肌のシミやソバカスで悩んでいませんか?
シミが気になりだすと、美白化粧品をたよる人が多いですよね。
しかし、美白化粧品で消すことができるシミは限られます。
シミには種類があって、そのタイプに合ったケアをしなければ消すことはできません。
そもそもシミやソバカスとは何なのか、どうしてできるのか、理解している人は少ないですよね。
ここでは、まず肌の基本的な構造を知り、シミやソバカスができるメカニズムを解説します。
さらに、シミの種類とタイプごとに効果的なシミの消し方、現在行われている主な治療法を解説します。
自分が悩んでいるシミがどのタイプなのかを知って、治療方法を検討してください。
目次
1. シミができるメカニズム
1-1. 肌の基本構造
1-2. 角層のバリア機能
1-3. 表皮細胞のターンオーバー
1-4. メラニンが生成されるしくみ
2. シミの種類
2-1. 老人性色素班
2-2. 雀卵斑(じゃくらんはん)
2-3. 肝班
2-4. 炎症性色素沈着
2-5. 花弁状色素班
2-6. 脂漏性角化症
3. シミを消す主な方法
3-1. 美白化粧品
3-2. 内服薬
3-3. ケミカルピーリング
3-4. イオン導入
3-5. レーザー治療
3-6. 光治療(IPL)
1. シミができるメカニズム
シミは、皮膚の中でつくられる「メラニン」という色素が沈着したものです。
日焼けがシミの原因になることはよく知られていますね。
紫外線を浴び続けたことでできるシミが一般的なものです。
そのほかに、遺伝的要因やホルモンバランスの影響でできるシミもあります。
1-1. 肌の基本構造
人間の皮膚は、もっとも外側の部分の「表皮」と、その内側の「真皮」から成り立っています。
真皮の下は皮下脂肪などがある「皮下組織」です。
表皮の厚さは平均約0.2mmで、外側から、「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4層で成り立ち、その大部分を「ケラチノサイト(表皮細胞)」が占めています。
表皮には、外部の刺激から肌を守り、体内の水分を保持する役割があり、その重責の大部分を担っているのが一番外側の角層です。
基底層では、細胞分裂が行われて新しい表皮細胞が生まれます。
真皮は、網目状に広がっているコラーゲンが70%を占め、エラスチンやヒアルロン酸がそれを支えて肌の弾力を保っています。
1-2. 角層のバリア機能
角層では、角質細胞がレンガのように10層程度(腕は20層、手のひらや足の裏は50~100層)積み重なっています。
その間をセメントのように「細胞間脂質」が埋め、強固な壁となって外部からの水や異物の侵入を防ぎ、皮膚の水分を守っていて、「角層のバリア機能」と呼ばれます。
角層がなんらかの理由で傷つくと、バリア機能が低下して保持する水分量が減ってしまい、乾燥肌になります。
肌の水分を守っているのは、「セラミド」「天然保湿因子」「皮脂」の3つで、その働きはセラミドが約80%、天然保湿因子が17~18%、皮脂が2~3%といわれます。
天然保湿因子とは、角質細胞の中にあって水分を維持している分子の小さいアミノ酸などの集まりです。
1-3. 表皮細胞のターンオーバー
表皮の一番下にある基底層では、次々と新しい表皮細胞が生まれます。
表皮細胞はだんだん上部に押し上がっていき、平均28日後に死んで角層の角質細胞となります。
この表皮細胞が生まれ変わる代謝のサイクルを「ターンオーバー」と呼びます。
角層ではいくえにも折り重なった角質細胞が、アカとなってはがれていきます。
はがれることによって、役目を終えた角質細胞の代わりに、また下から表皮細胞が押し上げられていきます。
化粧品や洗顔料に含まれる界面活性剤などの刺激物や、強くこすることなどで角層が破壊されると、このターンオーバーがうまくいかなくなります。
乳液やクリームなどの油分で肌がフタをされた状態になっても、角質細胞が残って肌がくすみ、ターンオーバーの活性も落ちてしまいます。
ターンオーバーの機能が低下することも、シミの原因になります。
1-4. メラニンが生成されるしくみ
人間が紫外線を浴びると、肌の内部を守ろうとして「エンドセリン」などの情報伝達物質が表皮細胞から分泌されます。
情報伝達物質は、表皮の基底層にある色素細胞「メラノサイト」に「メラニン(色素)」を作れという指令を出します。
メラノサイトが活性化すると、「チロシン」というアミノ酸に「チロシナーゼ」という酸化酵素が作用してメラニンが生成されます。
これは、紫外線から表皮細胞の中にあるDNAを保護するために行われる防御活動なのです。
メラニンはターンオーバーによって、ほぼ28日サイクルで防御の役割を終え、古い角質細胞とともにはがれ落ちます。
しかし、何らかの原因によってメラニンが大量に作り続けられるとターンオーバーの機能が低下して、メラニンがはがれずに肌に蓄積されてしまい、シミになってしまうのです。
2. シミの種類
紫外線を浴び続けることを含めて、いろいろな原因でできるシミは、主に6種類に分類することができます。
