ほうれい線が気になりだすと、なんとかして進行を食い止めたいと思いますよね?
ほうれい線が目立つようになると、顔が老けて見えるのです。
ほうれい線は、鼻の両脇から口角に向けて伸びるラインで、頬のたるみの境界線です。
漢字では「法令線」と書かれることが多く、語源は中国の面相学にあるといわれます。
ほうれい線は「深いシワ」と思われがちですが、頬全体の皮膚とその下の脂肪が下がることで目立ってくるので、「たるみ」の症状なのです。
シワの原因は大きく分けて2つ。
浅いシワの原因は肌の乾燥、深いシワの原因は、肌の弾力とハリを保っているコラーゲンが減少してしまうことです。
一方、顔のたるみは、コラーゲンの減少や劣化だけでなく、皮下組織や筋肉がたるむことも大きな原因になっています。
しかし、大元をたどれば、シワもたるみも、老化による活性酸素の増加や、エストロゲン(女性ホルモン)の低下などが原因になっているのです。
ですから、たるみのケアは、シワのケアととても近いものになります。
たるみの原因は、皮膚の深い部分で起こるために、一度できてしまうとセルフケアで改善することはとても困難ですから、できる限り早めのケアと予防が求められます。
ここでは、初期のたるみを改善するセルフケアを紹介します。
目次
1. コラーゲンケア
1-1. 真皮の70%を占めるコラーゲンとは?
1-2. コラーゲンが減少する要因
1-3. コラーゲンを増やすケア
1-3-1. シワやたるみに有効な化粧品
1-3-2. イオン導入
1-3-3. 超音波マッサージ
1-3-4. 生活改善
2. 抗酸化食品
2-1. 老化を進める活性酸素とは?
2-2. 代表的な抗酸化物質
2-3. 抗酸化力の高い食品
3. 表情筋ケア
3-1. 頬のマッサージ
3-2. リンパマッサージ
3-3. ペットボトルエクササイズ
1. コラーゲンケア
コラーゲンの話に入る前に、皮膚の基本的な知識を頭に入れておきましょう。
人間の皮膚は外側から、厚さ0.2ミリ程度の「表皮」、厚さ2ミリ程度の「真皮」、大部分が皮下脂肪で部位によって大きく厚さが変わる「皮下組織」、という3層の構造になっています。
表皮は細胞分裂を繰り返して「ターンオーバー」と呼ばれる代謝をしながら、角質がつくるバリアで紫外線や外部からの異物侵入をシャットアウトし、体から蒸発する水分をつなぎとめて肌のうるおいを保っています。
真皮は、その内側で肌の弾力を保ち、ハリを与える役割を担っています。
毛細血管が通っていて、皮膚に栄養や酸素を届け、老廃物や二酸化炭素を排出する機能もあります。
一番内側の皮下組織は、皮下脂肪がクッションのような役目をして衝撃から体を守り、体温を逃がさないようにする役割もあります。
血管やリンパ管が通っていて、真皮の毛細血管から流入した老廃物などが流れ込んでいます。
1-1. 真皮の70%を占めるコラーゲンとは?
