妊娠中期と言えばいわゆる「安定期」に入り、辛いつわりがおさまり体調が落ち着く人も増えて、妊娠中で最もトラブルの少ない時期。
そんな風に聞くのに、なんだかお腹が痛いような気がして心配だという人は実は少なくありません。
今回は、妊娠中期の母体の変化と、安定期でも起こることがある腹痛の原因や対処法をご紹介します。
比較的過ごしやすい妊娠中期を、正しい知識を持って安全におなかの赤ちゃんと楽しみましょう。
妊娠中にどこかに旅行や遠出したい場合は、妊娠中期が比較的向いてはいます。しかし安定期だからと言って何をしても良いわけではありません。
ついつい、無理してしまいがちな時期ですので、母体と赤ちゃんのSOSに早く気付くことが大切です。
目次
1. 妊娠中期はどんな時期?
1-1. やっと安定期に入った! 5か月(16週~19週)
1-2. お腹のふくらみが目立ち始める 6か月(20週~23週)
1-3. マイナートラブルが増え始める 7か月(24週~27週)
2. 妊娠中期の気になる腹痛の原因と対処法
2-1. おなかがチクチクする
2-2. おなかが張るってどういうこと?
2-3. 突然の出血があった場合の対処法
2-4. 切迫早産っていったい何?
2-5. 常位胎盤早期剥離にご注意
2-6. ほとんどの妊婦が直面する「便秘」「痔」問題
2-7. 下痢が続くこともある
1. 妊娠中期はどんな時期?
妊娠中期は妊娠5か月~妊娠7か月。週数で言うと16週~27週の3か月間のことを言います。
前期の辛いつわりもおさまる人が増え、比較的過ごしやすいのがこの時期です。
また、前期流産のリスクが減り、戌の日のお参りへ行ったり、周囲への報告をする人も増えることでしょう。
まずは、具体的にこの3か月間にどんな変化が起こるのか見てみましょう。
1-1. やっと安定期に入った! 5か月(16週~19週)
妊娠5か月に入ると胎盤も完成し、子宮内で赤ちゃんが育つ環境が整ってきます。
そのおかげでつわりもおさまり、お母さんも妊婦生活に慣れてくるころではないでしょうか?
少しずつおなかも膨らんでくるかもしれません。
早い人では17週を超えたころから胎動を感じる人も出てきます。
胎児の成長も著しくもう人間らしい顔つきになってくるので、3Dエコーや4Dエコーで見てもらうとお顔がはっきり見えることも。
19週頃には赤ちゃんに髪の毛が生え始めます。
このころには早ければ性別が確定することもあるので、エコーを見るのが本当に楽しみな時期ですね。
また、母体のほうでは色素沈着が始まって、シミなどができてしまったり、おへそから下に伸びる正中線が濃くなり始めたりする人もいます。
1-2. お腹のふくらみが目立ち始める 6か月(20週~23週)
妊娠6か月に入るとかなり多くの人が胎動を感じることでしょう。
そして、お母さんのお腹もだいぶ膨らんでくるころです。
胎動を感じるようになるまでは、本当におなかの赤ちゃんは元気なのかな? と不安なことも多いでしょうが、胎動を感じることで赤ちゃんの存在を実感することができて一安心です。
妊娠中は血液量が増加するので、心拍数もいつもより増えます。
そのため動悸を感じるお母さんもいるかもしれませんが、過度の心配は不要です。
あまり心配な場合は検診の時に先生に相談してみてください。
22週頃には胎児の耳も発達し、外部の大きな音が聞こえるようになるので、是非声をかけてあげてください!
