起業したいと考える女性は少なくありません。しかし実際に起業に結びつけている女性はそれほど多くはないようです。頭の中でぼんやりと考えているだけでは目の前の現実は変わりません。
書き出すという作業によって何をしたいのか、何ができるかが見えてきます。ここではワークシートを用意しましたので、書きこみながら自分の理想の起業スタイルを明確にすることができるはずです。
目次
1. 女性の起業に関する3つの着眼点
1-1. 女性が起業するメリット・デメリット
1-2. 現在の状態から見る女性起業家のリスク
1-3. 自分の性格に照らし合わせた起業を
2. 女性起業家になる前にチェック!自分を客観的にみつめるために
2-1. 女性起業家としてこれだけはしたくない!嫌なことワースト10を書き出す
2-2. 女性起業家としてこんなことしたい!楽しみなことベスト10を書き出す
2-3. 書き出したことから女性起業家の理想をあぶり出してみよう
3. 女性起業家になるための必要な起業資金
3-1. 起業の開業資金はどのくらいか見積を出します
3-2. 起業の運転資金はどの程度か見積を出します
3-3. 書き出した資金を節約する方法を考えます
4. 女性起業家になる前の起業資金の集め方
4-1. 起業する時に自己資金でまかなう場合
4-2. 起業の補助金・助成金について
4-3. 起業でやむを得ず借り入れする場合
4-4. 起業する前にほんとうに借金が必要かもう一度考えて
5. 起業へのはじめの一歩、トライアルしてみませんか?
5-1. 起業前に準備できることをしてみる
5-2. 起業で不安があるとうまくいかないので試してみる
5-3. 対価としてのお金をいただくことへの抵抗感をなくす
5-4. 起業前のトライアルで見えてくるもの
6. まとめ
6-1. 起業しなくても理想に近い働き方をみつけたMさん
6-2. 起業は副業と割り切って成功したKさん
6-3. 起業準備期間を決めて勉強を始めたYさん
1. 女性の起業に関する3つの着眼点
1-1. 女性が起業するメリット・デメリット
女性が起業する際のメリットは、女性の気持ちがわかるということです。女性が欲しがるものやサービスを形にして提供するのは男性よりも女性のほうが得意です。
また、商工会や青年会議所、ロータリークラブやライオンズクラブなどに在籍する際、経営者に女性の起業家は少ないですから、男性よりも注目してもらえ、仕事につながりやすいというメリットがあります。
デメリットは、女性は家庭を持つとそれまでと同じように働くことが困難になりやすいことです。出産や育児との両立について男性よりもたくさんの負担を覚悟しなければならないと言えます。
1-2. 現在の状態から見る女性起業家のリスク
女性であるあなたが、今どのような状況にいるかによって、起業へのリスクのとり方は変わってきます。独身やシングルマザーなど、生計を立てる必要のある給与所得者ならば起業によって収入の安定を失うというリスクが気になります。
既婚で収入のある女性なら、今の収入を保証できるかどうかというリスクと、家庭生活に起きるかもしれないリスクを考える必要があります。
1-3. 自分の性格に照らし合わせた起業を
人と接することに苦痛を感じるタイプの女性が営業職に就くのは無理がありますし、ひとつの場所にじっとしているのが苦手なタイプの女性が店舗の店番をするのもつらいものがあるでしょう。自分の性格を把握した上で、どのような起業スタイルにするか決めることが大切です。
2. 女性起業家になる前にチェック!自分を客観的にみつめるために
ワークシートを用意してください。できればプリントアウトして、手書きにすることをお勧めします。文字だけでなくイラストを描いたりシールや写真を貼り付けたりして楽しみましょう。ワークシートはコチラからダウンロードできます。
2-1. 女性起業家としてこれだけはしたくない!嫌なことワースト10を書き出す
「こんなことがしたい」という気持ちをいきなり書くよりも、「これだけはしたくない」ことを書き出す方が最初は簡単です。
「嫌いな人と一緒に仕事はしたくない」
「服装についてとやかく言われる仕事はしたくない」
「子育てを犠牲にするような仕事はしたくない」
「週末に休みがとれないような仕事はしたくない」…。
10個で収まらないなら思いつくものすべて書きだし、優先順位を決めていくと良いでしょう。誰に見せるものでもありませんから、どうぞ思い切りワガママになって、自分のほんとうの気持ちをみつけてくださいね。
