朝起きたときに顔がむくんでいると、気持ちよく1日のスタートを切ることができませんよね?
「昨日、水分を摂りすぎたんだ」と反省しても後の祭り。
マッサージをしてもメイクのノリが悪くて、疲れ顔のまま仕事に行くことに……。
むくみが気になる人は、こんな経験があるのではないでしょうか。
でも、むくみの原因は水分の摂りすぎではありません。
そして、やみくもにマッサージしても改善しないのです。
ここでは、顔がむくんでしまうメカニズムと、顔のむくみを解消するメソッドを解説します。
むくみ解消のカギとなる、リンパの流れを改善する方法を、「表層リンパマッサージ」と「深層リンパマッサージ」という2つのアプローチで紹介します。
目次
1. 顔がむくむ原因は余分な水分が溜まっていること
1-1. リンパの働き
1-2. リンパを流すのは筋肉
1-3. リンパの流れが滞る要因
2. 顔のむくみを解消する2つのアプローチ
2-1. 表層リンパマッサージ
2-1-1. リンパの出口を開くストレッチ
2-1-2. クリームをつける
2-1-3. フェイスライン
2-1-4. 頬
2-1-5. Tゾーン
2-1-6. 目元
2-1-7. 目の上
2-2. 深層リンパマッサージ
2-2-1. 表情筋マッサージの準備
2-2-2. 鎖骨
2-2-3. 首から肩
2-2-4. アゴ
2-2-5. 頭部と首
2-2-6. 目元と鼻筋
2-2-7. 頬と口元
2-2-8. フェイスライン
1. 顔がむくむ原因は余分な水分が溜まっていること
顔のむくみは、水分の摂りすぎなどではなく、本来流れていくはずの水分が肌の下に溜まってしまうことで起こります。
体内で発生した老廃物や不要な水分は、全身に張り巡らされた静脈やリンパ管で回収されて、体外に排出されます。
ですから、血液循環とリンパの流れを整えて排出をしっかり行うことが、むくみ解消のポイントです。
リンパの流れを改善することは、血流の改善よりも難しいという特徴があります。
まず、そうしたリンパの性質や働きから解説しましょう。
1-1. リンパの働き
リンパは毛細血管から染み出た血液の一部で、体内で発生した老廃物を排出する働きをします。
静脈が水溶性の老廃物をとり込むのに対して、リンパは脂肪やタンパク質、コレステロールなど脂溶性の老廃物をとり込んで排出するので、リンパの流れをよくするとダイエットにも効果があるといわれています。
老廃物をとり込んだリンパは、手足や頭部など体の末端から、網の目のように張り巡らされたリンパ管を通り、だんだんと集合して大きな流れとなり、最終的には鎖骨の下で静脈と合流します。
リンパ管のところどころにあるリンパ節は、老廃物をろ過する働きがあり、リンパ節でろ過された老廃物は、腎臓を通って膀胱に溜まり、尿として排出されます。
リンパ節は体中に600~800もあり、中でも鎖骨、首、ワキの下、足の付け根、ヒザ裏は、5大リンパ節と呼ばれます。
1-2. リンパを流すのは筋肉
血液は心臓のポンプ作用によって、脈拍が落ち着いている安静時でも、1分足らずで体を1周します。
しかし、リンパには心臓のようなポンプがないので、1分間に2~3センチしか進みません。
自力ではほとんど流れないリンパを少しずつ流しているのは、筋肉の動きです。
呼吸や運動によって筋肉が動くと、リンパ管を圧迫してリンパを流すのです。
ですから、筋肉を動かさないと、リンパの流れは滞ってしまいます。
筋肉は動かさないと硬くなります。
顔は体のほかの部分に比べて筋肉を動かすことが少ないので、むくみやすい部位なのです。
顔の筋肉が硬くなってしまうと、顔の歪みやたるみの原因にもなります。
むくみの解消には、日々のマッサージでリンパを流してやるとともに、顔の筋肉に刺激を与えて活性化することが重要なのです。
1-3. リンパの流れが滞る要因
リンパの流れが悪くなると、まず、むくみが現れて、放置すれば肌荒れ、肥満や冷え症、肩こりといった体調不良へと発展します。
とくに顔はむくみが現れやすい部位ですから、顔のむくみは体からの重要なサインと考えなければいけません。
肌のハリや弾力がなくなると、皮下組織の圧が弱まって水分や老廃物が溜まり、リンパの処理能力を超えてしまうので、肌を健康な状態に保つことも、むくみの解消には大切な要素。
