仕事中の疲れはどうやって癒していますか?
職場の環境にもよりますが、身体を動かしたり、コーヒーブレイクをとったりして、リラックスするという人が多いですよね。
ここでは、職場でできて、高い癒し効果が得られるリラックス方法のおすすめベスト8を選んでみました。
席に座ったまま簡単にできるものから、ちょっと思い切りが必要なものまで、ランキング形式にして、おすすめできるリラックス方法を紹介します。
自分に合った効果的なリラックス方法を選ぶためには、ストレスや疲労のしくみを理解する必要がありますから、前半は、最新の疲労医学に基づいた「正しいリラックスの知識」を解説します。
職場や業種の環境に合った、あなたなりのリラックス方法をみつけてください。
目次
1. リラックスの目的は自律神経を整えること!
1-1. リラックスとは緊張をゆるめること
1-2. 「疲れ」の正体は自律神経の疲労
1-3. 疲労感をもたらす原因は活性酸素
1-4. 抗酸化力を高めて自律神経を整える
2. 職場でできるリラックス方法ベスト8
リラックス方法① - 深い腹式呼吸
リラックス方法② - 毛様体筋ストレッチ
リラックス方法③ - ツボ押し
リラックス方法④ - 席を立って歩く
リラックス方法⑤ - カラオケルームでひとりランチ
リラックス方法⑥ - カフェインナップ
リラックス方法⑦ - 公園でプチ森林浴
リラックス方法⑧ - 早退
1. リラックスの目的は自律神経を整えること!
リラックス方法のおすすめベスト8を紹介する前に、「リラックス」を科学的に分析してみましょう。
「リラックスしてストレス解消」と口ではいっていても、そのメカニズムを理解している人は意外と少ないものです。
1-1. リラックスとは緊張をゆるめること
ストレスとは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感で受けた刺激に対する脳の反応です。
五感で受けた刺激の情報が脳に伝達されると、全身の器官や組織に指令が送られて、感情が生まれます。
マイナスの刺激からは、「つらい」「嫌だ」「痛い」といったマイナスの感情が生まれ、これがストレス反応となります。
ストレス反応が起こると筋肉は緊張して収縮し、血行が悪化して老廃物や二酸化炭素の排出が滞ります。
“relax”という英語には、「緊張をゆるめる」という意味があります。
くつろげる状態をつくるためには、まず筋肉の緊張をゆるめてやって、血流を改善する必要があるのです。
「肩の力を抜く」というのは、緊張してしまっている肩や首の筋肉をゆるめてやることです。
首の血流を促すことで、脳に十分な栄養や酸素が送られるようになります。
1-2. 「疲れ」の正体は自律神経の疲労
精神的疲労の原因はストレスで、身体的疲労の原因は筋肉疲労だと思っている人が多いのですが、実は違います。
最新の疲労医学では、どちらの疲労も脳で起こっていることがわかっています。
もちろん、筋肉疲労が「疲労感」の元になることはあります。
しかし、疲労を感じるのは、脳の自律神経中枢が疲労するからなのです。
自律神経は、交感神経と副交感神経から成り、心拍、呼吸、血液循環、体温調節、消化吸収といった生命維持に欠かせない身体の機能をコントロールしている神経システムです。
交感神経と副交感神経は、常に双方が40~60%のバランスで働いており、交感神経が優位になると、心拍や呼吸が増えて血液循環が盛んになり、活動モードになります。
副交感神経が優位になると、その反対の状態になり、消化吸収機能が高まってリラックスモードになります。
主に昼間は交感神経が優位な状態が多く、夜間は副交感神経が優位になるのですが、交感神経が高ぶったままの状態が続くと自律神経中枢は疲労します。
また本来、活動モードである交感神経は古代であれば狩猟モードですから、目は遠くのものを見る状態になるのですが、パソコンを使う仕事などでは、活動モードなのに近くのものを見続けることになるので、自律神経中枢は混乱して疲労するのです。
筋肉疲労などの身体的疲労も、自律神経がバランスを崩し、自律神経中枢が疲労することによって疲労感を覚えるのです。
