美容や健康に良いと、甘酒が話題になっています。
話題の中心は米麹を発酵させて作る甘酒になることが多いのですが、酒かすで作る甘酒にも様々な美容・健康効果があります。
日本酒の元となる「もろみ」を絞ったときにできる搾りかすが「酒かす」ですが、食物繊維やビタミンをはじめとした身体に良い成分がたくさん含まれているのです。
とくに、アルブチンやコウジ酸などの女性に嬉しい美肌成分が豊富に含まれているのが酒かす甘酒の特徴です。
酒かすにはほとんど甘味がないために、甘酒を作る際には上白糖やはちみつなどで甘味をつけます。つまり、酒かすの甘酒の場合、甘味は自分で決められるということですね。
また、日本酒の搾りかすというだけあって日本酒の良い香りがするのも酒かす甘酒の特徴で、酒かすの甘酒は甘味を控えたものなら辛党の男性にも喜ばれます。
発酵いらずで手軽に作れる酒かす甘酒の作り方とアレンジレシピ、美容・健康効果もあわせてご紹介していきましょう。
目次
1. 酒かす甘酒の作り方
1-1. 甘酒に使う酒粕の種類
1-2. 酒かす甘酒の作り方
(鍋と電子レンジ両方紹介します)
1-3. 1日に飲む酒かす甘酒の量と時間
2. 酒かすで甘酒を作る際の注意点
2-1. アルコール分が気になる場合
2-2. 酵素を摂取したい場合
2-3. 砂糖の量に注意
3. 酒かす甘酒の効果
3-1. 酒かす甘酒の美容効果
4. 酒かす甘酒を使って作る美味しいレシピ
4-1. 酒かす甘酒のアレンジホットドリンク
4-2. 酒かす甘酒のスイーツ
1. 酒かす甘酒の作り方
1-1. 甘酒に使う酒粕の種類
【甘酒に使う酒かす】
・板粕
もっとも多くスーパーマーケットで一年中売られているのが、酒かすが板状になっている「板粕」です。
今は日本酒を絞る際に自動圧搾機をつかうことがほとんどで、機械で絞られた粕は板状になるためそのままカットして袋詰めして売られているものになります。
溶けにくいので、水につけてふやかしてから煮溶かします。
・バラ粕
端にあって板状にならずに圧搾機からこぼれたものもありますが、大吟醸や吟醸酒の酒粕などのように低温醗酵により醸造したために粒が融けきらず板状にならない酒粕、硬い板状になるまで絞らない酒蔵などでできる酒粕が多いです。
大吟醸や吟醸酒の酒粕の多くは、バラ粕として販売されます。
板粕よりは溶けやすく、風味が良いものが多いです。
・練り粕
酒かすを練ってペースト状にして売られているものです。大きなスーパーマーケットなどでは一年中売られています。溶けやすいので扱いやすく、甘酒や粕漬け作りなどに便利です。
【その他の酒かす】
・踏込粕(土用粕・留粕)
酒かすをタンクの中で半年間貯蔵し、熟成発酵させたものです。店では「漬け物用」として売られていることが多く、色は茶色になります。
発酵させることで甘味とコクが強く、奈良漬けなどに使われます。
1-2. 酒かす甘酒の作り方
・酒かすは緩めて冷蔵庫に保存すると便利です
板粕やバラ粕は、すぐに使おうと思っても溶けにくいものです。
甘酒を飲みたいときにすぐに作れるように、また料理に手軽に加えられるように、酒かすは緩めて保存すると便利に使えますよ。
酒粕のレシピ本を出版している料理家で栄養士の栗山真由美さんは、これを「ゆる粕」と名付けています。
板粕やバラ粕は細かく手でちぎって酒かすと同量~1.5倍の水につけておきます。冬はぬるま湯につけると良いでしょう。
1時間以上経ったら、ゴムベラで酒かすをつぶすように混ぜていきます。ペースト状になったらできあがりです。口当たりにこだわるなら、泡立て器でクリーミィになるまでよく混ぜてください。
冷蔵庫で保存し、2週間以内に使い切りましょう。
【鍋で作る場合(2人分)】
1. ゆる粕1カップと、水1カップを鍋に入れて火にかけ、砂糖25g(お好みで加減)を入れて煮溶かします。
2. お好みでしょうが汁を入れてください。
【電子レンジで作る場合(マグカップ1杯分)】
1. 練り粕もしくはゆる粕大さじ2程度をマグカップに入れて、砂糖10g(お好みで加減)を加えて水を注ぎます。
2. 牛乳の温めモードか、600Wの電子レンジで1分弱程度温めます。
※濃度があるため、急な沸騰が起こりやすいので20秒ごとに一度スプーンで混ぜてください。加熱しすぎに注意!