それぞれのタイプの特徴と効果的なケア方法を解説しましょう。
2-1. 老人性色素班
「日光黒子(にっこうこくし)」とも呼ばれるものです。
数ミリ~数十ミリの丸い色素班であることが多く、でき始めは薄い茶色ですが、次第に濃くなってはっきりとしてきます。
顔では頬骨の高い部分にできやすく、何年も後になってから隆起してくるものもあり、「脂漏性角化症」になる場合もあります。
ごく初期の薄い茶色の状態であれば美白化粧品も有効ですが、濃くなってしまうと皮膚全体が変化しているため、レーザー治療や光治療で消すことになります。
ビタミンCイオン導入の併用も効果的とされます。
2-2. 雀卵斑(じゃくらんはん)
一般にソバカスと呼ばれるものです。遺伝的体質が原因で、小さく茶色いシミが鼻を中心とした広範囲にできます。
幼児期から思春期にかけて目立つ傾向があり、色白の人に比較的多いのが特徴です。
シミの形が円形ではなくて三角形や四角形になっていることも特徴とされます。
ソバカスもメラニンの色素沈着なのですが、美白化粧品ではあまり薄くならない場合がほとんどです。
レーザー治療や光治療は有効ですが、原因が遺伝にあるため、再発する可能性があります。
ビタミンCやビタミンAのイオン導入も効果があるとされます。
2-3. 肝班(かんぱん)
肝斑の原因は、女性ホルモンのバランスが乱れたことにあり、妊娠中やピルを服用したとき、更年期の際にもよく見られるシミで、紫外線でも多少悪化します。
目尻の下、頬骨のあたりに左右対称にできることがほとんどで、稀に鼻の下や額にできることもあります。
茶色だけでなく、灰色がかったものもあります。
美白化粧品はあまり効果がなく、レーザー治療も悪化させてしまう可能性があるので不向きとされてきましたが、最近は、肝斑に刺激を与えにくい「レーザートーニング」が注目されています。
トラネキサム酸が配合された内服薬や、ビタミンCイオン導入の併用が効果的とされます。
2-4. 炎症性色素沈着
炎症性色素沈着は、ニキビや虫刺され、傷などによる炎症が原因で、茶色く痕が残ったものです。
叩いたりこすったりなどの刺激でもできることがあり、ムダ毛を抜いた後に毛穴の周りが炎症を起こして黒く痕になったものも、このタイプです。
6タイプのシミの中では、もっとも美白化粧品の効果が上がりやすいタイプです。
ビタミンC誘導体の配合された美白化粧水が効果的で、自然に消滅する場合もあります。
また、ケミカルピーリングでターンオーバーを活性化させることも効果があります。
2-5. 花弁状色素班
花弁状色素班は、海水浴などの急激な日焼けが原因で、肩から背中にかけて広範囲にできる点状のシミです。
よく見ると円形ではなく、花びらのような形をしていることから、この名で呼ばれます。
美白化粧品ではほとんど消えることなく、レーザー治療以外の方法はあまり期待できません。
2-6. 脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)
脂漏性角化症は、シミがイボのように盛り上がってできたもので、紫外線だけでなく老化も大きな原因です。
イボの表面がボツボツしているのが特徴で、老化によって大きくなったり、数が増えたりする場合があります。
頬骨の高い部分やこめかみ、額にできることが多く、手の甲などにできることもあります。
このタイプは、皮膚そのものが変化してしまっているので、皮膚深部に作用する炭酸ガスレーザー治療か、液体窒素による冷凍凝固術、または外科手術で切除する必要があります。
3. シミを消す主な方法
どのタイプのシミにどんなケアが有効かを紹介しましたが、ここではシミを消す代表的な方法をもう少し詳しく見ていきましょう。
美白化粧品以外の方法は、美容皮膚科で施術することになりますが、クリニックによって治療法が異なる場合も多いので、あくまでも一般的な参考データと考えてください。
3-1. 美白化粧品
美白化粧品には、メラニンが生成されるメカニズムのどこかに働きかけて、メラニンの生成を抑える成分が配合されています。代表的なものは以下の3つです。
① 紫外線を浴びると情報伝達物質がメラノサイトに指令を出しますが、この段階で、情報伝達物質の働きを阻害するもの。
② メラノサイトがメラニンの生成を行う段階で、チロシナーゼの活性を抑制してメラニン生成を抑える働きをするもの。
※多くの美白成分はこのタイプです。
③ チロシナーゼを減少させる働きがあるもの。
※通常、生成されたメラニンはターンオーバーの作用で排出されますが、何らかの作用でメラノサイトの過剰活動が収まらない状況になっても、メラニンが蓄積されるのを防ぎます。
美白成分には厚生労働省が認めた医薬部外品の成分が現在20種ほどあり、そのほかにもメーカーが独自に提唱しているものもあります。
美肌化粧品は、ごく初期の老人性色素班や一部の炎症性色素沈着を除いて、できてしまったシミを消すことはできませんから、シミの予防ケアと考えるべきです。
3-2. 内服薬
ビタミンC、ビタミンE、トラネキサム酸、L-システインなどを基本とする内服薬によって、体の中からシミのケアをします。
