どうしても消したいと、気になるシミはありますよね?
顔のシミは、表情にも影響するので、とくに気になるものです。
「美白化粧品を使っているのに消えない」
「紫外線対策をしているのにシミが増えた」
こうした悩みを抱える女性は多いですよね。
実は、シミにはセルフケアでは消すことができないものが多いのです。
シミには種類があって、美白化粧品で消すことができるシミは限られています。
セルフケアで消せないシミを消すためには、皮膚科か美容皮膚科を受診することになります。
ここでは、シミの治療として行われている最新の美容医療を紹介します。
シミのメカニズムや種類をよく理解して、自分が気になっているシミはどのタイプなのか判断することからはじめましょう。
目次
1. セルフケアで消えないシミとは?
1-1. シミができるメカニズム
1-1-1. 肌のガード機能と代謝機能
1-1-2. メラニンが蓄積されるしくみ
1-2. セルフケアの効果と限界
1-3. 6種類のシミ
1-3-1. 日光性色素斑
1-3-2. ソバカス
1-3-3. 肝斑
1-3-4. 炎症性色素沈着
1-3-5. 後天性真皮メラノサイトーシス
1-3-6. 脂漏性角化症
2. シミを消す6つの美容医療
2-1. レーザー治療
2-2. 光治療
2-3. ケミカルピーリング
2-4. イオン導入
2-5. 内服薬
2-6. そのほかの美容医療
1. セルフケアで消えないシミとは?
多くのシミは、表皮でつくられる「メラニン」という色素が沈着したものです。
メラニンは紫外線を肌に浴びることで生成されます。
シミの中には遺伝的要因やホルモンバランスの影響でできたものもありますが、一般的にシミといった場合は、紫外線を浴び続けたことでできるものを指す場合がほとんどです。
紫外線が原因のものは、すべてセルフケアで消せるとは限りません。
まず、セルフケアで対処できるシミと、できないシミの違いを解説しましょう。
1-1. シミができるメカニズム
1-1-1. 肌のガード機能と代謝機能
皮膚は、「表皮」「真皮」「皮下組織」という3層構造でできています。
もっとも外側の表皮は0.2mm程度の厚さで、そのまた一番外側の部分が「角層」と呼ばれる部分です。
角層はわずか0.02mmの厚さしかありませんが、紫外線など外部からの刺激から肌を守り、体内から蒸発しようとする水分をつなぎとめて、肌のうるおいを保っています。
この強力なガード機能は、「角層のバリア機能」と呼ばれます。
また、表皮のもっとも真皮側にある「基底層」では、細胞分裂が行われて次から次へと新しい表皮細胞がつくられています。
この表皮細胞は、次々に生まれる新しい細胞によって形を変えながら外に押し出されていき、やがて角層で無核となり死んだ状態で角質細胞となります。
角質細胞は新しい細胞に押し上げられるようにして表面まで上がり、最後はアカとなって自然にはがれ落ちます。
この肌の新陳代謝、肌の生まれ変わりを「表皮のターンオーバー」いい、その周期は個人差がありますが、およそ28日が理想とされています。
1-1-2. メラニンが蓄積されるしくみ
メラニンという色素は、シミの原因として悪いものと考えられがちですが、本来の役目は、紫外線から表皮細胞の中にあるDNAを保護することにあります。
紫外線を浴びていることを感知した表皮は、表皮細胞から情報伝達物質を分泌させます。
この情報伝達物質は、表皮の基底層にある色素細胞「メラノサイト」に、黒っぽい色素「メラニン」をつくって皮膚を守れと指令するのです。
指令を受けたメラノサイトは、「チロシン」というアミノ酸に「チロシナーゼ」という酸化酵素を作用させてメラニンを生成します。
日焼けは、表皮の色を濃くすることによって肌の内部を守っている状態なのです。
表皮細胞の中にあるDNAを保護する役目を終えたメラニンは、ターンオーバーによって古い角質細胞といっしょにはがれ落ちます。
ところが、何らかの原因によってターンオーバーの機能が大幅に低下したり、メラニンが大量に作り続けられたりしてしまうと、メラニンがはがれずに肌に蓄積されてしまい、色素沈着が起こります。
これが、シミのできるもっとも代表的なメカニズムです。
1-2. セルフケアの効果と限界
セルフケアの主体となる美白化粧品の働きを理解しましょう。
美白化粧品に配合されている「美白成分」には、厚生労働省が指定する医薬部外品の成分が現在20種ほどあり、そのほかにもメーカーが独自に提唱しているものもあります。