23週頃には子宮もかなり大きくなり、おなかの皮膚も伸びるので、妊娠線ができてしまうこともあります。
妊娠線はいったんできると産後も消えませんので、予防のために保湿をしっかりしましょう。
1-3. マイナートラブルが増え始める 7か月(24週~27週)
7か月頃になると、日々お腹が大きくなっていくと実感することでしょう。
周囲に特に知らせていなくても、
「もしかして、赤ちゃん?」と聞かれることも増えるかもしれません。
お腹が大きくなって仰向けで寝るのが苦しくなってきたり、腰痛や肩こり、背中の痛みなどを感じたりすることも増えます。
お腹が大きくなり始めると手足のむくみがより一層出やすくなります。
立ちっぱなしや座りっぱなしといった同じ体勢を長くとらないように気を付けてみてください。
この時期はまだ比較的過ごしやすくはありますが、子宮がますます大きくなる影響で、横隔膜が圧迫され、少し動いただけでも息切れするなどの症状も出てきます。
また、骨盤周りに痛みが出やすくなったり、妊娠後期に向けて少し「しんどいなぁ」と感じるようになったりする人も増えます。
これらの体調の変化や痛みは正常の範囲内ですので心配しすぎずゆったりとした気持ちで過ごしましょう。
赤ちゃんの発達も著しく、羊水を飲んで肺を膨らませて呼吸の練習を始め、音や光をしっかり感じ始めます。
2. 妊娠中期の気になる腹痛の原因と対処法
「安定期と言われる妊娠中期なのに、このおなかの痛みは異常なの?」
そんな不安に駆られる場面もあることでしょう。
安定期とはいえ妊娠中ですので、いろいろなトラブルは起きやすいことに変わりありません。
お腹の痛みごとに、どんな原因でその腹痛が起こり、どのように対処していけばよいかを見ていきましょう。
2-1. おなかがチクチクする
私自身もよく経験した痛みが「おなかがチクチクする」痛みです。
この痛みは、左右どちらかの下腹部に起きることがほとんどです。
このチクチクの原因は、妊娠中期以降にお腹がどんどん大きくなることに伴い、子宮を支えているじん帯がつったり、皮膚が引っ張られたりすることです。
そして、この「チクチク」はおなかが大きくなることが原因ですので、あまり気にする必要はありませんし、これといった対処法もありません。
もちろん特に初産の場合は、どんな痛みも初めての経験ばかりでどれが心配ない痛みで、どれが危険な痛みかの判断は非常に難しいものです。
私も3人目の妊娠時に妊娠中期でおなかがチクチク痛んだりしたときには心配になって色々調べました。
端的に言うと、少し休めばすぐにおさまるような腹痛であれば心配はいりません。
2-2. おなかが張るってどういうこと?
チクチクと同じように、妊娠中期ごろから感じられやすい痛みとして「張り」が挙げられます。
妊婦検診でも、医師や助産師さんから「おなかの張りはありませんか?」と聞かれることもあることでしょう。
このおなかの張りも初めての妊娠ではどんなものか、よくわからないことが多いものです。
「おなかが張る」というのは、子宮が収縮して固くなっている状態を指します。
感覚としては、お腹がギュッと締め付けられるような感じになります。
お腹の固さは、だいたいバスケットボールのような硬さを想像してみてください。
張っているときはおなかの上からでも触ってわかるほど固くなります。
何も問題がなくても生理的におなかが張ることがあり、夕方から夜に張るという人が多いようです。
また、明け方におなかが張って目が覚める人がいますが、この場合は膀胱に尿がたまり子宮が圧迫されて刺激されることによっておこると考えられています。
疲れやストレスもおなかの張りの原因ですので、安定期だからと言って絶対に無理はやめましょう。
お腹が張ったら、まずはゆっくりと休みましょう。
家にいるときはできるだけ横になりしばらく静かにしてみてください。
また、沢山歩いたりした場合にもおなかが張ることがありますが、おなかが張ったら無理してその場を動かず、近くで座れる場所を探して休憩します。
しばらく休んでおさまる張りなら生理的なものですので、心配は不要です。
しかし、張りがおさまらず、激痛を同時に感じたり規則的に張ったりするようなときにはかかりつけの病院に連絡し、指示を仰ぐようにしましょう。
2-3. 突然の出血があった場合の対処法
私は過去に3度妊娠していますが、実は3度とも、妊娠中の出血を体験しています。
それほど妊娠中の出血は珍しいことではないという事を知っておいてください。
ただしその出血が本当に問題ないことなのかどうかを自己判断はできません。
かかりつけ医に相談することが安心にもつながりますのでおすすめです。
茶おりとも呼ばれる茶色い出血の場合は急を要することはあまりないといわれます。
セックスをした翌日に出血する場合がありますが、妊娠中は膣の粘膜が敏感になっているため、セックスの刺激や超音波検査の内診した後などでも出血しやすくなります。
また、子宮の入り口にびらん(ただれ)がある場合には、内診の刺激で出血することもあります。
妊娠中には胎児に十分な栄養を送るために、子宮の血液量が増え、普段より出血しやすい状態になっています。
もちろん、子宮周辺に血流が集まる妊娠中の出血は珍しいことではありませんが、重大な問題をはらむこともあるので、いずれの場合にも簡単に自己判断はせず、出血があった場合にはかかりつけ医に電話で相談するか、すぐに受診するようにしましょう。
2-4. 切迫早産っていったい何?