2-2. 女性起業家としてこんなことしたい!楽しみなことベスト10を書き出す
ここでは起業したら楽しみなことを書いていきます。この段階では、現実味があるかないか、実現できそうかどうかを考えず、ただ単純に自分の心と向き合うことが大切です。
起業後は自分のモチベーションしか頼るものはありませんから、自分がどんなことのためになら頑張れるのかを明確にしておく必要があるのです。
「仕事で海外に行く」
「ふだんはオシャレな古着スタイルで、クライアントに会うときはスーツでビシッと決める」
「毎日家の中で好きなことをする」…。
どんなことでもかまいません。起業したらこうなったらいいなあ、と考えてどんどん書き出してみてください。同じような内容が重なっていたらまとめ、優先順位をつけてベスト10を決めます。
2-3. 書きだしたことから女性起業家への理想をあぶり出す
ここまでの作業は、自分が納得いくまで時間をかけて欲しいと思います。ワークシートを持ち歩き、「あ、こんなこと嫌だな」「こんなことしたいな」と気づいたらどんどん書きくわえましょう。
ベスト10を決めることで、もう一度自分の気持ちと向き合うことになります。納得のいくまで自分の気持ちと向き合ったら、その気持ちに嘘をつかないような起業スタイルをみつけていきます。
人に会って物を売るという、いわゆる営業が苦手ならネットショップにする、売ることは人にお願いして自分は制作を受けもつなど、自分に実現可能なラインまで落とし込んでみましょう。
3. 女性起業家になるための必要な起業資金
起業の際に気になるものに、起業資金があります。
起業資金には開業の際にかかる開業資金と、その後の運転資金があります。ここではワークシートに自分が起業するなら何がどのくらい必要なのかを書きこみ、起業資金の見積を出していき、その後節約できるものがないかチェックしていきます。
3-1. 起業の開業資金はどのくらいか見積を出します
開業の際、店舗や事務所が必要なら保証金(敷金礼金)、不動産仲介手数料、内装工事費などがかかります。
飲食店ならばテーブルや椅子、厨房機器、物販でも什器などが必要ですね。事務所ならパソコン、コピー機などの事務機器、文具なども概算で書いてみましょう。
物販などの場合、最初に必要な仕入れにかかる費用も開業資金に加えます。
オープンを知らせる必要のある業種なら、広告費も必要です。
3-2. 起業の運転資金はどの程度か見積を出します
開業してからしばらくは、思ったような収入が得られないこともあります。運転資金としてどの程度用意すればいいか見積を出します。見積は、1ヶ月単位がわかりやすくて良いでしょう。
家賃、水道光熱費、通信費などの他、人を雇うなら人件費、生鮮品などの仕入れが必要ならば仕入れも運転資金に加えます。
個人事業として起業する場合、売り上げから経費を差し引いた分が自分の収入になりますから、家計を担う必要のある女性の場合には生活費、子供を預ける必要があるならベビーシッターや保育園の費用も運転資金として書いておくと目安になります。
3-3. 書き出した資金を節約する方法を考えます
自分の起業に必要なものを書き出し、だいたいの金額を入れて見積を出しましたね。書きこんだワークシートを見て、節約できるものをみつけていきます。
最初に目安にするポイントは「かっこつけ、見栄のためではないか?」。
名入れの封筒や印刷屋さんに頼む名刺は、たしかに美しくて素敵です。けれど封筒にはゴム印を押すだけで事足りますし、とりあえずはプリンターで印刷しても良いでしょう。名刺も簡単に必要枚数だけ印刷できます。
事務機器の営業マンにカッコいいところを見せるより、家庭用の電話やファックスで事足りるならそれですませることにします。新品で見積もった部分を、中古品で補えないかも検討できますね。
つぎに検討したいのは「まわりの人に頼れることはないか?」。
ベビーシッターは高額ですが、夕方の数時間なら自分の母親に預けられるかもしれない、ロゴのデザインは美術部だった友達にお願いできるかもしれない、などお願いすることで節約できる部分を探してみましょう。
個人事業や小さな会社の起業では、スタートにどれだけお金をかけないか、また運転資金をどれだけ小さくできるかが存続の有無につながりますから、開業資金、運転資金とも真剣に見直してください。
4. 女性起業家になる前の起業資金の集め方
4-1. 起業する時に自己資金でまかなう場合
