「米ぬか」が、どのようなものか知っている人は少なくなっていますよね?
漬物のぬか床に使うことぐらいは知っていても、どうやって得られるものかわからない人が多いのではないでしょうか。
近年、「ライスパワー」を利用した化粧品の登場で、お米の力を見直す風潮がありました。
しかし、「ライスパワー」は、白米によってもたらされるもの。
米ぬかは関係ありません。
簡単に表すと、「玄米-米ぬか=白米」ということになります。
米ぬかとは、玄米を精米して白米をとった後に残ったものなのです。
玄米に豊富な栄養が含まれていることは、知っている人も多いでしょう。
実は、白米はもちろん、玄米をもはるかに上回る健康食材とされるのが、米ぬかなのです。
その素晴らしいパワーは、食用だけでなく様々な用途に用いられています。
ここでは、米ぬかパワーを美容と健康に活かす方法として、食品と化粧品での活用法を中心に紹介します。
米ぬかの驚くべきパワーを利用しない手はありません!
目次
1. 米ぬかの主な栄養成分
1-1. ビタミン
1-2. ミネラル
1-3. タンパク質
1-4. 炭水化物
1-5. 脂質
2. 食品としての活用法
2-1. 煎りぬかの作り方
2-2. 米油の特徴
2-3. 活用① 調味料
2-4. 活用② 甘味
2-5. 活用③ 香ばしさ
2-6. 活用④ 保存食
2-7. 活用⑤ 健康食品
3. 化粧品としての活用法
3-1. 活用⑥ スキンケア化粧品
3-2. 活用⑦ 手作りコスメ
3-3. 活用⑧ シャンプー・ボディソープ
4. 米ぬかのそのほかの活用法
4-1. ワックス
4-2. 園芸用肥料
4-3. 工業用素材
まとめ
1. 米ぬかの主な栄養成分
米ぬかは、玄米を精米したときの残り物ですが、詳しく説明すると、白米の上を覆っている「糊粉層」「種皮と果皮という2種類の皮」「成長すると芽になる部分の胚芽」を削り取ったものです。
粗い粉状をしており、その量は玄米の9~10%で、大半は食用になる米油の原料、肥料の原料、エノキやシメジなど養殖キノコの菌床に使われています。
家庭用には、漬物のぬか床か、タケノコを茹でるときのアク抜きに使われる程度です。
米ぬかは玄米の一部ですから、当然食べられるものなのですが、健康や美容に必要な栄養分が豊富であることから、近年は食材としての利用が注目されています。
米ぬかがどのくらい優れているのか、五大栄養素の分類で見てみましょう。
栄養素の量を表す数値は、すべて100g中の含有量です。
1-1. ビタミン
江戸時代に精米技術が発達して、日本人の主食が玄米から白米に代わると、脚気が急増しました。
これは「ビタミンB1」不足が原因でしたが、米ぬかのビタミンB1含有量は、白米が0.08mg、玄米が0.41mgに対し、3.12mgという圧倒的な多さです。
豚肉やゴマもまったく及びません。
ビタミンB3と呼ばれていた「ナイアシン」は、白米が1.2mg、玄米が6.3mgに対して、米ぬかは36.4mgとさらに圧倒的な含有量です。
また、「ビタミンE」は、白米が0.1mg、玄米が1.4mgに対して12.2mgです。
ビタミンB1やナイアシンは水溶性なので、体内に蓄えることができませんから、毎日摂取する必要があります。
どちらも三大栄養素の代謝に欠かせないもので、不足すると疲労感や倦怠感が増します。
ビタミンEは、活性酸素を除去したり、血液をサラサラにしたりするアンチエイジング効果が高いビタミンです。
1-2. ミネラル
ミネラルの中では、「鉄」「マグネシウム」「リン」などが、とくに豊富です。
鉄は、白米が0.8mg、玄米が2.1mgに対して、米ぬかが7.6mg、
マグネシウムは、白米が23mg、玄米が110mgに対して、米ぬかが850mg、
リンは、白米が94mg、玄米が290mgに対して米ぬかが2000mgという豊富さです。
鉄分が不足すると、貧血や、鉄欠乏症と呼ばれる様々な健康上の障害(神経不安、皮膚や粘膜の過敏症、消化器障害など)を引き起こします。
マグネシウムやリンは、骨や歯の形成に欠かせない栄養素で、エネルギーをつくり出すためにも必須の成分です。
1-3. タンパク質
タンパク質の量は大豆などの豆類と比較すれば劣りますが、豚バラ肉やウナギなどと同程度の含有量があります。
白米が6.1g、玄米が6.8gに対し、米ぬかは13.4gです。
1-4. 炭水化物
炭水化物は糖質と食物繊維に分かれます。
糖質は、白米が77.1g、玄米が73.8gに対し、米ぬかが44gと抑えめで、ほんのりとした甘さがあります。
食物繊維は、白米が0.5g、玄米が3gに対し、米ぬかは44gと圧倒的に多く、便秘を解消して、体内の毒素を排出する働きが有名です。
米ぬかの食物繊維には、血液や肝臓の脂質を低下させ、高脂血症を抑える働きがある「IP6(イノシトール-6-リン酸)」や、ポリフェノールの一種で抗酸化作用や紫外線吸収作用がある「フェルラ酸」が豊富です。
1-5. 脂質
米ぬかは食用油の原料になるくらいですから、脂質も多く含んでいます。
白米が0.9g、玄米が2.7gに対し、米ぬかは18.9gです。
重要なのは、コレステロールの吸収を抑え、動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールの割合を下げる働きがある「植物ステロール」が豊富なことです。
2. 食品としての活用法
米ぬかは、これだけ栄養が豊富なのですから、毎日白米だけを食べていたのではもったいないと思いませんか?
