怒らない人になりたいと思いますよね?
「怒りは万病の元」といわれます。
だから誰でも、できれば怒らずに毎日を穏やかに過ごしたいという心理があります。
でも、世の中は怒りの種であふれているのです。
カーっと怒ってばかりいると血圧も上がりますし、周りの人たちから孤立していきます。
そうかといって、湧き上がる怒りを我慢し続けるのも、身体に悪い影響を与えることに。
怒りを我慢するのではなく、怒りの感情をコントロールする必要があるのです。
ここでは、怒らない人が長生きする理由を示し、長生きするために、怒りの感情をコントロールできるようになる生活術を紹介します。
怒らない人の特徴は、裏返せば、怒りやすい人、イライラしてばかりいる人が長生きできない理由にもなります。
寿命を延ばしたいと思ったら、怒りをコントロールする術を身につけましょう。
目次
1. 怒らない人が長生きする8つの理由
① 血液がサラサラ
② 腸内環境がよい
③ 脳神経のバランスがよい
④ 免疫力が高い
⑤ 活性酸素が増えない
⑥ 糖化を抑制する
⑦ セロトニンの分泌力が高い
⑧ 笑顔が多い
2. 怒りの感情を抑える生活術
① スロージョギングを習慣化
② 「ありがとう」を口グセにする
③ 他人に完璧を求めない
④ 深い呼吸で気分転換
⑤ 6秒間やり過ごす
⑥ プチ瞑想でリフレッシュ
⑦ 睡眠の質を上げる
⑧ 笑顔をつくれるようになる
1. 怒らない人が長生きする8つの理由
怒らない人が長生きするというのは、医学的にも認められている事実です。
まず、イライラが続いたり、怒ってばかりいると、自律神経の乱れが続いてしまうという最大の悪影響があります。
自律神経の乱れは、これから解説する多くの項目に関連しています。
そして、自律神経が乱れる原因となる怒りは、顔を真っ赤にして激怒するようなものばかりではなく、ちょっとしたイライラや、後悔やジェラシーといった小さな怒りのほうが多いという研究結果もあります。
激怒すると自律神経は3時間ほど大きく乱れて収まるのですが、小さな怒りは意識しづらいために小さな乱れが続いてしまい、負担が蓄積されていくのです。
これが、やがて生命にかかわるところまで発展してしまうのが、怒りの怖いところです。
怒りの感情をうまくコントロールしている人は、なぜ長生きするのか探ってみましょう。
① 血液がサラサラ
血液がドロドロになると聞けば、コレステロールや中性脂肪を思い浮かべることと思いますが、怒りが続くことも大きな原因になっています。
怒っているときは、交感神経が活発になっている状態です。
心拍、呼吸、血圧、体温調節、消化吸収といった、生命維持に欠かせない機能をコントロールしている自律神経は、活動モードになる交感神経とリラックスモードになる副交感神経が、バランスを取り合って機能しています。
戦闘モードでもある交感神経が優位になると、副腎からアドレナリンというホルモンが分泌されます。
アドレナリンには血小板の働きを活性化させて血液を凝固させる働きがあり、これが血液がドロドロの原因になるのです。
怒らない人は、必要以上にアドレナリンを増やさないために、血液がサラサラな状態をキープできるのです。
② 腸内環境がよい
怒っているときは交感神経の働きが優位になります。
消化吸収の機能は副交感神経が司っており、交感神経が優位のときは機能が低下している状態です。
活動モードは、野生の状態では戦闘モードですから、エネルギーを頭脳や筋肉に集中するので、食べたものの消化に使っている場合ではないのです。
この状態が続けば、吸収されない栄養が腸の中に残り、腐敗していきます。
腐敗した栄養が毒素を生み出し、善玉菌が減って悪玉菌が増え、腸内環境が悪化するのです。
さらに、腸内環境の乱れは、内容物を肛門まで移動させるために腸が動く「蠕動(ぜんどう)運動」を低下させるので、便秘になり、腸内の毒素が血液に吸収されて血液が汚れます。
血液の汚れが自律神経の乱れを進行させるので、この悪循環に陥ると、腸内環境はなかなか元に戻りません。
ですから、怒りのコントロールができている人は、便秘になる確率も低いのです。
