目の疲れや視力の低下が進行すると、不安になりますよね?
とくに仕事でパソコンを長時間使用する人にとっては、目の悩みは避けられない問題です。毎日、つらい思いをしながら仕事を続けるのは目に悪いだけでなく、大きなストレスを溜め込む原因になってしまいます。
目の疲れを解消するためには、眼球の運動や目の緊張をほぐすストレッチなど様々なケアの方法がありますが、ここでは外的要因である光や照明の使い方を見直します。
ものを見るということは、目が光を感じていることにほかなりません。まずは、光と目の関係を理解し、光とうまく付き合うために1日をどう過ごせばよいか、時間別に10のポイントで解説しましょう。
目次
1 光と目の関係を知る
1-1 目のしくみ
1-2 20代から始まる目の老化
1-3 光から目を守る水晶体も老化する
1-4 身体に良い光と悪い光
2 ブルーライトとはなにか?
2-1 青色の波長が多いLED
2-2 LED照明と液晶モニターの影響
2-3 眼精疲労を起こしやすいブルーライト
2-4 目が疲れないためのブルーライト対策
3 光とうまく付き合う10のポイント
3-1 6:00 起床時
3-2 9:00 午前中の仕事
3-3 12:00 昼休み
3-4 13:00 午後の仕事
3-5 18:00 残業時間
3-6 19:00 帰宅後
3-7 19:30 夕食時
3-8 21:00 夕食後
3-9 23:00 就寝前
3-10 25:00 睡眠中
まとめ
1 光と目の関係を知る
日本では南向きの明るい部屋が好まれますが、欧米では弱い光が入る北向きの部屋が好まれています。
また日本では、戦後の高度経済成長期に蛍光灯が普及し、部屋中を明るく照らす照明が当たり前になりましたが、欧米では必要なところだけを照らす照明が一般的です。
こうした光との付き合い方の違いは、日射量が多い低緯度地域で生活する民族と日射量が少ない高緯度地域で生活する民族の目に、そもそもの構造的な違いがあることが原因なのです。
日本人のように低緯度地域で生活する民族は、紫外線から身を守るために皮膚の色が濃く、同時に、目から入る強い日差しを遮る「虹彩」の色も濃いのです。
日本人が光や照明について無頓着である理由は、欧米人ほど光の影響を受けない目を持っているからです。
しかし、目の疲れを解消するカギとなるのは「光」であり「照明」なのです。
1-1 目のしくみ
(「http://www.civillink.net/fsozai/eye.html」よりフリー素材を引用)
人間の目はアナログカメラの構造と似ています。カメラはレンズで屈折した光がフィルムに像を結びます。人間の目では、黒目部分である「角膜」とその奥にある「水晶体」がレンズの役割をします。
角膜と水晶体の間にある「虹彩」はカメラの絞りにあたり、開閉することで瞳孔の大きさを調節し、目に入る光の量を加減します。人の目を前から見て、黒目の中心にある黒い部分が瞳孔で、その周りを囲んでいる茶褐色の部分が虹彩です。
角膜を通った光は水晶体で屈折し、「硝子体」を通って眼底の「網膜」で焦点が合うようになっています。網膜はカメラのフィルムに相当します。網膜に投影された光の情報は「視神経」から脳へと伝達されます。
水晶体は、ものを見たときに薄くしたり厚くしたりして光の屈折率を変え、網膜に焦点を合わせるためにあります。その水晶体の厚さを調節しているのが「毛様体」です。
毛様体は筋肉で、近くを見るときは収縮して水晶体を厚くし、遠くを見るときにはリラックスした状態になって水晶体を薄くします。
1-2 20代から始まる目の老化
目の老化は20代後半から始まります。目の老化では次の5つの変化が顕著に表れます。
1-2-1 近くのものが見えにくくなる視力低下
水晶体の弾力が失われて焦点調節機能が低下し、近くのものが見えにくくなります。これが老眼と呼ばれる状態です。
1-2-2 明るさを感じる機能の低下
水晶体が濁ってくるために、網膜に届く光の量が減ります。
