部屋が片付いていると気もちいいですよね。
「なぜ片づけるのか?」と聞かれたら、「気持ちいいから」と答える人が多いのではないでしょうか。
部屋が散らかっていても、病気になることや命にかかわることはあまりありません。
でも、気持ちがいいということは、人間が生きていく上でとても大切なことなのです。
いろいろな道具があるべき場所に収まっていれば、見つからなくてイライラすることもありませんし、同じ空間で生活する家族にとっても家が落ち着ける場所になるはずです。
心地よい空間と時間は、ストレスの軽減につながります。
整理収納をキーワードにした片づけコンサルタントの、「こんまり」こと近藤麻理恵さんや、「断捨離」をキーワードにしたやましたひでこさんなど、片付け術の本を出版されている「片付けのプロ」が人気なのは、突き詰めれば誰もが「ストレスの少ない空間で気持ちよく生きたいから」ではないでしょうか。
ところが問題は、「片付けなければいけない」という義務感がストレスになってしまうこと。
片付けが苦手な人は、この義務感で自分を追い込んでしまうのです。
そういう人は、まず気持ちを楽にしてください。
いいじゃないですか、部屋が散らかっていても人に迷惑さえかけなければ。
そうやって1回自分を許してから、もっと気持ちよく生きる方法として、「片付け術」の基本をできることからやってみませんか?
ここでは、生活エリアを6つに分けて、それぞれの空間を心地よくする片付け術のセオリーを紹介します。
目次
1. キッチン
① 冷蔵庫は死角をつくらない
② キッチンツールはワンアイテムひとつで
③ 食器は好きなものだけを
2. リビング
④ 心地よさをもたらす少しの飾りと緑
⑤ 道具の置き場を決めて収納に余裕を
⑥ 子どものエリアは臨機応変に
3. エントランス
⑦ カギ置き場と荷物置き場をつくる
⑧ シューズボックスは靴で埋めない
4. クローゼット
⑨ 保管サービスを活用
⑩ 衣類はケースに立てて収納
5. 洗面所とトイレ
⑪ 個人用スペースをつくる
⑫ 洗面台下はカゴと段差収納で工夫
⑬ トイレ掃除は流せるもので
6. デスクまわり
⑭ ベースは何も置かない状態
⑮ 便利グッズで段差をつくる
1. キッチン
キッチンは、家の中でもっとも道具や小物が多い場所。
そして、段取りのよさが求められる場所でもあります。
どれだけ料理をするかということが、心地よいキッチンの在り方を決める要素になるでしょう。
料理が上手い人は、調理と片付けを同時進行させて、何種類かの料理が出来上がったときにはキッチンがきれいになっているものです。
清潔で楽に使えて、料理が楽しくできるキッチンの片付け術として、3つのセオリーを紹介しましょう。
① 冷蔵庫は死角をつくらない
食材をストックする冷蔵庫は、見えない場所をつくらないのが、片付け術のコツ。
そこで大切なのが、食材を定位置で管理することです。
おススメなのは、上中下段に分けての消費期限による定位置管理。
下段は冷蔵庫でもっとも出し入れしやすい場所ですから、毎日使うものや早く消費したいものの定位置にします。
もともと、生鮮食品はチルドルーム、牛乳などの飲料はドアポケットといようになつくりになっていますよね。
中段は数日中に消費するようなビンものや、消費期限を気にしておいたほうがよいものを入れて、並べ方の工夫で消費期限がすぐ見えるようにしておきましょう。
上段は数カ月間で消費するような保存がきくものを入れて、たまにすべてのものを確認するようにします。
② キッチンツールはワンアイテムひとつで
調理器具や調味料は、ワンアイテムひとつが基本。
フライパンを例にとると、一般家庭であっても料理好きな人は、大きさや深さが違うものをいくつか使うという人がいるでしょう。
でも、片付け上手は、26cmくらいの大き目サイズで深いフライパンを使いまわします。
フタを活用して、炒め物からシチュー類、焼き魚までこれひとつで対応。
