「飲む点滴」「飲む美容液」として大人気の甘酒。
「酒」という名前がついていると、乳幼児に与えられるのか、運転する前に飲んでも大丈夫なのか、そのアルコール分が気になりますね。
甘酒には、米麹を発酵させて作るものと、日本酒の酒かすから作るものがあり、そのどちらも美容や健康に効果があります。
(興味のある方は「甘酒の効能|麹・酒かすどちらも美容に効果あり?!」をご覧ください)
健康に良いなら、子どもも含めた家族全員で飲みたいですよね。自分も子どもの頃から飲んでいた記憶があるという人も多いのではないでしょうか。
「酒」の文字がついているのだから、アルコールが含まれているの?含まれているならどれくらい?
この記事では、甘酒を安心して飲めるように、麹・酒かすそれぞれの甘酒とアルコールの関係についてご紹介していきますね。
目次
1. 甘酒とアルコールの関係
1-1. 麹甘酒はノンアルコール
1-2. 酒かす甘酒はアルコールを含みます
1-3. 市販の甘酒はどちらもあります
2. 酒かす甘酒とアルコールの関係
2-1. 酒かすのできるまで
2-2. 一般的な酒かす甘酒に含まれるアルコールは
2-3. 酒かすの奈良漬けで酒気帯び運転
2-4. 酒かす甘酒のアルコールを飛ばす方法
(コラム)道路交通法におけるアルコール
3. 麹甘酒とアルコールの関係
3-1. 麹甘酒は日本酒のもと?
3-2. 麹甘酒+日本酒でどぶろく風!?
3-3. 美味しい日本酒ができる理由
4. アルコールとは関係のない甘酒の効果
4-1. 麹甘酒の美容効果
4-2. 麹甘酒の健康効果
4-3. 酒かす甘酒の美容効果
4-4. 酒かす甘酒の健康効果
1. 甘酒とアルコールの関係
1-1. 麹甘酒はノンアルコール
米麹で作った甘酒は、「甘酒」と「酒」の文字は入っていますが、アルコール分はゼロです。
お米に加水し加熱したもの(ごはんやおかゆ)に米麹を混ぜて発酵させたものが甘酒ですが、これは日本酒を作る際の元になるものと同様のものです。
米麹でつくる甘酒では、米麹由来のアミラーゼが米のでんぷんを糖化するために甘くなりますが、この甘みを酒母の酵母がアルコールに分解しますので、酵母をまったく加えていない甘酒の段階ではアルコール分が作られていないということになります。
1-2. 酒かす甘酒はアルコールを含みます
一方、酒かすを使ってつくる甘酒は、アルコール分を含みます。
酒かすは、日本酒をつくるときにできるもろみを搾り取ったかすなので、日本酒の中に含まれるアルコールが残っているのです。
残っているアルコールは酒粕の種類によっても違いますが、日本食品栄養成分表によると「酒かす」のアルコールは100g中8.2g、約8%となっています。
圧搾機でしっかりと搾り取ったあとの酒かすは「板粕」と呼ばれアルコールを含む水分が搾り取られているためあまりアルコールは含まれませんが、大吟醸の中でも圧をかけずに袋吊りして水分を自然に滴らせて作る日本酒の酒かすには風味や栄養素と共にかなりのアルコール分が残ります。
1-3. 市販の甘酒はどちらもあります
市販の甘酒は、麹から作られたノンアルコールの甘酒と、酒かすから作られたアルコールを含む甘酒の両方があります。
アルコールを含むといっても、清涼飲料水として販売されている甘酒の場合、アルコール分は1%未満となりますので、大人が飲んで運転しても大丈夫です。 それでも、アルコールに弱い人や乳幼児、妊婦や授乳している人には注意が必要ですから、市販の甘酒の場合はノンアルコールのものを選ぶと良いでしょう。
2. 酒かす甘酒とアルコールの関係
2-1. 酒かすのできるまで
酒かすはその名の通り、日本酒を作る際に搾り取られた「かす」です。 「かす」というと栄養も何も残っていなさそうな印象ですが、お米を発酵させて作る日本酒の搾りかすである酒かすには様々な栄養素が含まれています。
酒かすができるまでをご紹介しましょう。
【精米】
日本酒のためにつくられたお米を精米します。ごはんとして食べるときと違い、もったいないくらいお米を削って、本当の中心部分だけを酒造りには使います。
【蒸米・放冷】
お米を洗って蒸し、広げて冷まします。
【製麹(せいぎく)】
蒸したお米の一部で米麹を作ります。
【仕込み】
蒸したお米に、米麹と酒母、水を混ぜて仕込みます。酒母とは、酵母を大量に培養したもので、乳酸をたくさん含んだ粥状のものです。 お米は麹からつくられるアミラーゼによって糖化され、その糖分を酒母の酵母が分解してアルコールを作ります。
