「お酒を飲んでステーキをお腹いっぱい食べながら体脂肪が落とせる」
こんな話を信じられますか?いろいろなダイエットで失敗してきた人は、「そんな都合のいい話があるわけない」と思うでしょう。
しかし、最新の栄養学に基づく革新的な食事法が、それを可能にしたのです。糖質を含むもの以外は、基本的に食べる量の制限もないので、空腹感に悩まされることもありません。
それが、最新の食事法「ローカーボンハイドレート=低糖質」、通称「ロカボ」です。
糖質を制限するダイエットは以前からありましたが、どこが違うのか?誰にでもできるダイエットなのか?
ここではまず、ロカボとはなにかを理解してそうした疑問を解消し、ロカボ生活を実践して体脂肪を落とす10の秘訣を解説します。
目次
1 体脂肪を減らす「ロカボ」とは
1-1 糖質制限とは?
1-2 肥満の原因である糖質の過剰摂取
1-3 糖質を制限すると体脂肪が減る理由
1-4 必要ないカロリー制限
1-5 糖質制限からロカボへ
1-6 ロカボの定義
1-7 続けるのが苦にならないロカボ
1-8 個人差があるロカボとの向き合い方
2 ロカボで体脂肪を減らす10の秘訣
体脂肪を減らす秘訣1 1食のご飯は70グラム
体脂肪を減らす秘訣2 注意が必要な麺類
体脂肪を減らす秘訣3 肉や魚は食べ放題
体脂肪を減らす秘訣4 野菜にはNGがある
体脂肪を減らす秘訣5 フルーツとスイーツは危険
体脂肪を減らす秘訣6 アルコールは蒸留酒を
体脂肪を減らす秘訣7 卵、大豆、チーズは強い味方
体脂肪を減らす秘訣8 制限されない油
体脂肪を減らす秘訣9 意外な高糖質食品に気をつける
体脂肪を減らす秘訣10 「正しい栄養バランス」は存在しない
まとめ
1 体脂肪を減らす「ロカボ」とは
人間が活動するために必要なエネルギーとなる栄養素は、「炭水化物」「脂質」「タンパク質」の3つだけで、これらはまとめて3大栄養素と呼ばれます。
このうち炭水化物は、1グラムあたり4カロリー以上のエネルギーをもっているものを「糖質」、もっていないものを「食物繊維」と呼びます。言いかえれば、糖質と食物繊維を足したものが炭水化物ということになります。
現在、日本では食品の成分表示が義務づけられていますが、「糖質」と表示されているものは少なく、多くは「炭水化物」と表示されています。炭水化物の食物繊維は、こんにゃくなどの一部食品を除いてごくわずかなので、表示されている炭水化物の量が糖質の量の目安になります。
この糖質の量を減らす食事法が「ロカボ」です。
1-1 糖質制限とは?
糖質制限とは、「普段の食事から甘いものや主食となるお米や麺類など、糖質を多く含む食品を減らすこと」です。これを実践してやせることを目的とするのが「糖質制限ダイエット」と呼ばれるものです。
元々は糖尿病の治療法として考案された食事法です。大きな特徴は、制限するのが糖質の摂取だけで、面倒なカロリー制限や運動の必要がないということです。
誰でも手軽に始められて空腹感をガマンすることもありません。しかもアルコールも種類を選べば普通に飲んでもかまわないという、非常にゆるいダイエット法なので、10年ほど前から実践する人が急増しました。
その効果は定評があり、多くの人が体脂肪を落とすという成果をあげています。
1-2 肥満の原因である糖質の過剰摂取
糖質を含む食品を食べると血液中のブドウ糖が増えます。これが「血糖値が上がる」という状態です。血糖値が上がると、膵臓がインスリンというホルモンを分泌して血糖値を下げようとします。
インスリンは筋肉や脂肪細胞などに働きかけて血液中のブドウ糖を体内に取り込ませるのです。ブドウ糖(血糖)は、筋肉や肝臓にグリコーゲンという糖で貯蔵されますが、余剰分は体内に脂肪として蓄えられます。これが糖から合成される体脂肪です。
糖質の過剰摂取で体脂肪が過剰に蓄積した状態を「肥満」といいます。
1-3 糖質を制限すると体脂肪が減る理由
血糖値を上げるのは糖質だけなので、糖質の摂取を減らせば血液中のブドウ糖は減ります。
人間の体は血液中のブドウ糖と体脂肪をエネルギーとして使います。まずブドウ糖が優先して使われ、その後に脂肪が燃焼(分解)されます。常に大量の糖質を摂取していると、いつまでたっても脂肪は分解されません。
ブドウ糖が足りなくなれば、脂肪をエネルギーとして使う機能が活性化するので、体脂肪を溜めにくい体質になります。ブドウ糖は体脂肪の元になってしまいますが、脳や赤血球の唯一のエネルギー源でもありますから、人体の生命維持には不可欠の糖質です。
