鏡を見て、はじめて目尻に小ジワを見つけたときのショックは忘れないですよね?
「なんとか改善したい」「これ以上増やしたくない」と思うはずです。
しかし、シワのリカバリーというのは、セルフケアではなかなかうまくいかないものです。
シワは、目尻などにできる浅いものと、深く刻まれたものの2種類に大別されます。
深く刻まれてしまったシワは、表情によってできるシワが、表情を変えても戻らなくなってしまったもので、肌が老化で、ハリや弾力を失ってしまうことが原因です。
一般的に「小ジワ」と呼ばれる浅いシワは、肌の乾燥が原因で、若くてもできることがあり、早めの対処でリカバリーすることが可能です。
ここでは、小ジワの原因である肌乾燥のメカニズムと、小ジワをリカバリーするために必要とされる「刺激」「保湿」「再生」という3つのキーワードを解説します。
目次
1. 小ジワの原因は肌の乾燥
1-1. 肌は3層構造でできている
1-2. 肌の水分は体内から出るもの
1-3. 3つの保水物質
1-4. 乾燥のメカニズム
2. 小ジワをリカバリーする3つのキーワード
2-1. 「刺激」
2-1-1. クレンジングと洗顔
2-1-2. ファンデーション
2-1-3. 日焼け止め
2-2. 「保湿」
2-2-1. 配合されるセラミドの種類
2-2-2. 正しい保湿ケアの方法
2-3. 「再生」
2-3-1. ターンオーバーのメカニズム
2-3-2. 再生力を高めるケア
1. 小ジワの原因は肌の乾燥
顔の小ジワがどのようにしてできるのか知るためには、肌がどのようにして乾燥するのか知る必要があります。
そして、もし、小ジワが表情によってできるシワと重なっていれば、深く刻まれたシワへと発展してしまう可能性もありますから、消えなくなってしまう深いシワについても、知っておくべきです。
まずは、肌の基本構造から解説していきましょう。
1-1. 肌は3層構造でできている
「皮膚」は、人体で最大の臓器です。
体全体を覆っている皮膚は、体重の6分の1ほどの重さがあるといわれます。
この臓器は「皮膚」または「肌」と、ひと言で表されますが、皮膚とされる部位は、3層で構成されています。
一番外側が厚さ0.2程度ミリしかない「表皮」、その内側が厚さ2ミリ程度の「真皮」、一番内側は大部分が皮下脂肪の「皮下組織」です。
表皮のもっとも外側は「角層」と呼ばれ、わずか0.02ミリ程度しかない厚さの中で角質細胞が15~20層もレンガのように重なっています。
また、そのすき間を細胞間脂質が埋めて強固な壁をつくり、外部からの異物侵入や紫外線を防ぎ、さらに体内の水分の蒸発を抑えて肌のうるおいを保つ役割を果たしています。
これが「角層のバリア」と呼ばれる機能で、この機能のおかげで人間は細菌やウィルスから体を守り、干からびないで生きていることができるのです。
真皮は、70%を占めるタンパク質のコラーゲン線維がネットワーク状に広がり、そのところどころをエラスチン線維が補強して、ジェル状のヒアルロン酸がすき間を埋めています。
真皮は肌に弾力とハリを与えており、深いシワは、加齢によってコラーゲンが減少したり劣化したりすることが原因です。
コラーゲンを増やすことはとても難しいので、真皮に原因があるシワは、セルフケアで消すことはできません。
一番内側の皮下組織には、皮下脂肪のほかに血管やリンパ管が通っており、真皮に栄養を届けたり、老廃物を排出したりする役目があります。
また、クッションのように衝撃をやわらげたり、体温を維持する働きもあります。
1-2. 肌の水分は体内から出るもの
「肌のうるおい」とは、肌が含んでいる水分のことを意味します。
この水分がどこからくるものかというと、外部から補給されるものではなく、体内から出るものです。
人間の体は皮膚を通じて、常に体内の水分が蒸発しています。
普通に生活している人が1日に食事や飲料水で体内に摂り入れる水分の量は2.2リットル程度、体内でつくられる「代謝水」が0.3リットル程度といわれます。
体から排泄する水分の量が、約2.5リットルであることから、同じ量の水分を摂取して体液のバランスを保っているのです。
排泄する水分のうち、0.9リットルは、尿や発汗などのように自覚されない水分の発散で「不感蒸散」と呼ばれるものです。