妊娠22~36週の出産を早産といい、全妊娠の5~6%に起こるといわれています。
早産となると、赤ちゃんの各器官や機能が未熟なまま産まれるため、多くの場合2500g未満の低出生体重児となり、新生児集中治療室(NICU)で治療を受けます。
この早産になりそうな状態を切迫早産と言い、出血や下腹部痛がある上に、子宮口が開いているなど、早産の一歩手前で踏みとどまっている状態です。
早産の兆候としては以下のものが挙げられます。
・下腹部痛、腹部膨満感がある
・規則的なおなかの張りがある
・少量の出血がある
・水っぽいおりものがある
・おりものが増える
・頻尿
早産の兆候としては、いきなり多量の出血をすることはあまり多くなく、その前におなかの張りや痛み、破水などがあります。
「なんだかいつもと違う気がする…」と、心配なことがあれば、かかりつけ医に相談し、受診しましょう。
症状に応じて「入院して絶対安静」「自宅でなるべく横になる」「自宅での日常生活はできる」など、安静の度合いを医師から指示されます。
そして、早産の兆候がなくなるまで安静を保って過ごすことになり、必要に応じて子宮収縮抑制剤などの治療を行うこともあります。
妊娠34週未満では赤ちゃんの肺が未熟で自力呼吸ができないので、出来る限り妊娠が継続できるように治療します。
早産を防ぐためには以下のことに気を付けてください。
・妊婦検診を必ず受ける
・おりものに変化がないかチェックし、炎症などが起きてないか気にする
・ストレスや過労を避ける
・おなかの張りや痛みに敏感になり、普段と違う痛みなどに注意を払う
2-5. 常位胎盤早期剥離にご注意
正常な分娩では、赤ちゃんが産まれた後に胎盤が出てくるのですが、常位胎盤早期剥離では、子宮内に赤ちゃんがいる状況で胎盤の一部がはがれてしまいます。
この状態が続くと赤ちゃんが苦しくなることが多く、診断がついた場合には緊急帝王切開が必要になります。
症状としては、切迫早産と似ていますが、切迫早産の状態であればそのまま安静にしておなかの中で十分に赤ちゃんが育つまでなるべく待つことができるのですが、常位胎盤早期剥離に関しては待つことができません。
切迫早産であるか、常位胎盤早期剥離であるかは、発症初期には症状では判断できないことが多いので、出血などがあった場合には自己判断はせずに、かならずかかりつけの医師や助産師に相談するようにしてください。
2-6. ほとんどの妊婦が直面する「便秘」「痔」問題
妊娠期間中を通して、ホルモンバランスの変化に伴い、便秘や痔に悩まされる人は少なくありません。
子宮を収縮させないようにホルモンが平滑筋に働きかけることが便秘の原因と考えられています。
ひどい腹痛で赤ちゃんのことが心配になって受診すると、便秘が原因の場合も。
便秘を解消するために以下のことを心掛けてみましょう。
・生活リズムを整え、3食きちんとよく噛んで食べる
・便意を我慢せずにトイレに行く。
・水を多めに1日1.5リットル~2リットル摂取する
・食物繊維をたっぷりとり、油分も適度に摂取する
・乳製品や発酵食品などの善玉菌食品を食べる
・適度な運動をする
・下半身をあたためる
生活を見直してもなお便秘の改善がない場合には、検診の時などにかかりつけの医師に相談してみましょう。
妊娠中でも飲める便秘薬などを処方してもらえます。
くれぐれも自己判断で市販薬を摂取するのは避けた方が良いでしょう。
便秘の影響や子宮の重みで肛門が圧迫されることで、妊娠中に痔になる人も沢山います。
どのような症状なのかを検診の際に恥ずかしがらずに主治医に相談してみましょう。
多くの妊婦さんが悩んでいる「痔」の問題なので、決して恥ずかしいことではありません。
塗り薬などを処方してもらえますので、うまく痔とも付き合っていくことが大切です。
2-7. 下痢が続くこともある
妊娠中には便秘がちになる人もいれば、反対に下痢が続いたりおなかが緩くなったりしやすい人も実は沢山います。
下痢になるのもホルモンバランスの変化が大きく影響しています。
下痢や軟便が続いても大きな心配は不要ですが、病院では場合によっては整腸剤などを処方してもらえることもありますのでストレスになるようであれば受診をお勧めします。
急激な下痢や、嘔吐を伴った下痢の場合は、胃腸炎や食中毒の可能性もあるので早めにかかりつけ医で診察を受けてください。
まとめ
ただでさえ心配なことが多い妊娠中。
妊娠中期にはお腹が大きくなり始めるため、皮膚が引っ張られたり内臓や筋肉も影響を受けたりして痛くなることがあるのです。
赤ちゃんへの影響があまりない痛みが多いことが実際ではありますが、ほんの少しのお腹の痛みでも、不安にさいなまれて色々と調べてしまう事でしょう。
妊娠12週から23週は妊婦検診が月に1度しかないので、余計に心配や不安が増えてしまいがちです。
ひとりで悩みを抱え込まず、かかりつけ医に相談してみるなどして小さな不安もなるべく早く取り除いて、リラックスして妊娠中期を楽しく過ごしてください。
【参考資料】
「すこやか妊娠・出産ガイド―妊娠・出産のすべてがこの1冊でわかる―」関沢明彦(監修) メディカ出版 2014年
「妊娠・出産の気がかり解決Q&A―妊娠判明前から産後の暮らしまで―」 たまごクラブ(編) ベネッセコーポレーション 2007年
「妊娠・出産・育児の気がかり解消Q&A大事典―決定版―」 主婦の友社(編) 主婦の友社 2007年
「やさしくわかる月数別はじめての妊娠・出産」 井上裕子(監修) 西東社 2016年