また、運動不足で筋肉が硬くなったり、冷え性によって血行不良を起こしたりすると、リンパの流れも悪くなります。
さらに、不規則な生活やストレス過多、体を締め付ける衣類なども、リンパの流れを悪くする要因です。
2. 顔のむくみを解消する2つのアプローチ
顔のリンパには、皮膚表面に近い「表層リンパ」と、筋肉の下などを流れる「深層リンパ」があります。
通常、リンパマッサージと呼ばれているものは、表層のリンパにアプローチするもので、リンパの流れに沿って肌をやさしくマッサージします。
深層リンパに溜まったリンパを流すためには、顔の筋肉を刺激してほぐし、ポンプとしての機能を高める必要があります。
表層リンパマッサージだけでも顔のむくみを解消する効果はありますが、むくみが重度の場合や永続的に解消していきたい場合には、深層リンパへのアプローチが欠かせません。
状況に応じて、2つのアプローチを試してください。
2-1. 表層リンパマッサージ
表層リンパマッサージは、朝晩のスキンケア時にできる3~5分間のベーシックマッサージです。
皮膚のすぐ下にある表層のリンパをやさしく流してやり、寝起きでむくんだフェイスライン、目元のクマ、肌のくすみなどを改善して、顔を引き締めます。
まずリンパの出口を開いてやり、流れに沿って老廃物を含んだ水分を押し流します。
叩いたり強くこすったりすると、肌にダメージを与えるので気を付けましょう。
2-1-1. リンパの出口を開くストレッチ
リンパ節には老廃物が溜まりますから、まずはリンパ節の詰まりを解消するストレッチを行います。
① 鎖骨
鎖骨のリンパ節は、もっとも大きな出口になります。
親指以外の4本の指を反対側の鎖骨の内側(ノド側)に当て、鎖骨に沿って中央部、外側と3カ所圧迫します。
左右、3回ずつ繰り返します。
② ワキ
左ワキの下に右手の4本の指を当てて、やわらかく揉みほぐしたら、反対側も同様に。
次に、左ワキの下に右手の4本の指を当てたままワキを閉じ、左のヒジを内側に入れてリンパ節に深く入るようにして3秒キープ、反対側も同様に。
③ 首
左手を左肩、右手のひらを左側頭部に当てて、首を右に倒して筋肉を伸ばしたまま3秒キープ、反対側も同様に2回ずつ。
次に、後頭部に両手を当てて頭を前方に倒し、首の後ろを伸ばして3秒キープ、さらに指先で鎖骨の内側を押しながら頭を後方に倒して3秒キープ。
最後に、首の後ろを右手でつかみ、4本の指先に力を入れながら右横に滑らせるストレッチを3回、反対側も同様に行います。
④ 肩
右手を左肩に当てて、肩甲骨を回すイメージで左ヒジを大きく3回回し、反対側も同様に。
次に、首から肩にかけての筋肉(僧帽筋)のツボ3カ所を人差し指と中指で押します。
2-1-2. クリームをつける
マッサージをする前に、クリームや美容液を肌にのせて、滑りをよくします。
真珠大の量のクリームを手にとったら、額、両頬、鼻頭、アゴ、首の左右にのせます。
4本の指の腹で首の下から上へ、額と頬は内から外へ、小鼻とアゴは小さな円を描いてのばし、最後に目元を軽く押さえてなじませます。
2-1-3. フェイスライン
両手の親指をアゴの下に当てたら、残りの指をそろえて口角に密着させ、耳の下まで3回滑らせます。
親指も耳の後ろまで滑らせます。
2-1-4. 頬
① 親指をアゴの下に当てて、残りの指をそろえて小鼻の外側に密着させ、耳まで3回滑らせます。
親指も耳の後ろまで滑らせます。
② 親指をアゴの下に当てて、残りの指をそろえて両目の下に密着させ、こめかみまで3回滑らせます。
親指も耳の後ろまで滑らせます。
③ 両手のひらを顔の両側に密着させて、指先でこめかみを軽く圧迫したら、耳の前方を通って首筋から鎖骨まで2回滑らせます。
2-1-5. Tゾーン
① 両方の中指を小鼻の外側に当てたら、指先を密着させたまま目頭までゆっくり上げ、上に向かって軽く圧迫、これを2回繰り返します。
② 両手の4本の指を眼球の上に当て、目頭と眉のラインから額の上まで引き上げ、手のひら全体で額を覆います。
③ 額を覆っている両手のひらを左右のこめかみに向けてゆっくり滑らせ、こめかみまできたら一呼吸、これを2回繰り返します。
④ こめかみにある両手のひらを耳の前から首筋を通り、鎖骨まで2回滑らせます。