女性が起業するとき、自己資金でまかなうのが理想的です。できることならお金の心配は最小限にした方が良いと考えます。
男性に比べ、デリケートな部分がある女性は、サービスの充実や商品展開などには素晴らしいアイデアを実行することができる反面、現実的なダメージに弱く、起業後すぐに借金するなどの展開になった場合、廃業してしまう確率が高いのです。
起業資金のワークシートを見て、開業資金と1年分の運転資金を目安に用意できるといいですね。
4-2. 起業の補助金・助成金について
起業というと、国や地方自治体から補助金や助成金が受けられるのではと期待する人も多いようです。たしかに、「創業補助金」などの名目でこれまでもおこなわれていますが、現実には募集の時期を知ったときにはもう締め切られているというように、告知が非常に狭い範囲でおこなわれており、申請にはたいへんな手間がかかります。
しかもそれを乗り越えて書類を提出しても、必ずもらえるというものではないのです。また、返さないですむ補助金や助成金というのは、全額負担してくれるのではなく、必要な金額の三分の一など、事業計画に対しての一部を負担するものが多いため、まとまった自己資金が必要な場合が多いことを覚えておいてください。
4-3. 起業でやむを得ず借り入れする場合
業種によっては、どうしても起業する時に自己資金ではまかなえないものもあります。借り入れ先というと、商売未経験者は銀行を思い浮かべるのではないでしょうか。
ところが、銀行というのは定収入がある人に住宅ローンやマイカーローンといった目的のある借金はさせてくれるのに対し、商売人には簡単にお金を貸してくれないところなのです。だからといって、すぐにノンバンクから借りる必要はありません。公的機関として、日本金融政策公庫、商工中金がありますが、後者はすでに営業している事業への融資をおこなう機関なので、起業するときに借り入れるなら日本金融政策公庫になります。
地域の信用金庫や信用組合も銀行に比べ若干金利は高めですが、自営業者や中小企業に融資を行います。商工中金同様、実績のない起業希望者には融資が難しいため、利用を考えるなら毎月定額を積み立てるなど、起業前の実績をつくって営業担当者と顔見知りになっておく必要があります。
4-4. 起業する前にほんとうに借金が必要かもう一度考えて
借り入れ先について説明してきましたが、女性の起業では無借金が理想だということをよく理解して、借金せずに済むアイデアをもう一度考えて欲しいと思います。
すべての女性がそうだというわけではありませんし、きちんと経営を学んだ人には当てはまらないかと思いますが、平均的な女性は、男性に比べて数字に弱く、借金に対する考え方もプラスイメージよりマイナスイメージが強いのです。
借金があるという現実、毎月これだけ売り上げなければというプレッシャーは、男性にとってはモチベーションにもなり得るのですが女性にとっては心がくじける原因になってしまうことが多いのです。金融機関から借り入れする前に、もう一度その借金が必要か考えて欲しいと思います。
5. 起業へのはじめの一歩、トライアルしてみませんか?
これまでのワークシートで自分の起業スタイルが決まってきたと思います。起業まであと一歩。けれどその一歩が踏み出せない、ちょっと不安という女性は多いことでしょう。ここでもワークシートを使って、具体的に何をすべきか、何ができるかを考えてみましょう。
5-1. 起業前に準備できることをしてみる
まだ起業していない状態で、今の自分に何ができるかを考えて、ささいなことでもかまいませんから書き出してください。
- ランチには毎日お弁当を作って、節約と体調管理をする
- 洋服を買うことをしばらくはやめて手持ちの服を着回し、その分貯金に回す
- 夫に起業の話をして、理解してもらう
- 睡眠時間を2時間減らしてその時間に稼げることをする
- 作品をフリーマーケットで販売する
- 家事の効率を良くして1日4時間を捻出する
どんな小さな一歩でも、書きだして実行するのと何もしないのでは大きな差があります。行動には加速度がつくのでひとつ始めることでつぎの展開が見えてくることがよくあります。
5-2. 起業で不安があるとうまくいかないので試してみる
不思議なことに、人は考えている方向へ進んでしまうものです。楽しくてワクワクしながら起業すれば自分サイズの成功が手に入って毎日が充実するものですが、不安でしかたない状態で起業すると、不安な出来事がたくさん押し寄せてきてしまうのです。
