だんだん深くなっていく目尻のシワは、他人からどう見えているか気になりますよね?
ある日、鏡を見て気づいた薄いシワが、だんだんクッキリしてきて「カラスの足跡」になってしまったという人が多いのではないでしょうか。
肌の悩みの中でも、もっとも多いのが目元の悩みです。
目の周囲は、顔のほかの部分と比較すると皮膚がとても薄いのですが、まばたきなどで頻繁に動かすので、皮膚やその内側にある筋肉を酷使しています。
そのために、シワやたるみ、クマといった肌トラブルを引き起こしやすいのです。
そうした目元の肌トラブルの中で、だいたい最初に現れるのが目尻のシワ。
目尻は、比較的若い頃からシワが現れる部位だといえます。
それだけに早いうちから、正しい予防法や対処法を知っておくことが必要なのです。
ここでは、シワの原因や種類を解説してから、正しいセルフケアで目尻のシワに対処する方法を紹介します。
目次
1. 目尻のシワを理解する
1-1. 肌の基本構造
1-1-1. ターンオーバー
1-1-2. バリア機能
1-2. シワの3タイプ
1-2-1. ちりめんジワ
1-2-2. 表情ジワ
1-2-3. 真皮性のシワ
2. 目尻のシワに対処する5つのセルフケア
2-1. 洗顔&クレンジング
2-2. 保湿ケア
2-3. UVケア
2-4. コラーゲンケア
2-4-1. ピーリング
2-4-2. ビタミンC誘導体
2-4-3. レチノール
2-4-4. ナイアシン
2-5. 抗酸化食品
1. 目尻のシワを理解する
目尻のシワも、目元や口元にできるほかのシワと同じように、一度深く刻まれてしまうとセルフケアで消すことはできません。
ですから、予防や早いうちのケアが大事だといわれるのです。
なぜ予防や早期のケアが大事なのか、シワができるメカニズムを知れば理解することができます。
まずは肌の基本的な構造と、2つの重要な機能を解説しましょう。
1-1. 肌の基本構造
人間の皮膚は、大きく分けて「表皮」「真皮」「皮下組織」という3層から成り立っています。
皮膚のもっとも表面で身体を守っている表皮は、奥の方で絶えず細胞分裂を繰り返していて、傷ついてもすぐに修復されます。
表皮の内側の層である真皮は、70%を占めるコラーゲン線維が網目構造をつくり、そのところどころをエラスチン線維が固定して、すき間をヒアルロン酸などのゲル状物質が埋めています。
コラーゲン線維はゴムのような弾力があり、肌のハリを生みだしています。
真皮は細胞ではなく線維でできているので、細胞分裂をすることはなく、短いもので数ヶ月、長いものでは数年単位でゆっくりと新陳代謝をしています。
コラーゲンの体内での生成量は年齢とともに減少し、40代後半になるとほぼゼロになるといわれています。
真皮の内側には、主に皮下脂肪からなる皮下組織があって、身体の内部を守るクッションの役目をしたり、体温を維持したりという役目をはたし、さらにその内側には筋肉があって、内臓、骨という構造になります。
正しいスキンケアや肌トラブルの対処をするためには、こうした皮膚の3層、それぞれの特性を理解していなければいけません。
1-1-1. ターンオーバー
表皮は「ケラチノサイト」とも呼ばれる表皮細胞が、城壁の石のようにぎっしりと並んで身体を守っています。
表皮細胞は、表皮の一番奥にある「基底層」で繰り返される細胞分裂によって生まれ、成熟しながら押し上げられていきます。
基底層には縦長の基底細胞が1層で並び、約19日間かかって新しい表皮細胞が生まれます。
押し上げられた表皮細胞は、5~10層の多角形の細胞となって「有棘層」を構成し、さらに押し上げられると、硬く扁平になった2~3層の表皮細胞が「顆粒層」を構成します。
やがて表皮細胞は死んで、薄くて硬い角質細胞となり、10~20層に積み重なっているのが「角質層」です。
表皮細胞が生まれてから顆粒層までの生きている期間が約14日間、死んで角質細胞となり、はがれ落ちるまでの期間が約14日間となり、この合計28日間を「角化」または「ターンオーバー」と呼びます。
ターンオーバーが28日間というのは20代くらいまでの人に当てはまり、40代になると約40日間、60代では100日間もかかるといわれ、そのため高齢になると、傷ついた肌に痕が残りやすくなるのです。
1-1-2. バリア機能