調味料は、小さなサイズのものをラックや見分けられるボックスに収納して、こまめに補充するのがポイント。
調理の際に油が飛ばない場所で、移動しなくても手に取りやすいところが調味料のホットスポットです。
③ 食器は好きなものだけを
食器は頂き物や記念品などで、いらぬストックを増やしがち。
どうしてもとっておかなければいけないもの以外は、思い切って処分しましょう。
リサイクルショップなどで処分できるものはと良いのですが、食器を捨てるというのは、はばかられますよね。
ですから、思いつきで買うのはやめて、少々値がはっても本当に気に入ったものだけを買うようにしましょう。
好きなものに囲まれて生活することは、心地よい生活の大事な要素。
自分が好きな食器を厳選して、必要なアイテムだけをそろえたいものです。
2. リビング
リビングは、住居の中で寝室以外ではもっとも長い時間を過ごすところですから、くつろげる空間づくりを基本とした片付け術が大事です。
人によってリビングルームで行うことには違いがあります。
テレビを観る人、パソコンを使う人、本を読む人、音楽を聴く人、お酒を飲む人と、様々な過ごし方がありますが、どれも心地よく過ごすポイントは、モノを置きすぎないこと。
片付け上手は、必要で好きなモノだけを効率よく配置します。
④ 心地よさをもたらす少しの飾りと緑
好きなモノに囲まれて暮らしたいという思いが強いために、装飾が過ぎてしまうケースは多いですよね。
コレクションを楽しむことは、心地よい生活を送る方法のひとつですから、ひとり暮らしであったら好きなモノで埋め尽くされたリビングというのもいいでしょう。
しかし、家族や同居人がいる場合には、何をするにも心地よい空間が大事なのですから、「シンプル イズ ベスト」が片付け術の基本。
厳選したお気に入りの飾りをセンスよく配置したいものです。
緑のある生活も心地よさには大事。
小さな観葉植物や花瓶しか置けない場合には、鏡の前に置いて奥行きを出すのが裏技です。
⑤ 道具の置き場を決めて収納に余裕を
生活空間すべてにいえることですが、とくにリビングは、道具の置き場所を決めて使いやすくし、使っていないときでもスッキリ収納できるように片付けたいものです。
ここでおススメしたい片付け術は、リモコン置き場。
リモコン類は住所不定だと、使うたびに探したり、移動したりしなければいけなくなるので、居場所のそばに置き場所を確保して、使用頻度の高いものはすぐに手が届くようにします。
リビングの収納は、生活に寄り添った片付け術がポイント。
棚でもダッシュボードでもテーブル下でも、収納スペースは飽和状態にしないことが大事です。
何かを置きたいとき、スマートにさっと収納できるスペースを常に確保しておきましょう。
⑥ 子どものエリアは臨機応変に
生活に寄り添ったリビングの片付け術は、生活の変化とともに暮らしながら変えていくことも大切です。
小さな子どもがいる家庭では、おもちゃをはじめとする子どものアイテムが散らかります。
でも、一般的な道具と違って子どものアイテムはあまり神経質に定位置をきめないことが、片付け術のテクニック。
子どもの成長とともにアイテムはどんどん変化していきますから、臨機応変に片付けられるスペースだけ確保して、子どもが自由に過ごせる空間を意識しましょう。
3. エントランス
「玄関」というのは、日本家屋の概念で段差があって人を迎えられるようなスペースです。
マンションなどのエントランスは、だいたいドアを開ければシューズボックスがあって、「タタキ」と呼ばれる靴を脱ぐ場所からすぐに床。
こうしたあまり広くないエントランスの片付け術は、タタキに靴を何足も置かないことはもちろんとして、荷物置き場とシューズボックスの使い方がポイントになります。
⑦ カギ置き場と荷物置き場をつくる
エントランスにぜひ設定したいのが、家族全員のカギの置き場。
これは、片付け術だけでなく、カギをなくさない秘訣でもあります。