糖質を制限したら低血糖になって危険なのではないかと思う人がいるかも知れませんが、人間には体内で糖を作り出す「糖新生」というしくみが備わっているので、心配はいりません。
1-4 必要ないカロリー制限
糖質制限には、従来、生活習慣病対策やダイエットにいいとされてきた「カロリー制限」は必要ありません。
カロリー制限は、欧米人の糖尿病に対する治療法として、まず体重を落とすことを目的として始められた歴史があります。日本では1965年頃に糖尿病の治療として欧米流のカロリー制限を残し、それまで併用されていた糖質制限が排除されてしまったために、いまだにカロリー制限が優先される傾向があります。
消費カロリーが摂取カロリーを上回ればやせるという単純明快なカロリー制限ですが、続けることには困難がともないます。計算が大変で、正確に把握するのはほぼ無理ですから、科学的根拠に欠けるのです。なんとなくカロリーの低そうなものばかり食べることになると、食べるものが限られて、ストレスがたまります。
カロリーだけで判断するので、場合によっては必要な栄養素が不足してしまうことにもなりかねません。
1-5 糖質制限からロカボへ
「ロカボ」が生まれた経緯は次のようなものです。
もっとも早くダイエット法として広まったのは「炭水化物抜き」です。しかし、炭水化物抜きは、糖質だけでなく食物繊維も抜くことになってしまいます。食物繊維にはタンパク質や脂質と同じように、糖質摂取にともなう血糖値上昇をゆるやかにする働きがあるので、抜くのはよくありません。
次に、炭水化物でも食物繊維は制限しない「糖質制限」がいいということになりました。ところがここで問題になったのは、「制限」というネガティブな印象でした。とくに食品メーカーなどはあまり使いたくない言葉だったのです。
それでは「低糖質」という言葉に置き換えればいいではないかという考えがでてきました。しかし、低糖質という言葉は正確な定義をもたないのです。よく似ている「抵糖類」には、100グラム中に糖質が5グラム未満という定義があり、これと混同されやすいという問題もありました。
そこで新たな言葉の必要性が高まり、考案されたのが、低糖質の英訳である「ローカーボハイドレート」を略した「ローカーボ」または「ロカボ」なのです。
1-6 ロカボの定義
「ロカボ」には普通の糖質制限にはない考え方が追加されました。それは「緩やかな糖質制限」という点です。
ロカボの具体的な定義は、「糖質を1食20~40グラム、それとは別にスイーツや間食で1日10グラムまでとし、1日の糖質摂取量を70~130グラムにする」というものです。
日本人の平均的な糖質摂取量は、1食で90~100グラム、1日では270~300グラムなので、半分程度に落とすことになります。1日の糖質130グラムという数値は、脳と赤血球のエネルギー源として必要な量と同量です。
1-7 続けるのが苦にならないロカボ
ロカボの大きな特徴は、続けるのが苦にならない食事法ということです。
糖質の摂取をやめるのではなく、糖質をいかに上手くとるかという考え方が基本になっているので、お米やパンも食べられます。従来の糖質制限よりも食べられるものの幅がぐんと広がるばかりか、満腹になってもいいという考え方なので無理なく続けられるのです。
カロリー制限と比較してみると、カロリー制限が「何を食べてもいいが、すべてを制限しなさい」というものであるのに対して、ロカボは「ここだけは変えて食べれば、満腹になるまで食べてもいいですよ」という緩いものです。
満腹という感覚は、脳が食べるべき「量」を判断するというメカニズムによって得られます。ですから、ほとんどの人は、糖質さえ抑えれば満腹になるまで食べても太りません。
しかし、40~50人にひとりくらい存在する、満腹中枢が正常に働かない人は、カロリー制限との併用が必要になります。
1-8 個人差があるロカボとの向き合い方
ロカボの取り入れ方は、その人の置かれた状況によって変わってきます。
糖尿病の治療として行う場合には制限値をしっかり守る必要があります。しかし、ダイエットや健康増進のために取り入れるという人は、制限値を厳密に守らなくてもいいのです。「今日ぐらいはいいか」と糖質を多く摂取する日があっても、それまでの努力がムダになることはありません。
30代中盤以降の人は、自分の血糖値と体脂肪を意識してロカボを取り入れた方がいいのですが、例外もあります。Ⅰ型糖尿病になって日が浅い人、腎障害のある人、活動性膵炎の人、肝硬変がある人などはロカボや糖質制限には向いていません。
