慢性的な肩こりと頭痛は、できるだけ早く解消したいものですよね。
日本人で頭痛を抱えている人は3000万人以上いるといわれます。その多くが肩や首のこりを併発しているのです。
そこまで「頭痛もち」が増えた理由は、パソコンやスマートホンなどを使用する時間が増えたり、悪い姿勢でデスクワークを続けてしまったりという、現代の生活環境が影響していることは間違いありません。
ところが、アゴのズレやゆがみを改善したら、肩こりや頭痛が消えたという人が続出しているのです。これは、アゴのゆがみが肩こりや頭痛の原因であったということです。
ここでは、アゴのゆがみと肩こり・頭痛との関係を解説し、自分で改善できる5つのパターンの基本メソッドを紹介します。
目次
1 アゴのゆがみと肩こり・頭痛の関係
1-1 アゴがずれる原因
1-2 アゴのズレで起こる12の不調
1-3 頭痛の原因は頭蓋骨の外側の筋肉
1-4 アゴのズレが引き起す頭蓋骨のゆるみ
1-5 骨盤にまで波及するゆがみで肩こりを併発
1-6 自律神経の乱れによる肩こり
2 肩こりと頭痛の解消法 | アゴ関節をリセットする基本メソッド5選
肩こりと頭痛の解消法1 ガム噛みメソッド
肩こりと頭痛の解消法2 アゴ周辺の骨マッサージ
肩こりと頭痛の解消法3 舌突き出しメソッド
肩こりと頭痛の解消法4 肩すぼめ呼吸メソッド
肩こりと頭痛の解消法5 寝てバンザイ呼吸メソッド
3 肩こりと頭痛の解消を効果的に行うコツ
3-1 続けることが重要
3-2 効果的に行う5つのポイント
まとめ
1 アゴのゆがみと肩こり・頭痛の関係
アゴとは「顎関節」のことですが、そもそもアゴはどのような部位なのでしょうか。特徴をあげると次のようなものがあります。
・アゴは頭蓋骨からぶら下がっている
・縦横どちらの動きに対しても支えが弱く、人体でもっとも不安定な関節
・噛み合わせや片噛みなどの影響でゆがみやすい
・アゴの軟骨は薄くて壊れやすい
・生活の中でもっとも多く使われる関節
・咀嚼(噛む動作)によって約30キロの負担がかかると考えられている
こうした特徴を見ると、アゴの筋肉や関節には、想像以上の負担がかかっていることがわかります。
1-1 アゴがズレる原因
この十数年で、顎関節症と診断される人が15~20倍に増加しており、日本人の2人に1人はアゴにゆがみがあるといわれます。
アゴがズレたりゆがんだりする原因は、以下の2つに大別されます。
1-1-1 片噛み
ひとつめの原因は、左右のアゴをうまく使えずに片方ばかりを使ってしまう「片噛み」です。
片噛みをしていると、使っている側の筋肉ばかりが発達してしまい、いつも噛んでいる方のアゴへズレが生じます。片噛みは、使っている方のエラが膨らんでいたり、口角が上がって見えたりするので自分でも容易に判断ができます。
片噛みをしてしまう代表的な原因には次のようなものがあります。
・虫歯や知覚過敏などで痛いところを使わなくなる
・噛み合わせが悪い
・片側の筋力が低下している
・どちらかに食べ物がはさまりやすい
・首が傾いていて、その反対側ばかりで噛む
・アゴがズレている側ばかりで噛む
1-1-2 食いしばり
もうひとつの原因は、緊張などによって歯を食いしばることです。日常的にやるようになってしまうと、アゴがゆがんでしまいます。
歯を食いしばると、アゴの筋肉のほかに側頭部の筋肉が収縮します。
側頭部の筋肉は収縮したり伸びたりする状態が長く続くと、頭蓋骨の外側底部を構成する側頭骨を中心として顔面や頭蓋骨のあらゆる部分に小さなズレを発症し、顔面と頭蓋骨が前後や左右にゆがんでしまうことがあるのです。
食いしばりの原因はストレスや不安などです。近年は災害や経済不況に対する不安で、食いしばりによりアゴがズレてしまう人が増えています。
噛み合わせが悪い状態で食いしばり行為を行っていると、さらにアゴのゆがみが発生しやすくなってしまいます。
1-2 アゴのズレで起こる11の不調
アゴのズレやゆがみは全身に連鎖して、次のような不調の原因になります。
