赤ちゃんが生まれたら、膨らんで丸くなっていたおなかが引っ込むと思っていた人も多いのではないでしょうか?
妊娠中、およそ10か月かけて、お母さんのおなかは徐々に引き延ばされています。
妊娠・出産はお母さんの体に大きな影響を与えます。
出産後、体がゆるんでグラグラする感覚や、起き上がりにくさは、多くの人が感じています。
自分だけの悩みと思わないでください。
慣れない育児のストレスもあって、産後のお母さんは疲れています。
まずは自分自身の笑顔を取り戻すことを考えましょう。
出産をデトックスのチャンスととらえて、産後ヨガを取り入れた産後ダイエットで「産む前よりもきれい」を目指しませんか?
目次
1. 産後ケアと産後ダイエットの関係
1-1. 産後の心と体の変化
1-2. 産後ケアのポイント
2. アーユルヴェーダで見る産後の体
2-1. 世界を作る3つのエネルギー
2-2. 妊娠中と出産後のエネルギーの変化
3. 産後ダイエットのための心を整えるヨガのポーズ
3-1. 正座で重心をとらえる
3-2. 胸開きのポーズ
3-3. 3つの穴を締める
3-4. 月と太陽の呼吸法
3-5. いまここ呼吸
4. 育児のときなどの姿勢をチェック
4-1. 子どもをだっこするとき
4-2. だっこ紐を使うとき
4-3. 椅子に座るとき
5. 産後ダイエットを成功に導く姿勢を整えるポーズ
5-1. 基本の立ち方
5-2. タックインして立つ
6. 骨盤の開きや傾きを整えるポーズ
6-1. 骨盤を締めるポーズ
6-2. ねこと牛のポーズ
6-3. クロスでひざ倒しのポーズ
7. 産後ダイエットを成功させるポイント
7-1. 3つの時計を意識する
7-2. 赤ちゃんに母乳をあげ続ける
1. 産後ケアと産後ダイエットの関係
産後ケアという言葉を知っていますか?
出産でお母さんの心と体は大きく変化します。
この原因のひとつにホルモンの分泌量と子宮の急激な変化が挙げられます。
出産後のお母さんの心と体の変化は大きく、これらに対応して元気に赤ちゃんとの生活を送れるようにするために産後ケアが必要なのです。
産後ダイエットは、産後ケアのテーマのひとつです。
まずは、産後ケアから取り組みましょう。
1-1. 産後の心と体の変化
妊娠中に増えたホルモンが急激に減少することで、出産後、2〜3割のお母さんが軽いうつ状態、「マタニティーブルー」になります。
妊娠中に増えた女性ホルモンの働きで骨盤がゆるむため、出産後、姿勢が乱れて、体のあちこちに痛みが出ることもあります。
体の真ん中にある子宮は元々の大きさは洋なしほどですが、妊娠中に大きく広がって3kg前後の赤ちゃんを包み込める大きさになります。
出産後に6〜8週間かけて、元の大きさに戻ろうとします。
出産後は子宮の変化に体がついて行けずに、体のバランスが乱れやすくなっています。
1-2. 産後ケアのポイント
大きく変わる心と体の変化に対応するためのケアが産後ケアです。
産後ケアで重要になるのが、出産でゆるんだ骨盤のケアと筋肉の強化です。
こうしたケアの延長線上に産後ダイエットがあります。
骨盤の歪みを放っておくと、腰や肩、ひざに負担がかかってしまいます。
それが原因で痛みが出ることもあります。
骨盤ケアと筋肉の強化しながら心をリラックスさせる方法のひとつが産後ヨガです。
産後ヨガで心と体を整えることが産後ダイエットにも繋がります。
2. アーユルヴェーダで見る産後の体
アーユルヴェーダは、ヨガの修行者が瞑想中に生み出したとされる伝承医学です。
産後ヨガを始める前に、アーユルヴェーダで見る産後の体について知っておきましょう。
2-1. 世界を作る3つのエネルギー
アーユルヴェーダでは、自然界も人間の心身もすべて、3つのエネルギーから成り立っていると考えます。
それが「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」です。
ヴァータは、風の性質を持つものです。
人の動きを支えるエネルギーになります。
ピッタは、火の性質と持つものです。
体の熱を生み出すエネルギーになります。
カパは、水の性質を持つものです。
結合する力を生み出すエネルギーです。
2-2. 妊娠中と出産後のエネルギーの変化
人に影響力を持つエネルギーは、年齢や季節など、さまざまな要因によって変わってきます。
妊娠中には、結合する力を生み出すカパが活性化します。
カパのエネルギーは赤ちゃんを体にとどめて、体に水分や脂肪を溜め込みやすくします。
出産のときに活性化するのは、火の性質を持つピッタです。
産後に影響力を発揮するのは、風の性質を持つヴァータです。
産後しばらくはヴァータが増えやすくなっています。
ヴァータの乱れは、冷えや肌の乾燥、疲労感、腰痛、不眠、抜け毛などを招くことがあります。
産後ヨガで、乱れたエネルギーのバランスを整えて、心と体のトラブルの解消を図りましょう。
ただし、産後2か月まではしっかり養生して、無理をしないようにしてください。
3. 産後ダイエットのための心を整えるヨガのポーズ
出産で今までおなかに抱えていた赤ちゃんがいなくなると、おなかの大きさが急激に変わるため、重心がとらえにくくなります。
これは、「今、ここにいる」という実感が持ちにくくなる状態です。
この状態が続くと、体調だけではなく、心も不安定になってしまいます。
心の安定を導くヨガをおこなってみませんか?