真皮は、丈夫なタンパク質の線維である「コラーゲン」が70%を占めて、網目状のネットワーク構造をつくっています。
そのところどころを、やはりタンパク質の線維である「エラスチン」が固定してネットワークを補強し、そのすき間を、ジェル状の「ヒアルロン酸」など、「ムコ多糖類」と呼ばれる物質が埋めています。
ムコ多糖類は水分を抱え込む性質をもっていて、通常、真皮には65%の水分が保たれています。
現在、人体には29種のコラーゲンが存在することがわかっており、そのうち9種が肌に存在するものです。
人体のタンパク質の約30%がコラーゲンで、そのうち40%が皮膚に存在しています。
その中でも、真皮でネットワークを作っている「Ⅰ型コラーゲン」、表皮と真皮の間の膜にある「Ⅳ型コラーゲン」と「Ⅶ型コラーゲン」の3種が、肌の弾力やハリに重要な役割を果たしています。
コラーゲンやエラスチン、ムコ多糖類は、細胞ではないので表皮のように細胞分裂で増えるのではなく、真皮内に存在する「線維芽細胞」が生成します。
1-2. コラーゲンが減少する要因
コラーゲンやエラスチンを健全な状態に保つためには、線維芽細胞の働きを低下させないことが必要になります。
ところが、年齢を重ねるとともに線維芽細胞の繁殖能力が低下して、コラーゲンを生成する機能が弱くなっていきます。
40代に入ると、コラーゲン、エラスチン、ムコ多糖類は、つくられる量が激減し、50代になると、ほとんど新たにつくられなくなってしまうのが現実です。
加齢は、誰にでも訪れるものですから、なくすことはできませんが、できるだけ肌の老化を遅らせることは可能です。
老化を遅らせる「エイジングケア」のポイントは、「紫外線」「酸化」「糖化」という3つの要因を抑えることにあります。
1-3. コラーゲンを増やすケア
コラーゲンは食べ物や飲み物から摂取しても、腸内でアミノ酸に分解されるので、そのまま真皮に入り込むことはありません。
また、肌の外からつけても分子量が大きいので、肌に浸透しません。
分子量を小さくしたミクロのコラーゲンが、多少の保湿効果を生むことはあっても、外部から入ったコラーゲンが真皮に定着することはないのです。
コラーゲンを増やすためには、コラーゲンを生成する線維芽細胞を活性化させる成分を与えることと、新陳代謝を高める生活習慣が必要です。
1-3-1. シワやたるみに有効な化粧品
シワやたるみに有効とされる化粧品には、コラーゲンを増やす成分が配合されています。
とくに効果が高いとされる成分は、「レチノール」「ビタミンC誘導体」「ナイアシン」の3つです。
・レチノール
ビタミンAの一種で、線維芽細胞を活性化させる働きがあります。
そのままでは紫外線や熱によって酸化しやすいという不安定な性質があるため、安定化させた「レチノイン酸トコフェリル」「酢酸レチノール」「パルミチン酸レチノール」を配合した美容液を選びましょう。
・ビタミンC誘導体
ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない成分ですが、肌に浸透しにくいため、浸透しやすく改善したものがビタミンC誘導体です。
「リン酸L-アスコルビルマグネシウム」「アスコルビルエチル」などがあり、最近では、高濃度のまま安定化させた「高濃度安定型ビタミンC」も普及しています。
・ナイアシン
ビタミンB3のことで、肌の代謝を活性化してコラーゲンの生成量を増やす働きがあります。
肌への刺激が少ないので、敏感肌の人でも使用することができます。
1-3-2. イオン導入
イオン導入器に、ビタミンC誘導体が配合された化粧水をつけて肌に当てることにより、微弱な電流を使ってビタミンCを肌に浸透させます。
イオン導入器を使用すると、ビタミンC誘導体をそのまま肌につける場合よりも20倍の浸透力があるといわれます。
通常は週に1回、5~10分程度のケアで効果があります。
1-3-3. 超音波マッサージ
イオン導入器以外にも、セルフケアで使用する美顔器はいろいろなものが売られています。
その中でコラーゲンを増やす効果が得やすいのは、超音波マッサージ器です。
超音波マッサージ器を肌に押し当てることによって、微細な振動が肌の血行を促します。
手でマッサージするよりも肌への負担を抑えることができるので、シワやたるみを悪化させずにケアができます。
美顔器を選ぶときのポイントは、簡単に扱えることと、ジェルなどの専用アイテムを必要としないことです。
1-3-4. 生活改善
新陳代謝を高める生活習慣は、運動や睡眠も欠かせませんが、まず見直したいのが食生活です。
「酸化」は次項で解説する「活性酸素」によって体がサビることですが、「糖化」は、タンパク質が糖と結合して「糖化タンパク質」になり、糖が「AGEs(終末糖化産物」という老廃物に変化する反応です。
糖化タンパク質は硬くなるので、タンパク質であるコラーゲンやエラスチンが糖化するとカチカチに固まってしまい、弾力を失います。
AGEsが蓄積すると肌の新陳代謝が悪くなり、真皮だけでなく表皮のターンオーバーを遅らせて、シミの原因にもなってしまいます。
肌の糖化を防ぐためには、糖質(炭水化物)や甘いものを控えることが重要。
食事は野菜から食べて、肉や魚で良質なタンパク質を摂り、最後に糖質を少量摂るようにしましょう。
生活習慣の改善を目指している方は「アンチエイジングの鬼が伝授する奥義-老けないための習慣20選」の記事も参考になるかもしれません。
2. 抗酸化食品
糖化を防ぐ食生活とともに、シワやたるみのケアとして欠かせないのが、「酸化」を防ぐケアです。
エイジングケア化粧品の多くには、肌の酸化を防ぐ抗酸化成分が配合されています。
そもそも、活性酸素とはどのようなもので、肌が酸化する(サビる)とはどういった状態なのでしょうか?