③ 脳神経のバランスがよい
怒りは脳神経の働きを低下させます。
怒っているときは、脳内でドーパミンやノルアドレナリンといった興奮性の神経伝達物質が大量に放出され、心拍や血圧が上昇して体が興奮状態になります。
運動をしたときにもドーパミンは多くなり、身体機能を高めるのですが、いいことばかりではありません。
神経細胞がもつ「フィードバック機能」には、ドーパミンやノルアドレナリンが過剰になると、分泌をさせないようにする作用があり、多用していると、本当に必要なときに分泌されなくなってしまうのです。
こうなると、集中力が低下してやる気が起きない状態になり、うつ病の原因にもなります。
ドーパミンの不足はパーキンソン病の原因となり、ノルアドレナリンの不足は頭痛や腰痛を引き起こします。
怒らない人は、必要なときに必要な量の神経伝達物質が放出される状態を維持することができるのです。
④ 免疫力が高い
自律神経の乱れは免疫力も低下させてしまいます。
体内に侵入した細菌やウィルスを撃退する働きは、白血球がもっとも担っており、白血球の質をコントロールしているのが自律神経なのです。
白血球には、比較的大きな菌などの異物を排除するための顆粒球と、小さなウィルスを攻撃するリンパ球などが存在し、交感神経が活発になると顆粒球が増えます。
体に悪影響を与える細菌などが少ない状態で顆粒球が過剰になると、体を守っている常在菌を攻撃してしまうので、免疫力が低下するのです。
また、リンパ球が減ると、がん細胞を攻撃する力が十分に働きません。
逆に副交感神経が活発になりすぎると、アレルギー疾患にかかりやすくなるということもわかっています。
怒らない人が、風邪やインフルエンザにかかりにくいのは、免疫システムが乱れないからなのです。
⑤ 活性酸素が増えない
白血球の顆粒球は2~3日で死にますが、過剰になった顆粒球が死ぬと、大量の活性酸素を発生させます。
活性酸素は、体内で酸素が使われたときに必ず発生する物質で、強力な酸化作用をもっており、体内に侵入した細菌やウィルスを攻撃するので、体にとって大切な存在。
ところが、過剰になると、正常な細胞まで酸化させてしまい、これが老化の原因になります。
活性酸素は、運動をしたり、紫外線を浴びたり、飲酒、喫煙などで増えるので過剰になりやすく、イライラすることや怒ることも活性酸素を増やす原因なのです。
副交感神経が優位になると、体内の不要物を排出する機能が高まるので、活性酸素の発生量も抑えられます。
怒らない人は、無意識のうちに老化の予防もできているのです。
⑥ 糖化を抑制する
「糖化」も、老化の原因として注目されています。
血液中に過剰な糖分があると、タンパク質や脂質と結びついて「糖化生成物(AGEs)を生成します。
これが糖化という現象で、皮膚組織ではコラーゲンやエラスチンといったタンパク質線維と結合して、ハリや弾力をなくし、肌のシワやたるみの原因となります。
皮膚だけでなく、糖化は髪のタンパク質と結合して髪のツヤをなくしたり、血管では動脈硬化の原因となったり、骨では骨粗しょう症、目では白内障や網膜症などの原因になると考えられています。
もちろん、甘いものを控えたり、糖質制限をすることは有効ですが、怒りの感情をコントロールすることも、糖化を防ぐ大事な手段なのです。
怒ってアドレナリンが急増すると、糖分を摂っていなくても血糖値が下がりにくくなり、糖化が進行してしまうからです。
糖分を控えることと、怒らないことが、老化予防には必要とされるのです。
⑦ セロトニンの分泌力が高い
脳内の神経伝達物質には、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンもあります。
セロトニンは、精神やいろいろな生体リズムを安定させ、睡眠や体温調節にもかかわっている大切な物質です。
セロトニンが不足すると、不安や睡眠障害を起こしたり、疲れやすくなったりし、慢性的になるとうつ病を発症しやすくなってしまいます。
イライラや怒りの感情は、セロトニンの分泌を低下させるのです。
