2種類の敏感肌と化粧品の使い方-本当に敏感肌の人は少ない!
敏感肌であるために、化粧品の使い方で悩んでいる人は多いですよね?
全女性の7割は、「自分は敏感肌だ」と感じているといわれます。
ところが、本当に敏感肌の人はごくわずかです。
ほとんどの人は、肌が乾燥したり、肌荒れを起こしたりしている状態を敏感肌だと思い込んでいるのです。
実は皮膚科や美容医療において、「敏感肌」という分類は存在しません。
思い込みではない生まれつきの敏感肌は、医学的に言うと、「軽いアトピー性皮膚炎のある乾燥肌」ということになります。
ここでは、こうした2つの敏感肌を「仮性敏感肌」と「真性敏感肌」と呼び、まずは肌の基本構造と、肌がもっている機能を解説してから、それぞれの原因やメカニズム、正しい化粧品の使い方や対処法を紹介します。
目次
1. 仮性敏感肌と真性敏感肌
1-1. 肌の基本構造
1-2. 肌のバリア機能とターンオーバー
1-3. 4つに分類される肌のタイプ
1-4. 仮性敏感肌の悪循環
1-5. 軽いアトピー性皮膚炎の真性敏感肌
2. 仮性敏感肌の対処法
2-1. 間違ったスキンケアを正す
2-1-1. 正しいクレンジングと洗顔
2-1-2. 保湿ケアは美容液1本で!
2-1-3. 肌に負担をかけないUV対策
2-2. 生活習慣を見直す
2-2-1. タンパク質とビタミンを重視した食生活
2-2-2. 自分のホルモンバランスを理解する
3. 真性敏感肌の対処法
3-1. アトピー性皮膚炎とは?
3-2. 化粧品でアトピー性皮膚炎は治らない
3-3. シンプルな保湿ケアが重要
3-4. パウダリーファンデーションを活用する
3-5. 症状が悪化したら皮膚科を受診する
1. 仮性敏感肌と真性敏感肌
正しい化粧品の使い方を理解するためには、自分がどちらの敏感肌なのか判断しなければいけません。
この項では、仮性敏感肌と真性敏感肌の原因やメカニズムを解説します。
「乾燥肌」や「脂性肌」といった分類は、化粧品の使い方にも大きく影響を及ぼします。
そうした肌タイプの基本的な知識も身につけましょう。
1-1. 肌の基本構造
人間の肌は、単純に皮下脂肪の外側を1枚の皮膚が覆っているだけではなく、3層の構造で成り立っています。
もっとも外側は、厚さ0.2ミリ程度の「表皮」で、外部からの刺激に対する保護機能や、うるおいを保つ保湿機能があります。
その内側が厚さ2ミリ程度の「真皮」で、コラーゲン線維がネット状に広がり、エラスチン線維がそのところどころを固定し、すき間をジェル状のヒアルロン酸などが埋めて、肌にハリと弾力を与えています。
真皮の内側は、ほとんどが皮下脂肪からなる「皮下組織」で、外部からの衝撃に対するクッションの役目や、体温を逃がさない働きをしています。
全身を覆う皮膚は、人体で最大の臓器といわれ、その重量は体重の6分の1ほどになります。
敏感肌に関係するのは、主に表皮部分です。
1-2. 肌のバリア機能とターンオーバー
表皮のもっとも真皮に近い部分は、「基底層」と呼ばれ、ケラチノサイト(表皮細胞)という細胞が細胞分裂を繰り返しています。
2つに分裂したケラチノサイトは、ひとつが基底層に残って細胞分裂を続け、ひとつは後から生まれた細胞によって表皮の外側へ押し出されていきます。
ケラチノサイトがゴツゴツした形状の「有棘層」、さらに押し出されて扁平な形になった「顆粒層」へと移行し、やがてケラチノサイトが死んで、核のない角質細胞が積み重なる「角層」を構成します。
15~20層にも重なった角質細胞は、一番外側にくると肌からはがれ落ちて役目を終えます。
この細胞分裂から角質の剥離までのサイクルを「ターンオーバー」と呼び、20代の若い肌では30日程度、加齢とともに長くなって、40代では倍の日数がかかることもあります。