いずれも、メラニンが生成されるメカニズムを阻害して、メラニンの生成を抑制する働きがあります。
メカニズムへの働きかけは、3段階に分類されます。
まず、情報伝達物質がメラノサイトに指令を出す段階で、情報伝達物質の働きを阻害するものがあります。
次に、指令を受けたメラノサイトがメラニンを生成する段階で、チロシナーゼに働きかけてメラニン生成を抑制するものがあります。
多くの美白成分がこのタイプになります。
もうひとつは、酸化酵素であるチロシナーゼを減少させるもので、このタイプはメラノサイトが過剰活動をしてしまっていても、メラニンの生成を抑える働きがあります。
美白化粧品は、メラニン生成を抑制するものですから、基本的にはできてしまったシミを消すものではなく、シミの予防ケアと考えるべきです。
しかも、美白成分で薄くすることができるのは、一部のシミに限られます。
1-3. 6種類のシミ
肌にできるシミは、主に6種類に分類することができます。
それぞれのタイプの特徴と、効果的なケア方法を解説しましょう。
1-3-1. 日光性色素斑
一般的に「シミ」といえば、「老人性色素斑」とも呼ばれるこのタイプと認識されます。
5~20mm程度の大きさで、円形であることが多く、でき始めは薄い茶色ですが、次第に濃くなって肌とシミの境目がはっきりとしてきます。
顔や手の甲、背中など日光が当たりやすい部分にできて、放置していると、隆起してきて⑥の「脂漏性角化症」になる場合もあります。
初期の薄い茶色の状態には美白成分も有効ですが、濃くなってはっきりしてしまうとレーザー治療や光治療で消すことになります。
ビタミンCイオン導入の併用も効果的とされます。
1-3-2. ソバカス
雀の卵の模様に似ていることから雀卵斑(じゃくらんはん)と呼ばれるソバカスは、遺伝的体質が原因である先天性のものと、紫外線を浴びたことが原因である後天性のものに分類できます。
鼻を中心とした広範囲に、1~4ミリ程度の小さく茶色いシミができます。
幼児期から思春期にかけて発症し、色白の人に比較的多いことが特徴です。
先天性のものも後天性のものも、紫外線を浴びることによって悪化してしまいます。
ソバカスもメラニンの色素沈着ですが、美白化粧品の効果はあまり期待できません。
レーザー治療や光治療が有効で、ビタミンCやビタミンAのイオン導入も効果があるとされています。
しかし、遺伝的要因が多いため、再発する可能性が高いのもソバカスの特徴です。
1-3-3. 肝斑
肝斑(かんぱん)は、目尻の下、頬骨のあたりに左右対称にできるシミで、稀に鼻の下や額にできることもあります。
肝斑の原因は、女性ホルモンのバランスが乱れたことにあり、妊娠中やピルを服用したとき、更年期の人などに多く見られます。
60歳以降は、閉経とともに消えたり薄くなったりする傾向があります。
美白化粧品はあまり効果がなく、レーザー治療も症状を悪化させてしまう可能性があるので不向きとされてきましたが、最近は刺激を与えにくい「レーザートーニング」が注目されています。
トラネキサム酸が配合された内服薬や、ビタミンCイオン導入の併用が効果的とされます。
1-3-4. 炎症性色素沈着
炎症性色素沈着は、ニキビや火傷、アトピー性皮膚炎などによる炎症が原因で、痕がシミとして残ったものです。
炎症を放置して慢性化すると、シミになりやすくなります。
炎症を抑えられれば、自然に消滅する場合もあります。
炎症性色素沈着は、ターンオーバーの低下が直接的な原因になっているので、もっとも美白化粧品の効果が上がりやすいタイプです。
ビタミンC誘導体の配合された美白化粧水が効果的で、美容医療では、ケミカルピーリングでターンオーバーを活性化させることが有効です。
1-3-5. 後天性真皮メラノサイトーシス
後天性真皮メラノサイトーシスは、「ADM」または、「両側性遅発性太田母斑様色素班」という長い名称で呼ばれます。
頬や額の両端に1~3ミリ程度のシミが左右対称に現れ、ソバカスや肝斑に似ていますが、色がこげ茶や灰色で、真皮にできているシミであることが特徴です。
青アザと診断されることもあります。
後天性真皮メラノサイトーシスの原因は、紫外線やホルモンの乱れもあり、遺伝的要因も多いといわれています。
それだけに確実に効果を上げる美白成分や予防法はありません。
濃いシミになると、レーザー治療が有効とされます。
1-3-6. 脂漏性角化症
脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)は、表面がボツボツした光沢のないシミがイボのように盛り上がってできたもので、「老人性イボ」とも呼ばれます。
