「帰社時間になっても、まだ仕事が終わらない……」と毎日のように感じていませんか?
社内体制、上司や同僚との人間関係……とあなたの仕事が遅れてしまう要素はたくさんあるかもしれません。けれどあなたと同じ仕事量の人でも、予定通りの時間に仕事を終わらせている人もいますよね。今回は、行動や意識を少し変えるだけで実践できる「タイムマネジメント」に注目していきます。
タイムマネジメントという言葉の意味は、”時間管理”とも訳されますが、やるべき目標を達成するためにタスクを効率的に進め、時間を有効活用するためのビジネススキルです。
タイムマネジメントを経験した人の中には、月100時間超の残業を月30時間まで短縮できたケースもあります。
※参考:内閣府「仕事と生活の調和推進ホーム」
また、今回ご紹介する24個のタイムマネジメント方法を実践することにより、ざっと計算しただけで1日あたりおよそ7時間もの無駄を減らすことができます(※注訳☆1)。終電間際の24時に会社を出ている人は、少しの工夫で17時に帰れる計算です。
タイムマネジメントで生まれた時間によって、家族との時間や趣味にあてる時間を増やすことができます。あなたの大切な24時間を無駄にしないため、今日からできるタイムマネジメントのコツをご紹介していきます。
目次
1.メールソフトは閉じて、集中力を切らさない
2.ネットサーフィンで時間を無駄にしない
3.無駄のないコミュニケーションで誤解をなくす
4.仕事にためらう時間は、作業興奮を利用してなくす
5.やらないことを決めて、やるべきことの時間を確保する
6.やることの優先順位を決めて、柔軟に対応する
7.休日はしっかり休んでエネルギーを蓄える
8.仕事をアウトソーシングしてタスクを完了する
9.自分なりの締切を決めてスケジュールを立てる
10.行動する時間帯を決めて、難しい仕事をこなす
11.自分なりのルーティンで無駄なエネルギーを使わない
12.頼みごとを断って、重要なタスクを優先する
13.会議の時間を見直して、やるべき仕事をする
14.自分の弱点を見つけて、無駄なことを抑える
15.複数のタスクを同時にせず、ひとつのタスクに集中する
16.仕事を細分化して隙間時間を有効に使う
17.完璧主義をやめて、生産性を高める
18.メモを取って、ひとつのことに集中する
19.情報量を減らして、必要な情報を探しやすくする
20.ネガティブな発想をやめて、先延ばしを防ぐ
21.ファイリングを工夫して、情報を探す手間を省く
22.相手を助けて、イライラする時間を減らす
23.失敗を振り返って、時間の無駄を洗い出す
24.身体の調子に従い、エネルギーを使い過ぎない
1.メールソフトは閉じて、集中力を切らさない
メールソフトは決まった時間に開くようにします。新着メールの通知もOFFにしましょう。
ある調査ではメールを書き終わって作業に戻ろうとしたとき、集中力を取り戻すのに平均1分4秒かかることが示されています(★1)。つまり1通のメールを書いて送信するだけではなく、「集中力を取り戻す」という時間も必要になります。
メールが届く度に返信するのではなく、メールは決まった時間で一気に返すか、隙間時間に返す習慣をつけます。そうすれば1日に20通メールを送信する人は、平均して21分20秒もの時間を減らせます。
2.ネットサーフィンで時間を無駄にしない
インターネットは使ったらすぐにブラウザを閉じます。業務中に、余計な情報を検索してしまう可能性があるからです。
たとえば、ふっと目に入ったリンク先を読み込んでしまい、気がつくと時間が経っていたということも。FacebookやTwitterなどのSNSも、つい確認してしまう媒体なので注意が必要です。
「多くの社会人が1時間ほどインターネットに没頭して、時間を無駄にしている」という調査結果も出ています。1日たった1時間のインターネット利用でも、平日だけでおよそ5時間もの無駄な時間が生まれます。
3.無駄のないコミュニケーションで誤解をなくす
コミュニケーションを取るとき、誤解を生むような言葉を使わないようにします。
たとえば部下に今月の大体の売上を確認する書類を作ってもらう場合、「30分で売上資料を作ってください」と伝え、どの程度のものが欲しいのかを共有すると無駄がなくなります。
もし「月次売上確認をする資料を作ってください」と言うだけだと、部下は5時間かけて立派なものを作ろうと考えてしまうかもしれません。
「たぶん」「もし〜」などの言葉もなくし、混乱させないことで無駄を省きます。
4.仕事にためらう時間は、作業興奮を利用してなくす
嫌いな仕事は、とりあえず5分だけやってみます。「上手く進まなければ、別の仕事に取り掛かろう」という気軽さでOKです。
嫌いな仕事を先延ばしにする分、無駄な時間が発生します。仕事に取り掛かるのをためらい5分10分…と時間が過ぎるよりも、少しでも生産的なことに時間を使う方が効率的です。