1-3. 疲労感をもたらす原因は活性酸素
自律神経中枢が疲労すると、まず「だるい」「飽きる」といった症状が現れます。
だるさを感じたり、飽きてきたりしたら、それは脳疲労のサインですからすぐに休息をとった方がいいのです。
こうした疲労感を覚える直接の原因は、自律神経中枢で活性酸素が過剰に増えて、神経細胞を酸化させることにあります。
活性酸素は、体内で酸素が使われたときに発生する物質で、強力な酸化作用によって細菌やウイルスなどを攻撃し、身体の免疫力を維持するのに欠かせないものです。
しかし、過剰になってしまうと、正常な細胞まで酸化させてしまいます。
活性酸素によって酸化された細胞は、「サビる」と呼ばれる状態で、劣化や死滅に至ります。
ですから、身体には活性酸素の悪影響を抑える抗酸化作用が備わっているのですが、活性酸素は、ストレス、激しい運動、紫外線などによって簡単に増えてしまうので、間に合わなくなるのです。
筋肉疲労も、乳酸が増えることではなく、筋肉の緊張によって活性酸素が増え、細胞を酸化させてしまうことに、直接の原因があることがわかっています。
1-4. 抗酸化力を高めて自律神経を整える
心身をリラックスさせるためには、自律神経を整えて、活性酸素の発生を抑えるケアが必要とされます。
活性酸素は、過剰になれば「がん」の原因にもなるといわれるほど、身体にとっては悪いものですから、日頃から飲酒や喫煙を控える、十分な睡眠をとる、激しくない適度な運動を習慣化する、抗酸化成分が豊富な食材を摂る、といった「抗酸化ケア」が大切です。
副交感神経が活性化して得られる良質な睡眠は、活性酸素の酸化によって増えた老廃物を排出してくれます。
体のようにリンパ管がない脳では、どのようにして老廃物の排出が行われているか、長い間、謎とされてきたのですが、睡眠中に脳が収縮し、そのすき間にリンパ液が出て清掃作業を行っていることがわかったのです。
さらに睡眠中は、記憶した情報の整理が行われるので、ストレスの要因となっている感情を忘れる時間でもあるのです。
そして、ビタミンA、C、Eやポリフェノールなどに代表される抗酸化成分が豊富な食事を摂って身体の抗酸化力を高めることも大事。
抗酸化力を高めることによって、脳疲労を軽減し、リラックスした生活が送れるようになるのです。
2. 職場でできるリラックス方法ベスト8
生活習慣の中で抗酸化力を高め、自律神経を整えることの重要性が、理解できたことと思います。
そうした日頃から行う疲労対策は、これから紹介するリラックス方法のベースであると考えましょう。
ここからは、職場で「疲れた」「だるい」「飽きた」という脳疲労のサインを感じたときにできる「リラックス方法ベスト8」を解説します。
誰にでも簡単に、すぐにできる1分間のリラックス方法である「深呼吸」を1位として、身体を使うもの、席を離れるものと展開し、思い切りが必要とされる8位の「早退」まで、科学的な根拠を交えて紹介しましょう。
リラックス方法① - 深い腹式呼吸
深い腹式呼吸をすることによって、副交感神経を優位にして、自律神経のバランスを整えることができます。
交感神経が興奮状態になると、呼吸は浅く、回数が多くなります。
これは、胸式呼吸の状態です。
深呼吸が緊張をゆるめたり、不安な気持ちや安定させたりすることは、よく知られていますが、リラックス法として行う深呼吸のポイントは2つ。
深く息を吐くことと、腹式呼吸を意識することです。
イスに座ったまま、口をすぼめるようにして、6秒ほどかけてフーッと息を吐き切ります。
次に3秒かけて、鼻からお腹に送り込むように息を吸います。
息を吸ったところで3秒静止。
この深呼吸を5回繰り返すと1分です。
腹式呼吸に慣れてきたら、おへそから指3本ほど下にあるツボ「丹田」に向けて息を吸い込む「丹田呼吸」に切り替えます。
丹田は、全身の気が集まるところとされ、自律神経を整える要として、医学界やスポーツ界でも重視されています。
リラックス方法② - 毛様体筋ストレッチ