頬骨の高い部分やこめかみ、額にできることが多く、手の甲など体にできることもあります。
紫外線だけでなく老化も大きな原因で、老化によって大きくなったり、数が増えたりする場合があります。
脂漏性角化症は、皮膚が変化してしまっているので、皮膚深部に作用する炭酸ガスレーザー治療か、外科手術で切除するケースが多くなります。
2. シミを消す6つの美容医療
ここからは、多様化する最新の美容医療が、どのようなものか解説します。
美容医療とは、医師(通常は皮膚科医か形成外科医)が行う治療のことで、生まれつきのアザに対するレーザー治療を除き、基本的に健康保険は適用されないことを知っておきましょう。
さらに、シミには美容医療を行っても完全に消すことはできないものがあることと、効果の表れ方に個人差があることも、理解しておく必要があります。
2-1. レーザー治療
美容医療では、「ルビーレーザー」や「YAG(ヤグ)レーザー」という言葉をよく耳にすることと思いますが、これらは波長が違うレーザー光の名称です。
シミやアザの治療に使用されるレーザー光は、波長が短いほど皮膚の表面に作用し、長いほど皮膚の深部まで作用するという特性があります。
現在、美容医療で用いられているレーザー治療機器は、レーザー光の波長によってだいたい5種類に分類されます。
波長の短いほうから並べると、次のようになります。
1. 表皮だけに作用する「ルビーレーザー」
2. 真皮まで作用する「アレキサンドライトレーザー」
3. 皮下組織の浅い部分まで作用する「ダイオードレーザー」
4. 皮下組織の深部まで作用する「YAGレーザー」
5. 皮下組織のさらに深部まで作用する「炭酸ガスレーザー」
治療目的に合わせて、「表皮にメラニンがあるシミにはルビーレーザー」、「真皮層に入り込んでしまったメラニンがあるシミにはYAGレーザー」というように機器を選択します。
また、レーザー光は照射時間(パルス幅)を短くすることにより、熱伝導を抑えて深部のターゲットを狙いやすくなる、正常な細胞にダメージを与えずにメラニンだけを狙い撃ちできる、といったメリットがあります。
照射時間を10億分の1秒単位で制御できるのが、「Qスイッチ」という技術で、治療機器には、「Qスイッチルビーレーザー」「QスイッチYAGレーザー」「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」が多く用いられています。
肌への刺激が抑えられることで注目されている「レーザートーニング」は、波長の長いQスイッチYAGレーザーを使用します。
特殊な弱いレーザー光を繰り返し照射することによって、刺激に弱くなっている肝斑を悪化させずに、メラニンだけを少しずつ破壊していきます。
大事なことは、レーザー治療はいずれも肌に熱を加えるものですから、一種の「やけど」だということを理解しておくことです。
場合によっては、赤みやかさぶたが数日続いたり、アフターケアが悪いとかえって色素沈着をおこしてしまったりするリスクがあります。
2-2. 光治療
光治療は、IPL(Intense Pulsed Light)というカメラのフラッシュのような皮膚にやさしい光を使用します。
IPLはレーザーのようにターゲットをピンスポットで狙うのではなく、幅広い波長をもつ光を顔全体に照射して、主に表皮の浅い層の治療を行います。
治療をする層によって波長の違う機器を使わなければいけないレーザー治療に対し、IPLはフィルターを変えることにより、1台でいろいろな波長の光を照射できます。
現在、シミを消す光治療機器には、短い波長域の「フォトフェイシャル」「ライムライト」などが用いられています。
波長の長い赤外線の「タイタン」や、YAGレーザーのロングパルスを使う「ジェネシス」は、古い角質の除去やコラーゲン生成の促進に応用されています。
最近見るようになった「フォトRF」は、短い波長域のフォトフェイシャルにRF(高周波)を組み合わせた治療機器で、表皮のメラニンの量に影響されることなく熱エネルギーを皮膚の深部まで届けることができます。
レーザー治療機器や光治療機器は日進月歩で、毎年新しいものが開発されています。
最先端の機器がもつ技術には、たしかに目を見張るものがありますが、医師が常にすべてを網羅しているわけではありません。
ですから、新しいからという理由だけで、最新機器に飛びつくべきではありません。
2-3. ケミカルピーリング