また、インスリン注射をしている人は、医師と相談する必要があります。
2 ロカボで体脂肪を減らす10の秘訣
ここからは、いよいよロカボの実践編です。ロカボ生活は、1食あたりの主食の量を減らすことから始まります。おかずはたっぷり食べてください。
体脂肪を減らす秘訣1 1食のご飯は70グラム
ご飯の量を70グラム程度に抑えると、おかずをしっかり食べても1食の糖質摂取量は40グラムほどです。
ご飯70グラムがどのくらいの量かというと、普通のご飯茶碗にふんわりと盛った1膳が150グラムとされるので、半膳ということになります。ご飯150グラムには、なんと角砂糖11個分程度の糖質があるのです。
しかし、茶碗の大きさや盛り方によってご飯の量に差がでてくるので、最初は計量して自分の使っている茶碗でご飯70グラムがどの程度なのか知っておきましょう。
ご飯70グラムを食パンに置きかえると、6枚切り1枚分になります。低糖質のパンであれば通常のものより多く食べられます。
ローソンが販売している「ブランパン」のシリーズは、2個入りパックをすべて食べたとしても糖質の摂取量は4.6グラムに抑えられます。「ブランパン」には食物繊維が1個当たり5.3グラムも入っていて、2個パックを食べれば1日に必要な食物繊維量の半分を摂取することができるというスグレ物です。
体脂肪を減らす秘訣2 注意が必要な麺類
主食系の中でもっとも注意を必要とするのが麺類です。
平均的な糖質摂取量は、ラーメン1杯70グラム、うどん1杯52グラムです。しかも、のど越しがよくツルツルと食べられてしまうので、つい制限値以上の糖質をとってしまいます。
軽い食事と思われているもり蕎麦1杯の糖質は41グラムですから、ほぼ1食分の制限量ですが、つゆにもみりんなどの調味料を使っていて糖質量が多く、蕎麦湯も糖質をたっぷり含んでいます。カロリーは低くても、タンパク質や脂質、食物繊維がほとんどとれないので、血糖値は急上昇する食べ物なのです。
どうしても蕎麦が食べたいときは、玉子焼きなどでタンパク質をとり、肝臓が糖を放出する機能にブレーキをかける糖質ゼロの焼酎を一杯やってから、締めに蕎麦を食べて、蕎麦湯は遠慮しましょう。
体脂肪を減らす秘訣3 肉や魚は食べ放題
肉類や魚介類は、糖質を添加している加工品以外、ほぼすべて制限なしに食べることができます。
肉類は、牛も豚も鶏も部位を問わず糖質はほぼゼロです。ソースやタレに注意すれば、霜降りステーキや焼き鳥もガマンする必要はありません。
原材料表の最初の方に水飴や砂糖が表示されているもの、牛肉の大和煮やチャーシューなど、甘めの味付けがされたものは食べ過ぎに注意してください。
魚介類もほとんど糖質が含まれていません。サバ味噌煮やさんま蒲焼などは、調味料に糖質が多く含まれているので食べ過ぎに注意です。
糖質が多い砂糖やみりんなどを使った煮物は避けたほうがいいでしょう。はんぺんやさつま揚げなどの練り物は、昔ながらの製法で作られたものを除いて、つなぎにでんぷんや砂糖が使われているものが多いので注意してください。
フライや天ぷらは、衣に糖質の高い小麦粉をつかっているので、衣を薄くすれば糖質を抑えることができます。
体脂肪を減らす秘訣4 野菜にはNGがある
健康食材の代表のように思われている野菜にも、糖質量の高いものがあります。
制限なしに食べられるのは、ほうれん草やピーマンなど多くの黄緑色野菜、キャベツや白菜などの葉物野菜、キノコ類などです。
芋類やカボチャ、トウモロコシは糖質量が高いので注意しましょう。ニンジンやゴボウなど一部の根菜類とタマネギも糖質を多く含んでいるので食べ過ぎには注意が必要です。糖度の高いフルーツトマトなども要注意です。
体脂肪を減らす秘訣5 フルーツとスイーツは危険
フルーツが健康にいいという考えは捨てましょう。
果物やハチミツに多く含まれている果糖は、体内に入ると肝臓で10~20パーセントだけブドウ糖に変換され、残りはそのまま血液中に残ります。ブドウ糖が多くならないので、血液中に糖質は多く残っているのに血糖値の上がり方が緩やかになるという危険性をもっています。
さらに果糖は体内で中性脂肪に変化して内臓脂肪となり、脂肪肝などを引き起こすやすくなります。
朝食でフルーツとハチミツをたっぷり入れたスムージーを飲んだり、フルーツだけで済ませるというのは、とても危険な食事なのです。砂糖をたくさん使ったスイーツは糖質が高くて当然ですが、最近は低糖質スイーツも開発され、安心な人工甘味料も効果的に使用されているので、そういうものに注目してください。
