ドライアイでパソコン仕事を続けるのは、とても辛いですよね?
現在、日本人の6分の1にあたる2000万人がドライアイだといわれています。
事務作業をする人に限っていえば、75%の人がドライアイにかかっています。
それほど多くの人がかかっている病気であるドライアイの原因は、仕事でパソコンやスマートフォンを毎日使い続け、LED照明の強い光の中で生活し、帰宅後はテレビを観るという、目を酷使せざるを得ない現代の生活。
パソコンのモニターは目に悪いとわかっていても、向き合わなければ作業ができないので、乾く目をガマンしながら仕事をしている人が多いのです。
「ドライアイ」という病名から、目が乾くけだと思っている人が多いのですが、実は様々な形で不調をもたらすということがわかってきました。
ドライアイの弊害が注目されだしたのは、最近のことなのです。
ここでは、ドライアイの治し方を「基礎知識」「トレーニング」「食べ物」「生活の知恵」「市販の目薬」という5つの項目から極めていただきます。
一時的に治すだけでなく、症状を和らげながら根治することが目的です。
目次
1. ドライアイの基礎知識
1-1. 2種類のドライアイ
1-2. ドライアイの症状
1-3. 眼科で行う最新治療法
2. ドライアイを治すトレーニング
2-1. ホットアイ
2-2. パームアイ
2-3. まぶたマッサージ
2-4. 眼輪筋ストレッチ
3. ドライアイを治す食べ物
3-1. ラクトフェリンで腸活
3-2. オメガ3系脂肪酸
3-3. 抗酸化食品
4. ドライアイを悪化させない生活の知恵
4-1. 冬のエアコンは要注意
4-2. 加湿器で高い位置の湿度を上げる
4-3. パソコンやスマホは距離をとる
1. ドライアイの基礎知識
ドライアイは、目の病気の中では「涙器の病気」に分類されます。
本題へと入る前に、涙器について簡単に説明しておきましょう。
涙は、眼球の上方にある涙腺という器官で、毛細血管から出た血液の液体成分だけを取り出し、眼球の表面へと分泌される「涙液」が主成分です。
目の表面である角膜や結膜に栄養補給をした涙は、目頭にある「涙点」という部位から「涙道」を通って鼻腔へと放出され、ノドで体内に吸収されます。
こした涙の分泌と排出を行っている涙器に障害が起こると、分泌と排出のバランスが崩れてドライアイや流涙症といった病気を引き起こすのです。
1-1. 2種類のドライアイ
涙は常に目の表面を覆っていて、蒸発するか鼻腔に排出されることになるのですが、目が乾くという症状の原因は、涙腺から涙液の分泌量が少ないからだとは限りません。
涙の質が悪いために、目が乾いてしまうというケースもあります。
涙は涙腺から分泌された涙液だけではありません。
まぶたの内側の結膜にある「ゴブレット細胞」から分泌される「ムチン」という成分が土台となってトロミをつくり、その上に98%が水分である涙液、もっとも外側には、上下のまぶたにある「マイボーム腺」から分泌された油分、という3層構造になっているのです。
ドライアイは、涙液が少ない「涙液減少型」と、ムチン層がしっかりしていなくて涙がこぼれ落ちてしまったり、水層を覆っている油層が足りなくて涙がすぐに蒸発してしまったりする「蒸発亢進(こうしん)型」に分けられます。
1-2. ドライアイの症状
ドライアイは、次のチェックリストで当てはまるものが1~2個だと疑いがあり、3個以上だと疑いが強い状態とされます。
・目が乾いた感じがする
・目がゴロゴロする
・目に不快感がある
・まぶしく感じやすい
・目が疲れる
・ものがかすんで見える
・目が重たく感じる
・コンタクト、パソコン、エアコンのいずれかを使用している
ドライアイにはこうした症状以外にも、涙成分のバランスが崩れて涙目になる、目に傷がついて充血する、目の疲労から頭痛や肩こりが起こる、視界が悪化してイライラやうつ状態になるといった症状がみられ、慢性疲労やストレス過多を引き起こすことがわかっています。