米ぬかにはいろいろな活用法がありますが、食品としての活用は、もっとも恩恵にあずかれる方法だといえます。
優れた食材としていろいろな使い方ができるのに、1kgあたり数百円で購入できて、体によい摂取量の目安は1日大さじ2杯と、とても経済的なのです。
もちろん、煎ってそのまま食べてもよいのですが、粗い粉状のものを食べるのは容易ではありませんし、味に変化がないと飽きてしまいます。
美味しく健康的に食べるためには、栄養バランスを考えた食事に取り入れましょう。
2-1. 煎りぬかの作り方
お米屋さんやスーパーなどで米ぬかを買ってきたら、必ず空煎りをするようにしてください。
売っている米ぬかは、「生ぬか」「煎りぬか」「漬物用ぬか」の3種類があります。
「漬物用ぬか」には塩分や調味料が加えられているので、品質と原材料名を確認して、食用にできるものを選んでください。
「生ぬか」にも唐辛子などが加えられたものがありますから、必ず確認しましょう。
「煎りぬか」を購入した場合でも、空煎りは必要です。
空煎りの方法は、油分のないフライパンに生ぬかを入れて、中火弱で加熱、木べらなどで底から混ぜながら7~8分煎ります。
水分が10%減ってサラサラしている状態が理想的な仕上がりです。
焦がしてしまうと苦くなるので、色が濃くならないように注意してださい。
煎り上がったぬかは、酸化しないように空気を避けて密閉容器に保存します。
空煎りしたぬかの保存期間は冷蔵庫で2週間、煎る前のぬかは冷蔵庫で1カ月保存できます。
2-2. 米油の特徴
米ぬかから搾油か精製によってつくられる米油は、植物ステロールが豊富なことはもちろんですが、「γ-オリザノール」や「トコフェロール(ビタミンE)」の含有量が多いという特徴があります。
γ-オリザノールは、米に含まれる特有の油溶性成分で、コレステロールを低下させるとともに、自律神経失調症、更年期障害、潰瘍などを改善する効果があるとされます。
トコフェロールは、脂溶性であるビタミンE群の総称です。
米油はとても健康的な食用油ですが、流通量が少なくて入手しにくく、多用すればカロリー過多になりますから、米ぬかを食事に取り入れたほうが健康や美容には効果的です。
2-3. 活用① 調味料
料理にもうひと味加えたいときに、通常の調味料を加えると味が濃くなってしまいますが、米ぬかを加えることによってコクやうまみを出すことができます。
ハンバーグ、餃子のアン、てんぷらやかき揚げの衣などに加えると、米ぬかの存在があまり気にならずに、コクを出すことができます。
植物ステロールが豊富な豆腐やごま油と組み合わせれば、さらに植物ステロールたっぷりのメニューをつくることができます。
麻婆豆腐に、水溶き片栗粉の代わりに米ぬかを使うと、ちょうどよい加減のトロミをだすこともできます。
米ぬかにはいろいろなアミノ酸が含まれているので、グルタミン酸やイノシン酸と組み合わせると、相乗効果によってうまみが増大します。
納豆やチーズにかけると、想像以上の美味しさを実感できるでしょう。
大根おろしにのせるだけでも、うまみを活かして「ひと手間加えた大根おろし」にすることができます。
2-4. 活用② 甘味
米ぬかの糖分は、白米の半分ほどしかありませんが、アミノ酸が豊富なために、ほんのりした上品な甘みを感じ取れます。
自然な甘さなので、そのままジュースやヨーグルトにかけても違和感がありません。
味噌汁やスープに加えれば、やさしい甘さと香ばしさが風味を引き立てます。
卵焼きに砂糖を入れると、冷たくなってもやわらかいまま食べられますが、米ぬかも保水性があるので同じ効果が得られます。
米油を使用すれば、植物ステロール豊富で自然な甘さの卵焼きができます。
2-5. 活用③ 香ばしさ
煎った米ぬかは、焼き餅や煎餅のような香ばしさがあります。
この香ばしさを料理に加えることで、風味がぐっと引き立ちます。
サラダやスクランブルエッグにふりかけるだけで、新鮮な味に。