このうち3分の2は皮膚から蒸発する水分。
1日に約0.6リットルもの水分が、皮膚から蒸発していることになります。
肌の水分は、この蒸発しようとする水分をつなぎとめているものなのです。
1-3. 3つの保水物質
体内から蒸発しようとする水分をつなぎとめている物質が、いくつかあります。
真皮では、ヒアルロン酸がその水分を捕まえてジェル状になっています。
肌のうるおいにかかわる表皮では、外界ギリギリのところで、3つの物質が水分をつなぎとめています。
ひとつは、毛穴にある皮脂腺から分泌される皮脂が肌の表面に広がった「皮脂膜」。
もうひとつは、角質細胞の中にあってアミノ酸を主とする「天然保湿因子(NMF)」。
そしてもっとも重要な役割を果たしているのが、細胞間脂質の40%を占める「セラミド」です。
保水量の割合は、皮脂膜が2?3%、天然保湿因子が17?18%程度で、セラミドが80%を担っています。
セラミドは、何層にも水の分子を挟み込む構造で、体内から蒸発しようとする水分を捕まえており、湿度が0%になってもこの水分は蒸発しません。
1-4. 乾燥のメカニズム
健康な肌は、角層の約20%を水分が占めています。
肌の水分が少なくなっている「乾燥」状態は、セラミドなどの保水物質が減ってしまい、角層の水分量が20%をきっている状態です。
肌を乾燥させるもっとも大きな原因は、刺激物質が肌につくことや、肌をこすることで、角質が傷ついて細胞間脂質が流出してしまうことです。
角層は「強固なバリア」と言えども、ラップ1枚くらいの厚さしかないデリケートな部位ですから、簡単に傷ついてしまうのです。
もうひとつの大きな原因は、加齢や新陳代謝の乱れによって、セラミドが減少してしまうことです。
加齢による皮脂量の減少も、乾燥に拍車をかけます。
目元は、もともと皮脂腺が少ない部位ですから乾燥しやすく、メイクやメイク落としで刺激物質を多くつけるので、小ジワができる条件がそろっているのです。
乾燥肌の改善については「3つの保湿成分で乾燥肌対策-乾燥のしくみを理解して保湿ケア」をぜひご覧ください。
2. 小ジワをリカバリーする3つのキーワード
真皮に原因がある深く刻まれてしまったシワは難しくても、角層の乾燥が原因の小ジワは、セルフケアでリカバリーすることが可能です。
小ジワのリカバリーと予防を実践するキーワードは3つ。
「刺激」
「保湿」
「再生」
これらのキーワードを掘り下げて、具体的なケア方法を解説していきましょう。
2-1. 「刺激」
肌に過剰な刺激を与えてしまう要因は、間違ったスキンケアによるものがほとんどです。
肌によかれと思って毎日行っているスキンケアが、小ジワの原因になっているとしたら、怖いことだと思いませんか?
化粧品には、スキンケア化粧品とメイク化粧品がありますが、いずれも多かれ少なかれ、肌に刺激を与える添加物を含んでいると考えましょう。
ですから、なにもつけずに肌が本来もっている機能を落とさないようにする「肌断食」を提唱する皮膚科医もいます。
しかし、多くの女性にとって肌断食は現実的ではありません。
やはり、外出する前にはメイクを欠かさず、デイリースキンケアを続けて美しくいたいと思う人が圧倒的に多いのです。
ここでは、デイリースキンケアで肌に大きな負担をかけている、3つの要素を見直してみましょう。
2-1-1. クレンジングと洗顔
スキンケアでもっとも肌へのダメージが大きいのは、クレンジングです。
クレンジングの目的は、油溶性のメイクを肌から浮かせて洗い流すことです。
ですから、油分を含んだメイクをしないか、洗顔だけで落とせるようなライトメイクで済ませれば、クレンジングをしなくてもいいわけです。
クレンジングが肌を傷める要因は、クレンジング剤に界面活性剤が多く使われているからです。
界面活性剤とは、本来は混ざることのない水と油をなじませたり、粒子を均一に分散させた液体をつくったりするために用いられる化学合成物です。
こうした効果を得るために、ほとんどの化粧品や洗剤に界面活性剤が配合されており、中でもクレンジング剤の含有量が多いのです。
