アンチエイジングのことを詳しく知りたいと思っている人は多いですよね?
いつの頃からか、「アンチエイジング」という言葉が聞かれるようになり、今やテレビや雑誌などでも普通に使われています。
ところが、言葉がひとり歩きしてまったばかりに、正しい意味や正しい実施方法を理解している人は少ないのが現状です。
ここでは「アンチエイジング」のもつ意味や指摘されている問題点を整理して、12のポイントにまとめました。
各項目を見直して、あなたがもっていた知識のまちがいや、かん違いなどを確認し、正しいアンチエイジングを理解しましょう。
目次
1. アンチエイジングとは?
2. 防げる老化と防げない老化がある
3. 老化の原因は体が酸化すること
4. 確実に老化を遅らせるのは適量の食事と運動
5. 肌のアンチエイジングは紫外線対策がカギ
6. 抗酸化食品がアンチエイジング効果をもつ
7. 危険がともなうホルモン補充
8. コラーゲンは食べてもつけても補充されない
9. 14%もあるボトックスの副作用
10. キレーションは賛否両論ある
11. 水の飲みすぎは体によくない
12. 腸の健康が老化を防ぐ
まとめ
1. アンチエイジングとは?
「アンチエイジング」という考え方はアメリカで生まれました。
人間は誰でも歳をとっていくものです。
年齢を重ねる中で、老いと向き合う方法のひとつとして、「エイジング(歳をとること)」に「アンチ(反対する、逆らう)」する考え方が提案されたのです。
日本語に訳すと「抗加齢」という言葉になります。
老化現象に抗う姿勢である「アンチエイジング」は、21世紀に入ると急速にアメリカで広がり、日本にも入ってきました。
化粧品、薬品、栄養食品などのメーカー、あるいは医療機関などが、「アンチエイジング」をビジネスチャンスととらえて、様々な商品が爆発的に増えたのです。
しかし、老いを悪であると決めつけるアンチエイジングの考え方に対して、「老いは悪いことではない」「老いは成長の正しいプログラム」「老いを受け入れて楽しく生きる」といった、老いに抗わない生き方も提唱されています。
簡単な例をあげると、顔のシワを美肌の敵と見て改善するのか、顔に刻まれた年の功として受け入れるかという違いです。
アンチエイジングがもてはやされる一方で、アンチエイジングビジネスの問題点も指摘されています。
先端医学・薬学などでアンチエイジング治療にきちんと効果があることを実証し、副作用もしっかり調べている医療関連機関ばかりであればよいのですが、残念ながらそうでないのが実情です。
また、国が所管する医薬品やトクホ以外の化粧品、栄養食品、健康食品、サプリメントなどは、法的規制がほとんどないので、安易に「アンチエイジング効果」をうたったものが多いという問題もあります。
2. 防げる老化と防げない老化がある
人間の体のさまざまな働きは、若いころとくらべて衰えてきますが、老化現象には目に見えるものと見えないものがあります。
肌のシワやたるみ、白髪や抜け毛などは目に見えるものの代表的なもので、視力や聴力の衰えも自覚できるので、目に見える老化として考えることができます。
しかし、骨や血管の老化は目に見えないものなので、予防や対処が難しくなります。
目に見えるもの、見えないものという分け方とは別に、「防げる老化」と「防げない老化」という分け方もあります。
防げない老化とは、成長する過程で受け入れるしかない「生理的な老化」です。
呼吸の機能は加齢とともに落ちていいき、130歳でゼロになるとされています。
また、脳細胞の数も少なくなっていくことがわかっています。
アルツハイマー病の発生率など、遺伝的な要因が大きいものも防ぐことはできません。
一方で、その人の意志で防げる老化があります。
筋力の衰え、血圧のコントロール、高齢者の体重減少、肌のシワやたるみなど、生活習慣病が原因となっている「病的な老化」は予防することが可能です。
3. 老化の原因は体が酸化すること
生理的な老化や病的な老化、遺伝的な要因の老化は、複雑にからまりあっています。
防ぐことができない生理的な老化が、病的な老化によって加速されるケースも多いのですが、生理的な老化のしくみがすべて解明されているわけではありません。
しかし、防げる老化の原因としてわかっていることもあります。
そのもっとも代表的なものが、「酸化」です。
体を酸化させるのは活性酸素という物質。
人間の身体は、エネルギーを燃やすときに酸素を必要とし、その結果「フリーラジカル」という酸素毒を発生させます。
活性酸素はフリーラジカルのひとつです。
・紫外線を浴び続けているとシミやシワができる。
・喫煙を続けていると、動脈硬化のリスクが高まり、老け顔になる。
・偏食や運動不足によって免疫力が落ちる。
・アルコールを飲み過ぎると脂肪肝や肝臓がんのリスクが高まる。