1-3. 1日に飲む酒かす甘酒の量と時間
甘酒を飲む時間は、朝がいちばんおすすめです。
酒かすでつくる甘酒には砂糖が加えられていますので、糖質がその日のエネルギーとして使われることと、ブドウ糖が脳の栄養分として取り入れられるので仕事や勉強に良い影響を与えるからです。
一日に飲む甘酒の量ですが、200㏄程度にとどめたほうが良さそうです。
「飲む点滴」といわれるほど様々な栄養素が含まれている甘酒ですが、エネルギーも高く高カロリーの飲み物だからです。
美容に効果がある、健康のために良いといっても飲みすぎれば肥満の原因になってしまいますので注意してくださいね。
2. 酒かすで甘酒を作る際の注意点
2-1. アルコール分が気になるときは
酒かす甘酒のアルコールが気になるときは、煮立ててアルコール分を蒸発させてから飲みましょう。
酒かすは、日本酒を作るときの搾りかすなので、アルコールが含まれています。日本食品成分表によると、100g中に8.2gのアルコールが含まれています。つまり、酒かすだけでいえば約8%のアルコールになるのですね。
甘酒を酒かすで作る場合、好みで濃度や甘さが違いますので、酒かすや砂糖の割合は決まっていません。標準的なものだと100㏄あたり15g程度の酒かすが使われます。ということは、湯飲み一杯150㏄だとすると、約22gの酒かすになりますから含まれるアルコール分は1.76gとなりますね。
つまり、標準的な酒かす甘酒のアルコール度数は2.25%程度ということになります。
しかしこれは、まったく加熱していない場合です。酒かすを煮溶かすときには甘酒を加熱しますので、温度が80℃以上になっていれば理屈の上ではアルコールは蒸発します。
しかし、アルコール分が完全にゼロになっているかを確認できませんので、小さな子どもや特にアルコールに敏感な人は酒かす甘酒は避けたほうが良いかもしれません。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください
2-2. 酵素を摂取したい場合には
酒かすには、100種類ともいわれる酵素が含まれています。
酵素はタンパク質なので、60℃を超えると変性して活性を失います。
酒かす甘酒で酵素を摂取したいときには、高い温度にならないように注意すると良いですよ。
酒かすは温めないと溶けにくいので、練り粕を使うか「ゆる粕」(緩めておいた板粕やバラ粕・1章参照)にしておきます。
好みの量の酒かすを水で薄めて、ガムシロップやはちみつで味付けして飲む「アイス・酒かす甘酒」にするか、好みの量の酒かすに砂糖と水を加え、鍋で混ぜながら砂糖が溶ける程度温めて(60℃以上にならないように)飲みましょう。
この酒かす甘酒は美容や健康には効果的ですが、アルコール分がまったく飛んでいないので、これから運転する人や妊婦、アルコールに敏感な人、赤ちゃんや子どもには向きません。
2-3. 砂糖の量に注意
酒かすの甘酒を作るときには、砂糖の量に注意しましょう。
精製された上白糖はエネルギー源にはなりますが、身体に良いといえる成分はほとんどありません。
意外なことに酒かすには、栄養素として肉と同じくらいの割合でたんぱく質が含まれています。
しかも、レジスタントプロテインといって胃や腸で消化されにくく、食物繊維のような働きをするたんぱく質を多く含んでいます。
酒かすには食物繊維自体も含まれていますから、糖の吸収を穏やかにする働きはあります。