【もろみになる】
仕込んだお酒は発酵が進んで、もろみになります。
【圧搾】
もろみを絞ります。ここで日本酒と酒かすに分かれます。 このように、日本酒の元であるもろみを絞っただけのものが酒かすなので、アルコールが残ることは一目瞭然ですね。
酒かす甘酒については「酒かすの甘酒の作り方|美容・健康に効く和の栄養ドリンク」の記事で作りかたも詳しくご紹介しています。
2-2. 一般的な酒かす甘酒に含まれるアルコールは
一般的な酒かすからつくられる甘酒には、どのくらいのアルコールが含まれるのでしょうか。
酒かすのアルコール分は商品によって違いはありますが、だいたい8%前後のアルコールが含まれています。
自宅で作る甘酒は家庭によって酒かすの濃度が違いますので、ここでは平均的な甘酒で計算してみましょう。
標準的な酒かすの甘酒(酒粕15g、上白糖10g、水75g)の栄養成分
(文部科学省「食品成分データベース」より)
- エネルギー…72kcal
- タンパク質…2.2g
- 脂質…0.2g
- 炭水化物…13.5g
- アルコール…1.2g
酒かすの甘酒湯飲み一杯100㏄あたりで約1.2gのアルコールですので、およそ1.2%のアルコール分を含むことになります。
ただしこれは、加熱していない場合ですので、酒かすや砂糖を溶かすために加熱した場合はこれよりアルコール分は低くなります。
市販の甘酒は清涼飲料水として販売できる1%未満のアルコール分ですので、自宅で作った場合も加熱によってアルコール分が蒸発し、市販のものと同じように1%以下にはなりそうですね。
先ほどお話したように、酒かすを使う量はご家庭によって違いますので、酒かすの濃度を高くして作っているご家庭ではアルコール分も高くなることを覚えておいてくださいね。
2-3. 酒かすの奈良漬けで酒気帯び運転?
酒かすの甘酒ではありませんが、酒かすを使った「粕汁」や「奈良漬け」を食べて運転したことで酒気帯び運転になったと主張する人は時々いるようです。
しかし、実際には酒かすを使った粕汁は甘酒同様もしくはそれ以上に加熱しているため、ほとんどアルコール分は蒸発しているはずですし、奈良漬けが最も高い3%アルコールだとしても体重50キロの人なら1.3㎏もの奈良漬けを食べないと呼気1リットルあたり0.15mgを超えることはないということなので、粕汁や粕漬けで酒気帯び運転となることはなさそうです。
少しだけお酒を飲んだ人や、まだお酒が身体に残っているうちに運転した人が、警察官の取り調べによって検出された呼気中のアルコール量が低い場合、言い訳に使っていることが多いようですね。
2-4. 酒かす甘酒のアルコールを飛ばす方法
酒かすで作る甘酒のアルコールを飛ばす方法は、鍋でぐらぐらと煮立てることです。
アルコールは70℃で気化しますから、水を加えた甘酒を煮たてた状態の100℃で混ぜながら数分煮立てることでほとんどのアルコール分は蒸発します。
ただし、完全にすべて蒸発するということはないようなので、乳幼児や大人でもアルコールに極端に弱い人は酒粕の甘酒を飲むことはやめた方が良いですね。
アルコールが気になるといえば、乳幼児に飲ませるときのほか、運転する大人が飲んだときですよね。
道路交通法におけるアルコールについて少々お話しましょう。
道路交通法に違反するのは「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」になります。
(抜粋)運転免許学科試験問題集より
http://menkyo-web.com/yakudatsu/p02.html
酒酔い運転に該当する基準は「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」であるかどうかです。具体的な検査としては、直線の上を歩かせてまっすぐ歩けるかどうか、視覚や運動・感覚機能が正常かどうか、言語などから判断・認知能力の低下がないかなどで調べられます。つまり、客観的にみてお酒で酔っているかどうか、で判断されます。
酒酔い運転は車やバイクに限らず自転車などの軽車両も違反、罰則の対象となります。飲酒運転の罰則は2007年(平成19年)以降強化され、現在は酒酔い運転には5年以下の懲役又は100万円以下の罰金、という非常に重い刑事罰が科せられます。 また、違反点数に関しても2009年(平成21年)に改正が行われ35点となりました。