1-3. 眼科で行う最新治療法
眼科でドライアイと診断された場合に行われる治療には、点眼薬以外に、目のまわりを温める「温罨法(おんあんぽう)」、自分の血清を目薬にする「血清点眼」、「治療用コンタクトレンズ」、手術療法などがあります。
点眼薬は、保湿効果の高いヒアルロン酸製剤が従来からあり、新しく使われ出したのが、「ムコスタ」「ジクアス」という2つの新薬。
ムコスタは、もともと胃薬として使われていたもので、粘膜を強くする作用があります。
ジクアスは、ムチンを増やす目的で使われます。
手術療法は、涙道をふさいで涙を目の表面に留める「涙点プラグ」、コラーゲンの塊を涙道に入れて固める「アテロコラーゲン注入」、涙道を閉じてしまう「涙点閉鎖」などがあります。
しかし、ドライアイは自分で治せる可能性が高い病気。
ここからは、自分でできるドライアイの治し方を解説していきます。
2. ドライアイを治すトレーニング
ドライアイの改善にもっとも即効性があるのは、トレーニングの習慣化です。
代表的なドライアイ改善のメソッドを4つ紹介しましょう。
2-1. ホットアイ
眼科でも行う温罨法を自分で行います。
市販のホットアイマスクを使用してもいいのですが、ホットタオルを使用するのが簡単。
① 水に濡らして軽く絞ったタオルを2本用意
② 1本を600wの電子レンジで40秒ほど温める
③ 上を向いて目を閉じ、ホットタオルを置く
④ その間にもう1本のタオルを温めておき、冷えてきたら交換する
これを5分間、1日最低1回は行います。
入浴中にお湯を絞ったタオルで行うのもいいですね。
2-2. パームアイ
手のひらでまぶたを温めるのがパームアイです。
両手のひらを10回ほどこすりあわせて温かくしたら、目を包み込むようにやわらかく当てます。
眼球を押し付けるのはNG。
熱を留めるイメージで5~10回繰り返しましょう。
こちらも入浴中に行えます。
ホットアイもパームアイも、目を温めることによってまぶたの血流をよくすることと、涙の油層をやわらかくするのが目的。
リラックスして精神を安定させる効果もあります。
2-3. まぶたマッサージ
まぶたマッサージは、ホットアイを行った後でやると効果的。
まぶたの血流を改善し、マイボーム腺から油分の分泌を促すことが目的です。
① 人差し指の腹で、上まぶたを上からなでたら、下まぶたを下からなでる。
外側、目の中央、内側と3ポイントに分けて、目を押さない程度の力でそれぞれ10回
② 上まぶたを内から外へとなでたら、下まぶたも同様にして10回繰り返す
③ 親指と人差し指で、上まぶたを左右からつまんで油分を押し出す
④ 下まぶたもつまんで油分を押し出す
このマッサージは眼科でやってもらうと、油分がニョロニョロと出ることもあります。
固まっている油のつまりを取るイメージで行い、目を押さない程度の力で押すのがポイント。
下まぶたの中央(黒目の下)には「承涙(しょうきょう)」というツボがあり、目の疲労解消に効くので、同時に刺激するとさらに効果的です。
2-4. 眼輪筋ストレッチ
両目の周囲には眼輪筋という筋肉があって、まばたきをしたり、いろいろな表情をつくったりするときに動いています。
硬くなった眼輪筋をストレッチして目の周囲の血流を改善し、まぶたの動きでマイボーム腺から油分を押し出しましょう。
両目をぎゅっと閉じたらパッと大きく開く。
これを10回繰り返すだけです。
最初は鏡の前でやると効果がわかりやすいでしょう。
まばたきは涙を目の表面に広げる動作なのですが、ドライアイの人はまばたきの回数が少なかったり、しっかり閉じていなかったりすることが多いので、眼輪筋の動きをよくすることが、とても効果的です。
3. ドライアイを治す食べ物
ドライアイの人が増えている原因のひとつに、現代の偏った食生活があります。
食生活の改善は、全身の健康につながることですから、根治には不可欠。
ドライアイを治す食生活も、「低カロリー高タンパク」が基本です。
