スキンケアには力を入れているが、何を食べれば肌にいいのかわからないという人は多いですよね?
日本の女性は、メイクやスキンケアの知識が豊富で美しいということは、世界が認めている事実です。
ところが、世界の基準から唯一遅れているのが、食材や栄養素の正しい知識なのです。
今や日本の伝統的な食文化は、世界が注目しています。
しかし当の日本人は、和食がもつ美容効果を忘れて、乱れた食生活を送っている人が多くなっています。
どんなに高価なコスメでスキンケアをしていても、これでは美肌を望めません。
ここでは「美肌をもたらす食べ物」というテーマに基づき、肌が本来もっている3つの美肌機能と、その機能を改善する栄養素について、解説します。
目次
1. 食べ物で美肌を作るポイント
1-1. 美肌と年齢は比例しない
1-2. 腸内環境を整える3要素
1-3. 美肌成分は食べても効果がない
1-4. 野菜ジュースでビタミンを補うのは難しい
1-5. サプリメントの選び方
2. 肌がもつ3つの美肌機能
2-1. 保湿機能
2-2. ターンオーバー
2-3. 抗酸化機能
3. 美肌を作る11の栄養素
3-1. ビオチン
3-2. ビタミンB2
3-3. ビタミンC
3-4. ビタミンE
3-5. ベータカロテン
3-6. ヘム鉄
3-7. レスベラトロール
3-8. 亜鉛
3-9. 葉酸
3-10. 乳酸菌
3-11. カルシウム
1. 食べ物で美肌を作るポイント
肌も含めて人間の身体は、自分が食べた物で作られています。
様々な肌のトラブルも、身体の不調と同じように、食事が大きな原因になっています。
美肌のためには、外からのスキンケアと同時に、中からの「インナーケア」が大切であることは言うまでもりません。
まず、美肌を作る食べ物について押さえておきたいポイントがいくつかあります。
1-1. 美肌と年齢は比例しない
一般的には、年齢を重ねていくほど、ファンデーションやコンシーラーといったコスメを重視するようになります。
しかし、どんなに厚塗りをしても土台の肌がきれいでなければ、メイクは映えません。美肌を保つためには、肌の下を循環している血液の質を高める必要があります。
血液の質を高めるためにもっとも効果的なのは、食事の内容を見直して栄養のバランスを整えることです。年齢を重ねていても、食事を見直すことでファンデ―ションを手放す女性が少なくありません。
肌の老化と年齢は必ずしも比例しないのです。
1-2. 腸内環境を整える3要素
「肌は内臓の状態を映す鏡」といわれます。
内臓を健康に保つことは、肌を美しくすることにつながるからです。
内臓の中でも、もっとも肌との関係が深いのは「腸」です。腸の環境を整えておくことにより、様々な肌トラブルを軽減することができます。
腸内環境を整えるポイントは次の3つです。
① 発酵菌
腸の中には1000兆個をこえる腸内細菌が存在するといわれます。
その中には、ビタミンを合成し、免疫力を高めるといった身体によい働きをする善玉菌と、腐敗物や有毒物質を発生させる悪玉菌があり、善玉菌を優位に保つために必要なのが、「乳酸菌」「麹菌」「酵母菌」などの発酵菌です。
日々の食事に、発酵菌を意識的に取り入れていくことが求められます。
② 食物繊維
野菜、海藻、全粒穀物に含まれる食物繊維は、善玉菌の栄養になります。
たくさん摂取すれば、腸が活性化します。
③ 多種の食材
できるだけ多くの種類の食材を摂取することによって、多様な腸内細菌が活性化します。食材は種類が多いほど、腸内環境を整える効果が高まります。
もともと体の中に存在する善玉菌が、最大限に力を発揮できるような体内環境を維持することが、美肌への近道なのです。
1-3. 美肌成分は食べても効果がない
食べた物は胃の中で分解され、腸で吸収されるので、美肌成分と呼ばれる物質を食べてもそのままの形で効果をあげることはありません。
コラーゲンたっぷりの食品を食べても、それがそのまま肌のコラーゲンになることはありえないのです。
ヒアルロン酸やエラスチンなども、消化酵素によって分解されてアミノ酸とブドウ糖になるので、直接的な効果は期待できません。
しかし、コラーゲンなどを分解して作られるアミノ酸は、肌だけでなく筋肉や臓器、血液などを作る大事な材料になりますから、ムダということではありません。
インナーケアの正しい知識を身につけて、「コラーゲンを食べた翌日は肌プルプル」などといった美容神話に惑わされないようにしましょう。