ですから、クレンジング剤を肌の上の長時間のせておいたり、肌につけてこすったりすると、角層は簡単に破壊されてしまい、細胞間脂質は流出してしまいます。
洗顔料もクレンジング剤も、洗浄力が強ければ強いほど界面活性剤の効果も強いので、それだけ角層へのダメージが大きくなります。
比較的刺激が少ないのは、洗い流すクリームタイプか、乳化したジェルタイプですが、目元に使用するポイントメイクリムーバーは、強力な洗浄力をもっています。
小ジワのケアを考えると、目元のメイク落としは肌用の精製オリーブオイルで行い、絶対に肌をこすらないようにしましょう。
クレンジングの選び方については「クレンジングの選び方-3つのベース成分を理解して使い分ける」でも詳しくご紹介しています。
2-1-2. ファンデーション
肌にのせると伸びがよくて使いやすいリキッドタイプのファンデーションも、界面活性剤が多く使われているものが多いので、注意が必要です。
化粧下地を塗り、その上にリキッドファンデーションを重ねてベースメイクを終えるというスタイルが定番とされた時期もありましたが、最近はできるだけアイテムを減らしたシンプルスキンケアで、肌のトラブルを回避しようとする考え方が主流です。
最近注目されているのが、下地も兼ねて使えるパウダータイプのファンデーションです。
カバー力がリキッドタイプより落ちると思われがちですが、パウダータイプは顔料の粒子の数が多いので、実はリキッドタイプよりもUVカット効果が高いのです。
しかも、クレンジングをせずに洗顔だけで落とせるものが多いので、小ジワ対策には最適です。
2-1-3. 日焼け止め
紫外線対策は、1年365日を通じて肌に必要なケアです。
ところが、日焼け止めもまた、肌への刺激が強いアイテムです。
日焼け止めには、紫外線を吸収する「紫外線吸収剤」と、紫外線を反射する「紫外線散乱剤」のどちらかが使われており、これらの添加物が肌に大きなダメージを与えます。
吸収剤は肌荒れやかぶれの原因になりやすいので、比較的、肌へのダメージが小さいのは散乱剤といわれますが、散乱剤も肌が乾燥しやすいという問題を抱えています。
どちらの成分も毎日使用すれば肌の負担が蓄積していきますから、日焼け止めは、スポーツやレジャーなどで紫外線を長時間浴びるときだけ効果的に使い、日常は、日陰や日傘、帽子などをうまく活用して、できるだけ日焼け止めに頼らない紫外線対策を心がけましょう。
2-2. 「保湿」
肌の乾燥を予防する保湿ケアは、保湿成分が配合された美容液が中心になります。
化粧品に配合される保湿成分には、水分を挟み込むセラミド以外にも、内部に水分を抱え込むヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンなど真皮系の成分や、単に水分を吸着する天然保湿因子(NMF)、PG(プロピレングリコール)、グリセリンなどがあります。
水分を吸着する成分は、補助的な効果しか期待できませんから、これだけではダメで、しっかりとした保湿力を得るためには、やはりセラミドが必要になります。
乾燥が軽度の場合は真皮系の成分でも効果はありますが、これらはクリームなど油分の多いアイテムに配合されることが多いので、顔全体に使うことには適していません。
2-2-1. 配合されるセラミドの種類
化粧品に配合されるセラミドには、たくさんの種類があります。
保湿効果が高いのは、「セラミド2」「セラミド3」のように番号がついた「ヒト型セラミド」です。
「セラミド2」や「セラミド3」などの人型セラミドは合成系であり、天然系の動物由来や植物由来のものよりも保湿効果が高く、ハイグレードな保湿美容液にはヒト型セラミドが数種類使われているものが多くなっています。
2-2-2. 正しい保湿ケアの方法
美容皮膚科学の進歩によって、スキンケアの常識が変わっています。
保湿ケアの考え方も、非常にシンプルなものへと変わってきました。
まず、長らく日本人女性に蔓延していた「化粧水神話」が崩れ去りました。
世界でも日本人は化粧水をよく使うことで知られており、何があっても化粧水だけは毎日朝晩欠かさないという人が多かったのです。
中には、外出中も化粧水のスプレーを携帯して、時間さえあればシュッシュッと顔に吹き付けている人もいました。
