「子育てと仕事の両立は」という言葉の後に続く言葉は、「難しい」「できるのか」というようなマイナスイメージの言葉が多いように感じます。仕事をしながら子育てをして、家事もして、ご飯も作って…それだけ、世間では子育てと仕事の両方をこなすことは難しいと捉えられているようです。
「子育てと仕事」で悩むのは男性ではなくほとんどが女性ですから、母親が仕事を持つことは難しい、ということになります。
今の日本で、育児をしながら働くことは本当に難しいのでしょうか。
ワーキングマザーを取り巻く環境から、どうしたら子育てと仕事の両方を充実させることができるかを考えました。女性の中には、仕事にやりがいを見出していて、子育てのために仕事を犠牲にすることをストレスと感じる人もいれば、逆に、仕事をすることで子育てがおろそかになることをストレスと感じる人がいます。もちろん、どちらも大切に思っていて、上手にバランスを取りたいという女性もいるはずです。
ワーキングマザーにも、タイプがあると思いますので、文中にどんなタイプのワーキングマザー向けの記事かを記しています。タイプ別の情報を得て、少しでも子育てと仕事を、自分らしく充実させて欲しいと願っています。
【仕事寄り】
仕事大好き、辞めるなんて考えたこともないという「バリバリキャリアウーマン」
【どちらも】
仕事も子育てもどちらも大切に考えたい正社員や公務員、OL
【育児寄り】
どちらかといえば家庭や子育てが大切と考える派遣やパート主婦
目次
1.「すでに」子育てと仕事を頑張っている女性に向けて
1-1.職場で見られる悩みに対する具体的対策
1-2.すでに出産していてこれから仕事に復帰する女性が知っておくべきこと
1-3.職場復帰前の産休中にしておくこと
2.「これから」子育てと仕事の両立について考える女性に向けて
2-1.これから結婚、出産する女性が知っておくべきこと
2-2.仕事と子育てのバランスが取れるかどうかの判断ポイント
2-3.家庭でみられる悩みに対する具体的対策
3.「子供がいても仕事はせざるを得ない」という女性に向けて
3-1.シングルマザーが仕事と子育てのバランスを取るためには
3-1-1. 子育て支援について
3-1-2. 職業の選択肢について
3-2.家計のために共働きが必要な女性が知っておくべきこと
4.ワーキングマザーをとりまく現状
4-1. 学歴の差が出産後就業率の差に表れているのは1960年代生まれ以前のこと
4-2. 出産前の就業状況に加えて必要なのは何か
4-3. 国際的に見た日本女性の出産後就業状況の特徴
5. 仕事と子育ての両立に疲れてしまったら?
5-1. 自分で働きたいと言ったのだから
5-2. 仕事と子育てに限界を感じる前に
5-3. 5年後、10年後のことを考えてみる
1.「すでに」子育てと仕事を頑張っている女性に向けて
産休、もしくは育児休暇を終えて仕事に復帰した女性や、出産のために仕事を辞めたけれど現在は仕事をしている女性など、今すでに子育てと仕事のどちらも頑張っているという女性に役立つ情報を集めました。
後半は、すでに出産していて、これから仕事に復帰する女性、働くママになる女性に必要な情報です。
ワーキングマザーにも、タイプがあると思いますので、文中にどんなタイプのワーキングマザー向けの記事かを記しています。自分はどのタイプかあてはめて、その部分だけ読んでいくといいと思います。
【仕事寄り】
仕事大好き、辞めるなんて考えたこともないという「バリバリキャリアウーマン」
【どちらも】
仕事も子育てもどちらも大切に考えたい正社員や公務員、OL
【育児寄り】
どちらかといえば家庭や子育てが大切と考える派遣やパート主婦
1-1.職場で多く見られる悩みに対する具体的対策
職場でのワーキングマザーの悩みを、具体的にどう解決するかのノウハウです。
働くお母さんの大きな悩みはふたつです。
ひとつは、保育園で子どもが病気をしたり熱を出したりするとすぐに職場に電話が来て、早退してお迎えに行かなければならないこと。
もうひとつは、保育園や学童保育にはお迎えの時間が決まっていて、お迎えを延長できないこともあるということ。
どちらも、仕事を突然中断し、こどものために時間をつくらなくてはならないということですね。会社での仕事はいろいろな人とつながっていますから、自分だけが困るのではなく、職場に迷惑をかけてしまうことが大きな悩みです。
