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重要な栄養素ですが、そのすべてを食事から補うのは難しいと言われています。
妊娠中、赤ちゃんはお母さんの身体から必要な栄養をもらって成長します。
「お母さんの栄養状態=赤ちゃんの栄養状態」ということですから、妊娠中は特に食事内容に気をつけたいもの。
では、何をどうやって食べるのが良いのでしょうか。
妊娠中に必要な栄養とは?
積極的に摂りたい食べ物と、避けたい食べ物とは?
バランス良く食べろと言われますが、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
妊娠中の食事の基本を紹介します。
1. 4つの食品グループからまんべんなく食べる
1-1. 乳製品・卵
1-2. 肉・魚介・豆腐・豆製品
1-3. 野菜・果物・海藻・いも・きのこ
1-4. 穀類・砂糖・油脂
2. 妊娠中に重要な3つの栄養素
2-1. 葉酸
2-2. 鉄
2-3. カルシウム
3. 摂りすぎに注意したい食べ物
3-1. マグロ・カジキ・金目鯛
3-2. ひじき
3-3. レバー、うなぎ、銀ダラ
3-4. 牛肉、レバ刺し、加熱の不十分な肉
3-5. 生乳やナチュラルチーズ
3-6. アルコールとカフェイン
4. 気になる症状を食事で改善
4-1. つわり
4-2. 便秘
4-3. 貧血
4-4. むくみ
4-5. 肌荒れ
必要な栄養があるからといって、何かひとつの食材を延々と食べ続けるような、偏った摂り方はよくありません。
さまざまな食材を、複数組み合わせるよう心がけましょう。
以下の4つのグループ分けを意識して組み合わせると、自然とバランスが良くなります。
1日分の必要目安量も挙げてありますが、1食でまとめて摂るのではなく、できるだけ3食に分けて摂るようにしましょう。
ビタミンBやビタミンCのように、栄養素の中には、余分に摂った分が体外に排出されてしまうものもあるからです。
せっかく食べるのですから、効率よく吸収したいですよね。
タンパク質、脂質、カルシウムなどが多く含まれます。骨や筋肉をつくるのに活躍します。1日のうちに卵1個と、牛乳1杯+スライスチーズ1枚くらいの分量を摂るのが理想的です。
タンパク質、脂質、鉄、ビタミンA、B1、B2などが多く含まれます。筋肉や血液をつくるのに必要な食品群です。
1日のうちに肉、魚介のグループから2種類と、豆や豆製品から1種類摂ると理想的。肉も魚も豆腐も、大体握りこぶし1つくらいの量が、1食分の目安です。
カロテン、ビタミンB1、B2、C、ミネラルなどを多く含みます。体の調子を整えるために必要です。1日のうちに、いも1種類+果物1種類と、野菜・きのこ・海藻類を両手山盛りで3杯分摂るのが理想です。生野菜で摂ると大変ですから、火を通して食べやすく調理しましょう。
エネルギーのもとになります。特に穀物には、食物繊維やタンパク質、ビタミンB1、ミネラルなども含みます。1食につきご飯1杯×3食、あるいはロールパン2個×3食くらいが目安です。
糖類は控えめにしてください。砂糖なら1日の目安は大さじ1杯くらい。できれば白砂糖より黒糖やきび砂糖がおすすめです。はちみつなら小さじ2杯、低糖ジャムなら大さじ1杯くらいが1日の目安です。
油も、1日に摂取する分量は大さじ1杯が目安。マヨネーズも油脂と同じですから、摂るなら1日大さじ1杯を目安にしましょう。
妊娠中の食事については「赤ちゃんとお母さんに優しい妊娠中の食事」という記事でも取り上げていますので、参考にしてみてください。
妊娠中は、おなかの赤ちゃんのために、いつもより多くの栄養が必要になります。
次に挙げる3つの栄養素は、特に重要なものです。
意識的に摂りましょう。
ビタミンBの一種で、細胞の増殖や、造血を助けます。赤ちゃんの神経管閉鎖障害リスクを下げる効果があるとされ、妊娠中の女性や、妊娠を望む女性には、食事以外にもサプリメントで葉酸を補うよう勧められています。また、つわり時期の食欲不振を緩和する効果もあります。
葉酸はほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、果物、うなぎやレバーなど、多くの食べ物に含まれています。
葉酸を妊娠中に取った方が良い理由については「妊婦に葉酸が必要な理由」という記事をぜひご覧ください。
貧血対策に必要な栄養素です。妊娠中は体内を循環する血液が増えるため、赤血球の生産が追いつかず、結果的に鉄欠乏性貧血になりやすいのです。また、出産後の母乳も血液が原料になっているので、妊娠したら貧血対策は早めに行いましょう。
鉄分はレバー、あさり、大豆、小松菜などに多く含まれています。