セロトニンの分泌には、副交感神経が大きくかかわっており、怒らない人は自律神経のバランスを崩しにくいので、セロトニンの分泌も低下しにくいのです。
⑧ 笑顔が多い
怒らない人に多く見られる特徴に、笑顔が多いことと、姿勢がよいことがあります。
怒ってばかりいる人は顔がこわばり、表情筋(顔の筋肉の総称)が緊張して血流が悪化し、脳にも十分な栄養と酸素を届けることができなくなります。
周囲には冷たい印象を与えるので、人間関係もギスギスしたものになるでしょう。
笑顔が多い人は、表情筋を日頃から動かす習慣があるので、血行がよく、老廃物の排出もきちんと行われています。
周囲の人たちに優しい印象を与えるので、空気をやわらげて穏やかな環境の中で生きることができるのです。
また、笑顔は、たとえ作り笑顔でも表情筋をほぐすと同時に、セロトニンの分泌を高めます。
背筋を伸ばすよい姿勢も、気道を開いて十分な酸素を取り入れ、全身の末梢血管を拡張させて脳へ送る酸素の量を増やすので、イライラしにくくなるのです。
2. 怒りの感情を抑える生活術
前項では、「怒らない人は、いかに体へのダメージが少ないか」ということを解説してきましたが、ここからは、怒りの感情をコントロールする方法を紹介しましょう。
どれも習慣化することによって、結果的に寿命を延ばすものばかりです。
① スロージョギングを習慣化
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミングなどの有酸素運動は、生活習慣病の予防になるばかりでなく、脳を活性化して怒りのコントロールにも有効であることがわかってきました。
有酸素運動の中でも、高齢者でも気軽にはじめられるウォーキングは、専用のウェアなどもできていて、人気があります。
急にジョギングなどで体に大きな負荷を与えることは、関節を痛めることになりますし、心臓にもよくありません。
ところが最近、ウォーキングの量が問題視されており、歩き過ぎは免疫力を下げるという報告もあるのです。
そこで、注目されているのが、歩くのと同じくらいのスピードでゆっくり走るスロージョギング。
とくに中高年では、「1日8000歩と20分程度の中強度運動の組み合わせが理想的」とする最新の有酸素運動事情に、スロージョギングはぴったりなのです。
② 「ありがとう」を口グセにする
インスタントコーヒーを販売するネスレ日本株式会社の調査によると、「ありがとう」という言葉を1日に20回以上口にする人の36.6%が、ストレスを感じても翌日には忘れてしまい、まったく口にしない人の40.5%が、1週間以上もストレスを引きずってしまうといいます。
また、20回以上口にする人が「自分は幸福だ」と感じている幸福度が、まったく口にしない人の1.5倍だといいます。
仕事をしていても、家庭においても、「ありがとう」といえる人はストレスを溜めにくいので、イライラすることも少なくなります。
「ありがとう」は、いった本人はストレスを軽減できて、いわれた相手も気持ちが満たされてストレスを軽減できる幸福の言葉なのです。
③ 他人に完璧を求めない
怒りの感情は、願望が満たされないことで湧き起こるケースが多く、中でも他人に対する願望が裏切られたときに起こるものが多々あります。
自分に対して「こうあるべき」「こうしなければいけない」という完璧主義は、ストレスを生む大きな原因になりますが、他人に対しての期待が大きすぎると、同じようにストレスを溜めてしまうことになるのです。
他人に対して無関心になるということではなく、いろいろな人間がいる現実を受け容れて、過剰な期待はしないようにするのです。
イライラしやすい人は、自分に対しても、他人に対しても、ハードルを下げてみましょう。
怒らない人になれば、人間関係が楽になり、自分自身も楽になることができます。
④ 深い呼吸で気分転換
息をフーッと深く吐くと、副交感神経が働くようになって、リラックスできます。
イライラしたり、神経が緊張したりしているときは、呼吸が浅くなっていて、十分な酸素を体内に取り入れることができなくなっているので、呼吸を深くして怒りの感情を鎮めるのです。