しかし、食物繊維やレジスタントプロテインのせっかくの働きをたくさんの上白糖を摂取することで台無しにするとしたらもったいないことですよね。
酒かすの甘酒がいくら身体に良いからといっても、砂糖をたくさん入れて作ってしまうと、毎日の摂取カロリーも増えてしまいます。
甘さの味覚は、慣れでもありますので徐々に砂糖を減らすことで薄い甘味でも美味しく感じるようになっていきます。
また、ビタミン、ミネラルなどを含むはちみつを甘味として加えたり、しょうがや抹茶で風味をつけたりするのも上白糖を減らす方法として有効です。
4章では酒かす甘酒のアレンジドリンクとして、砂糖を一切加えずに果物の甘味で美味しく飲める酒かすドリンクをご紹介していますのでそちらも参考にしてくださいね。
3. 酒かす甘酒の効果
3-1. 酒かす甘酒の美容効果
- 便秘改善効果
酒かすには、不溶性食物繊維が多く含まれるため、酒かす甘酒を毎日飲むことで、便秘改善効果もあります。
酒かす100gあたりの食物繊維量は、食物繊維が多いといわれるきのこ類や海藻類よりも多くなっています。
- コレステロール値の低下
酒かすに含まれるレジスタントプロテインは、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを体外へ排出する効果があり、コレステロール値の低下に役立ちます。
- 腸内環境を整える
酒かすに多く含まれる不溶性食物繊維は、便の量を増やします。水溶性食物繊維と似た働きを持つレジスタントプロテインは、悪玉コレステロールなどの油分を吸着する働きがあるため大腸でこの油分が潤滑油のような働きとなり便の排出をスムーズにします。
便秘が解消された大腸は正常な働きを取り戻し、腸内環境が整っていきます。
- 肝臓を守る
酒かすには活性酸素の除去(抗酸化作用)を助けるペプチドが存在し、これが肝臓を強化すると考えられています。
今有力視されているのは、グルタミン、システイン、グリシンの3つのアミノ酸がつながってできたグルタチオンというペプチドで、肝臓に集まって強い抗酸化力を発揮することがわかっています。
- 血圧を下げる
腎臓から分泌されるレニンという物質がアンギオテンシンをつくって血圧を上昇させ、カリクレインという物質がキニンという物質をつくりこれが血圧を下げます。
腎臓はこの両者のバランスを取ることで血圧を調整しています。
アンギオテンシン変換酵素(ACE)は肺の血管内皮細胞にでき、アンギオテンシンの作用を強化してキニンの働きを低下させ、血圧上昇に強く働きかけます。
このアンギオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害するペプチドが酒かす内に6種類発見されました(月桂冠総合研究所による)。
- 不眠、ストレス、免疫力に効果
ライオン研究開発本部、近畿大学、京都府立医科大学などの共同研究チームが、酒かすに含まれるS-アデノシルメチオニンという物質が睡眠調節に関与する中枢神経に作用することをつきとめました。
この成分がノンレム睡眠を増加させ、睡眠の質を向上させるといわれています。
睡眠の改善により、ストレスの軽減、免疫力アップが期待できます。
詳しくはこちらの記事をどうぞ
「甘酒の効能|麹・酒かすどちらも美容に効果あり!?」
4. 酒かす甘酒を使って作る美味しいレシピ
4-1. 酒かす甘酒のアレンジドリンク
- パイナップル甘酒(2人分)
ゆる粕1カップとカットしたパイナップル150gを水120㏄と共にミキサーにかけます。