3-1. 正座で重心をとらえる
臍下丹田(せいかたんでん)を意識して、バランスを取り戻します。
臍下丹田とは、体の重心と横の軸があるとされるところのこと。
人差し指の第2関節をおへそに触れるように手を当てたとき、薬指の第2関節の位置が臍下丹田になります。
方法
正座をして、両手で骨盤とお尻の上の逆三角形の骨(仙骨)を触り、意識します。
握り拳ひとつ分、ひざを開けて、左右の足の親指同士が触れるか触れないぐらいの状態にします。
臍下丹田に意識を向けてから、両手を太ももの上に置きます。
頭のてっぺんを天井に持ち上げ、仙骨を地球の中心に下げていくイメージで縦の軸を意識します。
体の重みを骨盤全体に移動します。次にひざの前、最後に臍下丹田に重みをかけます。
臍下丹田に重みがある状態が重心をとらえた状態になります。
3-2. 胸開きのポーズ
胸を大きく広げて、緊張を解放します。
気分を明るくする効果が期待できます。
動きの途中で呼吸を止めないことがポイントです。
方法
正座して、胸の前の両手のひらを合わせます(合掌)。
息を吸いながら合掌した手をまっすぐ上に伸ばします。
さらに上に伸ばしながら、肛門を引き締めます。
息を吐きながら、上に上げた手を胸の位置まで下ろします。
ひと呼吸したら、再び手を上に伸ばして、両手を肩幅よりやや広めに広げます。
そのままの状態で、呼吸しながら親指から1本ずつ指を曲げていきます。
手を握った状態になったら、握り拳に軽く力を入れて、息を吐きながら肩の高さまで下ろします。
息を吸いながら、胸を前に突き出すようにします。
息を吐きながら胸の筋肉をゆるめます。
両手を太ももの上に置いて、ひとつ呼吸して終了です。
3-3. 3つの穴を締める
骨盤の下部には3つの穴(尿道口、膣、肛門)があります。
この3つの穴を取り囲んでいる筋肉が骨盤底筋です。
産後は骨盤底筋がゆるんでコントロールしにくい状態にあります。
骨盤底筋を鍛えることは、尿もれなどの悩みの解決に繋がります。
寝たままでも赤ちゃんをだっこした状態でもおこなえます。
意識しやすい穴から試してみてください。
方法
尿道口、膣、肛門の順番で締めます。
3-4. 月と太陽の呼吸法
心身のバランスを整えるための呼吸法です。
右の鼻と左の鼻、それぞれを使って酸素を取り込むことがポイントです。
自律神経が乱れていたり、メンタル面で不調を感じたときなどに試してみてください。
方法
右手の人差し指を眉間に当てて、親指で右の鼻を押さえ、左の鼻から息を吸います。
左の鼻を中指で押さえて両方の鼻の穴を閉じ、吸った息を保ちます。
親指を離して、右の鼻から息を吐きます。
左手の人差し指を眉間に当てて、親指で左の鼻を押さえ、右の鼻から息を吸います。
右の鼻を中指で押さえて両方の鼻の穴を閉じ、吸った息を保ちます。
親指を離して、左の鼻から息を吐きます。
3回繰り返して、息を吐ききったところで終了です。
3-5. いまここ呼吸
息とともに不安やイライラを吐き出し、吸う息で新しいエネルギーを取り込む呼吸法です。
「今ここにいる」感覚を味わうことができます。
方法
両足のかかとが体の正面を向くようにあぐらをかき、骨盤を立てて背筋を伸ばします(安楽座)。
胸の中心に親指が合うように合掌します。
不要なものを吐き出すイメージで息を吐きます。
新しいエネルギーを取り込むイメージで鼻から息を吸いながら、合掌した手を上に伸ばします。
鼻から息を吐きながら、上に伸ばした手の合掌を解いて、横に広げるように手を下ろし、再び合掌します。
5〜7回、繰り返して行います。
4. 育児のときなどの姿勢をチェック
泣いている赤ちゃんを抱いてあやしたり、頻繁に授乳したりと、出産後のお母さんは忙しい毎日を送っています。
自分の姿勢に気を配る余裕がないという人も少なくないでしょう。