表皮の厚さは0.2ミリ程度で、その中でも角質層の厚さは0.02ミリ程度しかありませんが、10~20層にぎっしりと重なった角質細胞がレンガのように強固な防御壁をつくり、外部からの異物侵入を防いだり、体内から蒸発する水分をつなぎ止めています。
レンガのような角質細胞の間を埋めているのは細胞間脂質と呼ばれる物質で、その約半分を占めているのが「セラミド」という保水物質。
セラミドは、常に体内から蒸発している水分を挟み込んで保持する構造をもっており、肌のうるおいにもっとも影響を与えています。
これが「角質層のバリア」と呼ばれる機能で、この機能を健全に維持することがスキンケアの最重要課題であるといえます。
角質層はこんな大役を担っているにもかかわらず、とても薄くて傷つきやすい部位。
間違ったスキンケアでも角質層は簡単に傷ついてしまい、バリア機能が低下して乾燥や肌トラブルを引き起こします。
1-2. シワの3タイプ
目尻のシワも含め、顔にできるシワは、深さによって3種類に分けられます。
むやみにシワ用化粧品を使うのではなく、気になるシワがどのタイプか理解して、正しい対処を行う必要があります。
1-2-1. ちりめんジワ
若い頃から目尻によく見られるのが、肌の浅い部分にできる「ちりめんジワ」です。
このごく浅いシワは、肌の乾燥が原因ですから、正しい保湿ケアを行えば治ります。
シワの根本的な原因は乾燥ではなく、加齢や紫外線による肌の老化です。
しかし、ちりめんジワは一般的なシワとは違い、乾燥によって肌に小さなシワがよる症状ですから、若くても肌の保湿機能が低下すれば現れます。
改善するためには、角質層にセラミドを補給して肌のうるおいを取り戻さなければいけません。
1-2-2. 表情ジワ
「表情ジワ」は笑ったり、しかめっ面をしたりといった、表情の変化で現れるシワです。
表情を変えれば、シワはほぼ見えなくなります。
シワの種類(深さ)を判断するには、鏡を見て思い切り笑顔をつくり、すぐに普通の表情に戻します。
このときにシワがほとんど見えなくなれば、それは「表情ジワ」ですが、シワが消えない場合は、次に解説する「真皮性のシワ」に進行しています。
1-2-3. 真皮性のシワ
クセになってしまった表情ジワが元に戻らなくなると、「真皮性のシワ」になります。
真皮のコラーゲンが減ったり構造が壊れてしまったりして、肌が弾力を失っていることに原因があります。
シワが気になり出したという場合、多くは真皮性のシワになっています。
表情ジワは、若い頃であれば表情に気をつけることによって治すこともできますが、真皮性のシワになってしまうと、セルフケアで消すことはできません。
コラーゲンの減少は年齢を重ねれば誰にでも起こる老化現象なので、シワをまったくつくらないことはムリです。
しかし、若い頃からコラーゲンを増やすセルフケアや、UVケアをしっかり行えば、シワができる年齢を遅らせることは可能なのです。
2. 目尻のシワに対処する5つのセルフケア
目尻のシワは、乾燥が原因のごく浅いものであれば、保湿ケアを十分に行えば治ります。
しかし、コラーゲンやエラスチンの減少や変性が原因のシワは、セルフケアで簡単に消えるものではありません。
長い年月をかけて傷んでしまったコラーゲンは、容易に復活するものではないのです。
ですから、何よりも予防が大事であり、消えなくなってしまった目尻のシワに対してセルフケアでできることは、「消す」ことではなくて「進行させない」ことと考えましょう。
2-1. 洗顔&クレンジング
目の周囲の皮膚は薄いので、顔の中でもとくにデリケートな部分です。
引っ張ったりこすったりすると、それだけでシワは深くなってしまいますから、メイクのときなどに引っ張らないことと、メイク落としや洗顔のときにこすらないことが、とても重要です。
クレンジング剤や洗顔料に含まれる界面活性剤は、肌への刺激が強いので、肌にのせた上からこすってしまうと、角質層は大きなダメージを受けることになります。
クレンジングは、洗浄力が強ければ肌の負担が大きくなり、洗浄力が弱すぎても肌をこすってしまいがちですから、洗浄力と肌の負担がバランスよい、洗い流すクリームタイプがおすすめです。
目元はメイクが濃くなる部位なので、ポイントメイクリムーバーを使う人も多いでしょう。
目元にポイントメイクリムーバーを使えば、顔のほかの部位のクレンジングは軽くできますから、顔全体から見ればいいことですが、目尻のシワのことを考えるとより刺激の強いリムーバーは使うべきではありません。
肌にやさしく目元のメイクを落とすには、スキンケア用のオリーブオイルがおすすめです。