“ノマドワーカーになれるような手配”
【仕事寄り】【どちらも】向け
職場に自分がいなくて困ることがあったとき、電話やメールでやりとりできるように工夫しておくと、少しでも上司や同僚、部下にかかる迷惑を減らせるはずです。
それには、若い人たちの理想の働き方とも言われている「ノマドワーカー」を目指すことです。ノマドとは遊牧民のことで、ノマドワーカーは、パソコンやタブレットを持ち歩き、どこにいても仕事ができる状態を言います。
病気のときでも、ふだんの定時でも、迎えに行く時間はどうしても必要ですから、その部分には職場の人に理解してもらうしかありません。
しかし、家に着いたら、よほどのことがない限り、電話にはでるようにします。手が離せなかったときも、折り返し電話します。「家に帰ったら家事や育児があるから仕事はムリです!」という姿勢では職場の人間関係も悪くなってしまうでしょう。
とくに、【仕事寄り】タイプは、仕事を中途半端にすることが最もストレスを感じるはずです。「仕事したいのに、子どものために我慢している」なんていう気持ちになってしまっては、子どもにとっても迷惑です。【仕事寄り】は、仕事をちゃんとした方が子どもにも優しくできるでしょうから、家でも遠慮なく仕事させてもらいましょう。
【どちらも】も、正社員としての責任は果たしたいタイプではないでしょうか。だとしたら、同じように準備を進めておくことで、急な早退やお休みでも対応できます。
- 自分が今現在している仕事に必要な資料で、コピーできるものはコピーして家にも置いておく。
- 自分のデスクや資料棚は職場にいるときにできる限りわかりやすく整理しておき、誰が見てもわかるようにファイルには名前をつけておく。
- 急な早退のときには、デスクとファイル棚の写真を撮ってから帰る(翌日、急に欠勤することになった場合、その写真を見ながら「右から3番目の黄色いファイルにあります」などと指示できる)。
- メールはGmailなどの無料ウェブメールサービスを利用し、家でもメールの確認、返信ができるようにする(大切な仕事メールは会社のパソコンに転送保存)。
- Dropboxというオンラインストレージサービスを利用し、職場のパソコンと自宅のパソコンにMy Dropboxをつくることで、自宅で資料を訂正すると職場の資料も訂正される(会社によっては禁止されているので確認が必要)。
- 社外担当者には、自分宛の電話は職場ではなくて携帯にかけてもらうようお願いしておく。
- 上司、同僚、部下に自分のデスクやファイル棚は自由に見ていいこと、電話に出られるときにはでるので遠慮なくかけていいことなどを常に伝えておく。
業種、職種によってはなかなか思うようにノマドワーカーになれないかもしれません。それでも、退社後に自分に訊きたいことがあったら電話してください、というひとことは必要です。できる限り職場に迷惑をかけたくないという姿勢をみせるためにも、できることだけでもいいのでやってみてください。
“とにかく良好な人間関係を”
【育児寄り】向け
時間給で働くワーキングマザーは、職場の人間関係を大切にしましょう。時間給で普段は残業もなくピッタリの時間に帰ることができても、職種によってはシフトを組んだあとに早退や欠勤をするのが難しい場合があります。飲食店や小売店など、小さな規模の職場では、ひとりが急に休むと他の人がフォローしきれなくなることがあるからです。
そんなとき、普段から自分もシフトを替われるときは替わってあげる、後輩にも優しく指導するなど、人間関係を良くしておくことで、自分が困ったときに周囲が助けてくれるようになります。いきなりお願いして「替わってくれない」「誰も助けてくれない」と言う前に、まずは自分から相手に与えられるものを与え始めましょう。
1-2.すでに出産していてこれから仕事に復帰する女性が知っておくべきこと
産休や育休をとり、これから仕事に復帰する女性に必要な情報を集めました。
厚生労働省は、派遣やパート勤務でも条件を満たせば産休、育休がとれると強調していますが、実際には前例がないとなかなか難しいことのようです。
だとしたら、産休、育休を取らせてもらえることはとてもありがたいことですね。産休育休は当然の権利ではありますが、職場の上司、同僚、部下には感謝の気持ちを持って復帰しましょう。また、出産後、これから職探しをするという女性に向けての情報もワーキングマザーのタイプ別にまとめてあります。