毛様体筋とは、眼球のレンズである水晶体の周りにある筋肉で、交感神経が優位になると緩み、水晶体を薄くして遠くにピントが合うようになり、副交感神経が優位になると収縮して水晶体を厚くし、近くにピントが合うようにできています。
デスクワークで自律神経が混乱する原因は、ここにあるのです。
毛様体筋は筋肉ですから、同じ状態を続けることで緊張してしまいます。
ストレッチをしてほぐしてやると、血流が戻って活性酸素などの老廃物を流すことができるのです。
ストレッチといっても、難しいものではありません。
水晶体を厚くしたり薄くしたりすればいいわけですから、近くのものと遠くのものを交互に見るようにします。
目の前30センチのところに手のひらをもってきて10秒見たら、2メートル以上離れたものを10秒見ます。
2メートル以上離れていれば何でも構いません
これを10回繰り返すと3分20秒です。
リラックス方法③ - ツボ押し
座ったままできるツボ押しで、リラックスする方法です。
指の腹を垂直に当ててあまり強く押しすぎず、「イタ気持ちいい」程度が押す力の限界だと考えてください。
まずは、顔にある疲労回復のツボです。
攅竹(さんちく)
眉頭の内側にある、コリコリとした筋に触れる部分。
両手の人差し指か中指で、持ち上げ気味にゆっくり押してください。
魚腰(ぎょよう)
眉の中央あたりにある、痛みを感じるところで、眉の真ん中にあることから「眉中」とも呼ばれます。
睛明(せいめい)
目頭のやや上、鼻の付け根との間にある骨のくぼみで、目が疲れると無意識のうちにもんでいるところです。
承泣(しょうきゅう)
眼球の中央部分の真下、ほお骨の上部にあるくぼみです。
太陽(たいよう)
目尻と眉尻の中間から、ほんの少し後方に寄ったところにあるツボ。
こめかみから目尻に向かって指を滑らせていき、目尻の斜め上にあるわずかなくぼみです。
ここからの3つは、肩と首のツボです。
肩井(けんせい)
乳頭から真上に指をすり上げていくと、肩の一番高いところで、押すと痛みを感じるツボです。
天髎(てんりょう)
肩井から後方に指1~2本分下、肩甲骨上端にあるくぼみです。
天柱(てんちゅう)
首後方の中央のくぼみ「盆のくぼ」から、指1本分外側にあります。
ツボ押しは、だるい、飽きたという脳疲労のサインがでたときに、とても効果的なリラックス法です。
深呼吸を組み合わせるとより効果が上がり、寝る前に行えば、副交感神経を高めて深い眠りをもたらします。
リラックス方法④ - 席を立って歩く
ここからは、席を立って行うリラックス方法です。
まずは、席を立って歩くだけのリラックス。
ほんの2~3分間、席を立って歩くだけでも、ずいぶんリラックスできるものです。
下半身には全身の70%にあたる筋肉があります。
股関節を直角に曲げる姿勢を続けていると、これらの筋肉が収縮して硬くなり、全身の血行が悪化します。
エコノミー症候群は、座る姿勢を続けて血行が悪化し、血栓ができやすくなる症状です。
激しい運動は活性酸素を増やしてしまいますが、歩くことや、軽いストレッチなどの軽い運動は、全身の血行をよくして老廃物の排出を促し、身体がもつ抗酸化力を高める効果があるのです。
デスクワークを続けるときは、1時間に1回程度、席を立ってトイレに行くとか、コーヒーブレイクをとるなどして、全身の緊張をほぐしましょう。
リラックス方法⑤ - カラオケルームでひとりランチ
ひとりになることは、職場におけるリラックス方法の基本といえるでしょう。
社内でひとりになれるパーソナルスペースがあればいいのですが、トイレ以外は、なかなか難しいのが現状です。
席を立ってトイレでひとりになることも、リラックス効果はあります。
しかし、ゆっくりと副交感神経を高めるというわけにはいかないでしょう。
最近、働く女性の昼休みのすごし方として人気なのが、ひとりでカラオケルームや、個室のインターネトカフェに行くことです。
オフィス街のそうした店舗では、30分から利用できるサービスをしているところもできています。
気の合う仲間と会話をしながらのランチもストレス解消にはいいのですが、リラックスしたいときは、さっさとひとりでカラオケルームなどに入り、ランチをすませたら30分間の休息をとるのです。
リラックス方法⑥ - カフェインナップ
