アロマセラピストは、アロマセラピーの専門知識を身につけて対象者に施術をおこなうことができる技術者です。「アロマセラピスト」ではなく「アロマテラピスト」と表記している資格もあります。その違いは文字の読み方によるものです。
植物(ハーブ)や果物などから抽出した100%天然の精油(エッセンシャルオイル)を用いた治療を「Aromatherapy」といいます。
「Aromatherapy」を英語読みすると「アロマセラピー」、フランス語読みをすると「アロマテラピー」というので日本ではそのどちらもの言葉が使われています。この記事の中では統一するために「アロマセラピー」「アロマセラピスト」とさせていただきますね。
女性が身につける資格としてのアロマセラピストとはどういったものなのか、どのような種類の資格があるかをご紹介し、アロマセラピストの働き方や自宅サロンの開業についても触れていきたいと思います。
目次
1 アロマセラピストとは
1-1 国家資格ではありません
1-2 民間のアロマセラピー資格
1-3 アロマセラピストの働き方
1-4 アロマセラピストにできること
2 アロマセラピストになるには
2-1 アロマセラピーの学び方
2-2 メディカルアロマセラピーとは
2-3 アロマセラピストに必要な資質
3 アロマセラピーについて詳しくなろう
3-1 アロマセラピーの効果
3-2 補完医療とは
3-2 東洋医学との共通点
4 アロマセラピストとして自宅サロンを開くには
4-1 自宅サロンの開業に必要な手続き
4-2 自宅サロン開業までにしておくべきこと
4-3 自宅サロンを開業しない方が良い人とは
5 まとめ
1 アロマセラピストとは
1-1 国家資格ではありません
西洋では国が認めるアロマセラピーの資格試験があるところもありますが、日本ではアロマセラピストは国家資格ではありません。
国内で取得できるアロマセラピスト(アロマテラピスト)の資格はすべて民間団体がそれぞれ基準を設けて実習や試験などを行っているものとなります。
一般的に履歴書に記載できる資格には、文部科学省や厚生労働省の認定があるものとなりますが、リラクゼーションサロンや美容サロンなどに応募する場合はどの民間団体で取得したアロマセラピストかを記載した上で履歴書に記入すると良いでしょう。
1-2 民間のアロマセラピー資格
日本国内で取得できる、民間団体のアロマセラピー資格をご紹介します。通信講座で学ぶことができる資格から医療従事者が会員となって認定される資格まで、日本国内でのアロマセラピー資格はとても幅広いことがわかります。
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)
【特徴】
●通信講座で学ぶことができる初心者向けの検定からアロマセラピストとして仕事をするための上級コースまで多くのコースがあります。
●施設や講師についての条件をクリアし、協会の定めるカリキュラムを使用している認定スクールで学び、受験することで取得できます。
●初心者向けに通信講座で学ぶことができる資格もあります。
【認定している資格の種類】
●アロマテラピー2級
●アロマテラピー1級
●アロマテラピーアドバイザー
●アロマテラピーインストラクター
●アロマセラピスト
日本アロマコーディネーター協会(JAA)
【特徴】
●日本国内のアロマセラピー業界で幅広く通用する資格を認定しています。
●生活に役立てるアロマセラピーからプロとしてのサロン勤務や開業まで、難易度に応じた様々な資格があります。
●認定加盟校で学ぶほか、一部の資格は民間の通信講座での取得も可能です。
【認定している資格の種類】
●アロマコーディネーター
●アロマインストラクター
●アロマハンドリラックス
●アロマフェイシャルリラックス
●介護アロマコーディネーター
※上記のアロマ認定資格のほか、下記などアロマを用いた各種コースがあります
●ヒーリングカウンセリング「いやしのカウンセラー」
●膝のアロマケア「膝ケアコーディネーター」
●子どもとのふれあい「チャイルドケアコーディネーター」「チャイルドケアインストラクター」
ナード アロマテラピー協会(NARD JAPAN)
【特徴】
●ホームケアから医療・福祉業界まで通用するアロマセラピーの知識と技術の普及を目指しています。
●難易度によって多くのコースがあるため、趣味にしたい人と仕事にしたい人どちらもが学ぶことができます。
●全国各地にある認定校で学ぶことができますが、協会の直営ではないので認定校によって受講料金が違います。
【認定している資格の種類】
●アロマテラピーベイシック
●アロマ・アドバイザー
●アロマ・インストラクター
●アロマ・トレーナー
●アロマ・セラピスト