そうならないために、起業前に不安を消していくような行動を身につけましょう。自分がイメージした起業スタイルを小さく試す方法がないか考えてみてください。
「ネイルサロンで起業するならば、自分の部屋や出張でしてあげる」
「ケーキを売るなら身近な人に声をかけてバースデーケーキを受注する」…。
約束の日にきちんと納品できるという自信、お客様が喜んでくださるという自信がついて、起業への不安が少なくなっていくはずです。お試しでできることを、書きだしてみてください。
5-3. 対価としてのお金をいただくことへの抵抗感をなくす
これまで給与をもらう生活をしていた女性にありがちなのが、自分の商品やサービスに対してお金を支払ってもらうことに抵抗感があるということです。自分が育った環境がサラリーマンや公務員の家庭だと、なぜかお金に対する罪悪感のようなものを持っている人が多いのです。
これから起業するなら、その抵抗感や罪悪感をなくさなくてはいけません。先ほど「小さく試す」のところで書いたことは、もちろん有料で、それも「まだ素人だから」などと低価格で提供するのではなくきちんとした販売価格で提供してください。
ここではワークシートに起業後の自分がどんな商品やサービスをいくらで提供するのか書き出し、その価格で身近な人に提案してみてください。案外あっさり試してくれたり購入したりしてくれて、その上喜んでくれることも多いですから、勇気を出してチャレンジしてくださいね。
何度かそうしてお金を受け取ると、抵抗感も罪悪感もなくなっていきますし、商品やサービスの適正価格もつかめてきます。
5-4. 起業前のトライアルで見えてくるもの
お試しはできたでしょうか。ただぼんやりと「起業したいなあ…」と考えていたときと、自分の気持ちや現実の見積を書きだし、さらに自分にできることを始めた今とでは、ずいぶん違う場所にいるはずです。
「2時間の早起きで起業に必要な勉強ができている」
「たった2ヶ月で数万円も貯金に回せた」
「家族が家事に協力してくれるようになった」…。
ここまで実行した自分がどのように変化したか、それも是非書きだしておいてください。起業に踏み出す勇気が出ると思います。
6. まとめ
ワークシートに書きこむことで、自分の起業について深く考えて実行に移した三人の女性のスタイルです。 中には起業という道を選ばなかった女性もいますが、満足度は高いようです。
6-1. 起業しなくても理想に近い働き方をみつけたMさん
でき婚でパティシエの仕事を辞め、子育てに専念していたMさんは32歳。自分のお店を持ちたいと考えていましたが、貯金はないので借金が必要ですし、そこまでのリスクを負うのも怖いところがありました。子供が幼稚園に通うようになり、いよいよ仕事を始めることに。ワークシートに書いて気づいた理想である「ケーキを作る仕事を平日に短時間」することができないかと、勇気を出して市内のカフェすべてに提案したところ、それまで冷凍ケーキを使っていた1件で、出来高制で雇ってもらえることに。カフェで月、水、金にケーキを焼いています。時給換算で平均1800円程度になっているそうです。
6-2. 起業は副業と割り切って成功したKさん
数年前からずっと起業したいと考えていたMさんは29歳独身。大学卒業後に就職した中小企業メーカー勤務のOLです。大学時代は文学部の心理学科にいたため、文部科学省認定の臨床心理士の資格を持っています。
カウンセラーとしての独立を夢見ていましたが、ワークシートに書きこんでいくと、毎月定収入がなくなることが不安で独立起業には向いていないと気づきました。仕事はそのまま続け、休日や夜の空いた時間にカウンセリングの予約を受け付けることに。口コミで相談者は増え続け、やりがいも収入も得て満足しています。
6-3. 起業準備期間を決めて勉強を始めたYさん
Yさんは39歳の専業主婦です。これまでも起業に興味があり、家事の合間に様々な資格試験の勉強をし、いくつかの民間資格を持っています。資格を活かして起業したいと思いながらも、何も変わらない日々が過ぎていました。ワークシートでわかったのは、資格があっても自信がない自分です。このまま人生終わるのは嫌だと強く感じ、無借金で雑貨の自宅ショップをつくると決心。1年後の起業を決め、収入と勉強を兼ねてショッピングモール内の雑貨店でパートを始めました。仕事は厳しいことも多く家事をする時間も限られていますが、起業という目標があるので頑張れるそうです。