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  2019.03.05



妊娠できる?多嚢胞性卵巣症候群の症状と治療  

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害を起こす疾患の1つです。
不妊の原因として、よく聞く名前です。
妊娠可能な年齢の女性のうち、5~10%はこの疾患を抱えていると言われます。

「妊娠は望めないの?」そう思って、落ち込んでいる人もいるのではないでしょうか。
大丈夫。治療法もありますし、自然妊娠に結びついた例も数多いのです。
なぜ妊娠しづらくなるのか、妊娠するためにはどんな治療法があるのか、一緒に見ていきましょう。

目次

1. 妊娠に至るしくみ
1-1. 排卵・受精・着床
1-2. 卵巣について
1-3. 子宮について

2. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは

3. 原因と症状

4. 診断基準
4-1. 月経異常
4-2. 多嚢胞卵巣
4-3. 「血中男性ホルモンの高値」あるいは「卵胞刺激ホルモン(FSH)の上昇を伴わない、黄体形成ホルモン(LH)の高値」

5. 治療方法
5-1. 妊娠を望まない人の場合
5-2. 妊娠を望む人の場合

6. 放っておくと危ない、多嚢胞性卵巣症候群
6-1. メタボリックシンドローム、糖尿病
6-2. 子宮体ガン

まとめ

1. 妊娠に至るしくみ

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最初に、妊娠するまでの体のしくみを知っておきましょう。
多嚢胞性卵巣症候群についての説明を読む時にも、理解しやすくなります。

1-1. 排卵・受精・着床

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女性の体の中では、妊娠が成立するまで、大まかに3つのステップがあります。排卵・受精・着床です。

まず脳内の視床下部から命令を受け、脳下垂体が、2つの性腺刺激ホルモンを放出します。卵胞刺激ホルモン(FSH)と、黄体化ホルモン(LH)です。
卵胞刺激ホルモンの刺激を受け、卵巣では原始卵胞(卵子の入ったふくろ)が20個くらい一斉に育ち始めます。

やがて1番大きくなった卵胞が、黄体化ホルモンに刺激されて卵子を排出。卵子は卵巣を突き破って卵管へ移動します。これが排卵です。
卵子を放出した卵胞は、黄体という物質に変化します。

一方、女性の膣内に射精された精子は、子宮頸管を通り抜けて子宮に入り、さらに卵管へと移動します。
そして卵管奥の広い部分(膨大部)で卵子と出会い、受精します。
1回の射精で放たれる精子は2~3億個ですが、卵管までたどり着けるのは約10万個、卵子と結びつくのは、その中のたった1個です。

受精卵はすぐに分裂を始め、4~5日かけてゆっくりと子宮へ移動、やわらかく厚くなった子宮内膜に落ちて定着します。これが着床です。
着床までたどり着いて、妊娠成立となります。

1-2. 卵巣について

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卵巣は、子宮の左右に1つずつ付いている器官で、交互に卵子を排出します。
卵子は大人になってから作られるのでなく、生まれた時からすでに、原始卵胞という形で卵巣内に保管されています。

生まれた時には約500万個ある原始卵胞は、出産可能な体になると、卵胞刺激ホルモンの指令を受けて毎回20個程度が成長し、1個だけが排卵されます。40歳頃には、原始卵胞の数は2500個ほどまで減少します。

1-3. 子宮について

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女性生殖器の中心にある、胎児を守り育てる場所です。卵巣からの排卵があると、受精卵を迎えるために子宮内膜が厚くなります。着床後の子宮内膜は受精卵に栄養を送り、やがて胎盤へと変化していきます。

受精が不成立だった場合は、厚くなった内膜は剥がれ落ち、血液と一緒に体外へ排出されます。これが月経です。

平均的な月経は、初潮が12歳前後、周期は25日~38日ほどです。15歳になっても月経が来ない、あるいは月経の周期が平均から外れているなら、一度専門医に相談しておくと良いでしょう。

2. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵胞がうまく育たず、排卵されづらくなる病気です。長い名前なので、英語名の「polycystic ovarian syndrome」を略して「PCO」や「PCOS」と表記することもあります。

未熟な卵胞が卵巣に溜まるため、年を追うごとに排卵は難しくなります。排卵されないので受精の機会も少なく、妊娠しづらいというわけです。

排卵障害を起こす病気は他にもいろいろありますが、特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)には多くの患者がいます。
妊娠可能な年齢の女性の5~10%、つまり10~20人に1人は、この疾患を抱えているとされます。