「カフェインナップ」とは、コーヒーなどでカフェインを摂取してからとる仮眠のことです。
アメリカのビジネスシーンで短い仮眠を「パワーナップ」と呼んでいたことから、そう呼ばれるようになりました。
15分から20分間の昼寝は、副交感神経を活性化して心と体の緊張をゆるめ、活性酸素による酸化ストレスを抑制します。
たとえ眠れなくても、目を閉じて無になる「プチ瞑想」をするだけで、近い効果が得られます。
ただし、仮眠をするのは20分程度で、長くなっても30分を超えないようにします。
それ以上に長くなると、今度は交感神経への切り替えに時間がかかるようになり、午後の仕事にさしつかえることになってしまいます。
コーヒーやお茶を飲んでカフェインを摂取すると、だいたい20分後くらいで覚醒作用が効いてきます。
ですから、寝すぎることもなく、スッキリと目覚めることができるのです。
リラックス方法⑦ - 公園でプチ森林浴
パーソナルタイムやカフェインナップとともに、昼休みにおすすめのリラックス方法が「プチ森林浴」です。
森林浴がなぜリラックスできるのかというと、それは「ゆらぎ」が豊かな環境だからです。
「ゆらぎ」とは、一定の量や周期から微妙にずれる変動のことで、森林には、そよ風や木漏れ日、小川のせせらぎなど自然が生み出す「ゆらぎ」があふれているのです。
自律神経がコントロールしている人体のいろいろな生体リズムにも「ゆらぎ」があり、それが自然界の「ゆらぎ」と同調することによって、人間はリラックスできるといわれています。
職場の近くに緑が多い公園があったら、昼休みは「ゆらぎ」の中ですごせば午前中の仕事で興奮状態にある交感神経を鎮めることができます。
「ゆらぎ」は、部屋の窓を開けて風を入れるだけでも生まれますから、休憩時間にも意識して取り入れるようにしましょう。
リラックス方法⑧ - 早退
面接や研修会などで提出するES(エントリーシート)には、よく「あなたのリラックス方法は?」というような設問があります。
最後におすすめするリラックス方法は、そうしたオフィシャルなところには書かない方がいいかもしれません。
職場の人間関係などでほとほと疲れてしまった日などは、思い切って早退してしまうのです。
そして徹底的に自分を解放して、がんばることも、疲れをとることも一切考えないのです。
遠出は意識しないうちにストレスを溜めてしまうので、近距離にある自然が豊かな場所へ行って「ゆらぎ」の中ですごすのも効果的ですし、早い時間に帰宅して、いつもはできないようなゆったりとした夕食の準備をするのもいいでしょう。
有給などを上手く使って、いっそのこと休暇をとって1日休むのも効果的です。
ここまで紹介してきたような、日々のちょっとしたリラックス方法を意識してやっても脳疲労が蓄積してしまうようなときは、マイナスの刺激が過剰になっている可能性が高いので、1日、楽しいことや心地よいことをしてすごし、ストレスを忘れてしまいましょう。
まとめ
脳疲労のサインを無視して自律神経の乱れを放置すれば、だるさや疲労が慢性的なものになり、やがて、めまい、偏頭痛、耳鳴り、吐き気、不眠といった症状を起こす自律神経失調症へと悪化してしまいます。
また、同じような症状で、慢性疲労症候群やパニック障害という病気に発展してしまうケースもあります。
心配な症状が現れたら、すぐにクリニックで受診しましょう。
そうならないためには、たとえ1分間でも、こまめなリラックスタイムをつくることが大事です。
ここではオフィスをテーマとしてリラックス方法を紹介しましたが、アロマであったり、半身浴であったり、プチヨガであったりと、自宅で短時間にできるリラックス方法もたくさんありますから、ぜひ積極的に取り入れてストレスに負けない心と体をつくりましょう。
【参考資料】
・『すべての疲労は脳が原因3』 梶本修身 集英社 2017年
・『ココロにいいこと事典』 心地よい暮らしをつくる会 青春出版社 2017年
・『5分でできる「プチストレス」解消法』 保坂隆(監修) PHP研究所 2017年
・『決定版 知りたいツボが正しく押せる!』 邱淑恵 日東書院 2011年