クレンジングは、油性のメイクを浮かせて洗い流せるようにすることが目的。
洗い流した後の肌に多少のヌメリが残っていても、洗顔で落とすので問題ありません。
洗顔料も、余計な添加物が含まれていない固形タイプの石けんを使用して、肌の負担を抑えましょう。
洗顔は、朝と夜の2回、しっかりと肌の汚れを落とします。
クレンジングの後の洗顔はもちろん、朝の洗顔も顔に広がっている皮脂をしっかり洗い流します。
毛穴にある皮脂腺から分泌される皮脂は、時間が経つと酸化して肌トラブルの原因になるので、肌に残すべきではありません。
健康な肌は、しっかりと皮脂を洗い流しても、30分もするとうるおいを取り戻します。
高齢になって皮脂の分泌が少なくなった場合には、薄くクリームを塗って油分を補給します。
「ゆるいクレンジング」と「しっかり洗顔」は、シワに限らず、あらゆる肌トラブルを予防するスキンケアの基本です。
2-2. 保湿ケア
ちりめんジワの原因となる肌の乾燥は、角質層だけではなく、肌全体の老化を進行させてしまいます。
肌の老化が進めば、当然ながら真皮のコラーゲンが減少してシワが深くなっていきます。
正しい保湿ケアとは、角質層で水分を保持しているセラミドを補給するケアです。
保湿といえば水分と安直に考えて、化粧水をたっぷりとつけまくっていませんか?
角質層にはバリア機能があるので、水分をいくらつけても浸透することはありません。
どのような成分が配合されていても、肌の上の水分は蒸発するだけですから、化粧水で保湿ケアをすることはできないのです。
しかも、保湿ケアに必要なセラミドは、油溶性で水には溶けませんから、ほとんどが水分である化粧水に配合することは非常に難しいのです。
保湿ケアに適しているのは、セラミドが高濃度で配合されている保湿美容液です。
美容液にはいろいろなタイプのものがありますが、硬めのものは肌への刺激が強い増粘剤を多く含んでいるので、サラッとしたジェルタイプを選びましょう。
目元専用のスキンケア化粧品として、アイクリームやアイセラムがあります。
どちらも、皮膚が薄くて皮脂腺の少ない目元専用につくられたもので、アイセラムは目元専用美容液と考えていいでしょう。
目尻のケアには、セラミドを配合したアイセラムを使うのも効果的です。
保湿ケアについては「3つの保湿成分で乾燥肌対策-乾燥のしくみを理解して保湿ケア」という記事でも詳しくご紹介していますので、こちらも参考にしてみてください。
2-3. UVケア
肌老化の60%以上は紫外線によるものといわれ、紫外線を浴びれば浴びるほど、コラーゲンは壊れていきます。
早いうちからしっかりと紫外線対策を行って、コラーゲンを守ることがシワの予防につながります。
日焼け止めは、たっぷりと厚く塗って、しかも2時間ごとに塗り直さなければ、十分な効果は得られません。
スポーツやリゾートでは可能であっても、日常生活で毎日続けることは大変。
ですから日常生活では、日焼け止めだけに頼らないUVケアが必要になります。
顔はファンデーションを塗ることによって、紫外線を散乱させることができます。
中でも顔料の粒子が多いパウダーファンデーションは、UVカット効果が高く、むらなく塗ることによって、SPF20程度の効果を発揮します。
さらに夏場は、帽子や日傘を活用して紫外線から顔を守りましょう。
2-4. コラーゲンケア
深く刻まれてしまった真皮性のシワの進行を止めるには、コラーゲンを増やすケアが必要です。
40代後半になるとほとんど生成されなくなってしまうコラーゲンは、残念なことに、セラミドのように身体の外から補給することはできません。
分子が大きいコラーゲンは肌に浸透しませんし、そもそも化粧品が浸透するのは角質層までと法律で定められているのです。
また、食べたり飲んだりしても、体内でアミノ酸に分解されてしまいますから、そのまま真皮のコラーゲンになることはありません。
コラーゲンを増やすためには、肌の老化を防ぐケアが必要となります。
コラーゲンケアの4点セットを紹介しましょう。
2-4-1. ピーリング
「ピーリング」とは皮をむくという意味で、化学的に肌表面の角質を取り去る方法をケミカルピーリングと呼びます。
ケミカルピーリングは、美容皮膚科で盛んに行われていますが、近年は自宅で化粧品を使用してできるホームピーリングが一般的になっています。