1-3.職場復帰前の産休中にしておくこと
【仕事寄り】【どちらも】【育児より】すべての女性向け
出産手当金や育児休業給付金などは、会社に申請するので産休に入る前に書類をもらっておき、産休中に記入して産後会社に提出できるようにしておきます。
赤ちゃんを預ける保育園も、地方自治体に問い合わせて決めておきましょう。先に記入できる書類があるようならもらって、記入しておきます。保育園に入園してから必要になるものも、揃えておきます。昼寝用のふとんや、細々とした袋物など、何が必要か問い合わせておきます。赤ちゃんに必要になりそうなものは、ちょっと早いと思っても購入しておくと良いでしょう。
好きなデザインのものなど選んでゆっくりショッピングできる時間があるのも今のうちです。赤ちゃんがいて仕事をはじめると、ネットショッピングの時間すらなくなりますから、ネットショッピングであれこれ選ぶのも産休のうちです!ほ乳瓶のあとのマグマグや、赤ちゃん用スプーンや食器、ちょっと大きめの洋服(季節に注意!)などの他、置き場所があるなら、特売のときにはサイズが上の紙おむつなども。
【仕事寄り】向け
保育園で赤ちゃんが熱を出したり病気をしたりしたときに、預かってくれる人を確保しておきます。自分の親や夫の親にお願いする予定でいても、実際に赤ちゃんを預かる大変さから親との関係がぎくしゃくしてしまうことや、親も病気をする可能性があることなど考え、病児保育についても調べておきましょう。
病児保育施設は、インターネットで探せるほか、各地方自治体で行っている場合もあります。病院などに併設されていて、インフルエンザなどの感染症でも預かってもらえる施設もあります。事前登録必要な場合が多いので、問い合わせておきましょう。
また、派遣で病児保育をしてくれるシステムもあります。保育園のお迎えや、病院に連れて行ってもらえるなどのサービスがあると安心です。NPO法人などが運営している場合が多く、こちらも事前登録が必要ですので、問い合わせておきます。
【どちらも】向け
公務員など、産休をとった先輩が身近にいる場合は、その先輩と個人的にメールで相談などできるようにしておくと良いでしょう。職場はあくまで、仕事をするところです。子どもが欲しくても授からない女性もいるはずですから、赤ちゃんの話や育児と仕事の両立などの相談をするときには、個人的に。経験のある先輩なら、ひがんだり妬んだりせず、親身になってアドバイスをもらえるでしょう。
【育児より】向け
これまでフルタイムで働いてきたのを、産後はパートタイムに変える、また、派遣やパート、アルバイトで産休をとったなどの女性でも、これからも働くとなれば協力者が必要です。普段は、特別なことがなければ時間通りに仕事を終えられるはずですから、それほど心配しなくてもいいでしょう。
やはり問題は、子どもの急な発熱などの病気です。いくらパート、アルバイト、派遣だからと言って、仕事のシフトがある日に急に休んでは職場の人たちに迷惑をかけてしまい、働きにくい職場になってしまいます。自分の親や夫の親、近くにそうした頼れる人がいない場合は、ママ友などに数時間赤ちゃんを預かってもらえるかどうか思い切って尋ねてみましょう。
身近な人に頼るのはストレスになるという人は、病児保育施設を調べて、登録しておくのも良いでしょう。自分がいちばん働きやすい方法をみつけるのも、産休中ですね。
2.「これから」子育てと仕事の両立について考える女性に向けて
まだ結婚していない、あるいは結婚したけれど子供をつくる予定はまだない、など、これから子育てと仕事の両立について考えている女性に知って置いて欲しいことをまとめました。
2-1.これから結婚、出産する女性が知っておくべきこと
女性の場合、結婚生活をすると決めたら、人生の半分は家族と折り合いをつけながら暮らしていくことになります。もちろん結婚生活には良いこと、素敵な経験もたくさんありますし、感動することも多いのですが、我慢したり、調整したりとある意味自分の思い通りにはいかないこともたくさんあります。
その上で自分がいちばん大切にしたいことは何なのかを早いうちから意識して生きるのと、ただ目の前のことだけぼんやり考えて生きるのでは、人生の充実度、満足度は大きく違ってしまうはずです。
2-2.仕事と子育てのバランスが取れるかどうかの判断ポイント