こうした症状はすべてフリーラジカルがもたらすものです。
しかし、フリーラジカルは、体に悪い影響を与えるだけではありません。
体内にウィルスや細菌が侵入すると血液中の白血球は大量のフリーラジカルを発生させ、その毒でウィルスや細菌と闘います。
私たちの体内では、毎日何千個ものガン細胞が発生しているといわれますが、フリーラジカルのおかげでガンにならずにすんでいるのです。
しかし、上記のようなことが原因となって過剰な酸化が起こると、老化を進行させてしまいます。
体がもっているフリーラジカルを消すシステムを「抗酸化機能」といいます。
酸化を防ぐ物質を「抗酸化物質」といい、食事でとることが可能です。
4. 確実に老化を遅らせるのは適量の食事と運動
老化を遅らせる方法として明確になっているのは、「適量の抗酸化食品を食べること」「適度な運動をすること」の2点です。
巷で語られているそれ以外の方法は、現代の研究では確たる証拠が出ていません。
例えば、サプリメントでアンチエイジングに必要とされる栄養素を補充する人は多いのですが、世界でもっとも有名な医学雑誌である『ランセット』には、「サプリメントをとっている人は早死にする」という研究結果が掲載されたこともあります。
サプリメントに頼る前に、食事で抗酸化食品をとることと、運動習慣の改善を考えるべきなのです。
5. 肌のアンチエイジングは紫外線対策がカギ
シミ、シワ、たるみなど、肌の老化を予防するために重要なのは、抗酸化食品をとることと、紫外線対策です。
「UVケア」とも呼ばれる紫外線対策は、肌のアンチエイジングに欠かせません。
紫外線は、シミの原因となるメラニン色素を発生させるばかりでなく、コラーゲンを減らす活性酸素を増やしてしまいます。
ただし、日焼け止め剤は、肌を傷つける刺激性があるので、レジャーやスポーツでやむを得ないとき以外は使わないほうがいいでしょう。
日常の生活では、帽子や衣服などで紫外線を浴びないように工夫し、肌に刺激の少ないパウダーファンデーションで紫外線対策をしましょう。
6. 抗酸化食品がアンチエイジング効果をもつ
動植物が、紫外線から身を守るためにもっている天然の色素成分には抗酸化作用があります。
中でも植物性由来の抗酸化物質は、「フィトケミカル」と呼ばれます。
抗酸化物質が多く含まれる食材は、免疫力を高め、アンチエイジングに作用します。
代表的な抗酸化物質(フィトケミカル)には次のようなものがあります。
・カロテノイド系(βカロチン、ルテイン、アスタキサンチン、リコピン)
・ポリフェノール系(アントシアニン、ケルセチン、ルチン、カテキン、イソフラボン)
・非フラボノイド系(セサミン、クルクミン、クロゲン酸)
また、ビタミンA、C、Eも、抗酸化物質です。
カロテノイドには、赤い色をしたものが多く、代表的なものにはトマトで知られるリコピンや、鮭に多く含まれるアスタキサンチンがあります。
トマトや鮭以外にも、抗酸化作用の強い色素をもつ食材には、リンゴ、緑黄色野菜、大豆、緑茶、ゴマなどがあります。
7. 危険がともなうホルモン補充
私たちの体内で分泌されるホルモンは、エネルギーの働き、運動能力、性欲、意欲などを高めたり、筋肉や骨の育成を促したり、認知機能をよくするといった働きをします。
一生の間、分泌し続けてくれればいいのですが、人間の体は加齢ともにホルモンをつくることをやめてしまいます。
そこでアンチエイジングを掲げる医療機関では、体内で分泌されなくなったホルモンを化学的に合成して、注射したり服用したりする「ホルモン補充療法」が行われています。
ホルモン補充療法を受けるときには、多くのホルモンが細胞を増やす働きをもっていることを忘れないようにしなければいけません。
人間の体内では歳をとるにつれてガン細胞が現れる可能性が高くなるので、40代中盤以降の人がホルモン補充をすると、ガン細胞を増やしてしまう可能性も高くなるのです。
しかし、ホルモン補充が原因でガンになっても、その証明は難しいのが現状です。
とくに高齢の人がホルモン補充を行うときには、医師とよく相談をする必要があります。
8. コラーゲンは食べてもつけても補充されない
人間の皮膚の弾力を保ち、外部の衝撃から体を守っているのが、コラーゲンという繊維物質です。
皮膚は主に表面の「表皮」とその内側の「真皮」で成り立っており、コラーゲンは真皮に存在します。
網目構造に広がるコラーゲンをところどころで固定しているのが「エラスチン」という繊維、その周りに広がっているのがゼリー状の「ヒアルロン酸」です。
コラーゲンが減ってしまうと、肌のハリがなくなってシワやたるみの原因になります。
コラーゲンは体をつくるのに欠かせないタンパク質の一種で、人間の体内のタンパク質の3割はコラーゲンだといわれています。
アンチエイジングには、コラーゲンを増やすことが求められるのです。