3. 原因と症状

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なぜ多嚢胞性卵巣症候群になるのか、原因ははっきりとはわかっていません。内分泌異常など、複数の理由が重なって発症すると考えられています。最近は、インスリンが鍵なのではないかと注目を集めています。

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、細胞が糖を取り込んでエネルギーにするのを手助けします。しかし、細胞がインスリンの助けを拒むことがあり(インスリン抵抗性)、体内物質がさまざまに影響しあった結果、インスリンとアンドロゲン(男性ホルモンの1つ)が増えます。

女性の体内でも男性ホルモンは必要なものですが、過剰に分泌されると、卵胞の成長を抑えてしまいます。

多嚢胞性卵巣症候群の女性は、インスリン抵抗性のある人が多く、男性ホルモン値も高めです。毛深くなったり、ニキビが多かったり、声が低かったりと、男性のような特徴が出やすくなります。
インスリンの働きが影響して、肥満気味になる人もいます。

ただし、これらの外見的特徴は欧米人によく出ますが、日本人には出づらいようです。むしろ、見た目は痩せ型という人も多くいます。

自覚症状としては主に月経不順が挙げられます。排卵が行われない、あるいは極端に少ないため、月経周期が長すぎたり、何ヶ月も来なかったりします。

重い月経痛に悩まされて産婦人科を訪れ、そこで多嚢胞性卵巣症候群であることを知る人も多いようです。

4. 診断基準

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多嚢胞性卵巣症候群かどうかは、血液検査や超音波検査、体重測定による肥満度計算、皮膚の状態観察などで総合的に判断されます。

以前は欧米の判断基準が採用されていましたが、今は日本女性に合うよう考慮して、国内で設定された基準が使われています(2007年、日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会)。

新基準では、次の3つの条件をすべて満たす場合、多嚢胞性卵巣症候群と診断します。
「すべてに当てはまるかどうか」を確認するのは、別の病気との誤診断を防ぐためでもあります。

4-1. 月経異常

多嚢胞性卵巣症候群は、月経異常を伴います。初潮が16歳以上、月経周期が39日以上、月経のない期間が3ヶ月以上といった場合には、多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。

また、月経のような周期的出血はあっても、排卵を伴わない無排卵周期症というケースもあります。

月経異常には、子宮内膜症や腫瘍など他の病気が潜んでいることも多くあるので、注意が必要です。

4-2. 多嚢胞卵巣

多嚢胞性卵巣症候群の人は、超音波で診断すると、卵巣の周囲部分に未熟な卵胞が並んでいるのが確認できます。真珠を繋げたネックレスのようなので、ネックレスサインとも呼ばれます。

2つある卵巣のうち、少なくとも一方の卵巣で、2~9mmの小さな卵胞が10個以上存在すると多嚢胞性卵巣症候群と診断します。

4-3. 「血中男性ホルモンの高値」あるいは「卵胞刺激ホルモン(FSH)の上昇を伴わない、黄体形成ホルモン(LH)の高値」

簡単に言えば、血液中のホルモンの偏りをチェックして判断する、ということです。

先に説明した通り、卵胞が育つためにはまず、脳下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)という性腺刺激ホルモンが分泌されます。
その後、卵巣でプロゲステロンとエストロゲンという2種類の女性ホルモンが分泌されます。
エストロゲンに刺激されて、脳下垂体は再び大量の黄体化ホルモンを分泌、この影響で排卵が起こります。
エストロゲンの材料は、同じ卵巣内で分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)です。

卵胞の成長と排卵には、さまざまな性ホルモンの適切な分泌が必要なのです。しかし、多嚢胞性卵巣症候群の人はこのバランスが悪く、特に血液中の黄体化ホルモン値が高く偏って出ます。
また、男性ホルモンのアンドロゲン濃度も高くなる傾向があります。

ホルモン値の異常は重要なサインですが、他の病気でも数値異常を示すことがあり、単独で多嚢胞性卵巣症候群と診断することはできません。
例えばアンドロゲン分泌量は、副腎や卵巣の腫瘍が原因で増えることもあります。

5. 治療方法

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多嚢胞性卵巣症候群の治療は、妊娠を望んでいるか、望んでいないかで、方針が変わります。
どちらであっても、肥満気味の人は減量をするのが共通方針です。食事の見直しや軽度の運動で体重を減らすだけでも、排卵率と妊娠率が上がることがあります。