今の仕事を続けて、出産育児と仕事の両立ができるかどうかを考えてみましょう。自分がどのタイプのワーキングマザーになりたいかによって、判断の基準は違ってきます。
【仕事寄り】向け
結婚して、子供を産んでも迷いなく今の仕事を続けたいという女性は、今の職場に産休、育休を活用してその後もバリバリ働いているワーキングマザーがどのくらいいるかを調べてみましょう。厚生労働省は必死で「産休、育休は遠慮なくとりましょう」というキャンペーンをしていますが、実際日本では「前例がない」ことをするのにはとてつもないエネルギーが必要な場合が多いです。
慣れない育児をしながら、心おきなく仕事をするとき、さらにプラスして「前例がないことをする」のには覚悟が必要です。ワーキングマザーがほとんどいないような職場なら、妊娠前に総務や人事部に質問して、反応を確かめてみると良いでしょう。『前例はないけれど、是非産休育休をとって頑張って欲しい』という会社なのか『前例のないことをされるのは困る』という雰囲気を出す会社なのかがわかるはずです。
問題は『前例がないことをされるのは困る』という態度の会社です。ここでは、自分の性格が判断基準になると思います。正当な権利があると主張でき、これからワーキングマザーになるかもしれない後輩女性のために、自分が前例になると言える正義感の強いタイプの女性は、厚生労働省のHPを見せるなどして説得すべきです。
『これまで一生懸命会社のために働いてきた自分にはその権利がある』という毅然とした態度を取れば、会社も動かざるを得ないでしょう。そこまでしてしまうと、産休育休明けに自分が仕事をしづらい、人間関係の悩みをつくりたくないというタイプの女性なら、今のキャリアを活かして、妊娠前にワーキングマザーがたくさんいる職場への転職を考えた方が良いでしょう。
【どちらも】向け
今正社員として働いているなら、やはりまわりにワーキングマザーがいるかどうかを調べてください。いない場合には、産休、育休がとりにくい環境であるということです。女性の労働環境は徐々に改善されていくはずですが、自分の年齢と照らし合わせたとき、自分の会社の環境改善が間に合わないということも考えられます。
ベンチャーの若い会社なら、改善が早く進む可能性もありますが、旧態依然とした会社であれば、あなたが出産する前に環境改善ができるとは限りません。そうした古いタイプの会社で働いていて、結婚、出産後もきちんと正社員として働きたいのなら、ワーキングマザーが生き生き働いている会社をみつけて応募し、転職するべきです。出産後に正社員の働き口をみつけるのは容易ではありません。若く、妊娠や結婚前なら「出産後も働きたいので」と転職しても受け入れてもらえる可能性は高いです。
【育児寄り】向け
厚生労働省のホームページを見てください。「あなたも取れる、産休、育休!」と、パート、派遣、契約社員に向けての解説があります。今の職場にワーキングマザーがいないとしても、こうした権利はあるのです。
なぜ【仕事寄り】【どちらも】というワーキングマザーには「今の職場にワーキングマザーがいなければ転職を」と言うのに、【育児寄り】ワーキングマザーにこうしたページを紹介するかというと、働き方に大きな違いがあるからです。
どちらが良い悪いではなく、正社員のように「自分でなくては」という仕事を任せられ、責任を持って仕事をするという働き方がある一方、時間で区切ってきっちり働くという働き方をする人も社会には必要です。正社員のように、自分がしていた仕事の分、他の人が大変になる、他の人に迷惑をかけるということが少ない分、パート、派遣、契約社員は産休育休をとっても、同僚や先輩、後輩とうまくやっていけることが多いようです。
ワーキングマザーになったあとも、時間で区切られている仕事の方が、子育てと両立しやすいと言えます。男性と女性は脳の作りが違うため、女性は職を転々とすることにストレスを感じやすいと言います。どちらかというと長く同じところで働いて、人間関係は多少のストレスがあっても仕方ないというのが女性に多い考え方です。そうやって、長く同じところで働くことで得られる権利を使うことで、後輩のワーキングマザーが働きやすくなります。