●アロマセラピスト・トレーナー
国際アロマセラピスト連盟(IFA)
【特徴】
●難易度の高い国際水準のアロマセラピスト資格を認定しています。
●協会の認定校で受講した人のみ試験をうけることができます。受講料は比較的高額です。
●アメリカ、イギリス、ヨーロッパ諸国やアジアなど、世界中に会員を持ち、世界各国で通用するアロマ資格を普及しています。
●病院やホスピス、看護専門職といった医療分野で活躍できる高度なアロマテラピストの育成を目指しています。
【認定している資格の種類】
●IFA国際アロマセラピスト資格
一般社団法人 日本アロマセラピー学会
【特徴】
●正会員は医師をはじめとした医療従事者や研究機関の研究者となっています。
●それ以外の人でも賛助会員になることができますが、入会金・年会費とも高額となっています。
●アロマセラピーを医療で正しく応用することで医療分野でのアロマセラピーの普及に寄与し、アロマセラピーの科学的・医学的な研究により学術としてのアロマセラピーの確立を目指し、アロマセラピー医療の社会的認知度を高めることを目的に設立されました。
【認定している資格の種類】
●JSA基礎認定(正会員対象)
●JSAトリートメント認定(正会員対象)
●JSA施設認定(医療施設・医療科対象)
●精油制度認定(賛助会員対象)
一般社団法人 日本臨床アロマセラピー学会
【特徴】
●アロマセラピーに関する臨床応用についての研究、発表、知識の交換、関連学会・企業との連携協力を行う事により、アロマセラピーの正しい普及・発展に寄与することを目的に設立されました。
●前出の「日本アロマセラピー学会」より後発で、非医療従事者であるセラピスト、受付、厨房等職員なども会員資格を得ることができ、入会金・年会費とも日本アロマセラピー学会よりかなり低く抑えられています。
【認定している資格の種類】
●クリニカルアロマアドバイザー(CAA)臨床アロマ学術認定
●クリニカルアロマエキスパート(CAE)臨床アロマ実技認定
●クリニカルアロマスペシャリスト(CAS)臨床アロマ講師認定
JOTメディカルアロマカレッジ
【特徴】
●メディカルアロマセラピーを学ぶことができます。
●コースによっては「心理カウンセラー」の資格も取得できるのが特徴です。また、実際に開業したい人に向けたコースがあるので開業ノウハウや実際のサロン施術を身につけることが可能です。
【認定している資格の種類】
●メディカルアロマセラピスト
●アロマセラピスト
●心理アロマセラピスト
※ここでご紹介したスクール以外にも、アロマセラピストといわれる資格を取得できるスクールはあります。資格はそれぞれの民間団体の認定になります。
1-3 アロマセラピストの働き方
資格を取得してアロマセラピストとして働くにはこのような方法があります。
・リラクゼーションサロンや美容サロンのスタッフとして勤務する
・リラクゼーションサロンや美容サロンを経営する
・自宅でサロンを開業して自分が施術する
・自宅や施設などに出張して施術する
アロマセラピストの資格を取得していきなり開業できる資金を持っている人は少ないはずです。経験を積む意味でも、まずはサロンのスタッフとして働きながらアロマセラピストの仕事を覚えていくという手順が良いでしょう。
開業を希望する場合、自宅サロンや出張での施術なら開業資金を抑えることができます。その場合は開業の宣伝、告知方法などを研究して集客する必要があります。
1-4 アロマセラピストにできること
アロマセラピストにできることは、精油(エッセンシャルオイル)を使って施術対象者の体の不調を取り除いたり、心身ともにリラックスさせてストレスを取り除いたりすることです。
リラクゼーションサロンや美容サロンでは、お客様の体調や要望に合う精油を選ぶことからはじまります。その精油をキャリアオイルで希釈したブレンドオイルをつかって身体をマッサージすることで皮膚や呼吸器から有効成分が身体に取り入れられて、不快症状が改善したりリラックスできたりといった効果につながります。
また、日常生活での精油の使い方をアドバイスすることで、サロンに来ない日でもアロマセラピー効果を活用してもらうことができます。
アロマセラピストとして起業を念頭に置いているなら、自分のサロンで提供するメニューを増やしたり顧客の満足度をアップしたりできる資格を併せて取得すると良いでしょう。リフレクソロジスト、整体師、鍼灸師、心理カウンセラー、栄養士などの資格を取得することで施術やアドバイスの幅も広がります。
2 アロマセラピストになるには
2-1 アロマセラピーの学び方
アロマセラピーを学ぶには、取得したい資格を選んでそれに沿ったカリキュラムのあるスクールへ通う必要があります。