体脂肪を減らす6 アルコールは蒸留酒を
ウィスキー、焼酎、ジン、ウォッカなどの蒸留酒は糖質ゼロですからまったく制限されません。
糖質が多い日本酒でも、1合に含まれる量は8~9グラム程度なので、食事とのバランスをとれば楽しむことができます。ワインも比較的低糖質で、ワイングラスに3杯飲んでも5グラム程度です。ただし、デザートワインや貴腐ワインなどの糖質を多く含むものは避けましょう。
最近は、日本酒でも発泡酒でも「糖質ゼロ」の商品が人気を呼んでいますから、そういったものを試してみるのもいいでしょう。
体脂肪を減らす7 卵、大豆、チーズは強い味方
豆類は意外と高糖質なのですが、大豆は例外です。きな粉は大さじ1杯に0.8グラムほどの糖質が含まれていますから注意しなければいけませんが、豆腐や油揚げなどは積極的に食べて、良質なタンパク質をとりましょう。
卵は1個に0.2グラムしか糖質が含まれていません。いろいろな料理に使えるので、ロカボの強い味方です。
カロリー制限では問題視されるチーズもまた、種類を問わず低糖質なので安心して食べてください。
体脂肪を減らす8 制限されない油
油はほとんど糖質を含んでいないので、バターやラードなどもロカボでは制限されません。
しかし、大豆油、コーン油、紅花油などの植物油に多く含まれているリノール酸は、過剰摂取すると心臓病、脳梗塞、アレルギー疾患の原因になるといわれているので、悪玉コレステロールを減らす効果が高いオレイン酸の豊富なオリーブオイルを使いましょう。
マーガリンに含まれる人工的なトランス脂肪酸も心臓病、脳梗塞、アレルギー疾患などを引き起こす原因とされ、世界的に使用が禁止される傾向にあります。
体脂肪を減らす9 意外な高糖質食品に気をつける
意外に高糖質な食品や飲料には注意しましょう。
低カロリーでダイエットに向くと思われがちな「春雨」は、糖質たっぷりな緑豆や芋のでんぷんを原料としているので要注意。ヌードル系よりも軽く見られる「カップ春雨」は、内容量が25グラム程度なのに糖質が20グラム以上含まれている商品がたくさんあります。
「1日に必要な野菜がこれ1本でとれる」などと謳っている野菜ジュースも要注意です。飲みやすくするために果汁を加えてあるものは、小さいカン1本分でも10グラム以上の糖質を含むものがあります。
スポーツドリンクには、100グラムあたり5グラム以上の糖質が含まれているものがあるので、気をつけてください。500ccのペットボトル1本で、糖質摂取量は25グラム以上になってしまいます。
ノンオイルのドレッシングは健康的に思えますが、油を使わない分、糖質で味をおぎなっているものがあります。ロカボでは油の有無よりも糖質の量が問題になります。
十穀米や玄米は食物繊維が豊富で健康にいいというイメージがあります。しかし、糖質の量は白米とまったく変わらないことを忘れないようにしましょう。
体脂肪を減らす秘訣10 「正しい栄養バランス」は存在しない
万人にとって「正しい栄養バランス」「理想的な栄養バランス」というものは存在しないということを理解しましょう。
その人がもともとどういう食生活をしていたか、体はどういう状態にあるのかということを考えて、摂取する栄養の比率は決められなければいけないのです。
アメリカではすでに「正しい三大栄養素比率」や「理想的な栄養バランス」という概念は廃止されており、医療従事者が「バランスよく食べましょう」などとは言いません。日本でも過去のものとなりつつあります。
唯一、万人に共通した栄養バランスを考えるとしたら、糖質を減らしたほうがいいということになるのです。しかし、それにしても個人差があるのは当然ですから、条件の狭い糖質制限よりも、条件が緩くて多くの人に当てはまるロカボが推奨されるのです。
まとめ
仕事や勉強で脳を使うときには、糖質をとったほうがいいという話をよく聞きます。
しかし、これはまったくのナンセンスです。脳がブドウ糖を使いすぎて低血糖になるという人はいません。血糖を下げるホルモンはインスリンだけしかありませんが、血糖を上げて維持するホルモンは数種類あります。
口から糖質を摂取しなくても、冒頭で解説したように体内ではブドウ糖を放出してくれるしくみがあるので、ロカボで脳機能が低下することはないのです。
無理なく体脂肪を減らす手段として、従来の糖質制限に代わるロカボが注目されているのも納得できますね。
【参考資料】
『糖質制限の真実』(幻冬舎・2016年)
『酒呑み、肉三昧でも一生太らない食べ方』(アチーブメント出版・2012年)