出産後に職探しをするのは思いのほか大変ですから、今働いている職場に、今後産休育休をとることはできるかどうか、率直に尋ねてみると良いでしょう。その上で、どうしてもここでは産休をとりにくい、ワーキングマザーにはなれなさそうだと自分で判断したら、早めに転職しましょう。勤務1年以上経っていないと産休がとれませんから、出産予定を考えて、すぐにでも転職することをお勧めします。
2-3.家庭で多く見られる悩みに対する具体的対策
ワーキングマザーのいる家庭では、専業主婦がいる家庭よりも様々な問題が起こります。それは家族にとって悪いことばかりではありません。家族がお互いに協力する心が育ちますし、お金を稼いでくれる親への感謝の気持ちも育つでしょう。その上、家事を手伝う子供は将来自分の生活で困ることも少ないはずです。それでも、そうとばかりは言っていられないこともたくさんあります。
祖父母が近くにいないために頼れない人ができる対策
急に頼れる人として確保したい、子どもの祖父母が近くに住んでいないというワーキングマザーは、前もって準備をしておくことが必要です。急に子どもを預かって欲しいことになったとき、優先順位をつけて「ここがダメならあそこ、それもダメならこの人」と言えるくらい、準備をしておけば万が一のときにどうにかなります。
“地域の子育てサポートにどんなものがあるか調べて、登録”
- ファミリーサポートなどの名称で、子供を預かってくれる家庭がある
- シルバー人材で保育も引き受けてくれるか確認する
- 病児保育のサービスがあるかどうか確認する
“民間の保育サービスを調べて、登録”
- ネットで調べて近くのベビーシッター会社や、保育サービスをしているNPO法人などを見つけて登録しておく
- 依頼の際の条件や金額も確認しておくこと
“近所にできるだけ頼れる人をつくっておく”
- できるだけ地域の行事には参加しておくと、知り合いができる
- 子供が好きそうな人なら、万が一のとき子供を半日程度でも預かってもらえるか訊いておく
- ママ友の母親など、仕事をしていない子供好きはけっこう探せばいるものなので、声かけをしてみる
このような対策をとって働くことが自分にとって大きなストレスになるというのなら、仕事を辞めて今の時期は育児に専念するという選択肢もあります。母親がストレスまみれで不機嫌な家庭は子どもにとって良いはずがありません。
しかし、仕事をすることに意義がある、家事よりも仕事をしていた方がやり甲斐があるなど、自分はこうしたサービスを利用してでも仕事を続けたいというタイプの女性は、是非罪悪感を持たずに生き生きと働いて欲しいと思います。
3.「子供がいても仕事はせざるを得ない」という女性に向けて
前向きな気持ちで「子育て中も仕事は続けたい」という女性がいる一方で、仕事をしないわけにはいかないというワーキングマザーも多く存在します。
3-1.シングルマザーが仕事と子育てのバランスを取るためには
シングルマザーとして家計を担っている女性が知っておくと良いことをまとめました。
3-1-1. 子育て支援について
シングルマザーの就業については、行政が、子育て両立支援事業にかなり力を入れてくれています。
各地方自治体の「児童福祉課」に相談に行くと良いでしょう。「今はパートだけれど、いずれ正社員になりたい」「日中はどうしても育児がしたいので夜間に正社員として働きたい」など自分の希望を伝えて、どんな方法があるか一緒に考えてもらえます。また、パソコンのスキルを学べるなど様々な就業支援も行われていますから、情報収集して自分の最も納得のいく働き方をみつけて欲しいと思います。
3-1-2. 職業の選択肢について
保育園のお迎えがあるから、時間ピッタリで仕事を終えることができる、パートやアルバイト、派遣などの時間給の仕事を選ぶことが多いシングルマザーですが、将来を見据えて、仕事のキャリアを積んでいけるような職種を選ぶことも視野に入れてみてください。
「目の前の生活に追われていると、気付いたら子どもはあっという間に高校を卒業していた」というのはシングルマザーの先輩たちの言葉です。子育ては、自分の人生の一部分と考え、自分の人生についても考えていく必要があります。
人付き合いが得意なら、営業職などは比較的募集も多いですし、時間の融通が利く場合もあります。コツコツまじめに働けるタイプならば、製造業なども募集は多い方です。将来的に正社員になれる職場を探しましょう。
3-2.家計のために共働きが必要な女性が知っておくべきこと