シューズボックスの上などにフックをつくって掛けるようにしてもいいですし、外出する動線上のハンガーなどにあってもいいのですが、見た目にキレイじゃないと思う場合は、トレーを用意して定位置に置く習慣をつくりましょう。
エントランスで常に確保しておきたいスペースが、荷物置き場。
何かをもって外出する際、靴を履く間に置いておくスペース、帰って来たときにちょっと荷物を置くスペース、これは便利な位置になるので、つい荷物などを置きっぱなしにしてしまいがちですが、一時置き場と決めて常に空いているようにします。
⑧ シューズボックスは靴で埋めない
シューズボックスは、靴を収納する場所ですが、靴以外のモノをうまく収納するのが片付け術のテクニック。
そのためには、衣服と同じように必要以上の靴を所有しないことが前提です。
工具類や掃除道具など、ちょっと外にもって出て使うもので、できれは家の中までもち込みたくないようなもの、靴を脱がずに出し入れしたいものなどは、シューズボックスが最適な収納場所。
大きさに応じて、有効に使いたい収納です。
4. クローゼット
かつてはどこの家にも箪笥がありました。
しかし今は、箪笥のような家具を置かない家庭が増えています。
そうかといって、どこの家にもウォークインクローゼットがあるわけではありませんから、押し入れやハンガースタンドを活用する片付け術が必要とされているのです。
服を掛けられるスペースの効率化と、衣装ボックスの使い方がポイントです。
⑨ 保管サービスを活用
必要以上の服をもたないことも、片付け術の基本。
箪笥を置かなくなった生活では、押し入れをハンガースペースにしたり、ハンガースタンドを置いて服を管理している人が多くなっています。
どちらにしても、限られたハンガースペースを有効に使う術が求められますよね。
春と秋の衣替えの時期に、使わないものはクリーニング保管に半年間預けるという人が増えています。
指定された箱や袋に衣類を入れて、だいたい10着当たり月数百円で保管してくれる業者も増えているので、1軍のコートやスーツはクリーニング保管、2軍の衣類は安価な保管サービスと分けて預けるのがおススメ。
実家などに保管スぺ―スがある人は、利用させてもらうのもいいでしょう。
⑩ 衣類はケースに立てて収納
チェストの引き出しや衣装ケースに衣類を入れるときには、重ねないで折ったものを縦に並べて収納しましょう。
重ねてしまうと、下にあるものが見えなくなるからです。
使用頻度の高低と奥行きをリンクさせるのも片付け術のテクニック。
よく使うものを手前に、使用頻度の低いものは奥に収納するのです。
普通は、使っているうちに自然とそうなるのですが、最初からそうやって収納すれば並べ替える手間が省けます。
5. 洗面所とトイレ
洗面所やトイレは、朝起きてすぐに使いますから、ここが気持ちよいスペースになっていれば、気分良く1日のスタートを切ることができます。
⑪ 個人用スペースをつくる
洗面台のポケットや収納スペースは、上手く振り分けて、使う人全員の専用スペースを設定しましょう。
洗面所で使うアイテムは、性別や年齢、趣味などによって好みが変わります。
ちょっと気持ちのムリをしてまで同じものを使ってスペース効率を上げることは、おススメしません。
やはり朝は自分の好きなものを使って、気持ちよく準備をしたいもの。
歯ブラシも電動がいいという人、手磨きに限るという人もいるでしょうし、歯磨き粉だって好きなものを使えばいいのです。
少々モノが増えても、使う人全員が個人用スペースを工夫して、心地よい朝を過ごせるようにしましょう。
⑫ 洗面台下はカゴと段差収納で工夫
洗面台下のスペースは、引き出しタイプのものと観音開きのものがあります。
引き出しタイプのものは、プラスチック製のカゴなどを使って仕切り、観音開きのものはコの字型の小型ラックなどで段差をつくって収納を工夫します。
ここはストックヤードも兼ねるところですが、やはり個人用スペースを割り振るのもいいですね。