2-1-6. 目元
① 両手の親指をアゴの下に当てたら、中指を目頭に置いて薬指をそえ、軽く3秒押し、中指で目の下のツボを押しながら目尻に移動させます。
② 両手の中指と薬指を目尻に当てたまま、上下にジグザグに動かしながらこめかみまで移動させます。
③ 両方のこめかみで、目尻を引き上げて3秒キープします。
④ こめかみにある両手のひらを耳の前から首筋を通り、鎖骨まで2回滑らせます。
2-1-7. 目の上
① 両手の中指と薬指を眉頭に当て、真上に押し上げて3秒キープ、眉尻まで4カ所を同様に押し上げます。
② 両手の人差し指と中指の腹を眉頭に当て、上まぶたを軽く押すようにしてこめかみまで2回滑らせます。
③ 両方のこめかみで、目尻を引き上げて3秒キープします。
④ こめかみにある両手のひらを耳の前から首筋を通り、鎖骨まで2回滑らせます。
2-2. 深層リンパマッサージ
顔の目や口、鼻などを動かす筋肉を表情筋といい、約30種類あり、人間の複雑な表情を作り出します。
表情筋をマッサージすることで、深層リンパの流れを改善できます。
深層リンパマッサージもリンパの流れに沿って、①~⑳までこの順番通りに行うと効果的です。
表層リンパマッサージと両方行う場合は、こちらの深層リンパマッサージを行ってから表層リンパにアプローチしましょう。
2-2-1. 表情筋マッサージの準備
まず顔下半分と上半分の筋肉をほぐして、深層リンパが流れやすい状態をつくります。
両手の親指以外の4本の指を鼻の下から口元へと当てて密着させ、歯ぐきを軽く圧迫しながら、左右に大きくゆっくりと10回動かします。
次に目を閉じて、両手の親指以外の4本の指でまぶたを覆い、肌に密着させて軽く圧迫しながら額や眉ごとゆっくり左右に10回動かします。
2-2-2. 鎖骨
① 鎖骨下筋(さこつかきん)
右手の人差し指、中指、薬指を左の鎖骨の内側(ノド側)に当て、鎖骨の下に張りついている鎖骨下筋に沿って、外側に5回押し流します。
反対側も同様に。
リンパの流れを改善するだけでなく、美しい鎖骨をつくる効果もあります。
2-2-3. 首から肩
② 斜角筋(しゃかくきん)
右手の3本の指で、首の左側面を付け根から耳の裏側まで強めにさすり上げます。
斜角筋は、第一肋骨あたりから耳下までつながる筋肉です。
5回繰り返したら、反対側も同様に。
首から肩へのラインを美しくする効果があります。
③ 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
右手の3本の指で、鎖骨の内側から耳の下まで斜めにある胸鎖乳突筋をやや強めにさすり上げます。
5回繰り返したら、反対側も同様に。
首や肩のこりを解消する効果があります。
2-2-4. アゴ
④ 舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)・舌骨下筋群(ぜっこつかきんぐん)
鎖骨の内側から耳ではなく、アゴの輪郭まで真上にさすり上げます。
首の途中にある舌骨までは軽く、舌骨からアゴへは強めに5回さすり上げ、反対側も同様に。
首とアゴのシャープなラインをつくる効果があります。
⑤ 舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)
両手を鼻をはさむ位置に当て、親指を耳下から下アゴの内側に入れ込んで、アゴ先まで強めに5回押し流します。
二重アゴを解消する効果があります。
2-2-5. 頭部と首
⑥ 後頸筋(こうけいきん)
両手の指を首裏にある後頸筋中央部に当てたら、アゴのエラ部分、首の中央部分、首の付け根部分と3つのラインを前へ、各5回強めに引き出します。
頭や首のこりをほぐす効果があります。
⑦ 後頭筋(こうとうきん)
両手の指の腹を後頭部の髪の生え際に当てたら、後頭部の中央部あたりまで、後頭筋を5回さすり上げます。
頭痛を改善する効果があります。
⑧ 側頭筋後部(そくとうきんこうぶ)
両手の指をそろえ、手のひらで耳をふさぐようにして指先を頭皮に押さえ付けたら、耳上まで強く5回押し下げます。
顔全体のたるみやくすみを解消する効果があります。
⑨ 側頭筋前部(そくとうきんぜんぶ)
両手の4本の指を耳の上の側頭筋に押し付けたら、耳の前方まで強めにさすり下ろします。