本当は専業主婦として育児と家事をしていたいのに、経済的事情で働かなくてはならないというワーキングマザーに向けての情報です。
確定申告について
書類や数字は苦手という女性も多いと思いますが、医療費控除や住宅取得控除など、家庭には確定申告することでその分を収入から控除できることがあります。地方自治体などで税理士による説明会や相談会がありますから、足を運んで知識を得ておくことで、自分の1ヶ月分の収入くらい得することもありますよ。
また、自分が自営業者になってしまうというのも良い方法です。きちんと利益の出る仕事であれば、様々な費用を経費として計上できますから、収入のわりには豊かな生活が送れるというわけです。
身内の援助について
夫や自分の両親などが援助を申し出たときには、遠慮なく受け取っておきましょう。高齢になっている両親は、孫を預かるとなると責任も感じますし、長時間ともなれば疲れてしまうようです。
けれど、買いものなどに一緒に行って孫のものを買ってあげたりすることは好きという人も多いので、ランドセルや制服など大きな出費がありそうなときは素直に甘えたり、普段も買いものに行くときには声をかけて誘ったりしてみましょう。
ただし、お世話になった感謝を忘れず両親が困ったときには助けるという覚悟は必要です。
4.ワーキングマザーをとりまく現状
日本の女性の就業について、現在の段階で公表されているあらゆる調査を分析した「子育てと仕事の社会学」西村純子著から興味深い部分をまとめました。
4-1.学歴の差が出産後就業率の差に表れているのは1960年代生まれ以前のこと
女性の就業について、出産前の仕事を続けているという「就業継続率」を見ると、1960年代生まれの女性は、大学卒の高学歴な女性ほど高くなっています。
一方、1970年代以降に生まれている女性においては、学歴と「就業継続率」が関連しなくなっているのです。こうした分析から何を読み取るかは社会学者それぞれで若干違う意見があるものの、1960年代生まれ以降女性が総じて高学歴になってきたことと、1970年代生まれ以降の女性の場合、就職するときの景気が良くなかったため職を離れることに不安を感じていたということがあげられています。
高学歴だから仕事を続けるという時代から、どんな女性も仕事を続ける時代になって来たことがうかがわれます。
4-2.出産前の就業状況に加えて必要なのは何か
出産前に仕事をしていた女性が、出産後も同じように仕事を続けるために必要なのは、職場の環境です。正規雇用勤務、公官庁勤務などの限定された職場のみで、出産前まで同じ仕事ができ、産休後同じ条件の仕事に戻れるということです。
さらに加えて、夫や周囲の人間の理解とサポート、妻が働いた分の賃金は育児に回ってしまっても大丈夫という経済状況も必要となります。
1960年代及び1970年代生まれの女性に関する調査で明らかになったのは、日本の女性が出産の2年前には80%が就業していたのに対し、出産年には仕事をしていない女性が70%を超えているという現実です。
産休、育休をとれるのは教員などの公務員や、福利厚生の充実した大企業に勤務している特別な人という印象を持っている女性も多いのではないでしょうか。このイメージはまったくその通りで、著者の社会学者西村さんも、「子どもを持つ女性が『働き続けられる職場』と『働き続けられる仕事』の驚くべき限定性」について触れています。
「もし『女性が働きやすくなった』というイメージが流布しているとすれば、それは修正を要する」と述べられています。
4-3.国際的に見た日本女性の出産後就業状況の特徴
日本特有の現象として、女性の就業率が上がっても、幼い子どもを持つ母親の就業率は上がらないというのがあります。また、高学歴の女性が増えても、出産後の就業率にはつながらないというのも日本の特徴です。
世界で多くの社会では、女性の就業率が上がるとそれに伴って子育てをしながら仕事をするワーキングマザーの率も上がっていきます。
例えば、スウェーデン、デンマークでは16歳以下の子どもをもつワーキングマザーは80%、70%となっていますが、2歳以下の子どもをもつワーキングマザーもそれぞれ70%程度あります。ところが日本では、16歳以下の子どもをもつワーキングマザーは60%いるのに対し、2歳以下の子どもをもつワーキングマザーは30%に過ぎません。
5.仕事と子育ての両立に疲れてしまったら?