1. 慢性の肩こりや腰痛
2. 側頭部やこめかみ、目の奥などで起こる頭痛
3. 顎関節症
4. 便秘、下痢
5. 生理痛、月経の乱れ
6. 手足の冷えやむくみ
7. 不眠、のぼせ、イライラ、倦怠感
8. 動悸やめまい、不安
9. 耳鳴り、難聴
10. ドライアイ、ドライマウス
11. 老け顔、顔のゆがみ
1-3 頭痛の原因は頭蓋骨の外側の筋肉
頭痛の原因の約90%は、頭蓋骨の外側に張り付いている筋肉にあります。
側頭部にある「側頭筋」は、前頭部から頭頂部にかけて伸びる「前頭筋」や、後頭部にある「後頭筋」より面積が広くて厚みもありますが、ものを噛んだり話したりするときに使われるので、とても疲労の多い筋肉です。
この側頭筋は酷使されるので不具合が発生しやすく、頭痛につながりやすいのです。
頭蓋骨の中で起きる頭痛は、脳腫瘍やクモ膜下出血など生命に危機にかかわるものだけで、頭痛全体の0.1%にも及びません。意外かも知れませんが、脳が痛みを感じることはありません。
日本の頭痛人口3000万人のうち、約2200万人を占める「緊張型頭痛」は頭蓋骨外側にある筋肉の痛みであり、約840万人に起きている「片頭痛」は、頭蓋骨の外側にある神経や血管から起こる痛みなのです。
1-4 アゴのズレが引き起す頭蓋骨のゆるみ
片噛みの状態が続くと顎関節だけではなく、やがて頭蓋骨全体にゆがみが広がり、頭部のあらゆる部分で頭痛が起きやすくなってしまいます。
食いしばりの行為が頻繁になったケースでも、やはり側頭部の筋肉の収縮や伸びっぱなしによる頭蓋骨のゆがみが発生します。
1-5 骨盤にまで波及するゆがみで肩こりを併発
顎関節や頭蓋骨がゆがむことによって頸椎(首)がどちらかに傾いてしまうと、胸椎、腰椎、骨盤というようにゆがみが連鎖していき、身体全体のバランスが崩れてしまいます。
頸椎や胸椎が傾いていると、肩や首のこり、手のしびれ、背中の痛みなどの症状があらわれるのです。
頻繁な食いしばりでは、側頭筋の収縮が頭頂部から後頭部へと連鎖して、きさらに首、肩、背中、腰へと収縮が連鎖するので、やはりその過程で肩こりが発生します。
1-6 自律神経の乱れによる肩こりや頭痛
アゴのゆがみが自律神経の不調を引き起こすと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、肩こりや頭痛の原因となります。
頭の付け根から尾てい骨まで背骨の内側と外側に沿って伸びている交感神経幹には、背骨とほぼ同じ数の自律神経節と呼ばれる中継地点があります。
アゴのゆがみが連鎖して、頸椎を含む脊椎(背骨)が曲がったりゆがんだりすると、交感神経幹や自律神経節がムリに収縮したり伸ばされたりして、脳からの情報が伝わりにくくなります。
もうひとつの自律神経である副交感神経は、中脳、延髄、脊髄の下部から身体の中に伸びていますが、脳からの指令は脊髄を通るので、やはり背骨が曲がったりゆがんだりすると働きにくくなってしまいます。
自律神経のバランスが崩れて交感神経の働きが偏ると、筋肉や末端の血管が収縮してしまい、肩や首を含む全身に血流障害が発生します。筋肉の血流が悪くなると、疲労物質や痛みを感じる物質が血液中に排出されず、筋肉に蓄積してこりや痛みを引き起こすのです。
また、副交感神経に働きが偏っても、血管が拡張することによりズキンズキンと痛む片頭痛を引き起す原因になります。
2 肩こりと頭痛の解消法 | アゴ関節をリセットする基本メソッド5選
片噛みと食いしばりは、無意識のうちに習慣化してしまっているものですから、意識してそのクセを治さなければいけません。
ここで紹介する5つのメソッドは、簡単なストレッチ、マッサージ、エクササイズ、呼吸法を組み合わせた簡単なものです。
これらのメソッドを実行することで、片噛みや食いしばりのクセを治すことが可能です。アゴの関節の痛みを軽減してゆがみをとり、血行を改善して肩こりや頭痛などの症状を解消することができます。