自分や家族の健康のためにアロマセラピーを学びたいという程度であれば、通信教育で取得できる資格を選んでも大丈夫です。今はまだ興味があるだけという人も、こうした初心者向けのアロマセラピーを学ぶことから始めると良いでしょう。さらに興味がでてきたら他のコースを受講してさらに上の資格を取得することができます。
アロマセラピーは精油(エッセンシャルオイル)の名前や効能などを机で学ぶ学問だけではなく、施術対象者にマッサージをするといった技術も学ぶ必要があります。自分の目的に合ったコースがあること、受講できる内容やかかる費用などよく検討したうえでスクールを選びましょう。
2-2 メディカルアロマセラピーとは
日本国内では国家資格でも文部省や厚生労働省の認可でもないアロマセラピストですが、アロマセラピーはヨーロッパ各国では補完医療として昔から認められている治療方法です。
そうした医学的な効能をしっかりと学び、対象者の身体の不調を改善していくのがメディカルアロマセラピーです。
日本では、医療従事者を対象とした「一般社団法人 日本アロマセラピー学会」や後発の「一般社団法人 日本臨床アロマセラピー学会」で学べるほか、「JOTメディカルアロマカレッジ」の一部のコースでは医療従事者を対象にメディカルアロマセラピーを学ぶことができます。
2-3 アロマセラピストに必要な資質
アロマセラピストに必要な資質は、看護師と同じように、対象者を癒してあげたいというホスピタリティです。
精油(エッセンシャルオイル)や含まれる成分、その元になる植物についてというような、アロマセラピーに関する知識はもちろん身につけなくてはなりません。しかしアロマセラピストとして働くときには、顧客の身体に直接触れてマッサージを施すといったことが中心となります。
アロマセラピストは施術を受けたい顧客が何を求めているのかを聞き出し、それに対応した精油を選んでマッサージなどを施すほか、日常生活にアロマセラピーを取り入れる方法などもアドバイスしていく必要があります。
対象者の身体や気持ちが楽になるように、良くなるようにという気持ちを持てることがアロマセラピストの資質といえるでしょう。
3 アロマセラピーについて詳しくなろう
3-1 アロマセラピーの効果
アロマセラピーの効果は、臨床的にも認められています。
精油(エッセンシャルオイル)に含まれる成分は、呼吸器や皮膚を通して体内に取り込まれ、脳の視床下部へ働きかけることがわかっています。脳の視床下部はコンピューターでいえば中枢部分にあたります。
・血管や内臓の働きを調整する(自律神経系)
・身体の機能がスムーズに働くように調節するホルモンの分泌にかかわる(内分泌系)
・身体をウイルスや細菌などから守る(免疫系)
これらのシステムを合わせて恒常性維持調節機構と呼びます。ストレスなどによってこの部分が正常に働かなくなることで身体の不調が出てきます。精油に含まれる成分がこれらの機能を回復し、体調を良くすることがわかっています。
アロマセラピーの効果について詳しく知りたい方は『アロマの効果|アロマセラピーの活用で快適な日常を』も参考にしてみてください。
3-2 補完医療とは
補完医療とは、私たちが通常病院で受ける西洋医学での治療にプラスしておこなうことで効果を発揮する医療のことです。
補完医療では鍼灸やマッサージ、漢方薬といった東洋医学が有名です。また、瞑想や音によるリラクゼーションなども心身を整え体調を良くする効果があることがわかっており、補完医療と呼べるものの幅は広がっています。
アロマセラピーの効果はすぐれた補完医療と呼べるレベルのもので、日本国内でもペインクリニックの医師が取り入れています。
3-2 東洋医学との共通点
アロマセラピーと東洋医学の共通点はたくさんあります。
・西洋医学のように急激に症状が改善するものではなく、徐々に効果が表れる
・補完医療として使うことで西洋医学の治療薬を減らすことができる
・日常に取り入れることで慢性的な身体の不調を改善できる
・ストレスコントロールができるため身体全体の調子が良くなる
・施術自体が心地よいものが多い
西洋医学の補完医療としてすぐれた効果を発揮するアロマセラピーは、西洋の発祥ですが、植物のエッセンスを利用するといった自然に基づく医療であるところなどが東洋医学の考え方とよく似ているのですね。
4 アロマセラピストとして自宅サロンを開くには
4-1 自宅サロンの開業に必要な手続き
アロマセラピーを学んでアロマセラピストの資格を取得すれば、すぐに自宅サロンなら開業できます。自宅の一部をサロンとして利用するので、サロン開業の際に店舗物件を借りたり内装工事をおこなったりといった大掛かりな部分を省くことができるからです。