グラタン、スパゲッティ、カレーなどに加えると、香ばしさが活きて、新しい料理に生まれ変わります。
野菜炒めなどの炒め物に加えれば、脂っぽさを抑えながら香ばしさを出し、栄養価も高めることができます。
また、とんかつなどのフライでは薄力粉の代わりに、鶏のから揚げでは薄力粉に混ぜることによって、香ばしくて栄養バランスのよい揚げ物ができます。
きな粉に混ぜるだけでも、香ばしいスペシャルきな粉に変身します。
2-6. 活用④ 保存食
米ぬかで自家製のふりかけやペーストをつくれば、いろいろな味を楽しめる保存食になります。
白ゴマ、鰹節、ジャコ、七味唐辛子、青のりなど、組み合わせるアイテムは無数にあります。
ただ混ぜるだけから、すり鉢でする、さらに煎るなど、アイデア次第で、風味豊かで栄養豊富な保存食が完成します。
米ぬかのふりかけは、温かいご飯にかけることで、玄米を食べているのと同じ栄養を取ることができます。
保存期間は、冷蔵庫で2週間程度。
米ぬかには酸化しやすいという性質があるので、つくるのは数日間で食べきれる量にしましょう。
2-7. 活用⑤ 健康食品
ポリフェノールのフェルラ酸や、油性成分のγ-オリザノールを簡単に摂取できるようにしたサプリメントは、各社から発売されています。
また、これだけ栄養豊富な米ぬかですから、米ぬか自体を凝縮したサプリメントも市販されています。
米ぬかを買ってきて煎るのが面倒だという人や、どうしても米ぬかの粉っぽさや香りが好きになれないという人には、こうした活用法もよいでしょう。
しかし、これまでいろいろな食べ方で解説してきたように、食材の栄養素と組み合わさることで、米ぬかの豊富な栄養はさらに増大します。
できれば、自然な形で食用にしたいものです。
3. 化粧品としての活用法
米ぬかの栄養成分は、スキンケアにも効果を発揮します。
日本では、平安時代の長編物語『源氏物語』にも登場するほど、古くから女性が肌の手入れに利用してきたものなので、実績と安心感があります。
代表的なものだけでも、次のような効果が望めます。
・ビタミンB1は、肌の新陳代謝を活性化させる
・ビタミンEは、皮膚の老化を防ぐ
・鉄やカルシウムは、肌の弾力性や抵抗力を高める
・フェルラ酸やγ-オリザノールは、強い抗酸化作用でメラニンの生成を防ぐ
さらに食物繊維を摂取することによって、腸内環境を整え、肌荒れを防止することができます。
3-1. 活用⑥ スキンケア化粧品
米ぬかから抽出される「米ぬかスフィンゴ糖脂質」は、別名「米セラミド」とも呼ばれる植物性セラミドで、20種以上のセラミドがバランスよく含まれているのが特徴です。
米ぬかの保湿作用は、こんにゃくや小麦よりも高く、米ぬかスフィンゴ糖脂質は植物性セラミドの中でもとくに注目されている成分です。
米ぬかを利用したスキンケア用品は、いろいろなメーカーから発売されていますが、1894年に神戸で創業した「美人ぬか本舗」から続く、「株式会社リアル」の「美人ぬか 純米シリーズ」は、代表的なものです。
また、こちらも120年の歴史をもつ酒造会社である「日本盛」が、化粧品部門で展開する「米ぬか美人NS-K」シリーズも、充実したラインナップで定評があります。
3-2. 活用⑦ 手作りコスメ
米ぬかは、手作りコスメにも利用しやすい素材です。
つくり方を3つほど紹介しましょう。
・米ぬか洗顔フォーム
生ぬか500gを中火でキツネ色になるまで煎り、粗熱を取ります。
大さじ2杯の塩をよく混ぜて、ペットボトルなどの密閉容器に保存します。
冷蔵庫で保存し、数日間で使い切りましょう。
・米ぬかパック
生ぬかと小麦粉を2:1の割合でよく混ぜ、ぬるま湯を少しずつ加えてペースト状になったら完成です。
クレンジングと洗顔を終えた後に、目と唇、眉の間を避けて顔全体にまんべんなく塗り、10分経ったらぬるま湯で洗い流します。
乾燥肌や敏感肌の人は、5分くらいで洗い流して様子を見てください。
通常は、週に1~2回のペースで十分です。
ヨーグルトやハチミツを加えて、アレンジするのもよいでしょう。