また、左右のアゴのバランスが戻るので、崩れていたフェイスラインを修正してタルミをとり、顔を引きしめる美顔効果も期待できます。
肩こりと頭痛の解消法1 ガム噛みメソッド
片噛みのクセを治すためには、アゴ関節のゆがみを矯正しながら、意識して反対側で噛むようにする必要があります。
日々の食事で意識的に行えばよいのですが、いつでもできる簡単な矯正トレーニングがあります。それが、普段使っていないほうのアゴでガムを噛む「ガム噛みメソッド」です。
ガムを噛むことによって普段使っていなかったほうのアゴの筋肉が鍛えられ、アゴの関節が正しい位置に矯正されます。
唇を閉じて鼻で呼吸をしながらゆっくりガムを噛めば、呼吸法の訓練にもなるので、美顔効果や健康効果も期待できます。噛むときにはガムを押しつぶすようなイメージで、上下の歯が当たらないようにするのがコツです。
1回20~30分を目安に1日3~4回行うと3日目あたりから効果が出てきます。
肩こりと頭痛の解消法2 アゴ周辺の骨マッサージ
片噛みや食いしばりのクセがある人は、アゴ周辺の筋肉が緊張しています。このあたりをマッサージして緊張をほぐすことで、血流がよくなり肩こりや頭痛が解消します。
また、アゴの付け根から鎖骨にかけてのマッサージにより、血液やリンパの流れを改善して頭部へ酸素や栄養が行きわたります。
老廃物が排出されるので、むくみがとれて顔にハリとつやが出てきます。さらに自律神経のバランスも改善されるので、体調が整ってきます。
アゴの骨のマッサージ
●左右のこめかみの指1本分後ろにある、口を開閉すると筋肉が動くところを、左右それぞれ人差し指と中指で軽く押さえ、指を前後に動かしながらマッサージします。
●2本の指で耳の前からアゴの付け根あたりまで下にマッサージします。
●上の2つのマッサージを5~10回行ったら、2本の指で耳たぶの下にあるアゴの付け根をマッサージします。
首と鎖骨周辺のマッサージ
●首を右に倒し、左の耳たぶの後ろに右手の人差し指と中指を当てます。
●そこから鎖骨の中央側に向かって伸びている胸鎖乳突筋に沿って鎖骨周辺までマッサージします。
●10回行ったら反対側を同じ要領でマッサージします。
肩こりと頭痛の解消法3 舌突き出しメソッド
下アゴと舌を前に出すストレッチをすることで、アゴ関節の可動域が広がって口を開きやすくなります。
近年、とくに若い女性には、下アゴが前に出せなくてアゴを大きく動かせない人が増えています。アゴ周辺の筋肉を動かすことによって、二重アゴを治す効果もあります。
●まず、上半身が直立の姿勢から45度くらい上に顔を向けて、口を閉じたまま下アゴを前に突き出します。
●そのまま口を開いて、舌を前に突き出します。10秒キープしてから、舌と下アゴをゆっくり元に戻します。
●10回繰り返したら顔を正面に戻してリラックスし、このときに上下の歯が当たらないようにします。
●これを1セットとして2セット繰り返します。
もしもこの「舌突き出しメソッド」で、口が開きにくい、関節からコツコツと音がするという人は次のメソッドも合わせて行ってください。
●上下の歯が当たらないようにリラックスした状態で唇を軽く閉じます。
●下アゴを片噛みする方へスライドして20秒間キープしたらゆっくり元に戻します。
●10回を1セットとして、3セット繰り返します。
このメソッドを終えた後は、コツコツ音が残っているかどうかチェックしましょう。
肩こりと頭痛の解消法4 肩すぼめ呼吸メソッド
アゴがゆがんでいると口を閉じにくくなり、口呼吸になりがちです。
アゴのゆがみが肩や鎖骨から肋骨や胸椎へと連鎖すると、肺の動きが悪くなることに加えて、口呼吸では体内に酸素をしっかり取り込めない状態になり、肩こりや頭痛だけではなく、全身に様々な障害が起こります。
肋骨や胸椎のゆがみを改善して動きをよくするためには、肩をすぼめて上に引き上げるエクササイズが有効です。
肩を上げると鎖骨や肩甲骨も動き、その動きに連動して肋骨や胸椎も動きます。そうすると、肋骨の中にある肺も動きやすくなるのです。鼻呼吸をすることにより、肺の動きはさらによくなります。