20歳との比較では、40歳で1.4倍、60歳では2倍、75歳では3倍の光量にしないと同じ明るさに感じることができないという調査結果があります。
1-2-3 まぶしく感じやすくなる
明るさを感じる機能が低下する一方で、同じ光でもまぶしく感じるようになります。これは、水晶体のタンパク質が変性してしまうことにより、光がこのタンパク質で乱反射するためです。
20歳に比べて、30歳では半分の光量、50歳では3分の1程度の光量でもまぶしく感じてしまいます。
1-2-4 暗闇で視力が戻りにくくなる
人間の目は明るいところから暗いところへ移ったときに、最初はなにも見えませんが、徐々に見えるようになります。
歳をとるとものが見えるようになるまで、長い時間がかかるようになります。
虹彩の光量調節機能が衰え、瞳孔が若い頃のように大きく開かなくなるためです。
1-2-5 色の見え方が変わる
人間の目は、1000万色もの色彩を見分けられるといわれています。この機能も20代後半から低下していきます。
赤やオレンジ、茶色などの暖色系は変化が少ないのですが、青、緑、紫のような寒色系は見分ける能力が落ちていき、もっとも変化するのは青色の彩度(色の鮮やかさ)です。
ところが、青白い光は、年齢にかかわらずまぶしさを感じやすいという特徴があります。
水晶体が濁ってくると照明の光量が必要になってきますが、同時に光量を増やすとまぶしさもきつくなります。白っぽい色ではなく電球色の照明を使用するとまぶしさが軽減できます。
1-3 光から目を守る水晶体も老化する
太陽の光の中には、虹を構成する色である赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色の波長が含まれています。
色の違いは波長の違いで、波長の長いほうが赤、短いほうが紫です。赤から紫までの目に見える光が「可視光」、赤より波長の長いのが「赤外線」、紫より波長が短いのが「紫外線」、さらに短いのが「エックス線」です。
光のエネルギーは波長が短いほど強くなり、紫外線では肌が焼けてしまうほど強いエネルギーになります。
このような光から網膜を守っているのが水晶体です。水晶体でエネルギーの強い光を吸収することによって、網膜まで届く量を減らし、光のダメージから目を守っているのです。
水晶体が光を吸収する能力は、年齢とともに変化します。
生まれてから8歳くらいまでは、あまり吸収せずに7~8割の紫外線が網膜に届いてしまいます。その後は、年齢が上がるとともに吸収する紫外線量が増えていき、25歳以降は透過率がゼロになります。
しかし、25歳を過ぎると、波長が短いほうから可視光も透過しにくくなってしまいます。これは、強い光のエネルギーで水晶体が傷ついていくため起こる現象です。カメラでいえば、レンズに傷が増えていくのと同様のことです。
1-4 身体に悪い光と良い光
光が身体に与えるダメージには、「白内障」や「雪目」「日食網膜症」「翼状片」「黄斑変性」などがあります。
白内障は水晶体が白く濁ることにより、目に入った光がしっかりと網膜に届かなくなり、視力が落ちる疾病です。
「雪目」は、雪や海の照り返しなどによる強い紫外線で、角膜が傷ついた状態です。
長年、強い紫外線を浴び続けると、白目の表面を覆っている膜が過剰に増え、角膜に侵入してくるのが「翼状片」、生活習慣病や長時間にわたる目への刺激によって、網膜の中心にある「黄斑」を傷めてしまうのが「黄斑変性」です。
光は、目にダメージを与えている一方、健康な身体作りに必要なものです。目や体に悪影響を与えると思われている紫外線も、実は大切な役割をもっています。
光は体内におけるビタミン生成に欠かせませんが、とくに骨や歯の形成に不可欠なビタミンDは、日光を浴びることによって体内で生成されます。丈夫な骨作りには、適度な運動と日光浴が必要とされ、とくに有効なのが紫外線なのです。
適度な太陽光を毎日浴びる人に比べて、ほとんど浴びない人は、がんの発生率が高いとまでいわれています。
2 ブルーライトとはなにか?