AHAやフルーツ酸などを配合したピーリング化粧品は、酸のパワーによって、肌にのせているだけで角質を溶かす作用があります。
美容皮膚科で行うものより作用は弱くなりますが、1~2週間に1回のペースで続けると、ターンオーバーを活性化させると同時に、コラーゲンの生成を促す効果もあります。
2-4-2. ビタミンC誘導体
抗酸化作用の高いビタミンCで、肌の老化を防止します。
ビタミンCを肌に浸透しやすくした成分が、ビタミンC誘導体。
ビタミンCは水溶性なので、こちらは化粧水に配合されたものがおすすめです。
化粧水を使用するだけでなく、イオン導入器を用いることによって、ビタミンCの浸透力を数十倍にもアップすることが可能になります。
微弱電流を流してビタミンCを肌に浸透させるイオン導入器は、セルフケアで使用できる美顔器の中で、もっとも老化防止の効果が高いアイテム。
すぐには効果が現れなくても半年、1年後には差が出てきます。
2-4-3. レチノール
ビタミンAの一種であるレチノールは、コラーゲンを増やす作用があるので、アイセラムなどにもよく配合される成分です。
化粧品の成分であるレチノールに対して、美容皮膚科などで処方されるレチノイン酸は医薬品で、こちらの方が浸透力や効き目が高くなります。
2-4-4. ナイアシン
抗酸化作用やコラーゲンを増やす作用があるビタミンB3は、「ナイアシン」と呼ばれます。
保湿作用もあるので、目元の小ジワ対策として注目されている成分で、化粧水や美容液に配合されています。
ビタミンC誘導体よりも肌への刺激が弱いので、敏感肌の人でも使用できるという利点があります。
2-5. 抗酸化食品
「抗酸化」とは、コラーゲンを破壊して肌の老化を進行させる「活性酸素」の分解を意味します。
体内の代謝活動が行われる過程で発生するのが活性酸素で、非常に酸化力が強い物質です。
活性酸素による免疫力は、人体に欠かせないものであるいっぽうで、健康な細胞をも酸化させて傷つけるので、老化を進行させてしまいます。
呼吸をしているだけでも活性酸素は発生しますし、紫外線を浴びることによっても発生します。
人体にはもともと活性酸素を分解する「抗酸化物質」があるのですが、加齢とともに減ってしまい、過剰になった活性酸素を処理しきれなくなっていきます。
そこで、食べ物から抗酸化物質を補給する必要が出てくるのです。
植物に含まれている抗酸化物質には、以下のようなものがあり、ほかの栄養成分と組み合わさることによって効果がアップするものも多いので、多種の野菜や果物を摂るように心がけましょう。
・ニンジン、カボチャ、ホウレンソウ、モロヘイヤなどに含まれる「ビタミンA(ベータカロテン)
・オレンジ、ブロッコリー、ピーマン、キャベツ、サツマイモ、イチゴなどに含まれる「ビタミンC」
・カボチャ、ナッツ類、ウナギ、ハマチ、植物油などに含まれる「ビタミンE」
・ベリー類や赤ワインなどに含まれる「アントシアニン」、ゴマに含まれる「リグナン」、大豆に含まれる「イソフラボン」といったポリフェノール類
・トマト、柿、スイカなどに含まれる「リコピン」、鮭、エビ、カニなどに含まれる「アスタキサンチン」、ホウレンソウ、トウモロコシなどに含まれる「ルテイン」といったカロテノイド類
まとめ
シワやたるみのケア方法として、表情筋のエクササイズや顔面マッサージがよくあげられます。
たしかに表情筋を柔軟にすることは、たるみの改善には効果なのですが、肌を引っ張ったり、不自然な表情をつくったりすることで、シワを深くしてしまうことがあるので、目尻のシワのケアには向きません。
コラーゲンの減少や変性が原因である目尻のシワを本格的に改善したい場合には、セルフケアではムリですから、できるだけ早めに美容皮膚科などで相談してみるべきでしょう。
レチノールよりも効果の高いレチノイン酸のクリームを処方してもらったり、より効果の高いケミカルピーリング、ボトックス注射やヒアルロン酸注射などを受ければ、シワを消すことも不可能ではありません。
目の周囲は皮膚が薄いだけに、美容皮膚医療ではピーリングや注射などの効果がはっきりと出やすい部位とされており、治りが早いという特徴もあります。
目のしわやたるみについては「4つの悩みを解消する目元ケア-目元美人のアンチエイジング術」の記事もぜひ参考にしてみてください。
【参考資料】
・『新版 今さら聞けないスキンケアの正解』 主婦の友社 2015年
・『素肌美人になるための スキンケア美容医学事典』 池田書店 2011年