耳上部から額の両脇まで、3つのラインを5回ずつ行います。
目の周りのシワやたるみに効果があります。
⑩ 前頭筋頭部(ぜんとうきんとうぶ)
両手を頭を抱える位置に置いたら、指の腹を密着させて、額まで5回さすり下ろします。
⑪ 前頭筋額部(ぜんとうきんがくぶ)
左眉の上、髪の生え際に両手の3本の指を当て、眉毛の上まで5回さすり下ろします。
額中央部と右眉の上も同様に5回ずつ。
前頭筋のマッサージは、額のハリを出し、横ジワを防止する効果があります。
2-2-6. 目元と鼻筋
⑫ 皺眉筋(しゅうびきん)
両手の中指と薬指を眉間に当て、やや強めに押してから、眉に沿って両手を眉尻まで5回押し流します。
眉の中央あたりから眉間を渡って左右につながる皺眉筋をほぐすと、眉間の縦ジワが目立たなくなります。
⑬ 上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきん
両手の中指を小鼻に当てたら、そのまま眉頭まで鼻翼筋を5回なで上げます。
鼻筋をキレイにする効果があります。
⑭ 眼輪筋(がんりんきん)
両手の中指を左右の目頭のくぼみに当て、軽く押したら目尻に向けて、目の上部を5回、目の下を5回流します。
眼輪筋がある目の周りは皮膚が薄いので、やさしくマッサージしてください。
目元の小ジワを改善する効果があります。
2-2-7. 頬と口元
⑮ 大・小頬骨筋(だい・しょうきょうこつきん)
両手の3本の指を左右の頬骨に当て、小鼻の下まで斜め中央に、やや強めにさすり下ろしたら、そのまま絞るように押します。
この動作を5回繰り返して、上唇から頬にかけてつながる頬骨筋をほぐします。
頬を引き上げて、ブルドック顔を予防します。
⑯ 笑筋(しょうきん)
両手の中指と薬指を頬骨下のくぼみに当て、上唇の両端まで5回流します。
頬の中央部でやや強く押し、最後は唇をすぼめるくらいまで流してから、やや強く押します。
口角から左右に伸びる笑筋をほぐして、若々しい笑顔をつくります。
⑰ 口角下制筋(こうかくかせいきん)
口角を引き下げるようにすると動く、口角からハの字に伸びる口角下制筋に両手の3本の指を当て、唇に向けてさすり上げます。
最後は唇がもち上がるようにやや強く押し、5回繰り返します。
口元を引き締める効果があります。
2-2-8. フェイスライン
⑱ オトガイ筋
両手の人差し指を下唇中央の下に当ててやや強く押し、そのままアゴの先まで押し流したら、人差し指と親指で両方のフェイスラインをつまむようにしてエラまで流し、やや強めに押します。
この動作を5回繰り返して、唇の下からアゴにかけて伸びるオトガイ筋の周囲にあるリンパを流し、シャープなアゴのラインをつくります。
⑲ 側頭筋(そくとうきん)
両手の3本の指をこめかみ上部の髪の生え際に当て、頬骨の上まで真下にさすり下ろして、最後はやや強めに押します。
この動作を5回繰り返し、顔全体を引き締めます。
⑳ 咬筋(こうきん)
両手の3本の指の腹を小鼻の横に当てたら、頬骨の下に沿って耳の手前まで押し流し、そのままフェイスラインまで真下にさすり下ろします。
口角と、口角の下部分からも同様に流して、最後は耳たぶ裏側のくぼみをやや強く押し、このセットを3回繰り返します。
頬全体を覆う咬筋をほぐして、引き締まった小顔をつくります。
まとめ
深層のリンパマッサージをすると、頭が軽くなって、むくみの原因となっている顔のリンパが流れることを実感できるはずです。
その状態で表層のリンパマッサージを行うと、効果絶大です。
しかし、朝晩、毎回両方のリンパマッサージを行うのは大変ですから、朝は表層マッサージだけを行い、夜は深層から表層へと続けて行うことをおすすめします。
夜のリンパマッサージは、適度な運動をした後に、アロマなどをうまく使ってリラックス空間をつくり、副交感神経の働きを強めて行うと、快眠にもつながって全身のリンパの流れを改善することができます。
【参考資料】
・『肌浄化リンパマッサージ』 ナツメ社 立元智子 2012年
・『顔層筋 深部リンパマッサージ』 青春出版社 中辻正 2013年
・『小顔・美脚を手に入れる ちょいちょいリンパマッサージ』
はまの出版 健康増進研究会 (編) 2007年