2-1. 老化を進める活性酸素とは?
人間の体内でエネルギーを燃やすときには酸素が必要で、この時に発生するのが活性酸素です。
活性酸素は殺菌力が強く、体内に侵入した細菌やウィルスなどを攻撃する働きがあります。
しかし、活性酸素が増えすぎると、正常な細胞や遺伝子まで攻撃してしまいます。
皮膚で活性酸素が増えると線維芽細胞や表皮細胞を傷つけてしまい、老化を進行させるのです。
これが、「肌が酸化する(サビる)」と呼ばれる状態。
活性酸素は呼吸するだけでも発生するので、体内には活性酸素を除去する機能があるのですが、年齢とともに低下していきます。
活性酸素が増える原因には、紫外線を浴びること、ストレス過多、運動不足、飲酒や喫煙などがあります。
2-2. 代表的な抗酸化物質
エイジングケア化粧品や、抗酸化食品に含まれる代表的な抗酸化物質には、ビタミンA、C、E、ポリフェノール類、コエンザイムQ10などがあります。
また、動植物が、紫外線から身を守るためにもっている天然の色素成分には抗酸化作用があり、中でも植物由来の抗酸化物質は高い抗酸化力をもつので、多種類のものが利用されています。
・カロテノイド系と呼ばれる黄、橙、赤色などの色素をもつもの
βカロテン、αカロテン、βクリプトキサンチン、ルテイン、アスタキサンチン、リコピンなど
・ポリフェノール系と呼ばれる、光合成によって生成される色素や苦味成分
アントシアニン、ケルセチン、ルチン、カテキン、イソフラボン、レスベラトロールなど
・非フラボノイド系と呼ばれるもの
セサミン、クルクミン、クロロゲン酸、フェルラ酸など
・イオウ化合物
スルフォラファン、アリシンなど
そのほか、変わったところでは、ビタミンCの170倍の抗酸化力をもつといわれる、炭素の分子がサッカーボール状に構成されたフラーレンと呼ばれる合成物質があります。
2-3. 抗酸化力の高い食品
抗酸化成分を多く含む食品には、次のようなものがあります。
・緑黄色野菜
緑黄色野菜は抗酸化食品の代表で、ブロッコリー、トマト、カボチャ、赤ジソなどがあります。
ブロッコリーは、その中でもビタミンCの含有量が圧倒的に多く、ビタミンB群やEも多く含み、鉄などのミネラルや食物繊維も豊富、さらにイオウ化合物のスルフォラファンまで含むというスーパー食材です。
赤いトマトは、リコピンが強い抗酸化作用を発揮しますが、リコピンは脂溶性なので生で食べるよりも、オリーブオイルで焼くなどした方が抗酸化力は高まります。
ケールやほうれん草にはルテインが多く含まれています。
ルテインも脂溶性なので、炒めるか、脂肪酸を多く含む肉などと一緒に調理して食べると、抗酸化力が高まります。
・ブルーベリー
ブルーベリーの色素はアントシアニンです。
アントシアニンには、抗酸化作用だけでなく、眼球内の毛細血管を強くして血流を改善する作用もあります。
・リンゴ、ミカン
リンゴには、アントシアニン、ケルセチン、カテキンといった抗酸化成分が含まれ、高血圧の予防に欠かせないカリウムや、骨を丈夫にするマンガンなどのミネラル類も含まれています。
ビタミンCが豊富なミカンには、βクリプトキサンチンが含まれています。
・緑茶
緑茶の渋みであるカテキンは、強力な抗酸化作用をもち、血中のコレステロールを下げるので、体脂肪を抑制する働きもあります。
ビタミンCも豊富なので、非常に抗酸化力の高い飲料です。
・大豆
大豆は、大豆イソフラボンや大豆サポニンなどの抗酸化物質が豊富で、タンパク質、ビタミンB群やE、カルシウム、鉄なども豊富ですが、ビタミンCが含まれていないので、緑黄色野菜などと一緒に食べると効果的です。
・キノコ類
キノコ類に含まれるエルゴチオネインは、ビタミンEの7000倍の抗酸化力をもつといわれる抗酸化物質です。