行動心理学では、はじめた行動に興奮して夢中になることを「作業興奮」と呼びます。この作業興奮の段階に入れば、嫌いな仕事でもやる気を持って取り組めます。その結果、「ためらいの時間=無駄な時間」がなくなります。
5.やらないことを決めて、やるべきことの時間を確保する
「やらないこと」を決めます。そもそも、やらなくてよい仕事の時間を効率化するのは無意味です。
たとえば、あなたは部下が60分かけていた書類の整理を30分でやってあげました。けれども、あなたの「本来のやるべき仕事」がなくなるわけではありません。むしろ、あなたがやらなくてもよいことに30分も時間が取られています。
やらないことは以下のような軸で判断します。
・いま、やるべきなのか
・自分だけにしかできないのか(他人に任せられないのか)
・いい人でいるために引き受けたのか(自分の目標に沿った仕事なのか)
やらないことをピックアップしたら、「自分がいま何をすべきか」も分かりやすくなります。
6.やることの優先順位を決めて、柔軟に対応する
やるべきタスクに優先順位をつけます。そうすればスケジュールが変更になっても、優先度の高いタスクだけを拾うことができます。
作業を進めていくにつれて、優先度の低いタスクが上位に来る可能性があるため、タスクの優先順位は何回か見直します。
どんな問題が起きても柔軟に対応できるタスクスケジュールを組んでおけば、適度な生産性を保てます。
7.休日はしっかり休んでエネルギーを蓄える
休日は仕事をしない心づもりで働きます。休日にエネルギーチャージできなければ、生産性が落ちてしまうからです。
実際に、世界12カ国で発行されている「ハーバード・ビジネス・レビュー」の調査分析では、忙しい仕事の合間に休むことで生産性が31%増加することが判明しました(★2)。
休むことに罪悪感を感じる必要はありません。休み明けに待っている大量の仕事も、エネルギーがあればやる気を持って対応できます。
8.仕事をアウトソーシングしてタスクを完了する
他人に任せた方が効率的になる仕事は、どんどん譲りましょう。外部や部下に任せた方が、時間とお金の節約になるケースがあります。
たとえば、あなたにはすでに膨大なタスクがあります。そのとき徹夜しないと終わらない仕事が入ってきました。その仕事は、全くタスクのない部下に譲った方が効率的ですよね。
どんなに自分がやりたいと思う仕事でも、「タスクをいかに早く終わらせるか」を中心に、誰が行うべきかを判断していきます。
9.自分なりの締切を決めてスケジュールを立てる
締切の言われていない仕事は、自分の中で締切を設定します。締切を設定することで、何をいつまでにすべきか全体を俯瞰できます。
特に締切がずっと先の場合、中間地点の締切も設けましょう。中間地点の締切があれば、仕事が順調に進んでいるかを判断しやすくなるからです。
ぼんやりと「だいたいN日までに終わらせよう」では、なかなか動き出せません。締切をわざと設定することで、モチベーションを高めていきます。
10.行動する時間帯を決めて、難しい仕事をこなす
体内時計のサイクルに従い、頭の冴えているときに重要な仕事を行います。頭の冴える時間に行う仕事はスピーディに進むからです。
頭の冴えない時間帯は、いつでもできるような「作業」を行います。作業で手を動かせば、徐々にエンジンがかかることを実感するはずです。
頭の冴える時間帯を把握できると、その時間で何をすべきかも判断しやすくなります。
11.自分なりのルーティンで無駄なエネルギーを使わない
一日のうちで「何をいつするのか」を決めた方が、無駄なエネルギーを使わずにすみます。タスクを終えたとき、次の行動を考えなくてよいからです。
さらに自分なりのルーティンがあれば、他人にスケジュールをコントロールされづらくなります。たとえば「13時から資料を作成する」という決まった予定があれば、その時間に仕事を頼まれても「15時からでもいいですか」などと自分の予定と合わせた打診ができます。
一日の終わりに「自分へのご褒美」をルーティンとして組み込んでおくのも吉です。モチベーションがあがれば、やるべきタスクを早めに終わらせることができるでしょう。
12.頼みごとを断って、重要なタスクを優先する
仕事を断る勇気も必要です。頼まれ仕事ばかり行っていては、タスクが積み重なり時間がいくらあっても足りません。
またタスクがいっぱいの中で仕事を引き受け、期限までに終わらないというケースも考えられます。他の人がやれば2日前に終わるはずのタスクが、納期の2日先まで伸びてしまうこともあります。
頭ではわかっていても、なかなか断わりづらいかもしれません。もしも自分以外でもできるタスクは、相手を不快にさせないアサーティブな話し方(自分の主張を伝えつつ、相手の主張も尊重する方法)で断ってみてはいかがでしょうか。
アサーティブな断り方の例:
NG:今は忙しいので無理です。
OK:たとえば何時までに必要な書類ですか? 本日は手一杯ですが、明日の早朝までで間に合いますでしょうか。