可視光を大きく3つに分けた「光の3原色」というものがあります。長波長の赤色光(赤、橙)、中波長の緑色光(黄、緑)、短波長の青色光(青、藍、紫)で、この3原色を混ぜると白い光になります。
ブルーライトとは、この中の短波長の青色光のこと。ブルーライトのエネルギーは赤色光の倍にもなるため、目に与えるダメージが大きいのです。
2-1 青色の波長が多いLED
テレビやパソコンのモニターがブラウン管からLED液晶に変わり、室内照明も、白熱電球や蛍光灯からLED照明に変わりつつあります。
白く光るLEDには、おもに次の4種類の作り方があります。
(1)RGB(赤、緑、青)3色LEDの混光
(2)青色LED + 黄色蛍光体
(3)青色LED + RG(赤、緑)蛍光体
(4)紫色LED + RGB蛍光体
(1)は回路が複雑になるため白色が出せないので、白色の質が問われない演出照明などにしか使われません。
(4)がもっとも太陽光に近い光を作ることが可能で、目の負担も少ない、質の高い光とされますが、紫色LEDは青色LEDよりも高価で流通量も少ないため、現在は、青色LEDをベースにした②か③の作り方が主流です。
そのために白色LEDは、どうしてもブルーライトが強くなってしまうのです。
2-2 LED照明と液晶モニターの影響
直射日光並みのブルーライトを目に照射すると、角膜細胞が死滅することがわかっています。これは「雪目」と同じ症状がブルーライトでも起こるということです。
LED照明や液晶モニターなどの光は、そこまで強いものではありませんが、モニターは「近い距離」で「長時間」「凝視」することが多いので、目への影響は決して小さくありません。
とくにドライアイを起こしている人は、目の表面保護が弱くなっているので、影響を受けやすいといわれています。
2-3 眼精疲労を起こしやすいブルーライト
ブルーライトは角膜や網膜にダメージを与えるだけでなく、次のような悪影響があります。
2-3-1 視界のボケ
光は波長が短いほど散乱しやすいという特性があります。波長の長い赤色光は大気の中を直進しますが、波長の短い青色光は、大気中の分子にぶつかって反射、散乱するので、まっすぐ届きにくいのです。
LEDの光は散乱しやすく、見るものがボヤけやすくなります。そうすると、しっかり見ようとムリをするため、目の負担が大きくなるのです。
2-3-2 チラつきやまぶしさ
可視光には「色収差」といって、波長によってピントのズレを生じる特性があります。
ブルーライトは波長のズレが生じやすく、画像のチラつきやまぶしさを感じやすくなって、頭痛や肩こりの原因になります。
2-3-3 焦点調節機能の不具合
ブルーライトは瞳孔を収縮させやすいので、長時間のパソコン作業などでは収縮したまま元に戻りにくくなります。
明るさや距離が違うものを見たときに焦点の調整がうまくできないため、目が疲れやすくなります。
2-4 目が疲れないためのブルーライト対策
生活の中にLED照明やLED液晶が普及している今、ブルーライトのない生活は考えられません。
目の疲れを軽減するために次のような対策をしましょう。
(1)LED照明は、光のチラつきが目立たないものを選び、光源が目に入らない位置に設置する。
(2)長時間のパソコン作業やスマホ使用はできるだけ避けて、1時間に1度は遠くを見るなどして目を休憩させる。
(3)夜のパソコン作業やスマホ使用は避け、就寝前は目に優しい電球色の間接照明にする。
(4)パソコンのモニターはバックライトの輝度を下げてブルーライトを減らし、ブルーライトカットメガネなどを活用する。
3 光とうまく付き合う10のポイント
できるだけ目の疲れを抑え、仕事の効率も上げる光との付き合い方を、時間別のポイントで1日にまとめてみました。
ぜひ参考にして、自分の生活に合わせたアレンジをしてみてください。
3-1 6:00 起床時
朝の理想は、起床後1時間以内に朝日を30分間浴びることです。べランダで朝日を浴びながらストレッチをしたり、軽い散歩をしたりするといいでしょう。
時間に余裕がない場合は、窓際で朝日を浴びながら朝食をとりましょう。
朝日には、体内時計をリセットする働きがあるので、正常な1日の生体リズムを刻むために重要です。
LEDの強いエネルギーを逆に活用して、通勤途中に明るいコンビニエンストアーやファストフード店でコーヒーを飲むといった習慣も効果があります。
3-2 9:00 午前中の仕事
脳が元気な午前中は、仕事に集中できる環境をつくりましょう。
室内照明で明るさが不足していたら手元ライトで補助し、パソコンモニターに移りこむ光があればブラインドなどでカットします。
さらに、エアコンの風が直接当たらないようにする、オフィスが乾燥していたらデスクの上に置ける加湿器を活用するなどして、ドライアイ対策をしましょう。