飲食業ではないので、とくに保健所に届け出る必要もありません。今現在自営業をしている人は、そのままの屋号でよければとくに届け出る必要はありません。屋号を変更したい場合は税務署で変更手続きをしましょう。
自営業として開業するなら、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出します。どちらも手数料はかかりません。
自宅サロンの開業はこのようにとても手軽です。しかし、「事業としてきちんと利益を出していきたい」「将来は自宅ではなく店舗サロンを経営したい」という場合にはやはりサロンに勤務して経験を積んだ方が良いです。
アロマセラピストの資格によっては実際に施術を経験しないまま通信教育で取得できるものもあります。そういった資格では、いきなり独学でお客様にマッサージをしても良い評価を得ることができません。
実際にサロンで働くことで、施術や接客に慣れるだけでなく経営に必要なことも見えてきます。アロマセラピストとして長く働きたいのなら焦らずにまずはスタッフとして勤務する方が良いといえます。
4-2 自宅サロン開業までにしておくべきこと
自宅サロンの開業までにしておくべきことはこのようになります。
・アロマセラピーについての充分な知識を得て実際に活用できるようになっておくこと
・実際の施術経験を積み、満足してもらえる技術と接客を身につけておくこと
・提供できるメニューとその金額の設定
・副作用や副反応、万が一のアレルギー反応などに対する処置方法を知っておくこと
・顧客のクレームへの対応を学んでおくこと
・自宅へ他人を入れることに対する家族の理解と協力を得ておくこと
・開業の告知や宣伝方法とその予算を決めておくこと
・開業資金と運転資金を試算して準備しておくこと
資格取得のための勉強をしている期間にもできることはありそうですね。夢に向かう努力は楽しいものです。チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
4-3 自宅サロンを開業しない方が良い人とは
自宅サロンは開業資金が抑えられるため、比較的簡単に開業できます。
しかし、「アロマセラピストの資格を取得したらすぐに開業して稼ぎたい!」というタイプの人は、自宅サロンを開業しない方が良いかもしれません。
なぜなら、「今の自分の技術でお客様に満足していただけるだろうか」という目線がないからです。主婦をしていて、どうしてもサロン勤務での経験を積むことができないというような場合でも、「100人まではモニターとして無料で施術し、技術を向上させながらお客様の意見や感想を集めよう」ということならできますよね。
アロマセラピストは対象者の体調を良くする、心身の疲れを取りリラックスしてもらうといった仕事です。自宅で簡単に開業できそうだからという理由でアロマセラピストの資格を取得して開業しても、固定客をつかむことはできないでしょう。
5 まとめ: 現状では自分の判断で民間資格を取得するしかないアロマセラピスト資格
アロマセラピストは女性に人気の資格です。しかしアロマセラピストといえる資格にはたくさんの種類があり、それぞれが民間団体の認定ということで学ぶ内容や資格取得の難しさ、そしてかかる費用などもバラバラです。
アロマセラピーについて学んで自分や家族の健康のために活用したいという人と、リラクゼーションサロンや美容サロンで勤務するために取得したいという人、また、開業して自分のサロンを持ちたいという人では同じ「アロマセラピー」でも学ぶ範囲や技術は違いますよね。
それらのことは自分で判断してどこかのスクールを選び、受講して資格を取得するということになります。
また、アロマセラピストに限りませんが美容師や理容師などの国家資格ではない資格は、逆にいえば「資格がなくてもできる」ということでもあります。リラクゼーションサロンや美容サロンに勤務して実際にアロマセラピーの技術や知識をしっかり得ていれば、無資格で開業しても顧客がついて営業していけますから問題ないわけです。
ヨーロッパ各国では補完医療として活用されているアロマセラピーは、日本国内でも徐々に医師などが取り入れはじめています。それだけ効果の認められている治療方法ですから、いずれ一定の基準を設けられた資格ができるかもしれませんね。
【参考書籍】
「医師がすすめる『アロマセラピー』決定版」川端一水・吉井友季子・横山信子(マキノ出版)
「医師が認めたアロマセラピーの効力」川端一水(河出書房)
「まいにちアロマ美人」おかせみと(ダイエックス出版)
「アロマテラピー検定合格テキスト&問題集」(翔泳社)
「クリニカル・アロマテラピー」ジェーン・バックル(フレグランスジャーナル社)
「佐々木薫のアロマ生活1・2」佐々木薫(池田書店)