1-4. 野菜ジュースでビタミンを補うのは難しい
ビタミン不足を気にする人は、市販の野菜ジュースに頼っているケースも多いですよね。最近は、「1日分の野菜がこれ1本で」などとうたった商品が増えていて、中には丁寧に各種ビタミンの配合表がついているものもあります。
ところが、野菜ジュースが野菜の代わりになるという考えは間違っています。
野菜ジュースのキャッチコピーや成分表に書かれている数値は、原料となっている野菜や果物に含まれる栄養素の量なのです。
だから間違いではありません。
しかし、原料の野菜や果物は、加工されて販売されるまでの製造過程で、本来もっていた栄養素がどんどん壊されてしまいます。
製造過程で減った成分については記載する規定がないので、こういうことが起こるのです。
「濃縮還元100%ジュース」は、原料の輸送コストを下げるために、果汁を乾燥させてパウダー状にしたものを、水で溶いた飲み物です。
これも、果汁を乾燥させてしまえば、ビタミンなどの栄養素が失われるのは当然ですね。
1-5. サプリメントの選び方
美肌に必要な栄養素は、毎日の食事からとるのが理想です。
しかし、野菜の栄養成分が減り、食事が西洋化している現代社会では、なかなか難しいのが現実です。
普通の食生活では足りない栄養素をサプリメントで補充することは、今や日本でも普通に行われていることです。
しかし、日本で販売されているサプリは、含まれる有効成分の少ないものが多いので、質のよいものを選ぶ必要があります。
質のよいサプリを見分ける方法は、次の4点です。
- 「1粒の重さ-栄養素の量=添加物」で添加物の割合をチェックする。
- 成分表示がきちんとされているかチェックする。
- 生産ラインが信用できることをチェックする。
- 医師や栄養士が監修しているものを選ぶ。
2. 肌がもつ3つの美肌機能
人間の肌は本来、美肌を保つための機能をもっています。美肌を作るということは、本来もっているのに何らかの影響で弱くなってしまっている機能を回復させることがカギとなります。
肌の基本的な構造と、3つの美肌機能を理解しましょう。
2-1. 保湿機能
肌は皮下組織の上にある「真皮」とその上にある「表皮」で成り立っています。
表皮の厚さは平均約0.2ミリで、外側から、「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4層で成り立ち、その大部分を「角質細胞」が占めています。
真皮にはコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸があって、肌の弾力を保っています。
表皮には、外敵刺激から肌を守り、水分を保持する役割があります。
肌の表面になる角層は、死んだ角質細胞がレンガのように積み重なって、その間をセメントのように「細胞間脂質」が埋め、強固な壁となって外部からの水や異物の侵入を防いでいます。
この機能は「角層のバリア機能」と呼ばれ、これがあるために、海に入っても水分や塩分が体内に入らないのです。
角層の細胞間脂質の50%を占めているのは「セラミド」という保水物質で、内部から水と結合して蒸発を防ぎ、肌の水分を保っています。
角層のバリア機能は、このセラミドの量で決まります。
つまり、セラミドが多い肌はうるおいがあり、少ない肌は乾燥や敏感傾向にあるのです。
化粧品や洗顔料に含まれる界面活性剤は、保湿に欠かせない角層バリアを破壊してしまいます。
だから、何もしない、何も塗らない「肌断食」と呼ばれるスキンケアが注目されているのです。
肌が本来もっている保湿機能を保持、改善するためには、化粧品を使うスキンケアよりも、むしろ適度な水分や栄養素を食事でとることのほうが重要なのです。
2-2. ターンオーバー
表皮の一番下にある基底層では、細胞分裂が行われて、次々と新しい表皮細胞が生まれています。
表皮細胞はだんだん上部に押し上がっていき、4週間後に死んで角層の角質細胞となります。
この表皮細胞が生まれ変わる代謝のサイクルを「ターンオーバー」と呼ぶのです。
角層では折り重なった角質細胞が、アカといっしょにはがれていきます。
ところが、ターンオーバーの機能が低下すると、角質細胞が溜まって角層が厚くなります。
これがクスミや黒ずみの原因になるのです。
セラミドは、基底層で生まれた表皮細胞の中で熟成、合成されていき、角質細胞に変わる瞬間に細胞の外に放出されて、細胞間脂質となります。