赤ちゃんの骨や歯を形成するのに必要な栄養素です。胎児への供給が不足すると、母体の骨からカルシウムが奪われてしまいます。血圧を下げる働きもあり、妊娠高血圧症の予防にも役立つので、積極的に摂りましょう。小魚や乳製品に多く含まれています。
ビタミンDを一緒に摂ると、吸収率がアップします。ビタミンDは鮭、さんま、きくらげ、干し椎茸などに多く含まれています。また、日光を浴びることで人の体内でも生成されます。
身体に良い栄養が入っているからといって、同じものばかり食べ続けると、かえって毒になることもあります。
特に妊娠中、赤ちゃんはお母さんの身体から栄養をもらいます。大人の身体なら大丈夫なものでも、身体をつくっている途中の赤ちゃんには、大きな影響が出ることがあるのです。
次に挙げる食品は、妊娠中の大量摂取は避けたいものです。参考にして下さい。
一部の魚介類は、自然界に存在するメチル水銀を取り込んで、濃度が高めになっているものがあります。メチル水銀は、赤ちゃんの中枢神経発達に影響を及ぼすとされているものです。妊娠中にマグロやカジキなどを食べる場合は、週1回程度(100g以下)にとどめましょう。ちなみにツナ缶は、比較的メチル水銀濃度の低いキハダマグロが使われていることが多いので、心配しなくて大丈夫です。
人体に有害な無機ヒ素が含まれている、という研究報告があります(2004年イギリス食品規格庁)。
ヒ素は自然環境中に広く存在するもので、大抵は微量で害はありません。
ひじきの場合も、「体重50㎏の大人で、1日4.7g」くらいなら問題ないとのこと。今まで日本人が普通に食べてきた量が1日0.9gほどなので、極端に偏った食べ方をしなければ、大丈夫です。
鉄分やカルシウムを豊富に含むおすすめの食品でもあるのですが、だからといって、妊娠中にひじきを大量に摂るのはやめましょう。週に2、3回、小鉢料理を食べるくらいなら大丈夫です。
また、乾燥ヒジキを調理するときには、水戻しした後一度茹でて汁を捨てる「ゆでこぼし」という方法をとると、無機ヒ素を9割くらい減らすことができます。
主に動物性食品から摂れるビタミンA(レチノール)が豊富な食材です。ビタミンAは脂溶性で体内に溜まりやすく、過剰摂取すると頭痛などの副作用が起こります。特に妊婦の場合、赤ちゃんに奇形があらわれる可能性があります。
妊娠初期には特に、レチノールの多いレバー類は摂取を控えましょう。
ただし、緑黄色野菜に含まれる植物性ビタミンA(カロテン)は、たくさん食べても問題ないとされています。
レアやミディアムの牛肉や、レバ刺しなどの生肉は、妊娠中避けた方が良いでしょう。加熱の不十分な食肉や、よく洗っていない果物や野菜から、トキソプラズマという寄生虫に感染する恐れがあるからです。妊娠中にトキソプラズマに初めて感染すると、死産や流産、赤ちゃんの脳や眼に障害が起こるなど、大きな影響が出ることがあります。肉は中まで完全に火を通して食べましょう。また、野菜や果物の土汚れもよく洗い落として下さい。
滅菌されていない生乳や、生乳から加熱せずに製造されるナチュラルチーズなどから、リステリアという細菌に感染することがあります。感染すると、早産や流産につながる危険があります。
リステリア菌は低温や塩分に強いので、チーズ以外でも、冷蔵庫で長期間保存できて、そのまま加熱せずに食べる生ハムなどは注意が必要です。
ただし、日本で生産される牛乳や乳製品は、加熱殺菌が義務付けられています。店で買える国産チーズなら、あまり心配しなくて良いでしょう。輸入品のカマンベール、ブリー、フェタなどソフトタイプのチーズは、避けた方が無難です。
妊娠中にお酒を飲むと、それが血液を通して赤ちゃんに送られてしまいます。奇形や神経障害など、赤ちゃんの身体に重大な影響が出る「胎児性アルコール症候群」になりやすいので、妊娠中のお酒は避けましょう。
また、カフェインの過剰摂取も赤ちゃんのために良くないとされます。避けられるならその方が良いですが、リラックスのために少し飲むのは大丈夫。世界保健機関では、妊婦が飲んでも問題ない量として、コーヒーなら1日3~4杯までという目安を設けています。
この他にも、スナック菓子やファストフード、糖分と乳脂肪の多い洋菓子なども摂りすぎないように注意しましょう。
妊娠すると、つわりや貧血、便秘など、さまざまな症状があらわれます。
食事で改善することが多いので、気になる症状がある人は、毎日の食事を工夫してみましょう。代表的な症状に効く、栄養とポイントを紹介します。
ビタミンB6には、つわりを緩和させる働きがあります。
ビタミンB6の豊富な食材はいろいろありますが、比較的匂いのクセが少ないものとして、鶏ささみ、鮭、バナナなどがおすすめです。
つわりの時はご飯の匂いが苦手になることも多いのですが、冷ますと匂いは和らぎます。朝昼晩の食事時間にこだわらず、食べられるときに、食べたいものを小分けにして食べましょう。嘔吐してしまう場合は、身体の水分が奪われるので、水分補給に気をつけてください。
