肌が黒っぽく見える「乾燥タイプ」。
そして、顔の血行が悪くなって血色が失われてくすんで見える「血行不良タイプ」。
最後に、慢性的な肌荒れが原因で色素沈着が起こる「炎症性色素沈着タイプ」。
くすみは原因によってケア方法が変わりますから、自分のくすみの正体を見極めないといけません。
ここでは、肌のくすみをこれら4つの原因でタイプ分けし、くすみを引き起こすメカニズムと有効なケア方法を解説します。
まず、自分がどのタイプに当てはまるか、チェックすることからはじめましょう。
目次
1. 角質肥厚タイプ
1-1. 肌の基本構造と機能を知る
1-1-1. 表皮を再生するターンオーバー
1-1-2. 保湿の要となる角層のバリア
1-2. 角質肥厚の原因はターンオーバーの遅れ
1-3. くすみの原因になるメラニン
1-4. ピーリングで角質ケア
2. 乾燥タイプ
2-1. 肌が乾燥するしくみ
2-2. 原因の多くは間違ったスキンケア
2-3. 肌乾燥の悪循環
2-4. 必要なのは正しい保湿ケア
3. 血行不良タイプ
3-1. 美容液をなじませるマッサージ
3-2. 血行不良に効くツボ刺激
4. 炎症性色素沈着タイプ
4-1. 肌の老化を進める慢性的な肌荒れ
4-2. ケアは美白成分とピーリング
1. 角質肥厚タイプ
肌がくすむ代表的なケースが、この角質肥厚タイプです。
角質とはなにか、なぜ厚くなってしまうのか、理解するためには肌の基本的な構造や機能を知る必要があります。
これらの事柄は、正しいスキンケアを身につけるためにも、しっかりと頭に入れておきましょう。
角質肥厚タイプに当てはまるチェックポイントは、「肌がゴワついている」「肌がどんより濁って見える」「年齢とともにくすみが出てきた」といった事柄です。
1-1. 肌の基本構造と機能を知る
人間の肌の下には、皮下脂肪があることを知らない人は、あまりいないでしょう。
しかし、皮下脂肪の上にある皮膚が、多層構造になっていることを知っている人は少ないかもしれません。
肌は体内に近い方から、皮下脂肪がほとんどを占めてクッションの役割や、体温を逃がさない働きをしている「皮下組織」、その外側が、コラーゲンやエラスチンといったタンパク質の線維と、ジェル状のヒアルロン酸などで肌のハリや弾力を保っている「真皮」、さらに外側には、外気と接している「表皮」という3層構造でできています。
体の部位によって違いはありますが、平均すると真皮の厚さは2ミリ程度、表皮の厚さは0.2ミリ程度で、その薄い表皮はさらに4層の構造になっています。
1-1-1. 表皮を再生するターンオーバー
表皮のもっとも真皮側には「基底層」という層があり、ケラチノサイトという細胞が細胞分裂を繰り返しています。
ケラチノサイトは2つに分裂すると、1つは基底層に残って次の細胞分裂を行い、もう1つは表皮細胞となって、後から生まれた細胞に押し出されるように肌の表面へと移行します。
基底層の外側は表皮細胞がゴツゴツしている「有棘層」で、その外側は、表皮細胞が押しつぶされて扁平になった「顆粒層」となります。
やがて表皮細胞は死んで核を失い、ペラペラの薄い角質となって「角層」を構成します。
角層の厚さはわずか0.02ミリ程度しかありませんが、角質が15~20層もレンガのように重なり、すき間を細胞間脂質がセメントのように埋めて、強固な壁を築いています。
角質はだんだん肌の表面へと押し出され、はがれ落ちてなくなります。
この、基底層での細胞分裂から、角層で角質が剥離するまでの代謝のサイクルを「ターンオーバー」と呼びます。
ターンオーバーの長さは、20代の健康な肌で30日程度とされ、加齢によって代謝が落ちると長くなって、40代では倍の日数がかかることも珍しくありません。
1-1-2. 保湿の要となる角層のバリア