ですから、ターンオーバーの機能が低下するとセラミドも減ってしまいます。
ターンオーバーは年齢とともに機能低下していき、高齢者になると40日くらいかかることが珍しくありません。
また、栄養が足りていないと、細胞分裂が正常に行われなくなるので、ターンオーバーの活性は下がってしまいます。
ターンオーバーを活性化させるためには、外側からのスキンケアだけでなく、野菜中心の食事や適度な有酸素運動、快眠などが欠かせません。
身体全体の新陳代謝を高めることを考えればいいのです。
2-3. 抗酸化機能
「抗酸化」という言葉は、アンチエイジングの分野でよく使われます。
美肌の大敵とされる、紫外線、ストレス、喫煙、偏食、運動不足などは、すべて身体を酸化させる原因になります。
肌が酸化するとシミ、シワ、くすみ、たるみといった肌トラブルを引き起こします。
酸化させるのは活性酸素という物質。
人間の身体は、エネルギーを燃やすときに酸素を必要とし、その結果、活性酸素が産出されます。
酸素を使って代謝する過程では必ずできてしまうものなので、上記のようなことがすべて原因になるわけです。
体内で過剰な酸化を防ぐのが、抗酸化機能です。
酸化を防ぐ物質を抗酸化物質といい、食事でとることが可能なのです。
身近なものでは、ビタミンCやビタミンE、ベータカロテンなどがあります。
これらは、野菜が活性酸素から身を守ろうとして作る成分です。
植物の色素や苦味に含まれるポリフェノールも抗酸化作用が高い物質です。
3. 美肌を作る11の栄養素
ここからは、美肌にいい栄養素について具体的に解説します。
栄養素の知識を身につけるにあたって、重要なポイントが2つあります。
ひとつ目は、栄養素は単体では力を発揮しないということです。
栄養素は必ずチームで働きますから、ある特定の栄養素だけを多めに摂取しても、効果はあまり実感できません。
ふたつ目は、自分に足りないものをとるということです。
まず日頃からバランスのよい食事を心がけていろいろな栄養素をチャージし、自分に足りないものを補うようにするのです。
自分に足りない栄養素を見極めるためには、過去3日間に食べたものをすべて書き出して、栄養の偏りを調べます。
また、肌が荒れている、ニキビができやすいなどの症状があれば、それも判断の材料になります。
基本は、バランスよくビタミンとミネラルを摂取することです。
3-1. ビオチン
ビオチンはビタミンB群のひとつで、ビタミンB7、ビタミンHとも呼ばれます。
肌や髪、爪を健康に保つ働きがあり、酵素やビタミンB12の働きを助けます。
不足すると、皮膚炎、シミやシワ、抜け毛や白髪、疲れやすいといった症状が現れます。
【ビオチンを多く含む代表的な食品】
・豚や牛のレバー
・大豆、クルミや落花生などの豆類
・卵やヨーグルト
3-2. ビタミンB2
ビタミンB2は、細胞の成長や再生を促してくれる、肌にとってはとても大切な栄養素です。
皮膚の皮脂分泌をコントロールし、粘膜を健康に保つ働きもあります。
注意しなければいけないのは、水溶性であるために煮汁などに溶け出しやすいことと、日本の摂取基準量が低すぎることです。
アメリカでは病気予防に必要とされる摂取量が、25から30mgとされています。
不足すると、肌荒れ、皮脂過剰、口内炎などの症状が現れます。
【ビタミンB2を多く含む代表的な食品】
・鶏、豚、牛のレバー
・うなぎ
・納豆
・卵
3-3. ビタミンC
ビタミンCは、真皮にあるコラーゲンの産出を促し、メラニンの生成を抑え、抗酸化作用が高いので、「美肌のビタミン」ともいわれます。
ビタミンCは、酸やアルカリに弱いため、腸で吸収される前に大部分が失われてしまいます。
水溶性ですから体内に蓄えることもできず、余剰分は尿として排出されてしまいますから、毎日たっぷりとる必要があります。
アンチエイジング効果を望むなら200mg以上、十分な美肌効果を期待するなら1000~2000mgの摂取が望ましいといえます。
不足すると、肌荒れ、ニキビ、風邪をひきやすくなる、疲れやすくなるといった症状が現れます。
【ビタミンCを多く含む代表的な食品】
・赤ピーマン
・アセロラ果汁飲料
・ブロッコリー
・カリフラワー
3-4. ビタミンE
ビタミンEは、抗酸化作用の強いビタミンの代表です。
血行を促す、善玉コレステロールを増やす、中性脂肪をへらすといった効果もあります。
脂溶性なので、油と一緒にとると吸収が高まります。
不足すると、シミやそばかす、頭痛や肩こり、血行不良、冷え症、貧血といった症状が現れます。