ビタミンCは、メラノサイト内の酵素チロシナーゼを抑制してメラニンの生成を抑制。
トラネキサム酸は、抗炎症剤として使用されてきた成分で、やはりメラノサイト内の酵素チロシナーゼを抑制してメラニンの生成を抑制します。
ビタミンEは、「肌のサビ」を防ぐ抗酸化作用があります。
内服薬は一般的に3カ月以上の服用が必要になり、レーザー治療や光治療の効果を高めるために併用されることが多くなります。
3-3. ケミカルピーリング
ピーリングは、古い角質を落としてターンオーバーを活性化させることにより、角質にたまっていたメラニンを排出する方法です。
「AHA」や「フルーツ酸」と呼ばれている天然由来の成分などを配合したピーリング化粧品は、傷の炎症が原因の炎症性色素沈着や、初期の老人性色素班、ホルモンバランスが原因の肝斑に有効とされます。
クリニックでは、美白成分の吸収や浸透をより高めてシミやくすみを薄くする、「ケミカルピーリング」が行われます。
3-4. イオン導入
メラニンの生成を抑制するビタミンCやトラネキサム酸、ターンオーバーを活性化するビタミンAなどを、専用の機器を使って肌に微弱な電流を流し、イオン化して皮膚に浸透させる方法です。
ビタミンAには、皮膚の中で紫外線の光エネルギーを吸収する「紫外線吸収剤」の働きもあります。
角層のバリア機能を一時的にやわらげて、水に溶けにくい分子の浸透も促します。
導入前にケミカルピーリングを行うと浸透効果がさらに高まります。
3-5. レーザー治療
レーザー光の皮膚治療は1960年代にアメリカで始まり、日本でも40年以上の歴史があります。
シミやアザの治療には、「メラニン等の黒色素に反応する波長」や「毛細血管等の赤色素に反応する波長」のレーザーが用いられ、波長が短いほど皮膚の表面に作用し、長いほど皮膚の深部まで作用するという特性があります。
また、照射時間(パルス幅)が短いほど熱伝導しにくく、深部のターゲットを狙いやすいという特徴があります。
レーザー治療機器は、波長によっていくつかに分類されます。
波長の短いほうから並べると、次のようになります。
- ルビーレーザー(表皮だけに作用)
- アレキサンドライトレーザー(真皮まで作用)
- ダイオードレーザー(皮下組織の浅い部分まで作用)
- YAGレーザー(皮下組織の深部まで作用)
- 炭酸ガスレーザー(皮下組織のさらに深部まで作用)
1~3は可視光線、4、5は赤外線の領域になります。
表皮にメラニンがあるシミにはルビーレーザー、真皮層に入り込んでしまったメラニンがあるシミにはYAGレーザーというように、治療目的に合わせて機器を選択します。
シミの治療には、正常な細胞にダメージを与えずにメラニンだけを狙い撃ちするために照射時間の短いほうが適しています。
照射時間を10億分の1秒単位で制御できるのが、「Qスイッチ」という技術で、「Qスイッチルビーレーザー」「QスイッチYAGレーザー」「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」が多く用いられています。
特殊な弱いレーザーを繰り返し照射して、刺激を受けやすい肝斑を悪化させることなくメラニンを少しずつ壊していく「レーザートーニング」は、波長の長いQスイッチYAGレーザーを使用します。
3-6. 光治療(IPL)
IPL(Intense Pulsed Light)とは、有害な紫外線をカットした皮膚にやさしい光です。
レーザーのようにターゲットをピンスポットで狙うのではなく、顔全体に照射して主に表皮の浅い層に作用します。
レーザー治療は単一波長の光を照射するので、目的に応じて使い分けなければいけませんが、IPLはフィルターを変えることによっていろいろな波長の光を照射できます。
シミを消す光治療機器には、短い波長域の「フォトフェイシャル」「ライムライト」などが用いられます。
波長の長い赤外線の「タイタン」や、YAGレーザーのロングパルスを使う「ジェネシス」は、古い角質の除去やコラーゲン生成の促進に応用されます。
「フォトRF」は、フォトフェイシャルにRF(高周波)を組み合わせた治療機器で、表皮のメラニンの量に影響されることなく熱エネルギーを皮膚の深部まで届けることができます。
まとめ
美白化粧品はシミの予防になりますが、シミの予防にもっとも効果的なのは紫外線対策です。
正しいUVケアを身につけてシミを防ぎましょう。
できてしまったシミを消すのは簡単なことではありません。
レーザー治療や光治療を行っても、完全に消すことができないケースが多いのも事実です。
消すのではなく、できるかぎり薄くするという意識で臨むべきでしょう。
重要なのは、信頼できるクリニック、信頼できるドクターを探すことです。
広く情報を集めて自分のシミに合った治療法を見つけてください。
【参考資料】
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 2014年
・『切らずに治す「アザ外来」』 ごま書房新社 2016年
・聖心美容クリニック web site
・銀座ケイスキンクリニック web site