角層の強固な壁は、細菌やウィルスなど外部からの異物侵入や刺激物から肌を守る保護機能と、体内から蒸発する水分をつなぎとめて肌にうるおいを与える保湿機能をもっています。
この外と内の両面に対する防御壁を「角層のバリア機能」と呼びます。
角層がなんらかの理由によって傷ついてしまうと、バリア機能が低下して、様々な肌トラブルを引き起こします。
1-2. 角質肥厚の原因はターンオーバーの遅れ
ターンオーバーは、長くなりすぎても短くなりすぎてもトラブルの原因になります。
加齢や体調不良によってターンオーバーが長くなると、はがれ落ちるはずの古い角質が肌の表面に残ってしまい、角質が厚くなります。
この状態を「角質肥厚」と呼びます。
角質肥厚は、くすみだけでなく、ニキビの原因にもなります。
若い肌にできるニキビは、毛穴の中にある皮脂腺から分泌される皮脂が過剰になることが原因で、毛穴に皮脂が溜まってしまいます。
しかし、皮脂の分泌が少なくなってくる30代や40代でできるニキビは、角質肥厚によって毛穴の出口がふさがれてしまうことが原因になります。
ふさがれた毛穴の中に皮脂が溜まっていき、それを栄養とするアクネ菌が繁殖してしまうのです。
1-3. くすみの原因になるメラニン
表皮の基底層には、メラノサイトという細胞も存在します。
肌が紫外線を浴びると、メラノサイトはメラニンという色素を生成し、紫外線をシャットアウトして体を守ろうとします。
メラニンは表皮細胞といっしょに押し出されていき、役目を終えると角質といっしょにはがれ落ちてなくなります。
ところが、角質肥厚になると古い角質といっしょにメラニンも肌に残ってしまうので、この色素が肌を黒ずんで見せるのです。
日焼けによって大量につくられたメラニンが肌に溜まってしまうと、色素沈着をおこしてくすみやシミになります。
ですから、角質肥厚は早期のケアが大事なのです。
1-4. ピーリングで角質ケア
角質肥厚にもっとも有効なケアは、ピーリングで古い角質を取り去ることです。
ケミカルピーリングは、美容皮膚科などで行われてきた治療の1つですが、近年は自宅でできるセルフピーリングが普及しました。
ピーリングコスメは、いろいろなものが売られており、最近は「ゴマージュ」と呼ばれるタイプも増えています。
ゴマージュは、植物由来の成分を粒子状にしたもので、肌を研磨する「スクラブ」と呼ばれるタイプと同様に肌をこすります。
こうした肌をこするタイプは、薬剤の内容にかかわらず肌への負担が大きくなり、健康な角層まで破壊してしまう心配があるので、注意しましょう。
安心して使えるのは、「AHA(アルファヒドロキシ酸)」もしくは「フルーツ酸」と成分表示されていて、洗い流すタイプのピーリングコスメです。
ピーリングについては、「美肌をつくる2種類のピーリングとは?-ケミカルかレーザーか?」でも詳しくご紹介しています。
2. 乾燥タイプ
肌が乾燥すると、角質の表面が毛羽立つようになり、それが小さな影をつくって、くすみの原因になることもあります。
また、肌の乾燥は、角質肥厚の原因にもなります。
乾燥タイプに当てはまるチェックポイントは、「パウダーファンデーションののりが悪い」「メイクして時間が経つとくすみが目立つ」「入浴後は一時的に改善する」といったことなどです。
2-1. 肌が乾燥するしくみ
肌のうるおいは、体内から蒸発する水分を角層でつなぎとめることで保たれています。
健康な状態の角層は20%の水分を含んでいます。
その内訳は、皮脂腺から分泌された皮脂が肌に広がった「皮脂膜」が2〜3%、角質内のアミノ酸を主成分とする「天然保湿因子(NMF)」が17〜18%、細胞間脂質の40%を占める「セラミド」が80%を担っています。
肌の乾燥にもっとも影響するのは、セラミドの状態です。