酒気帯び運転は血中アルコール濃度の量によって該当するかどうか判断されます。酒酔い運転との判断基準が違うので、運転者の体質次第では酒気帯び運転の基準に満たなくても酒酔い運転となる場合もあります。
酒気帯び運転は酒酔い運転同様、全ての車両において違反となりますが、自転車などの軽車両については罰則がありません。酒気帯び運転の罰則も酒酔い運転同様強化され、現在は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。違反点数に関しては、血中アルコール濃度の量によって以下のように定められています。
- 0.15mg未満・・・罰金・違反点数なし(道路交通法の違反には該当します)
- 0.15mg以上0.25mg未満・・・13点
- 0.25mg以上・・・25点 (抜粋ここまで)
0.15mg未満といったほんの少しのアルコールでも、罰金や違反点数はなくても酒気帯び運転として道路交通法の違反に該当するのですね。
アルコールが含まれるウイスキーが入ったチョコレート菓子「ウイスキーボンボン」も、甘酒同様アルコール度数はあまり高くないものが多いのですが、食べながら運転したところ取り締まりに逢い、口の中にアルコールが残った状態で呼気の検査をすると0.15mg以上の酒気帯び運転になることがあるようです。
この場合、水を飲んでから呼気を計るとアルコール分が下がるのだそうです。
どちらにしても、アルコールが含まれているとわかっているものを食べながら運転するのはやめた方が良いですね。
3. 麹甘酒とアルコールの関係
3-1. 麹甘酒は日本酒のもと?
麹甘酒は、基本的には日本酒の元と同じです。
日本酒は、加水、加熱した米に米麹を加えて発酵させたときにできる糖を酵母が分解してアルコールを作るというしくみでできています。
酒母と呼ばれる酵母を加えないので、麹で作る甘酒はアルコール分解されず、アルコール分を一切含みません。
糖がアルコールに分解される前の状態なので、とても甘いのですね。しかしその甘みはお菓子作りに使えるほど強いのにとても優しく、罪悪感を覚えない自然な甘味です。
精製された砂糖の味に慣れている私たちにとって、身体が喜ぶ甘味はこんな味なのかと実感できる甘味ですね。
麹甘酒はご自宅の炊飯器で作ることもできます。気になる方は「炊飯器を使った麹甘酒の作り方|そのメリットとコツとは?」の記事をご覧ください。
3-2. 麹甘酒+日本酒でどぶろく風!?
お酒が好きな人は、アルコールを含まない麹甘酒よりも日本酒の香りが濃く漂う酒かす甘酒の方が好きな人が多いようです。
そんな方には、麹甘酒と日本酒のカクテルをおすすめします。
市販されている麹甘酒ではなく、自宅で発酵させた麹甘酒は加熱処理していないのでたくさんの酵素が活きています。
これを日本酒で割ることで、インスタントの濁り酒、どぶろく風のお酒になります。
麹と活きた酵素などが体内で活性化するため、どぶろく同様に酔いが早く回ることもあるようですので気を付けてくださいね。
3-3. 美味しい日本酒ができる理由
米、米麹、水で作られる麹甘酒が日本酒のもとであることはわかりました。ということは、美味しい日本酒は、美味しい米と水からできているということになりますね。
日本酒は
「普通酒」
「本醸造酒」
「純米酒」
「吟醸酒」
「純米吟醸酒」
「大吟醸酒」
「純米大吟醸酒」
という種類に分けられます。
このうち「普通種」には純米酒と同じ量のお米から2倍の量の日本酒を作るために「醸造アルコール」「酸味料」「糖類」が加えられています。
「本醸造酒」には「酸味料」「糖類」は加えられないものの、「醸造アルコール」は加えられています。
「純米酒」から下のお酒はすべて、米と水を原料につくられている本当の日本酒ということになります。
特に、吟醸酒はとてもフルーティな香りで女性にも抵抗なく飲める美味しい日本酒です。 なぜ、米と水からできているのにフルーツの香りがするのか、不思議ですよね。
吟醸酒は、酒用の米をその60%以下になるまで削ります。米の本当の中心部だけを使うのですね。お米に含まれるたんぱく質は、米の外側にあります。ということは、吟醸酒のお米にはたんぱく質が少なく、酵母にとっての栄養分が足りないということ。
栄養の足りない酵母は、なんと自ら栄養を作り出すのだそうです。そしてこの成分は、りんごの香り成分と同じ、華やかな香りを持っているのです。