どのタイプのワーキングマザーも、仕事や子育てに疲れてしまうことはあるでしょう。先輩ママたちはどうやって乗り越えてきたのでしょうか。
5-1.自分で働きたいと言ったのだから
Sさんは、出産後、以前の職場から声がかかり、フリーランスの外注先として会社と契約しました。仕事の量は調整するからということだったので、夫や両親に迷惑をかけず、マイペースで仕事ができると考えていました。
ところが、打ち合わせや確認など、決まった日時に出かけなくてはならないことが多く、はじめは数時間、自分の母親に赤ちゃんを預けて出かけていたのですが、母親に「責任がおもくて疲れる」と訴えられ、保育園に預けることを夫に相談しました。子ども好きな夫は、赤ちゃんのうちから預けるなんて、とひどく反対しました。収入も充分な夫の言葉に、Sさんも悩みました。
「仕事は収入だけのためじゃない。自分のキャリアを中断したくない」と夫に訴え、Sさんは保育園を利用して仕事をしています。辛いとき、疲れたとき、母親にも夫にも、そう言うわけにはいかないと言います。「自分で働きたいと言ったのだから、仕方ないですね。働くママ友とおしゃべりをしてストレス解消につとめています」
仕事と子育ての両立でイライラが溜まってきていると思ったら「子育て中のイライラを解消して育児を楽しむ方法」の記事もぜひ読んでみてくださいね。
5-2.仕事と子育てに限界を感じる前に
出産後自分が働く、働かないということで夫婦関係がぎくしゃくしたり、最悪離婚を考えたりする前に、お互いの妥協点をみつける努力をしましょう。子育てに関する意見が、夫婦で一致するとは限りません。とくに、バリバリ仕事をするタイプの、高収入の夫は、妻には家庭にいてもらって、家族の面倒を見て欲しいと考える男性が多いようです。調査からみても、日本ではどの年代の生まれ年の女性も、夫の収入が高いほど、子育て期には就業していない女性が多いのです。
「正直、家事はあまり好きじゃないんです。子どもは可愛いですけど、ずっと一緒にいたらイライラすることが多いですね。夫は赤ちゃんのうちから預けなくても、と言いましたよ。でも、『家にいたら太ったおばさんになっちゃうよ』と脅したら『キレイなママでいてあげて』ということで、時間給で化粧品販売の仕事に就いています」
こう話すYさんは、年齢よりずっと若く見えました。自分の収入から保育料など差し引くとほとんど残らないのが不満だと言います。けれど、育児だけをしていたら、ストレスで子どもに当たってしまう自分の性格を考えて行動して良かったといいます。保育園の先生を信頼しているので、園との関係も良好で子育ても楽しめるそうです。
「疲れたときは、寝るとか休むよりも私の場合逆に遊びに行くといいみたいなんです。ママ友と、カラオケが多いですね」
5-3.5年後、10年後のことを考えてみる
どうしようもなく疲れたとき、自分や家族の未来、5年後10年後を考えることで気持ちが明るくなることもあるようです。
Kさんは、家計のために仕事に就くことにしたワーキングマザーです。
以前は専業主婦で、一人目の子どもを3年保育の幼稚園に入れたら二人目を作ろうと考えていたのですが、自営業の夫の収入が激減し、子どもは保育園に預けて働いています。
「二人目なんてもう考えられなくなりました。働きたい女性にとっては、育児を半分保育園に任せて働くのも自分らしい生き方と言えるのでしょうが、私にとっては仕事と子育ての両立は苦痛でしかありませんでした。家では子どもが寝てから夫に当たり散らし、ずっとイライラしていましたね」
そんなKさんが職場の先輩に言われたのが「私も本当は、仕事はしたくなかったタイプなのよ。でも、もうすぐ50歳になるけれど、もし今夫がいなくなっても自分は働きながら生きていけるという自信がついたわ。夫の収入が良くてただの奥様だったらきっと、不安だったと思うのよ。娘も、毎朝私が化粧しているのを見て『うちのママはきちんとお化粧してキレイ』って言ってくれるしね」という言葉です。
「15年後、自分は夫がいなくても大丈夫という自信をつけて、他のお母さんよりもキレイでいられる」そう考えると、今、している仕事も悪くないと考えはじめたと言います。