5-1. 妊娠を望まない人の場合

黄体ホルモン製剤やピル(経口避妊薬)などを使って、周期的に月経を起こすよう導きます。

ピルには、卵巣で作られる女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)と同じものが配合されていて、月経が28日周期で定期的に来るようコントロールします。排卵を抑える働きがあるため、避妊薬としての効果もよく知られています。

妊娠を望まないなら、卵巣を休めてダメージ修復の時間を作るのも1つの方法のようです。
ピルを使うと月経周期が固定されて生活しやすくなる、月経自体が軽くなる、卵巣ガンや子宮体ガンの予防になる、といった利点もあります。

5-2. 妊娠を望む人の場合

妊娠を望む場合は、薬で排卵を誘発します。うまく効果が出ない場合には、手術や体外受精などの高度な治療に切り替えていきます。

以下、よく使われる方法をいくつか紹介します。もちろん個人差のあることですから、あくまでも参考程度にして、詳しくは専門の医師と相談しましょう。

【飲み薬】

排卵を誘発するために、副作用の少ないシクロフェニル(商品名:セキソビット)や、効果の高いクロミフェン(商品名:クロミッド)といった飲み薬が処方されます。よく使われるので、名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
排卵の命令系統の、一番上である視床下部に働きかける薬です。

【ホルモン製剤注射】

飲み薬で効果がない場合、もっと強いホルモン製剤を注射して排卵を誘発する、ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)などが選択されます。
脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSHやLH)が配合されていて、卵巣を直接刺激します。
強力な薬なので、副作用も懸念されます。例えば双子や三つ子といった多胎が発生しやすくなります。また、卵巣の肥大化や腹水を伴う、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症リスクもあります。体の様子を見ながら、慎重に治療をすすめる必要があります。

【腹腔鏡下手術】

卵巣の外側の皮が破れず排卵できない、というケースでは、卵巣にレーザーなどで小さな穴を多数開け、排卵しやすくする方法があります。大抵は腹腔鏡という器具を差し入れて行うため、傷が小さく、術後の痛みも少なくすみます。

【体外受精】

女性が比較的高齢の場合などには、卵子を体外に取り出して受精させる方法もあります。
受精後、細胞分裂を繰り返して、胚盤胞と呼ばれるあたりまで育ったものを、子宮へ戻して着床させます。

【その他】

最近は、糖尿病の薬によって、多嚢胞性卵巣症候群の排卵障害が軽減されることも分かってきています。血糖値を下げる糖尿病の薬はインスリンの過剰分泌も抑えるため、ホルモンバランスが整って、排卵しやすくなるようです。

6. 放っておくと危ない、多嚢胞性卵巣症候群

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妊娠を望まなくても、多嚢胞性卵巣症候群を放っておくのは危険です。
月経不順だけだと思っていたら、大きな病気が隠れていたり、別の深刻な病につながることもあります。

6-1. メタボリックシンドローム、糖尿病

多嚢胞性卵巣症候群の人は、メタボリックシンドロームになる危険性が高いと考えられています。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪が多く、動脈硬化や高血圧、糖尿、血栓症といったさまざまな病気になりやすい状態のことです。

特に注意が必要なのは、糖尿病です。多嚢胞性卵巣症候群の人は、15%が閉経後に糖尿病を発症するとも言われます。

6-2. 子宮体ガン

女性としては、子宮体ガンのリスクにも警戒が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群の女性は、排卵後に分泌されるはずのホルモンが分泌されないので、ホルモンのバランスが偏ります。子宮内膜を厚くする指令は出るのに止める指令が出ない、という状態になります。

このような環境は、子宮体の発ガンのリスクを高めます。実際、子宮体ガンの若い患者は、高い確率で多嚢胞性卵巣症候群も発症しているということです。

まとめ

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多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞がうまく育たず、排卵が困難になる疾患です。不妊の原因としてよく名前が挙がりますが、治療法はいくつもあり、治療の途中で自然妊娠に至る人も少なくありません。

ただし自然治癒することはありません。年齢とともに症状が進み、排卵はより困難に、月経周期の乱れなども大きくなる傾向にあります。
放置すると別の病気につながる可能性もあります。

今、妊娠を望んでいる人はもちろんですが、いずれは……と、漠然と妊娠を考えている人も、多嚢胞性卵巣症候群の治療は早めに始めましょう。

【参考資料】
『最新 不妊治療がよくわかる本』 日本文芸社 辰巳賢一 2011年
『卵巣の病気』 講談社 上坊敏子 2012年
『元気な赤ちゃんができる本』 池田書店 原利夫 2012年
『日本産婦人科学会雑誌』(第60巻9号、11号) 公益社団法人日本産科婦人科学会

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