たんぱく質は雑味にもなるので、雑味が少ないスッキリとした味に、フルーティなりんごの香りがするのが吟醸酒なのですね。
4. アルコールとは関係のない甘酒の効果
4-1. 麹甘酒の美容効果
- 豊富なビタミンB群でデトックス効果がある
- オリゴ糖・食物繊維が便秘解消に働き肌の調子が良くなる
- コウジ酸がメラニンの生成を抑制し肌の美白効果が期待できる
- 便秘解消によりポッコリお腹が改善される
4-2. 麹甘酒の健康効果
- オリゴ糖・食物繊維が腸内環境を整える
- アルギニンなどのアミノ酸は基礎代謝を上げる作用がある
- 多糖類の甘味なのでゆっくり吸収され脂肪として蓄積されにくい
- ゆっくり吸収されるブドウ糖が脳に栄養を送り続ける
- 9種の必須アミノ酸全てを含むので生き生きと過ごせる
- エネルギー源になる3種のアミノ酸で疲れにくくスタミナが持続する
詳しくは「甘酒の効能|麹・酒かすどちらも美容に効果あり!?」をご覧ください
4-3. 酒かす甘酒の美容効果
【酒かす甘酒の美容効果】
- 酒かすに含まれるアルブチンと遊離リノール酸は、肌のシミの元となるメラニンを生成する際に作用するチロシナーゼ(メラニン生成酵素)の働きを妨げるため、美白効果がある
- 発酵による生産物α‐エチルグリコシドとα‐グリコシルグリセロール、この他にも、遊離アミノ酸、有機酸、グリセロールなど肌の保湿にかかわる成分が多く含まれる
4-4. 酒かす甘酒の健康効果
【酒粕の甘酒の健康効果】
- 不溶性食物繊維が多く含まれるため、酒かす甘酒を毎日飲むことで便秘改善効果がある
- 酒かすに含まれるレジスタントプロテインは、コレステロール値の低下に役立つ
- 便の排出がスムーズになり、便秘が解消された大腸は正常な働きを取り戻し、腸内環境が整っていく
- 酒かすには活性酸素の除去(抗酸化作用)を助けるペプチドが存在し、これが肝臓を強化すると考えられている
- グルタミン、システイン、グリシンの3つのアミノ酸がつながってできたグルタチオンというペプチドが肝臓に集まって強い抗酸化力を発揮する
- アンギオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害するペプチドが酒かす内に6種類発見され血圧を下げる効果があるとわかった
- 酒かすに含まれるS-アデノシルメチオニンという成分がノンレム睡眠を増加させ、睡眠の質を向上させる
- 睡眠の改善により、ストレスの軽減、免疫力アップが期待できる
詳しくはこちらの記事をどうぞ
「甘酒の効能|麹・酒かすどちらも美容に効果あり!?」
5. (まとめ)酒かす甘酒のアルコールに注意
甘酒のアルコールについてご紹介してまいりました。
麹を発酵させて作る甘酒は、アルコール分がゼロなので乳幼児やお年寄り、妊婦や授乳中の女性、これから運転する人にも安心なのですね。
一方、酒かす甘酒にはアルコールが含まれることがわかりました。
ごく一般的な分量で、煮立てて作った場合には計算上、市販の「清涼飲料水」に該当する1%未満のアルコール分になるようですが、酒かすをつかった甘酒は家庭の好みによって濃さはまちまちなので、場合によっては飲んだ後運転すると酒気帯び運転になる可能性があります。
酒かす自体が8%ものアルコールを含むということは、酒かすを少し食べてみるとよくわかります。日本酒の香りが鼻に抜けるのと同時に、アルコールを摂取したときのように頬がぽっと温かくなるのを感じるはずです。
いくら甘酒が身体に良いといっても、酒かすの甘酒の場合は乳幼児には与えないように注意が必要ですね。
しかし、酒かすの甘酒は酒好きの大人にとっては甘みの強い麹甘酒より飲みやすいということもありそうです。酒かすの甘酒の場合、甘味は砂糖を加えるために自分好みに調整できるからです。
また、吟醸酒や純米吟醸酒、純米大吟醸酒の酒かすはとても風味が良くて本当に美味しいので酒好きの方におすすめです。
お酒の好きな大人が「運転をする予定がない」「お酒を飲んでも問題ない」という状況では酒かすの甘酒を思う存分楽しめますね。
(参考書籍)
「ゆる粕レシピ」栗山真由美(池田書店)
「こんなに使える酒粕のレシピ」栗山真由美(家の光協会)
「酒粕のパワーでやせる!健康になる!」(学研)
「夏でもおいしい麹甘酒で健康になる」山下くに子(小学館)
「食べる甘酒で病気が治る!楽々やせる!」マキノ出版ムック
『壮快』特別編集
「魔法の糀レシピ」浅利妙峰(講談社)