そのほか、ビタミンB群、ビタミンD2、ミネラル、水溶性食物繊維なども豊富に含む低カロリー食材です。
・そば粉
そばにはルチンが多く含まれ、抗酸化作用だけでなく、毛細血管を強くして血圧を下げる効果があります。
ルチンは水に溶けやすいので、そば湯は必ず飲みたいものです。
ただし、そばでも小麦の割合が多いものは糖質が多いので注意してください。
・ニンニク、ネギ類
イオウ化合物のアリシンが含まれています。
ほかにも、抗酸化作用がある食品としてオリーブオイルも挙げられます。オリーブオイルの抗酸化作用については「オリーブオイルがもたらす7つの効果-抗酸化物質で健康長寿」の記事をぜひご覧ください。
3. 表情筋ケア
顔には20種以上の筋肉があり、その総称を「表情筋」といいます。
加齢によって表情筋が衰えてくると、たるみが進行するので、日々、顔の筋肉を動かすように心がけることが、たるみの防止につながります。
しかし、大きく口を開けるような表情筋エクササイズは、かえってほうれい線を目立つようにしてしまう恐れがあるので、表情によるシワを刻まずに筋力だけを高めるケアが必要です。
3-1. 頬のマッサージ
筋肉は、緊張したり疲労したりすると収縮して血流が悪化します。
すると、老廃物の排出ができなくなって硬くなります。
頬周辺を中心とした表情筋のマッサージで、筋肉内の血行を改善して老廃物の排出を促しましょう。
① 両手の中指と薬指の腹を使って、頬骨の下を鼻のキワから外側へ、小さな円を描きながらマッサージします。
② 鼻と唇の間を内側から外側へ、小さな円を描きながらマッサージします。
③ 口角から外側に向けて小さな円を描きながらマッサージし、ここまでの動作を3回繰り返します。
3-2. リンパマッサージ
リンパ管は、毛細血管で回収しきれなかった老廃物を回収して、手足や顔の末端からじょじょに集まって、最終的には鎖骨の下で静脈に合流します。
顔のリンパは、顔の中心から外側へと流れ、首筋を通って鎖骨に向かっています。
表情筋の衰えで流れが鈍くなったリンパを直接マッサージして、しっかり鎖骨下まで流してやりましょう。
① 両手の親指以外の4本の指の腹で、両目の外側を上から下へ5回さすります。
② 両耳の前方を同じ要領で上から下へと5回さすります。
③ 耳の後方から首筋に沿って鎖骨まで、同様に上から下へ5回さすります。
④ 鎖骨の内側から外側へ向けて5回さすります。
3-3. ペットボトルエクササイズ
シワを刻まずに表情筋の筋力を高める手軽な方法として、ペットボトルを使ったエクササイズがあります。
頬からアゴにかけての表情筋を鍛えて、引き締めます。
① 500mlのペットボトルに少量の水を入れ、歯を使わず唇だけで持ち上げて、10秒間キープします。
最初は空の状態からはじめて、慣れてきたら水を少し入れるのもいいでしょう。
② 少し休憩しながら3回繰り返し、慣れてきたら少しずつ水の量を増やします。
表情筋ケアについては「6つの部位のたるみを改善するケア-顔が5歳若返るテクニック」の記事もぜひ併せてお読みください。
まとめ
ここまで、セルフケアによるほうれい線の対処法を解説してきましたが、本格的に改善したいという人は、美容治療を受診する手もあります。
シワやたるみの治療で行われるものには、やわらかいゼリー状の物質を皮膚に注射する「ヒアルロン酸注射」や、表情筋の動きを止めてシワやたるみを改善する「ボトックス注射」、皮膚を活性化してコラーゲンを増やす「レーザー治療」などがあります。
それぞれ、メリットとデメリットがありますから、信頼できる美容皮膚科でよく相談してから、治療方針を決めてください。
【参考資料】
・『素肌美人をつくる トータルスキンケアBOOK』 幻冬舎 千堂 純子 2015年
・『いちばん正しいスキンケアの教科書 吉木メソッドで美肌になる!』 西東社 吉木伸子 2014年