13.会議の時間を見直して、やるべき仕事をする
会議よりも大事な仕事があるときは、「会議に出席しない」という選択肢を考えます。会議は大人数で課題を話し合える分、幾分か拘束されてしまいます。
会議に出席するか悩んだときは、「会議に出なくても情報を共有できる方法」を考えます。たとえば議事録やメールで情報共有できるのであれば、やるべき仕事を先にやることが、あなたの仕事です。
他にも会議室で過ごす時間を減らすために、事前に情報を共有しておく方法があります。会議前に資料を渡しておいて、「会議までに読んでください」と伝えれば、会議の進行もスムーズになります。
14.自分の弱点を見つけて、無駄なことを抑える
「どの行動に時間がかかるのか」を理解して、無駄な行動を抑えていきます。
意識してみれば、「煙草休憩をたくさんとっている」「無駄なおしゃべりが多い」など、意外と時間の無駄遣いをしていることに気がつくはずです。仕事のテンポがよくなるまで、これらの無駄な行動を抑えてみます。
今まで無駄な行動に3時間かけていたのであれば、その行動を1時間に抑えるだけで2時間分の余裕が生まれる計算です。
15.複数のタスクを同時にせず、ひとつのタスクに集中する
ひとつのタスクだけに集中します。次のタスクに移動するタイミングは、いま行っているタスクを終えたときです。
複数のタスクを同時に行うと「生産的だ」と勘違いしがちです。実際は集中力が分散されて効率が悪くなります。運転しながら携帯電話を使うことをイメージしてみましょう。どちらも集中力が必要なのに、どちらか一方にしか集中できません。
「複雑なタスク同士を行き来するときに何秒間もかかる」という調査結果も出ています。1回タスクを変えるごとに3秒間かかるとしましょう。1日に100回タスクを変えるとしたら、およそ300秒のロスになります。
ひとつのタスクにしっかりと集中した方が、全体の仕事が早く終わります。
16.仕事を細分化して隙間時間を有効に使う
隙間時間に行えるよう、タスクを細分化します。一日のうち15分の隙間時間が4回もあれば、1時間もの時間になります。1時間のうちにこなせるタスクはたくさんありますよね。
たとえば1時間かかるメールの返信作業を細かく分けていきます。そして、アポイントメントの間にできた数分の隙間時間に返信していきます。
タスクが細分化されていれば、隙間時間に少ない労力で行えるのです。
17.完璧主義をやめて、生産性を高める
完璧主義になりすぎず、ほどほどのところで時間を区切ります。「本当に100点」まで極めると生産性に悪影響です。
たとえば締切前に80点の出来栄えの資料が完成しました。100点にしようと悩み続けても、締切までに85点にしかならないかもしれません。その場合は資料を先に提出して、上司に助言を仰いだ方が無駄なく時間を使えます。
つまり完璧主義をやめて、タスクを完了させることを大事にしていきます。完璧主義を抑える方法には、以下のようなものがあります。
・大きな視点で物事を考える
・現実的に実行できるのか考える
・比べるのをやめる
・批判を受け入れる
・リラックスする
・周りに助けを求める
18.メモを取って、ひとつのことに集中する
やるべきタスクはメモしておきます。あるタスクを思い出そうとするとき、ひとつのタスクにつき何秒か(またはなかなか思い出せないときは何分か)を使います。メモしておけば、タスクを思い出すための時間そのものがなくなります。
思いついたアイデアもすぐにメモすることです。たとえばAという仕事をしながら、Bのアイデアを考えるのは2倍のエネルギーが必要です。アイデアをメモしておけば、あれもこれも同時に考える必要がなくなります。
19.情報量を減らして、必要な情報を探しやすくする
使わない情報は拾わないようにします。もとから情報を減らしておけば、情報処理にかける時間を短縮できます。
たとえば1通のメールをざっと読んで、削除するのに30秒かかったとします。必要でないメールを20通受け取り続ければ、1日で10分も無駄になります。10分のうちに、本来送らなければいけないメールの1〜2通は書けるかもしれません。
大量の不要メールは、以下のような工夫で整理できます。
・不必要なDMの購読をいますぐ止める
・メールを受け取りたい相手だけのリストを作成して、その他は迷惑メールに設定
・必要か不必要か迷うメールは「ゴミ箱」に入るように設定
20.ネガティブな発想をやめて、先延ばしを防ぐ
なるべくポジティブな考え方をすることです。難しい仕事に対して、「自分にはできない」「時間がかかりそう」と自己暗示をかければ、それだけ生産性は低くなります。
またネガティブな発想は、脳にもストレスを与えます。そして、ストレス発散のために時間を使わなければいけません。
以下の方法などで、客観的に物事を捉えているのかを判断していきます。
・本当に深刻な状況なのか?