肋骨の動きがよくなって鼻呼吸が習慣化すると、血中の酸素濃度が高くなり、全身に酸素が十分運ばれて、肩こりや頭痛は改善します。鎖骨の動きがよくなるとリンパの流れも改善されるので、むくみや肌のくすみも解消します。
●背筋を伸ばしてイスに座り、両手は自然に下ろしておきます。
●軽く口を閉じて鼻から息を吸い、胸を大きく膨らませます。
●この状態で息を止め、両肩をグッと引き上げてすぼめ、10秒間キープします。
●鼻からゆっくりと息を吐きながら肩を下ろします。
●息を吐ききったら一連の動作を5回繰り返します。
肩こりと頭痛の解消法5 寝てバンザイ呼吸メソッド
肋骨、鎖骨、胸椎、肩甲骨を正常な位置に矯正して鼻呼吸が楽にできるようになる、もうひとつのメソッドがあります。
仰向けに寝て胸の下にクッションなどを入れ、バンザイのポーズをすることで、肋骨と鎖骨を広げるエクササイズです。
●仰向けに寝て、胸の下に痛くない高さのクッションを入れます。
●両腕をまっすぐ伸ばしてバンザイのポーズをとります。
●肋骨を頭方向へ引き上げるようなイメージで、鼻からゆっくり息を吸って胸を大きく膨らませます。
●鼻からゆっくりと息を吐ききり、一連の動作を10回繰り返します。
3 肩こりと頭痛の解消を効果的に行うコツ
3-1 続けることが重要
アゴを支える顔の筋肉の偏りを矯正するのは時間がかかります。
少しメソッドを行ってアゴ関節をリセットすることができても、そのまま放置すれば、またゆがんだ状態に戻ってしまいます。基本メソッドの効果を持続させて矯正までもっていくためには、繰り返し続けることが大切なのです。
続けていくうちに顔の筋肉がバランスを取り戻し、アゴ関節が矯正されると、それに連動して身体のほかの部分に起こっていたゆがみも矯正されていきます。
姿勢が正しくなり、正しい呼吸法が身につくと、自律神経やホルモンのバランスも整って体質も改善されていくのです。
3-2 効果的に行う5つのポイント
基本メソッドをより効果的に行うための、5つのポイントを紹介します。
ポイント1
紹介した5つのメソッドは、必ずしも毎日全部を行う必要はありませんが、「ガム噛みメソッド」だけは欠かさず行いましょう。片噛みを解消することは、アゴのゆがみをリセットする上で不可欠な条件です。
ポイント2
「ガム噛みメソッド」以外のメソッドを行うときは、上下の歯が当たって噛み締めないよう歯にすき間を空けて、アゴをリラックスさせた状態で行いましょう。
ポイント3
「アゴ周辺の骨マッサージ」と「舌突き出しメソッド」はいつでもどこでもできますから、気づいたときにこまめに行うようにしましょう。朝行えば気持ちよく仕事を始められ、就寝前に行えば血行がよくなって気持ちよく眠れます。
ポイント4
マッサージやストレッチは、自分が気持ちいいと感じる範囲で行うのが基本です。自分なりに強さや回数を調節して、ムリのない範囲で行いましょう。
ポイント5
どのメソッドも、終了後に効果や身体の変化を確認してください。あらかじめ上下の歯を軽く噛んで噛み合わせの現状を確認しておき、終えた後にもう一度確認することで矯正の効果がわかります。
まとめ
ひどい肩こりや頭痛が続いて病院へ行き、湿布や薬を処方してもらったのにいつまで経ってもよくならないという人は、アゴのズレやゆがみを疑ってみるべきです。
アゴの不具合を治したら、肩こりや頭痛が嘘のように消えてしまったという人は思いのほか多いのです。
しかし、ここで解説したメソッドを行っても改善の効果が現れないという人は、重大な疾患によって肩こりや頭痛が引き起こされている可能性もあります。
早めに医療機関を受診して、原因を明確にしましょう。また、骨格や歯並びが原因で噛み合わせが悪くなっているケースでは、医療機関と相談して本格的な矯正を行わなければ改善しない場合もあります。
【参考資料】
『アゴのゆがみを整えると健康になる』(廣済堂出版・2016年)
『「ゆがみ」を治す!』(さくら舎・2014年)