育児のときに、意識せずにいると体に負担のかかる姿勢をとっている人は多いのです。
悪い姿勢に気づかずにいると、産後ヨガに取り組んでも効果が期待できなくなってしまいます。
まずは姿勢を意識する習慣を付けましょう。
4-1. 子どもをだっこするとき
・おなかや腰を前に押し出して体重を支えている
・左右どちらかの骨盤に子どもの体重がかかるようにしている
・低い位置でだっこしている
これらは体を歪ませる原因となる姿勢です。
4-2. だっこ紐を使うとき
・だっこ紐が下にずれていたり、ゆるすぎたりする
・腰を反らせて赤ちゃんを支えている
・片足に体重をかける斜め立ちをする
・だっこ紐のつけ方に左右差がある
上記を続けていると、体が歪む可能性があります。
4-3. 椅子に座るとき
・すぐに足を組む
・椅子に斜めに座って、足を開く
・ひざを開いてねこ背になる
こうした座り方を続けていると、気づかないうちに体が歪んでしまいます。
5. 産後ダイエットを成功に導く姿勢を整えるポーズ
産後ダイエットに失敗する原因のひとつが、ねこ背が癖になってしまうことです。
ねこ背になると、呼吸が浅くなって消費カロリーも少なくなってしまいます。
産後は体のあちこちがゆるんでいたり、歪んでいたりします。
産後ダイエットを成功に導くためには、正しい姿勢を身につけることが大切です。
5-1. 基本の立ち方
産後のお母さんは、育児などで歪んだ姿勢をとりがちです。
正しい姿勢を覚えて、まっすぐ立つ練習をしましょう。
方法
握り拳ひとつ分、足を開いて、小指側がまっすぐになるように足を置いて立ちます。
両足に均等に体重をかけて、足の中心に重心が来るようにします。
つま先(足指)を持ち上げ、かかとで床をグンと押します。
肩を引き上げて、後ろに回してストンと落とします。
上げていたつま先も元の位置に戻します。
5-2. タックインして立つ
「タックイン」とは「引き入れる」という意味です。
引き入れる場所は3カ所あります。
尾骨、おなか、肩甲骨です。
この3カ所を引き入れることを意識して立ちましょう。
さまざまなヨガのポーズをとるときにも、この姿勢で行うと効果的です。
方法
下腹を引き上げて、骨盤をしっかり立てます。
息を吐きながらおなかを引っ込めるイメージで、おなかと背中を互いに引き寄せます。
後ろにずれている肩甲骨を体の中心線に引き入れて、背筋をまっすぐに伸ばします。
猫背解消、正しい姿勢の作りかたについては「モデル仁香が教える☆あなたをぐっとラクにする正しい姿勢の作り方」の記事もぜひ参考にしてみてください。
6. 骨盤の開きや傾きを整えるポーズ
産後ダイエットを成功させるには、正しい姿勢を習慣づけることが大切です。
そのためには、出産のときに開いた骨盤を閉じて、傾きを正す必要があります。
骨盤を整える働きがあるポーズを紹介します。
6-1. 骨盤を締めるポーズ
産後に骨盤がグラグラして違和感を抱いたり、歩きにくく感じたりする人も少なくありません。
骨盤や大腿骨の周囲の筋肉を鍛えて、骨盤を安定させましょう。
方法
両足を揃え、かかとを付けて、つま先を60度に開いて立ちます。
胸の前で合掌します。
息を吸いながら、合掌した手をゆっくり上に伸ばします。
伸ばしきったところで肛門を締めます。
息を吐きながら、合掌した手をゆっくり元の位置まで戻します。
ひとつ呼吸して終了です。
6-2. ねこと牛のポーズ
骨盤をゆるめて、骨盤の傾きを調整しやすくするポーズです。
骨盤を動かすと、左右60の筋肉が動くと言われています。
骨盤の前後の動きを感じながら、ポーズをとりましょう。
方法
足は腰幅、手は肩幅に開いてつき、四つん這いになります。
ひじは伸ばしきらずに軽く曲げて、ひざは足のつけ根の真下に置きます。