細胞の修復や新生に必要となる十分なタンパク質と、良質の脂質を積極的に摂りましょう。
さらに、細胞の劣化や老化を招く活性酸素の酸化ストレスに負けないよう、抗酸化食品を摂ることも大切です。
3-1. ラクトフェリンで腸活
ラクトフェリンは、涙液に含まれるタンパク質で、涙腺の構造と機能の維持に必要な物質。
牛乳、ヨーグルト、チーズなどに多く含まれており、サプリメントも市販されています。
母乳に含まれるラクトフェリンが、乳児の免疫力をつくることはよく知られていますが、最近は、腸内で悪玉菌を減らしてビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きが注目されて、「腸活」の代表的なアイテムとなっています。
ラクトフェリンはタンパク質ですから、点眼薬は別として、口から摂取したらアミノ酸に分解されるので、そのまま涙液のラクトフェリンにはなりませんが、腸内の細菌バランスを整えることによって全身の粘膜の状態がよくなることがわかっており、目も粘膜ですから乾きにくくなれば涙の量と質が改善されるのです。
3-2. オメガ3系脂肪酸
涙の蒸発を防ぐのはマイボーム腺から分泌される油分ですから、脂質が不足すればドライアイを引き起こします。
脂質は良質なものを摂ることがポイントで、最良なのが、悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす働きのある「オメガ3系脂肪酸」です。
青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、クルミに多く含まれる植物由来のα-リノレン酸が代表的なもので、食用油では亜麻仁油やエゴマ油に多く含まれています。
脂質には、全身の細胞膜の材料となり、脂溶性のビタミンを働かせるという重要な役目もあります。
3-3. 抗酸化食品
まぶたの血流悪化は、老化によっても進行し、老化の最大の原因は過剰な活性酸素にあります。
酸素が体内で使われると必ず発生する活性酸素は、強力な酸化作用で免疫力を発揮しますが、過剰になりやすく、正常な細胞まで傷つけてしまうので身体には抗酸化作用が備わっています。
しかし、紫外線を浴びたり有酸素運動をしたりするだけでも活性酸素は増えてしまい、全身の細胞を傷つけて代謝を悪化させ、老化を進行させます。
ですから、足りない抗酸化物質を食品で補う必要があるのです。
食品で補う抗酸化成分の代表的なものは、ビタミンA、C、E、カロテノイド、ポリフェノールなど。
カロテノイドのひとつであるルテインは、「目に効く成分」としてサプリでも人気があります。
4. ドライアイを悪化させない生活の知恵
目を酷使するようになった現代では、日々の生活において目を大事にする意識が大切。
ドライアイは、目の生活習慣病なのです。
とくにドライアイは、生活環境によって改善される要素が大きいので、根治には生活習慣の見直しが欠かせません。
どんなにいい薬を使っても、目によくない生活をしていればドライアイは悪化しますし、薬を使わなくても生活を改善することでドライアイは治せるのです。
4-1. 冬のエアコンは要注意
目薬を小まめにさして目にうるおいを与えていても、空気が乾燥していたら、目はすぐに乾いてしまいます。
肌もいっしょですが、うるおいは環境に左右されるもの。
現代の生活環境で欠かせないものとなっていて、もっともドライアイによくないのがエアコンです。
風が当たると粘膜である目は乾燥します。
ただでさえ、エアコンから出てくる空気は乾燥しています。
ですからエアコンを使わない生活をすればドライアイは改善しますが、現実にはできることではありませんよね。
とくに熱中症が増える夏は、エアコンなしで過ごすのは危険ですし、たとえ扇風機に替えたとしても、目に風が当たればドライアイは悪化します。
最善策は、エアコンの風を直接受けないようにするしかありません。