ため息は、血液中の酸素を増やして、自律神経を整える生体反応なので、意識的に同じことをすればいいのです。
ポイントは、できるだけゆっくりと口から息を吐き切り、鼻から息を吸うことです。
これだけで、気持ちが軽くなることを実感できるはずです。
さらに、吸った空気をお腹に溜めるイメージで横隔膜を刺激する腹式呼吸を習慣化すると、より副交感神経を優位にして、セロトニンの分泌も増やすことができるようになります。
⑤ 6秒間やり過ごす
怒りの感情をはじめとするマイナスの感情から起こるストレスは、意識とは関係なく降り注ぐもので、なくすことはできません。
ストレスはなくそうと考えたり、勝とうとしたりするのではなく、忘れるまでやりすごすのが正しい対処法。
「心地よい」「楽しい」「美味しい」といったプラスの刺激を自分に与えることで、マイナスの感情を忘れることができます。
そして、怒りの感情においては、「とにかく6秒間やり過ごす」という方法が有効です。
人間は、怒りの感情をおぼえても、大脳皮質の前頭葉が働いて怒りを抑え込もうとします。
この、前頭葉が働くまでの時間が6秒なのです。
ですから、カーっと頭に血が上って怒りたくなったときは、こころの中で「1・2・3・4・5・6」とゆっくり数えるのです。
どんなに激しい怒りでも、10秒あればずいぶんと冷静になれるものです。
⑥ プチ瞑想でリフレッシュ
深呼吸とともに、ストレス軽減に大きな効果があるのが、瞑想です。
本格的な瞑想ではなくても、1分間目を閉じて無心になる「プチ瞑想」でかまいません。
姿勢を正してゆっくりと呼吸を深めるプチ瞑想は、副交感神経を活性化させて、気持ちをリフレッシュさせます。
こだわりを捨てて心を解放することが、瞑想の目的です。
ゆっくり時間がとれるときには、ぜひ10分間の瞑想を練習してみましょう。
目を閉じて心が休まる情景を思い浮かべ、「小川のせせらぎが聞こえる」「小鳥のさえずりが聞こえる」「山の緑が美しい」といった具体的なイメージをつくっていきます。
アロマや環境音楽を使用するのも効果的です。
⑦ 睡眠の質を上げる
睡眠を誘うメラトニンというホルモンは、セロトニンを材料としてつくられるので、昼間にセロトニンの分泌が少ないと、眠りにつきにくくなります。
睡眠不足になるとイライラしやすくなるので、交感神経優位の状態が多くなってセロトニンが不足し、そうなるとメラトニンが不足してさらに眠れなくなるという悪循環にハマりやすくなってしまいます。
朝起きたら朝日を浴びることには、体内時計をリセットする効果があることはよく知られていますが、寝ている間に優位となっていた副交感神経から、活動モードの交感神経に切り替えるという大事な効果も忘れてはいけません。
こうした自律神経の切り替えがしっかりできることで、昼間にセロトニンを増やし、しいては睡眠の質が上がるのです。
⑧ 笑顔をつくれるようになる
笑顔がもたらす多大な効果は解説しましたが、大事なことは、いつでも意識的に笑顔をつくれるようになるということ。
老化防止のために行う「表情筋のストレッチ」や「顔のエクササイズ」は、いろいろなところで紹介されていますが、日頃からちょっと口角を上げる練習をするだけで、怒らない人への道は開けます。
笑顔を習慣化すると、怒りをコントロールできるようになって、人生は変わりますよ。
まとめ
ここでは、怒らない人の利点や、怒らない人になる方法を紹介してきましたが、そうはいっても人間ですから、誰でも怒りたくなるときはあるでしょう。
そういうときには、3秒だけ怒りましょう。
3秒間だけ気持ちを爆発させたら、あとくされなくフーッと大きく息を吐いて気持ちを転換します。
ほんの一言怒りの言葉を吐くだけでもスッキリしますし、あまり怒らない人が怒ると、たった3秒でもインパクトがあります。
【参考資料】
・『「怒らない体」のつくり方』 小林弘幸 祥伝社 2014年
・『結局、怒らない人が長生きする』 保坂隆 朝日新聞出版 2017年
・『「もう怒らない」ための本』 和田秀樹 アスコム 2016年