細胞間脂質のセラミドが減ってしまうと、蒸発しようとする水分を保持できなくなって、肌がカサカサになるのです。
2-2. 原因の多くは間違ったスキンケア
セラミドが減ってしまう原因でもっとも多いのは、間違ったスキンケアで角層を傷めてしまうことです。
とくにクレンジングと洗顔は、注意しなければいけません。
クレンジング剤や洗顔料には多量の界面活性剤が含まれており、肌に与える刺激がとても強いのです。
界面活性剤は、本来は混ざることのない水と油をなじませたり、液体の中に粒子を均等に溶かしたりする目的で、洗浄剤やほとんどの化粧品に添加されています。
クレンジングの目的は油溶性のメイクを肌から浮かせて落とすことですから、強い界面活性剤が必要になります。
クレンジング剤は、こすってしまえばもちろんのこと、肌にのせているだけでも角質を破壊して、細胞間脂質を流出させてしまいます。
肌のくすみを改善したいのであれば、クレンジングをしなくて済むライトメイクに切り替えるか、比較的肌への刺激が少ない、洗い流すクリームタイプを使用して、肌にのせている時間を40秒以内に抑えましょう。
完全にメイクを落としきれなくてもOKで、その後は、やはり肌の負担が少ない固形石けんを使ったW洗顔が基本です。
2-3. 肌乾燥の悪循環
間違ったスキンケアで角層が破壊されると、バリア機能が低下して肌が乾燥します。
すると、肌を回復させようと急ぐ力が働いて、ターンオーバーが短くなるのです。
ターンオーバーが短くなってしまうと、未成熟な表皮細胞が肌の表面に出てきてしまうので、さらにバリア機能は低下して、乾燥がひどくなります。
この悪循環にはまってしまうと、角層の回復には時間がかかってしまいます。
乾燥の悪循環から脱出する方法は、正しい保湿ケアを地道に続けることだけです。
2-4. 必要なのは正しい保湿ケア
間違った保湿ケアで、さらに乾燥をひどくしてしまうケースも、実は多いのです。
化粧水で保湿ができると思っている人は、考えを改めなければいけません。
化粧水はほとんどが水分ですから、いくら肌につけても、バリア機能があるので肌の奥にまで浸透せず蒸発するだけです。
角層の水分は、体内から蒸発する水分をつなぎとめているものであり、外から補給できる水分ではありません。
角層の水分を増やそうと思ったら、必要なのは水分ではなくて、水分をつなぎとめるセラミドなのです。
セラミドは油溶性ですから、水がベースの化粧水ではなくて、美容液で補給します。
正しい保湿ケアは、セラミドが高濃度で配合された美容液1本で行えます。
クリームや乳液などで余計な油分を肌に与えると、毛穴のトラブルや、さらなるくすみの原因になるのでNG。
洗顔後は保湿美容液でケアし、油分でフタをしてはいけません。
保湿については「3つの保湿成分で乾燥肌対策-乾燥のしくみを理解して保湿ケア」の記事もぜひ参考にしてみてください。
3. 血行不良タイプ
若くて健康な肌は、血色がいいものですが、肌の老化によって末梢の血管が細くなってしまうと血行が悪くなり、肌の血色が失われます。
疲労や寝不足が原因で、血行不良を起こすこともあります。
血行不良は、顔全体のくすみを引き起こす場合もありますが、慢性的な人は目元に青っぽいクマが現れます。
血行不良を起こしている人は、顔だけでなく全身に症状が及んでいるケースが多いので、顔だけのケアにとどまらず、全身の血行改善も考えましょう。
血行不良タイプに当てはまるチェックポイントは、「冷え性」「頬に赤みがない」「運動をしていない」といったことなどです。
3-1. 美容液をなじませるマッサージ
血行改善のケアといえばマッサージが思い浮かぶ人も多いことでしょうが、顔の場合は強いマッサージをすると角層を傷めてしまい、かえって黒ずんでしまうことがあるので注意が必要です。