ケミカルピーリングやイオン導入などの穏やかな治療は、「メディカルエステ」と呼ばれます。
ピーリングは、古い角質を落としてターンオーバーを活性化させることにより、角質にたまっていたメラニンを排出する方法です。
「AHA」や「フルーツ酸」と呼ばれている天然由来の成分などを配合したピーリング化粧品は、傷の炎症が原因の炎症性色素沈着や、初期の日光性色素班、ホルモンバランスが原因の肝斑に有効とされます。
美容医療では、美白成分の吸収や浸透をより高めてシミやくすみを薄くする、「ケミカルピーリング」が行われます。
2-4. イオン導入
イオン導入とは、メラニンの生成を抑える働きがあるビタミンCやトラネキサム酸、ターンオーバーを活性化する働きがあるビタミンAなどを、肌に微弱な電流を流す「イオン導入器」でイオン化し、水溶性の成分を皮膚に浸透させる方法です。
肌には外部からの異物侵入を防ぐ角層のバリア機能があるために、シミに有効な成分も塗っただけでは吸収されません。
そこで、バリア機能を一時的にやわらげて、水に溶けにくい分子の浸透を促すのが、イオン導入の目的です。
施術前にケミカルピーリングを行うと浸透効果がさらに高まり、レーザー治療や光治療の効果をアップさせます。
2-5. 内服薬
時間をかけて体の中から行う美容医療が美容内科で、点滴や注射などの治療法以外に、シミの治療には内服薬が用いられます。
内服薬は、ビタミンC、ビタミンE、トラネキサム酸、L-システインなどを基本とするもので、メラノサイト内の酵素チロシナーゼを抑制してメラニンの生成を抑制したり、抗酸化作用を応用してシミの原因にもなる活性酸素を除去したりします。
内服薬は一般的に3カ月以上の服用が必要になりますが、それだけでシミを消すことは期待できません。
レーザー治療や光治療の効果を高めるために併用されることが多くなります。
2-6. そのほかの美容医療
シミの直接的な対処法ではありませんが、現在行われている美容医療には、ほかにも「注射」や「リフティング」などがあります。
ボツリヌスやヒアルロン酸などの注射は美容外科の施術で、シワの改善を目的として行われます。
最近は、自分の血小板を注射して肌を若返らせる「PPP療法」も注目されています。
注射は、一度の施術ではっきり効果が表れることや、効果に個人差があまりないことが特徴です。
皮膚に糸を通して引っ張り、たるみを改善するリフティングは、外科手術よりも手軽なことから急速に普及しました。
重度のたるみには効果がないこと、効果の持続に個人差があること、糸が切れて元に戻ってしまうリスクがあることなどが特徴です。
注射やリフティングは、医師の技量によって結果に大きな差が出ますから、美容クリニック選びが重要になります。
シミを消すための美容医療や美容法については「正しい美白スキンケア―「シミ」「くすみ」の原因とケア方法」や「6種類のシミを消す方法-美白化粧品から最新レーザー治療まで」でも詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
できてしまったシミを消すことは簡単ではありません。
セルフケアは予防がメインであり、薄くすることができるものもある、というのが現実。
最新の美容医療をたよっても、完全に消すことができない場合もあります。
それだけにシミは予防が大事なのです。
日頃から、正しい紫外線対策や保湿ケアを欠かさないようにしましょう。
美容医療を検討する場合には、どこの美容クリニックを選べばいいのか、という問題も出てきます。
まずはクリニックのHPをチェックして、誇大広告がないことや、治療を科学的にきちんと説明していることを確認しましょう。
そうして選んだところから、最低でも3カ所のクリニックを受診して同じ相談をしてみると、医師の対応がわかります。
情報を集めることは欠かせませんが、最後は対面して、自分の目で選ぶことが大切です。
【参考資料】
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 2014年
・『切らずに治す「アザ外来」』 ごま書房新社 2016年
・聖心美容クリニック web site
https://www.biyougeka.com/column/skin/freckles_machine_different/
・銀座ケイスキンクリニック web site
http://www.ks-skin.com/30medical/30face/blotch.html