息を吸いながら骨盤を前に倒して、胸を反らせます。
息を吐きながら骨盤を後ろに倒し、背中を丸めて肩甲骨を引き上げます。
お尻をかかとに置き、おでこを床に着けて、手を前に伸ばします。
深呼吸して休みます。
6-3. クロスでひざ倒しのポーズ
骨盤を締めながら、お尻や体側を伸ばすポーズです。
リンパの流れを促進する効果も期待できます。
方法
仰向けになって、左足を上にして、ひざとひざを重ねるように深く足を組みます。
息を吐きながら重ねたひざを左に倒して、右手を斜め下に伸ばします。
息を吸いながら肩を回し、伸ばした右手を上げて頭に沿わせます。
息を吐きながら肩を回し、上げた右手を下げて体の脇に付けます。
右手を斜め右上に伸ばします。
※右足を上にして、右側も同様に行います。
産後の身体と骨盤については、「骨盤体操で産後のゆるんだ骨盤を引き締める」という記事でもご紹介していますので、ぜひ、こちらもあわせてご覧ください。
7. 産後ダイエットを成功させるポイント
産後太りを気にする人は多いでしょう。
ダイエット食品などで手っ取り早くやせたいと思う気持ちもわかりますが、極端な食事制限をするダイエットは産後の体にはおすすめできません。
産後太りを解消するためには、体のバランスを整えることが大切です。
産後ヨガを上手に取り入れましょう。
生活にも産後ダイエットを成功させるポイントがあります。
7-1. 3つの時計を意識する
3つの時計を意識する体のバランスを整えるためには、「3つの時計」を意識して生活しましょう。
3つの時計とは、「時間を示す時計」「腹時計」「肌の時計」のこと。
腹時計は、食事をする時間を指します。
3度の食事を規則正しくとって、体内の消化のリズムを作りましょう。
肌の時計は、太陽の光を肌で感じることを意味します。
産後、安静にしている産褥期でも、カーテンを開けて太陽の光を感じましょう。
目で時間を示す時計を確認して、腹時計、肌の時計と合っているかチェックします。
3つがかみ合った生活をすることで、お母さんの心身のバランスを取り戻しやすくなります。
7-2. 赤ちゃんに母乳をあげ続ける
赤ちゃんにおっぱいを吸われると、副交感神経のスイッチを入れてリラックス状態に導きやすくする働きを持つ「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。
お母さんの心に不安などのネガティブな感情がなければ、赤ちゃんとのスキンシップでお母さんもリラックスできるのです。
また、母乳をあげ続けることでカロリー消費も増えます。
授乳中は一般の成人女性よりも、摂取するエネルギーが350kcal余分に必要となります。
授乳は自然なダイエットのひとつです。
まとめ
産後は赤ちゃんの世話が待っていて、忙しく過ごしがちですが、初産の人で産後およそ8週間、2人目以降の場合でも産後およそ4週間は安静にする必要があります。
赤ちゃんの世話以外の時間は、できるだけ横になって過ごしましょう。
出産で開いた骨盤が安定してくるのは、赤ちゃんの首が据わるころです。
それまでは産後ヨガも肛門を閉める動き程度にとどめて置きましょう。
本格的に産後ヨガを始めるのは、産後3か月ごろがおすすめです。
でも、無理に難しいポーズに挑んだり、完璧なポーズを目指したりするのは逆効果です。
気持ちいいと感じる範囲で行いましょう。
体のバランスが乱れていると、心のバランスも乱れやすくなります。
ヨガのポーズで心と体、両方のバランスを整えて、「産む前よりきれい」を目指しましょう。
【参考資料】
大坪三保子『キレイで元気なママになる Happy産後ヨガ DVD付』(髙橋書店、2008年)
カー亜樹『ママを癒やす産後ヨガ』(日東書院本社、2015年)
『基本の産後ケア6か月』(主婦の友社、2011年)