半分は、全員が使うもののストックヤードとして、残り半分を個人用に割り振るのもいいでしょう。
ストックを最小限に抑えることも、片付け術の基本ですね。
⑬ トイレ掃除は流せるもので
最近は、使って流せるトイレ掃除アイテムが増えました。
昔ながらのブラシと洗剤で丹念に掃除するのもいいでしょうが、片付け上手としては、こうした省スペースアイテムを使わない手はありません。
トイレ掃除のブラシをテレビで宣伝している、「スクラビングバブル 流せるトイレブラシ」に換えたら、今までトイレ掃除をしなかった夫が面白がって掃除をするようになった、という話もあります。
家族でうまく掃除や片付けをシェアするのも、片付け術の裏技。
使い慣れた掃除用具もいいものですが、新しいアイテムを試してみると思わぬメリットがあるかもしれませんね。
6. デスクまわり
家の中に仕事場がある人も、会社で仕事をする人も、デスクまわりが片付いている人は、仕事に対する姿勢が前向きに感じられますよね。
「デスクを見れば、その人間がどのくらい仕事ができるかわかる」と考えている上司もいるでしょう。
周囲からは繁雑に見えても、その人間にとっては使いやすい状況だというケースもあるでしょうが、それでは片付け上手になれません。
自分も気持ちよく、そして周囲の人たちも気持ちよく仕事ができるデスクの片付け術を2つだけ紹介しましょう。
⑭ ベースは何も置かない状態
デスク上は、パソコン類以外は何もないという状態を基本形態として維持しましょう。
書類も文房具も、使うものをデスクの引き出しや周囲の収納から出して使い、使い終わったらもとに戻すのです。
おススメなのは、デスクの天板下の大きな引き出しに収納スペースを常に空けておき、作業を中断したり、一時的に預かったりした書類などを収納する方法。
できる限り紙のデータは保存せずに、電子データとして保存することも大事ですね。
スッキリとして気もちのよいデスクは、白紙に好きなことを書くように、自由な発想もわいてくるはず。
その時期にお気に入りの小物や、アートなどの小さなものをひとつだけデスクに置くのは、ちょっとした遊び心やセンスが感じられていいでしょう。
⑮ 便利グッズで段差をつくる
デスクまわりで使うものは、文房具や収納ラックなどの便利グッズが、次々と登場しています。
こうしたグッズに目を通していると、トレンドを知ることができて、ビジネス会話のネタにもなります。
おススメしたいのは、パソコンの液晶モニターの下に置いて高さを調節する机上ラック。
パソコンのモニターは、正しい姿勢で座って、目の高さと同じか少しだけ下によく見る部分がくるようにすると、疲労が抑えられて血流の悪化を防ぐことができます。
以前は、目線を下に向けて作業したほうがよいといわれていたので、机上に直接モニターを置いて、低過ぎる位置で使っている人が多いのです。
首や肩のコリで悩んでいるという人は、ぜひ実践してみてください。
ラックの下は、収納スペースとして使えますが、片付け上手はここを一時収納スペースとして空けておきます。
まとめ
片付け術の目的は、「心地よい空間で気もちよく過ごすため」ということがわかっていただけましたか。
ここで紹介した基本的なセオリーは、すべてちょっとした工夫でできることばかり。
試してみる価値はありますよ。
片付るのが面倒くさいのだけど、気持ちよく暮らしたいので片付け術を身につけたいという人は、まず、なんでも身のまわりのモノを仲間同士、一緒にまとめることからはじめてみましょう。
それだけでも、気持ちよいことが実感できるはず。
そしてもっと気持ちよく暮らしたいと思ったら、ここで紹介したセオリーを試してみたらいかがでしょう。
【参考資料】
・『片づける力をつける』 橋本裕子 著 ダイヤモンド社 2019年
・『片付けたくなる部屋づくり』 本多さおり 著 ワニブックス 2013年
・『片付けたくなる部屋づくり2』 本多さおり 著 ワニブックス 2014年