ですから、コラーゲン入りの食品や、化粧品がたくさん販売されています。
しかし、口から摂取したコラーゲンは胃腸でアミノ酸に分解されるので、そのまま肌のコラーゲンにはなりません。
肌にぬったコラーゲンも、真皮まで浸透することはないので定着することはありません。
コラーゲンを増やすためには、ビタミンCやタンパク質の材料となる良質のアミノ酸を摂取したほうがいいのです。
9. 14%もあるボトックスの副作用
ボトックスは、食べ物から体内に入ると食中毒の原因となるボツリヌス菌から作られた薬です。
わずかな量のボトックスを皮膚や筋肉に注射して、毒素の刺激を利用する「顔面けいれん」の治療薬として知られていました。
最近は、このボトックス注射でシワを改善するアンチエイジングが注目されています。
ボトックスが皮膚を刺激すると、皮膚の神経がマヒして縮みがとれるというものです。
シワを改善するだけでなく、目を大きく見せるといった効果もうたわれています。
ボトックスを日本国内で販売しているのは、イギリスのグラクソ・スミスクライン社とアラガン・ジャパン社のみですが、グラクソ・スミスクライン社の公開情報によると、ボトックスを使用して何らかの副作用を発症した人の割合は約14%に及びます。
副作用の代表的な症状が「兎眼」という、まぶたが完全に閉じなくなって目をつぶることができなくなる症状です。
こうした副作用があることをあらかじめ知っておくことが大切です。
10. キレーションは賛否両論ある
キレーションとは、体内にたまった不要な金属を体外に排出する方法です。
キレーションもボトックスと同様に、病気の治療に行われていました。
体内に銅がたまって肝臓が侵されやすくなり、記憶力の低下や無気力といった脳の障害を起こすウィルソン病という病気の治療に、キレート剤と呼ばれる薬が処方されます。
現在は、水銀、鉛、アルミニウムといった有害ミネラルを体外に排出することによって活性酸素を減らす、動脈に付着して硬くなったカルシウムを排出して、血管をやわらかくし、末梢の血流を改善する、といった効果がアンチエイジング療法に応用されています。
ところが、こうしたアンチエイジング効果に異を唱える学者も多いのです。
ある金属だけを限定して体外に排出することは困難であり、大量に銅をため込んでしまったというような例を抜きにして、ある金属をややため込んでも、人間の体には尿で排出する機能があるといいます。
カルシウムが血管に張り付くと動脈硬化を進行させるのは事実ですが、キレ―ションによってこのカルシウムがはがされると血管が薄くなり、かえって血栓ができやすくなるという学者もいます。
また、アンチエイジングとしてのキレーションには、10年後の体がどういう状態になっているのかというデータがないことも、異を唱える理由になっています。
11. 水の飲みすぎは体によくない
近年は、脱水症状を防ぐために、とくに高齢者には「水を飲みましょう」ということが言われています。
しかし、必要以上に水を飲むと、腎臓の機能が落ち、かえってノドが乾いたりします。
「1日に〇〇リットルの水を飲みましょう」という健康法には気をつけなければいけません。
人間の体は1日に腎臓で処理できる水の量に限界があります。
飲み過ぎた水は体内に残ってしまい、むくみの原因になります。
ノドがかわいたら、環境や体調に合わせて適量の水、できれば温かいものをゆっくり飲むのが、体にやさしい水分の摂取方法です。
12. 腸の健康が老化を防ぐ
食物繊維は、乳酸菌などとともに、美肌や老化の大敵である便秘の予防に欠かせない、アンチエイジング成分です。
有毒物質を体外に排出するのは大切なことですが、食物繊維にはさらに、腸内細菌の中の善玉菌を増やして、体の免疫力を高める働きがあることがわかっています。
腸内では年齢とともに善玉菌が減り、悪意菌が増えてしまうので、とくに高齢者にとって食物繊維は大切な成分なのです。
炭水化物とは、糖質と食物繊維のことを指しますが、糖質は体内ですみやかにブドウ糖に変わるので血糖値を急上昇させます。
しかし、食物繊維を最初にとることによって、糖の吸収をゆるやかにすることができます。
ですから、「食事の最初に食物繊維をとって、糖質をとりすぎない」ことも大切なのです。
まとめ
アンチエイジングには、医療や化粧品、サプリメントなどに頼る前に、食事や運動といった生活習慣の見直しが必要であることをおわかりいただけましたね。
さらに、良質な睡眠習慣や、過剰なストレスをためない生活も、アンチエイジング効果を高める要素です。
アンチエイジングの正しい意味や知識を身につけて、健康長寿を手に入れてください。
【参考資料】
・『いくつになっても年をとらない 新・9つの習慣』 扶桑社 2016年
・『間違いだらけのアンチエイジング』 朝日新聞出版社 2010年