大きくなった子宮に圧迫されたり、ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなったりして、妊娠中は便秘になりやすいものです。腸の働きを助ける食物繊維を摂り、水分をきちんと補給しましょう。
食物繊維はごぼうやきのこ、豆類などに含まれる「不溶性」のものと、果物や海藻類などに含まれる「水溶性」のものがあります。両方を均等に摂るのがおすすめです。
油も潤滑剤の役割がありますので、1日に大さじ1杯程度は摂りましょう。ヨーグルトやキムチに入っている乳酸菌も、腸内の善玉菌を増やすのに役立ちます。
妊娠中は血液中の水分が一時的に増えるため、赤血球の増産が追いつかず、動悸、息切れ、めまいなどの症状が出やすくなります。そして赤血球を増産するために、鉄分がいつもより多く必要になります。
肉などの動物性食品に含まれる鉄(ヘム鉄)と、緑黄色野菜に含まれる鉄(非ヘム鉄)があります。非ヘム鉄は吸収されにくいのですが、乳製品や卵などの動物性タンパク質と一緒に摂ると吸収されやすくなります。サバやブリにほうれん草のソテーを添えたり、切り干し大根とアサリを一緒に煮たりして、ヘム鉄、非ヘム鉄を一緒に摂る工夫をしてみましょう。
また、ヘム鉄、非ヘム鉄ともにビタミンCを一緒に摂ると吸収率が上がります。逆に、緑茶や紅茶などに含まれているタンニンは鉄の吸収を妨げるので、食事の前後2時間は避けた方が無難です。
ホルモンの影響で、妊娠中は体内の水分が増え、むくみやすくなります。対策のひとつとして、塩分の摂りすぎをチェックしましょう。塩分は1日7.5g未満が目標です。例えば味噌大さじ1なら、塩分はおよそ2.3g。濃口醤油大さじ1なら2.6g、薄口醤油大さじ1なら2.9gです。薄口醤油の方が実は塩分が高いので注意しましょう。出汁や、食材から引き出す旨味を利用すれば、減塩でも味気ない食事にはなりません。
体内から余分な塩分を排出する働きがあるカリウムも、あわせて摂りたい栄養素です。サトイモ、昆布、アボカド、バナナ、アーモンドなどがカリウム豊富でおすすめです。
また、タンパク質不足もむくみの原因になりますから、しっかり摂りましょう。
ホルモンバランスの変化や、つわりによる食生活の乱れなどが原因で、妊娠中は吹き出物や肌荒れのトラブルも起こりやすくなります。出産後には落ち着いてきますが、食事に気をつけて軽減できることもあります。
美肌の味方になる栄養素といえば、ビタミンA、C、Eです。シミやシワの原因となる活性酸素の働きを抑えたり、美白効果が期待できます。
ビタミンAは、妊娠中は過剰摂取に注意してほしい栄養素でもあります。だから、体内で必要な分だけビタミンAに変換される、βカロチン豊富な緑黄色野菜をたくさん食べましょう。
ビタミンCは果物や緑黄色野菜に多く含まれます。数時間で体外に排出されるので、まとめて大量に摂るのではなく、食事のときに毎回少しずつ摂るのがおすすめです。
ビタミンEはアボカドやナッツ、卵黄などに含まれます。
ビタミンCとEは、一緒に摂ると補い合うので効果的です。
妊娠中はつわりなどで、料理をつくるのも大変。そんなときは便利な道具を使ったり、調理の手順を簡単にしたり、時には惣菜を買ってきたり、外食に頼ったりするのも良いでしょう。
ミキサーやフードプロセッサーは、手作りの強い味方。
肉も野菜も全部耐熱容器に入れて、オーブンでおまかせで焼くのもラクチンです。
瓶詰めや缶詰を利用すれば、豆なども手軽に食べられます。
惣菜を買う場合は、衛生環境の良い店で、密閉されているものを買いましょう。外食時には野菜が不足することが多いので、サラダを添えるなど工夫してみて下さい。
栄養面で神経質になるだけではなく、普段家でなかなか食べない食材を選んで楽しむのも、気分転換を兼ねた良い方法です。
安全な食品をすべて自分で調理できれば一番安心ですが、そうできる方ばかりではありませんよね。
食事がストレスの原因になっては逆効果です。肩肘張らずにやりましょう。
妊娠中は積極的に摂りたい食べ物と、摂りすぎないように気をつけたい食べ物があります。あまりいろいろ言われると、ちょっぴり面倒な気持ちになるかもしれません。
しかし、お腹の赤ちゃんのために栄養バランスを考えるのは、食生活を見直すチャンスでもあります。
出産後も健康な生活を続けられるよう、良い食事の習慣を身につけましょう。
【参考文献】
『ラクチン・安心 妊婦ごはん』たまごクラブ特別編集 ベネッセコーポレーション 2013年
『しっかり学べる!栄養学』川端輝江 ナツメ社 2012年
『日本人の食事摂取基準2015年度版』 厚生労働省PDF
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