冬はエアコンを使用しなくても、風が出ない暖房器具を使うことができます。
もっとも効率的なのは石油ストーブとされていますが、最近は石油ストーブ禁止の住居も増えていますから、電気ストーブやオイルヒーター、ホットカーペットなどを上手く組み合わせて、「風のない暖房」を行いましょう。
4-2. 加湿器で高い位置の湿度を上げる
湿度が低くなる冬の室内環境で、エアコンと加湿器を併用している人は多いですよね。
「乾燥のケアは加湿器」というのが、現代の常識。
ところが、加湿器を使っていてもドライアイのケアができてないことが多いのです。
ドライアイの改善を目指す加湿器の使い方には2つのポイントがあります。
ひとつは、ある部屋だけを加湿するのではなく、住環境全体を加湿すること。
衣類や靴などを置いてあるスペースは加湿しないにしても、廊下やキッチンなどもドアを開け放して加湿しましょう。
できるだけ、湿度の変化がないようにした方がよいのです。
もうひとつは、高い位置の湿度を下げないこと。
加湿器を床に置いていても、問題は目の高さの湿度。
床に置いた加湿器に表示されている湿度は、その場所の低い位置のものですから、そのまま信用してはいけません。
自分が活動する場所の、目がある高さの湿度を60%に保つのがポイントです。
4-3. パソコンやスマホは距離をとる
ドライアイの大きな原因となっているパソコンやスマホは、強い発光体を見ているのだということを忘れないようにしましょう。
これも、ドライアイを改善する使い方には2つのポイントがあります。
まず、ブルーライトをカットするフィルムやメガネを使用すること。
人間が見ることのできる光の中でもっとも波長が短いブルーライトは、強いエネルギーをもっていて眼球の奥にある網膜まで達するので、目に大きなダメージを与えます。
当然のことながら涙器にも悪影響を及ぼしますから、眼精疲労や緑内障の予防だけでなく、ドライアイの悪化を防ぐためにも、ブルーライト対策をしましょう。
もうひとつのポイントは、モニターの距離と、それを見る姿勢です。
できるだけ発光体からの距離をとった方が、ブルーライトを含めた光によるダメージは減少しますから、パソコンを使用する際はモニターをできるだけ目から離しましょう。
スマホを見るときも40cmは離しましょう。
デスクでパソコンを使用するときは、背筋を伸ばし、モニターの高さが目の高さと同じくらいか少し下になるくらいにすると、頭部への血流の悪化を防ぐと同時に、まぶたを上げる量がそれほど大きくなくて済み、目の乾きを予防できます。
5. 市販目薬の選び方と使い方
自分でドライアイを治す際には、市販の目薬で症状を緩和させながら改善するのも悪いことではありません。
もちろん、眼科で処方される点眼薬と同じ効果は望めませんが、目にうるおいを与えることができます。
目をうるおす以外の、充血を治したり、かゆみをとったりといった効能は考えない方が副作用が少なくて済みます。
ドライアイの改善を目的として、市販の目薬を選ぶときのポイントは次の3つです。
① あくまでも保湿効果を目的としていて、余計な成分が入っていないもの
② 1月以内に使い切れる量で安価なもの
③ 防腐剤が入っていないもの
まとめ
ドライアイの治し方で、キーポイントとなるのは血流の改善です。
涙の分泌に直接影響するまぶたにはじまり、頭部の血流、しいては全身の血流改善が根治には不可欠。
そのためにも、食生活をはじめとする生活習慣の見直しが必要となるのです。
ここでは自分でドライアイを治す方法を解説しましたが、冒頭で説明したような症状が余りにも強かったり、努力しても改善が見られない場合には、違う病気を併発している可能性もあるので、眼科を受診してください。
【参考資料】
・『本当は怖いドライアイ 「様子を見ましょう」と言われた人のために』 平松類 著 時事通信社出版局 2017年
・『目の病気ビジュアルBOOK』 本庄恵/丸林彩子 編 メディカ出版 2017年