米ぬかパックについては、「手作りでナチュラルスキンケア-キッチンで作る美白パック10選」でもご紹介していますので、こちらもご参考にしてみてください。
・米ぬか入浴剤
ガーゼで小さな巾着袋を作り、煎ってない生ぬかを入れてお風呂に浮かべます。
米ぬかのエキスが溶けた乳白色のお湯で癒され、保湿効果も抜群です。
3-3. 活用⑧ シャンプー・ボディソープ
米ぬかの保湿作用は、顔に使用する化粧品だけでなく、シャンプーやボディソープとしても効果を発揮します。
米ぬかから抽出される「オリザブラン(加水分解米ぬかエキス)」は、米セラミドと同様に高い保湿効果をもっています。
このオリザブランを配合したシャンプー、リンス、コンディショナー、保艶料、ボディソープなどが、各社から発売されています。
4. 米ぬかのそのほかの活用法
米ぬかには、美容や健康以外のことを目的とする用途がいくつもあります。
江戸時代までは、米ぬかを布袋に入れて湯船に浮かべると同時に、石けんの代わりとしても使っていました。
現在でも、米ぬかエキスを配合した「米ぬか石けん」が市販されています。
水300ccに10gの重曹を加えて沸かし、100gの生ぬかを入れて混ぜながら10分間煮詰めると、食器洗いなどに使えて手にやさしい「米ぬか洗剤」ができあがります。
最後に、そのほかの活用法をいくつか紹介しましょう。
4-1. ワックス
米ぬかは床のつや出しとしても、古くから活用されてきました。
今も、人と環境にやさしいワックスとして、各社から「米ぬかワックス」が発売されています。
米ぬかには20%の油分が含まれており、この油には1.5%ほどの蝋が含まれています。
この蝋を精製したものが米ぬかワックスで、とくに無垢のフローリングと相性のよい自然系ワックスとして知られます。
4-2. 園芸用肥料
米ぬかは肥料としても、いろいろな使い方があります。
自分でつくれる「生ごみたい肥」は、園芸用の肥料として活用できます。
米ぬかは微生物の繁殖に適しているので、乳酸菌、酵母、こうじ菌などを増殖させて、「生ごみたい肥」をつくることができるのです。
2重にした段ボールの箱に入れた腐葉土と生ぬかをよく混ぜて、発酵床をつくります。
漬物のぬか床と原理は一緒ですね。
水切りした生ごみを生ぬかと混ぜて、スコップなどでザクザク刻み、この発酵床に入れてよく混ぜ合わせます。
虫が入らないように布でフタをしましょう。
発酵床は、風通しと日当たりがよくて雨が降ってもあたらない場所に置き、米のとぎ汁を加えて乾燥を防ぎながら、1日1回は空気を入れて切り込みます。
3~4カ月で発酵が完了します。
たい肥は、プランターの土と混ぜ合わせて1カ月ほど経ってから使いましょう。
4-3. 工業用素材
米油をつくる工程で生成される「米ぬか脂肪酸」は、樹脂や塗料の原料として活用されています。
東北大学が米ぬかを原料として開発した、硬質多孔性炭素材料「RB(Rice Bran)セラミックス」は、低摩擦、低摩耗の新素材として、また、石油に由来しないエコマテリアルとして注目されています。
まとめ
ぬか漬けの漬物は、整腸作用もあって大変美味しいものですが、米ぬかにはそれ以外にも、こんなに多くの活用法があるのです。
とくに食用としての活用法は、簡単で、経済的で、しかも美味しいのですから、今日からでも取り入れてみてはいかがでしょうか。
大事なことは、ほかの美容法や健康法と同じく、続けること。
早い人では、2週間くらいで「米ぬかパワー」が実感できるはずです。
【参考資料】
・『ポストハーベスト技術で活かす お米の力』 農山漁村文化協会 2016年
・『カラダの中からキレイになる 米ぬかレシピ』 日本文芸社 2012年
・お米マイスター全国ネットワーク web site
http://www.okome-maistar.net/introduce.html
・美人ぬかストア web site
http://store.bijin-nuka.com/