全体がよく混ざればできあがりです。 - ミックスベリーのスムージー風甘酒(2人分)
ゆる粕1カップと冷凍ミックスベリー80g、レモン汁少々と砂糖小さじ1(なくても)と水1/2カップと共にミキサーにかけます。
全体がよく混ざればできあがりです。
4-2. 酒かす甘酒のスイーツ
甘酒でつくるスイーツは、和風でおしゃれな味になります。
和食器に盛り付けたり、小さな湯飲みでプリンを作ったりして楽しみましょう。
(材料)
・吟醸酒粕…80g
・卵黄…2個分
・牛乳…1/2カップ
・グラニュー糖…35g
・しょうゆ…小さじ1
・しょうがのすりおろし…少々
・生クリーム1/2カップ
(作り方)
1. 小鍋に卵黄とグラニュー糖を入れて泡立て器ですりまぜます。牛乳を少しずつ加えてさらに混ぜ、半量まで牛乳を入れたら弱火にかけます。さらにだまにならないよう混ぜながら少しずつ牛乳を加え、もったりと重くなったら火を止めます。
2. 小さなボウルに吟醸酒粕と1.の卵液を入れてよく混ぜます。大きいボウルに氷水を入れ、小さなボウルをのせて冷やしながらよく混ぜます。ムラなく混ざったらしょうゆとおろししょうがを入れてさらに混ぜます。
3. 別のボウルで生クリームを泡立て、2.の液と混ぜ合わせてタッパーなどの容器に入れて冷凍庫で凍らせます。
(材料)
・酒かす…30g
・熱湯…11/4カップ
・卵…1個
・砂糖…15g
・牛乳…1/4カップ
・しょうがのしぼり汁…少々
・黒蜜…お好みで
(作り方)
1. ボウルに酒かすを入れ、熱湯少量で溶かし、残りの熱湯も入れてよく混ぜてからざるで濾して、冷まします。
2. 別のボウルに卵と砂糖を入れて泡立て器でよく混ぜ、牛乳としょうが汁、1.の甘酒を入れてよく混ぜます。プリン型に均等に分けます。
3. 土鍋に熱湯を底から2㎝程度入れてくしゃくしゃにしたアルミホイルを敷きます。プリン型を安定するように乗せて火にかけ、沸騰したら弱火にしてふきんをかぶせたフタをします。ごく弱火で5分加熱したら火を止め、20分余熱します。
4. 冷蔵庫で冷やして、お好みで黒蜜をかけます。
5. まとめ
酒かす甘酒の作り方をご紹介するために酒かすについて調べていくと、日本酒を搾り取ったカスだというのに、とても身体に良い成分がたくさん含まれていることに驚きました。
人によっては日本酒の香りが強くて苦手、という方もいるかもしれませんね。
そうした方は、柑橘系の果汁などで割ったアレンジ甘酒にするとほとんど気にならなくなります。
お酒が好きな方なら、ふんわりとした日本酒の香りは嬉しいものです。
大人限定の寒い日のドリンクとして、アルコール分が含まれているのはかえって身体が温まって良いのではないでしょうか。
酒かすは様々な料理にも使えますので、ご紹介した「ゆる粕」にして冷蔵庫に常備しておくと良いですよ。
最近では、日本酒の醸造方法として酒かすが出ない作り方が増えているのだとか。
合理的で良いのかもしれませんが、酒かすがなくなる日が来るかもしれないと考えるとちょっと寂しい気もしますね。
米麹甘酒がお好きな方は、「米麹を使った甘酒の作り方|温度計不要レシピと失敗時の対処法」や「米麹を使った甘酒の作り方|温度計不要レシピと失敗時の対処法」の記事もぜひご覧ください。
(参考書籍)
「ゆる粕レシピ」栗山真由美(池田書店)
「こんなに使える酒粕のレシピ」栗山真由美(家の光協会)
「酒粕のパワーでやせる!健康になる!」(学研)