3-3 12:00 昼休み
昼休みはランチをとってから、薄暗い場所で15分間の昼寝をするのが理想的です。
最近は節電と目の休息のために、昼休みに照明を消すオフィスも多くなっていますが、明るさが変わらないオフィスの場合は、使える会議室などで、できるだけ暗めな場所を探してみましょう。
イスでリクライニングスタイルをとれなかったら、机に突っ伏して目を閉じているだけでも効果はあります。
ただし、昼寝は長くても20分まで。休憩する前にコーヒーを飲んでおくと、一般的には20分後に覚醒作用が始まるので、目覚まし時計の代わりになります。
3-4 13:00 午後の仕事
いきなりスタートダッシュをして午後の仕事を始めるのは、目にも脳にもよくありません。
15分の昼寝が終わったら、昼休み終了の5分前から窓際に行って、太陽の光を浴びましょう。休憩していた身体の機能が覚醒して、効率よく仕事を始めることができます。窓際で遠くを眺めていると、目の筋肉のケアにもなります。
3-5 18:00 残業時間
もうひと踏ん張りしなければいけないのに、アイデアが浮かばない、仕事の効率が上がらないというときには、照明を変えましょう。
一般的なオフィスに多い昼光色や昼白色の光の中では、2時間を超えると集中力が低下して、仕事の効率が落ちる傾向があります。
休憩をとったら電球色の照明の部屋に行って仕事をします。オレンジ色の電球色は、脳をリラックスさせて発想力を高めてくれますので、アイデアを生み出すクリエイティブな仕事には向いています。
一度とことんリラックスしたいときは、部屋の照明を消し、電球のライトを壁や天井に向けて間接照明にするといいでしょう。
3-6 19:00 帰宅後
帰宅後のこの時間帯は、照明のことを意識せずに楽しくすごしましょう。
リラックスしながらパソコンやスマホも使うのもよし、テレビを見るのも目のことを気にかけずに楽しみます。
3-7 19:30 夕食時
夕食の時間は余計な照明は消して、テーブルの上だけを電球色の照明で照らします。部屋の照明は点けていても暗めの間接照明程度に。食事に意識が集まるように、テレビも消すことが望ましいです。
テーブルにキャンドルライトを置くと、リラックス効果の高い炎のゆらぎが瞳に潤いをもたらしてくれるので、特別な日だけではなく、日常的に使用することはお勧めです。
3-8 21:00 夕食後
夕食後にテレビを見るときは、部屋の照明を落としてテレビの後ろの壁だけを明るくします。
テレビの上にダウンライトがあれば使用し、なければスタンドライトなどをテレビの後ろに置いて壁を照らすようにします。
テレビ画面と後ろの壁の明暗差があると、虹彩が瞳孔の大きさを調節し続けるので、目を酷使することになってしまいます。できるだけ視界全体を同じくらいの明るさにすることがポイントです。
子どもがいる場合などは部屋全体を明るくしてもいいのですが、映画館と同じで、自分に光が当たっていないと人間はリラックスできます。
ただし、LED液晶テレビにはブルーライトが多いので、あまり近づかないほうがいいことを忘れずに。
3-9 23:00 就寝前
就寝1時間前からはLED液晶を見ないようにし、就寝30分前には電球色の光のやさしい照明にします。
光源が目線よりも下の位置にある状態にし、直接の光が当たらない間接照明にすることがポイントです。
3-10 25:00 睡眠中
快眠をもたらす光のポイントは次の2つです。
【快眠ポイント1】
目から入る光は脳を覚醒に導くため、光が自分に当たらないようにし、照明を点けておくとしても、足元を照らす暗めのものだけにする。
【快眠ポイント2】
夜中にトイレなどで目が覚めた際、暗闇で照明のスイッチを探すのは脳を覚醒させてしまうので、フットスイッチやセンサーなどを活用して動作をスムーズにする。
まとめ
光や照明にメリハリをつけることによって、目の疲れを軽減するだけでなく、生活のリズムを整えて仕事の効率アップも図れることがおわかりいただけましたか。LED照明が普及してきた昨今、ブルーライトの悪影響をうまく避けることが重要です。
ここでひとつ、忘れてはいけないことがあります。白熱電球にはブルーライトが少ないのですが、蛍光灯にはブルーライトが多いということです。昼光色や昼白色の蛍光灯はLED照明と同じくらい目が疲れるのです。
光に無頓着で、部屋全体を明るく照らして生活してきた日本人が、「文化的な生活は、まず蛍光灯をやめることから」と言われてずいぶん経ちますが、今も蛍光灯を使用している人は、目の疲れが少ない電球色のLEDに交換することをお勧めします。
そして、「照明は必要なところを照らすもの」という意識を持てば、さらに目の疲れを軽減することができるはずです。
【参考資料】
『照明を変えれば目が良くなる』(PHP新書・2014年)
『眼の疲れをとる本』(講談社・2002年)