【ビタミンEを多く含む代表的な食品】
・かぼちゃ
・ひまわり油
・小麦胚芽
・アーモンド
3-5. ベータカロテン
ベータカロテンは、緑黄色野菜の色素成分で、ビタミンAとして扱われることもあります。
ビタミンAと同様に抗酸化作用が強く、体内ではビタミンAが不足すると必要量だけビタミンAに変わる特性があります。
ビタミンAは過剰摂取のリスクがありますが、ベータカロテンは必要量だけ変化するので、妊婦さんなどにとっても安心感があります。
油と一緒に摂取すると、吸収率がグーンとアップします。
不足すると、乾燥、ニキビ、くすみ、ハリや弾力の低下といった症状が現れます。
【ベータカロテンを多く含む代表的な食品】
・焼きのり
・しそ
・モロヘイヤ
・にんじん
3-6. ヘム鉄
赤血球を作る上で欠かせない「鉄」は多くの女性に不足している成分です。
鉄には動物性の「ヘム鉄」と、植物性の「無機鉄」がありますが、「ヘム鉄」のほうが
圧倒的に吸収率がいいのです。
鉄分が不足すると、目の下のくま、血色が悪い、爪がもろくなる、抜け毛といった症状が現れます。
【ヘム鉄を多く含む代表的な食品】
・鶏、豚、牛のレバー
・卵黄
・牛肉
3-7. レスベラトロール
レスベラトロールは、数あるポリフェノールの中でも抗酸化作用が超強力な成分です。
ワインに含まれていますが、アルコールが飲めない人は赤いブドウで摂取できます。
サプリを選ぶ際は、赤ブドウから抽出されたものが安心です。
ポリフェノールが不足すると、シミやシワ、くすみ、たるみ、疲れやすいといった症状が現れます。
【レスベラトロールを多く含む代表的な食品】
・赤ワイン
・赤ブドウ(皮まで食べること)
・落花生の皮
3-8. 亜鉛
亜鉛は、ターンオーバーに欠かせないミネラルです。
アミノ酸やビタミンCと一緒に、コラーゲンやエラスチンを作る働きもあるので、アミノ酸やビタミンCを含んだ食品と一緒に食べると効果的です。
不足すると、肌荒れ、抜け毛や枝毛、爪の変形、疲れやすい、イライラしやすいといった症状が現れます。
【亜鉛を多く含む代表的な食品】
・牡蠣
・ビーフジャーキー
・煮干し
3-9. 葉酸
水溶性のビタミンB群の一種である葉酸は、造血に不可欠であり、妊婦さんや授乳期の女性に必要なビタミンとしても有名です。
タンパク質やアミノ酸の代謝にも欠かせないので、美肌にとっても重要なビタミンです。
調理の過程で95%が溶け出してしまいますから、スープやお味噌汁などで取るようにしましょう。
不足すると、シミ、口内炎、唇の端が切れやすい、疲れやすい、イライラしやすいといった症状が現れます。
【葉酸を多く含む代表的な食品】
・鶏、豚、牛のレバー
・大豆などの豆類
・緑黄色野菜(ホウレンソウなど)
3-10. 乳酸菌
乳酸菌は、腸内の細菌環境を整えてくれる発酵菌として知らない人はいないでしょう。
腸内環境が美肌にとって重要なのは、すでに述べたとおり。
腸内に悪玉菌が増えれば、様々な肌トラブルの原因になります。
【乳酸を多く含む代表的な食品】
・ぬか漬けやキムチ
・納豆や味噌
・ヨーグルト
3-11. カルシウム
摂取したカルシウムは99%が骨や歯に蓄えられますが、肌もカルシウム不足によってもろくなります。
多くの日本人女性が慢性的に不足しているといわれるミネラルです。
カルシウムは骨などに貯蓄できるのが特徴ですが、一度に貯蓄できる量はごくわずかなので、日頃からしっかり摂取することが大切です。
不足すると、乾燥肌や敏感肌、骨粗しょう症、動脈硬化、高血圧といった症状が現れます。
【カルシウムを多く含む代表的な食品】
・牛乳や乳製品
・小魚
・海藻
・小松菜やホウレンソウ
まとめ
ビタミンは美肌に欠かせない栄養素ですが、調理や保存によって減少してしまうのが欠点です。
野菜や果物は新鮮なものをそのまま食べるのが理想とされるのは、そのためです。
しかし、現実の食生活を考えると、それでは素材だけの味気ない食卓になってしまいますね。
効果的にビタミンをとるコツは、水溶性と脂溶性の特性を知って食材を調理することです。
水溶性のビタミンは比較的熱に弱く、脂溶性は多少、熱に強いという特性があります。
調理法を工夫した食べ物で効率よくビタミンやミネラルを摂取し、3つの美肌機能を高める食生活を送ってください。
【参考資料】
・『食べるほど「美肌」になる食事法』 大和書房 2016年
・『美人になる食べ方』 幻冬舎 2011年