・明るい気分のときに、同じように考えるのか?
21.ファイリングを工夫して、情報を探す手間を省く
資料が溢れかえっているときは、ファイリングの工夫が必要です。紙媒体の資料は、ウェブ媒体のように検索ができません。上手にファイリングしないと、本来は2分で探せるファイルに30分ほどかかることもあります。
ファイリングの例として毎日使うファイルは「進行中ファイル」、打ち合わせのメモなどは「プロジェクト別」など、ファイル名がぱっと見てわかるような工夫をします。
タスクを完了させるごとに不要なファイルが発生しやすいので、月に2〜3回書類の整理を行います。
22.相手を助けて、イライラする時間を減らす
仕事のパートナーを助けることも効率に影響します。助け合った相手とは、お互いに気分よく仕事できるからです。
相手と良好な関係を築くことで、結果として自分の時間を守ることができます。もしもイライラする相手がいたとしたら、「また△△さんが…」などと本来は考えなくてよいことを考えてしまいます。その分だけ時間が削られます。
また人助けをすることで、「ヘルパーズハイ」と呼ばれるエネルギー反応が出て、「気分がよくなる」「エネルギー量が増える」などの効果が生まれます。
エネルギーの充足した状態かつポジティブな気持ちで仕事をこなせば、1時間かかる仕事も半分の時間で終わるかもしれません。
23.失敗を振り返って、時間の無駄を洗い出す
「なぜ失敗したのか」を常に振り返ります。失敗したことに目をそむければ、もう一度失敗して、さらに時間を無駄にすることもあります。
たとえば1ヶ月かかった仕事が失敗に終わり、振り返りをしなかったとします。改善方法さえ掴めなければ、その1ヶ月は何も得られなかったことになります。
失敗を振り返ることで苦手分野もわかります。苦手なタスクに余計な時間をかけない手段を考えられます。
24.身体の調子に従い、エネルギーを使い過ぎない
「無理をしすぎている」と感じたら、身体のサインに従ってしっかり休むことが大切です。12時間続けて仕事しようとしても、基本的に人間は8時間を超えたあたりから生産性が半分になります。そうなればミスも発生しかねません。
一日のうちで何回かは休憩を挟み、エネルギーを蓄えていきます。45分仕事をしたら15分休憩を取るなど、休憩時間を必ず入れていきます。
食事休憩も効率的な働き方にプラスとなります。頭がしっかりと働くように、数時間ごとに何か口にする習慣をつけましょう。少しの間でも良いのでデスクから離れれば、頭のキレが戻ってきます。
まとめ
タイムマネジメントと聞いたとき、「スケジュールをとにかく念密に詰めて働くこと」を想像する人がいるかもしれません。けれど、重要なことは臨機応変に対応できる余裕を生み出すことです。
余裕が生まれないと、ネガティブな考えに無駄なエネルギーを使うことになります。本当にやるべきことだけにエネルギーを使えるよう、ご紹介した24の方法を試してみてはいかがでしょうか。
【注訳】
☆1:項目1(21:20)、2(60分)、4(60分)、5(30分)、14(120分)、15(5分)、16(60分)、19(10分)、21(28分)、22(30分)を足した時間による
【参考資料】
★1: Email becomes a dangerous distraction – BizTech – Technology – smh.com.au
★2:データが語る「休暇」を多く取る人の方が、生産性が高い
・タイムデザイン/著 泉正人/フォレスト出版
・「仕事が終わらない! 」を抜け出す200のアイデア パンク寸前の自分を守る超仕事削減術/著 ローラ・スタック/CCCメディアハウス