しかし、肌の水分は、体内から蒸発する水分をセラミドなどがつなぎとめているものだということと、外からいくら水分をつけても、バリアがあって浸透することはないということが実証され、化粧水は肌に水分を与えないということが、今は常識になっています。
使い過ぎれば、肌の水分まで蒸発させてしまい、かえって乾燥を招きます。
ほとんどが水分である化粧水は保湿のために必須ではなく、使うのであれば、角層の表面を柔らかくして保湿美容液の成分が浸透しやすいようにすることが目的です。
また、たっぷりの化粧水をつけた後にクリームや乳液の油分でフタをするという考え方も、すでに過去のもの。
余計な油分は、細胞間脂質のバランスを崩したり、毛穴トラブルの原因となります。
セラミドが高濃度で配合された美容液を顔全体に使うのが保湿ケアの基本で、乾燥しやすい目元には、真皮系の保湿成分が配合された目元美容液を併用、乾燥してしまったときにはうすくクリームを塗ってケアします。
2-3. 「再生」
肌は、再生する機能をもっています。
とくに消耗が激しい表皮が再生するシステムは、肌の乾燥をはじめとする多くのトラブルに関与しています。
2-3-1. ターンオーバーのメカニズム
表皮のもっとも真皮に近い部分は、「基底層」と呼ばれ、ここではケラチノサイトという細胞が細胞分裂を繰り返しています。
ケラチノサイトは2つに分裂すると、ひとつは基底層に残り、ひとつは表皮細胞となって表皮の外側へと押し出されていきます。
表皮細胞は、角がゴツゴツした形で重なる「有棘層」から、押し出される力によって扁平したものが重なる「顆粒層」へと移行します。
やがて、表紙細胞は死に、核を失った角質細胞となって平べったく圧縮され、何層にも重なって「角層」を形成するのです。
角質細胞はバリアとしての役割を終えると、肌からはがれ落ちてなくなります。
この、基底層で表皮細胞が生まれてから、角質となって剥離するまでのサイクルを「ターンオーバー」または「角化」と呼ぶのです。
ターンオーバーは、20代の若い肌で約30日程度、加齢によって代謝が落ちるので、40代になると倍の日数がかかることも珍しくありません。
2-3-2. 再生力を高めるケア
ターンオーバーは、加齢や体調不良で長くなり、角質が厚くなってカサカサになるなど、乾燥の原因になりますが、逆に短くなっても、未成熟の表皮細胞が表面に出てきてしまうので、うるおいが持続しない荒れた肌になってしまいます。
ターンオーバーを正常化して肌の再生力を高めるためには、ここで紹介してきた保湿ケアや紫外線対策をしっかり行って、肌を健康な状態に戻すことが大事です。
さらに、体の外側からだけでなく、体の内側からのケアも必要。
小ジワのリカバリーを考えるのであれば、細胞の材料になるタンパク質や、タンパク質の合成に必要なビタミンやミネラルをしっかり摂取する食習慣が不可欠です。
細胞を酸化させて肌の老化を早める、脂質や糖質の摂り過ぎにはくれぐれも注意しましょう。
まとめ
肌の乾燥を防ぐためには、「1日に〇〇以上の水を飲む」という健康法が語られることがありますが、水を必要以上に多く飲んでも肌のうるおいにつながることはありません。
ノドが渇くのが、水分補給のサイン。
ノドが渇かないのに、大量の水を飲んでも尿として排出されるだけです。
腎臓の機能には限界がありますから、いらぬ負担をかけることは避けるべきです。
また、長時間の入浴も気をつけなければいけません。
入浴は肌をやわらかくして、うるおいやすい状態にすることができますが、高温のお湯に長くつかると、角層を傷めて細胞間脂質や天然保湿因子を流出させてしまいます。
小ジワは、ここで解説してきたように、肌の乾燥を改善するケアでリカバリーが可能です。
しかし、デイリースキンケアと生活習慣で予防することができれば、それにこしたことはありません。
目元のしわが気になる方は、「1日3分!簡単ケアで「目元のしわ」を改善する5つの方法」の記事もぜひご覧ください。
【参考資料】
・『素肌美人をつくる トータルスキンケアBOOK』 幻冬舎 千堂 純子 2015年
・『いちばん正しいスキンケアの教科書 吉木メソッドで美肌になる!』 西東社 吉木伸子 2014年