クレンジング剤や洗顔料など、界面活性剤が強いものを肌につけてマッサージするなどは、論外です。
肌にやさしいのは、保湿ケアに使っている美容液を多めにとり、中指と薬指の腹で円をえがくようにして、肌になじませるマッサージです。
皮膚にシワが寄らない程度の力で、顔全体をやさしくマッサージし、美容液がなじんだら終了です。
3-2. 血行不良に効くツボ刺激
血行の改善にはツボ刺激も有効です。
美容液をつけてマッサージしたら、中指と薬指でそのまま続けてもいいですし、メイクの上からでもできるので、仕事中に行ってもいいでしょう。
顔の血行不良にとくに有効なのは、次の4つのツボです。
① 魚腰(ぎょよう)
眉毛の中央にあるくぼみ。
② 四白(しはく)
黒目の真下の骨の縁から1cmほど下。
③ 百会(ひゃくえ)
鼻の中央から頭上にのばしたセンターラインと、左右の耳を結ぶラインの接点。
④ 天容(てんよう)
耳の下で、口を開けたときにへこむところ。
4. 炎症性色素沈着タイプ
「炎症性色素沈着」とは、シミの一種で、ニキビや虫刺され、傷、肌に合わないスキンケアなどによる炎症が原因で、茶色く痕になって残ったものです。
こする、叩くといった間違ったスキンケアでも、できることがあります。
このタイプに当てはまるチェックポイントは、「拭き取りタイプのクレンジング剤を使用」「強めのマッサージ」「化粧水やローションをコットンでパッティング」といった事柄です。
4-1. 肌の老化を進める慢性的な肌荒れ
間違ったスキンケアで肌荒れを起こしてしまい、ターンオーバーが短くなって悪循環にはまると、慢性的な炎症状態になってしまうことがあります。
炎症とは体の防衛反応ですから、肌が炎症を起こすとメラニンを増やして守ろうとするので、くすみやシミになってしまいます。
こうした慢性的な炎症は、肌の老化を進めてしまう要因となります。
肌荒れでかゆみや赤みが頻繁に現れる人や、肌が敏感だと感じている人は、クレンジングや洗顔、保湿ケアを見直しましょう。
「こする」「叩く」と、日焼けは厳禁です。
4-2. ケアは美白成分とピーリング
炎症性色素沈着は、数種類あるシミの中で、もっとも美白化粧品の効果が出やすいタイプです。
色素沈着を薄くするためには、ビタミンC誘導体が配合された美白化粧水を洗顔後に使用し、それからセラミドが配合された保湿美容液を使ってください。
保湿美容液の後に、美白美容液を併用するのも有効です。
このタイプのくすみは、勝手に消えることもあるのですが、何もせずにまっていると2~3年かかる場合もあります。
即効性のあるピーリングで、ターンオーバーを整えてやりましょう。
まとめ
肌のくすみを改善するケアでは、角質肥厚を解消する角質ケアも大事ですが、行きつくところは、結局、「ターンオーバーの正常化」と「正しい保湿ケア」の2つです。
この2つは、スキンケアの基本ですから、自分に合ったケアのスタイルを早く見つけましょう。
忘れられがちなのが、食生活をはじめとする生活習慣の乱れです。
ターンオーバーを正常化して、肌のうるおいを維持するためには、肌の材料になるタンパク質や、その働きを助けるビタミン、ミネラルを十分に摂る食事や、新陳代謝を活性化する運動、肌の再生を促す快適な睡眠などが欠かせません。
また、過度なストレスは肌トラブルの原因となりますから、ストレスとうまく付き合う生活も大切です。
くすみのケアには、生活習慣の見直しも忘れないようにしましょう。
【参考資料】
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 吉木伸子 2014年
・『本当に正しい大人のスキンケア』 主婦と生活社 吉木伸子(監修) 2008年
・『効果が変わる「化粧品」の使い方』 青春出版社 小西 さやか、櫻井 直樹 2015年