ターンオーバーは長くなりすぎると、古い角質が溜まってくすみやシミの原因になり、短くなりすぎても、肌荒れや乾燥肌の原因となります。
外界と接している角層は、角質細胞がレンガのように重なり、その間を細胞間脂質が埋めていて、わずか0.02ミリ程度の厚さしかありませんが、強固な防御壁を築いています。
これが、「角層のバリア」と呼ばれる機能で、外部から細菌やウイルスなど異物の侵入を防ぎ、体内から蒸発する水分をつなぎとめて、肌のうるおいを保っています。
1-3. 4つに分類される肌のタイプ
健康な状態の角層は、20%の水分量を保っており、その内訳は、毛穴にある皮脂腺から分泌される皮脂が肌に広がった「皮脂膜」が2〜3%、角質細胞内にあるアミノ酸などの「天然保湿因子(NMF)」が17〜18%、細胞間脂質の40%を占める「セラミド」が80%程度とされます。
「皮脂の分泌量」と「角層の水分量」によって、肌は4つのタイプに分類されます。
・水分が多く、皮脂量が少なめの「普通肌(ノーマル肌)」
・水分も皮脂量も多い「脂性肌(オイリー肌)」
・水分も皮脂量も少ない「乾燥肌(ドライ肌)」
・皮脂が多い部分と、かさつく部分が混在している「混合肌(コンビネーション肌)」
これらの肌タイプは、いつも同じではなく、季節や体調によって変わることも多いので、「自分はこのタイプ」と決めつけず、そのときどきの肌の状態を知って、適切なスキンケアをしなければいけません。
1-4. 仮性敏感肌の悪循環
肌が乾燥していたり、肌荒れを起こしていたりする「仮性敏感肌」は、悪循環に陥ることが多いので、メカニズムをよく理解しましょう。
外気の乾燥や外的刺激によって角層が傷つくと、角質が壊れて細胞間脂質が溶けてしまい、肌が敏感な状態になってしまいます。
すると、傷ついた角層を修復するためにターンオーバーが早くなり、未熟な角質細胞がたくさんつくられることになります。
こうなってしまうと、バリア機能が正常に働かなくなってしまうため、悪循環に陥るのです。
1-5. 軽いアトピー性皮膚炎の真性敏感肌
真性敏感肌は、軽いアトピー性皮膚炎であることが多く、もともと肌が薄かったり、外的刺激に過剰に反応してしまったりということも原因になります。
こうした原因は、生まれつきの体質であることがほとんどですが、化粧品の使い方を間違えると悪化していきますから、気をつけなければいけません。
アトピー肌の人は、アレルギーを起こしやすいという特徴があります。
大人のアレルギーは、多くの原因が外から皮膚に影響する物質なので、バリア機能を高めることによって、肌のアレルギー反応を抑制することができます。
敏感肌については「敏感肌ってどんな肌?」の記事でも詳しくご案内していますので、ご自身の肌チェックのご参考にしてみてください。
2. 仮性敏感肌の対処法
この項では、多くの女性が思い込みによって敏感肌だと感じている、仮性敏感肌の対処法を解説します。
仮性敏感肌の正体は、肌の乾燥や肌荒れがほとんどですから、乾燥や肌荒れを改善するケアが必要になります。
2-1. 間違ったスキンケアを正す
肌のトラブルを招く最大の原因は、間違ったスキンケアにあります。
肌の乾燥や肌荒れを改善するケアは、角層のバリア機能を回復させることと、ターンオーバーを正常化することの2点がポイントになります。
2-1-1. 正しいクレンジングと洗顔
スキンケアにおいて、もっとも角層を傷つけてしまうのがクレンジングです。
クレンジングの目的は、油溶性のメイクを肌から浮かせて洗い流すこと。
そのために、クレンジング剤には、本来は混ざることのない水と油をなじませる界面活性剤という物質が多く配合されています。
界面活性剤は角層にダメージを与えます。
洗浄力の強いものほど界面活性剤も強力なので、オイルクレンジングなどは簡単に角層を破壊して細胞間脂質を溶かしてしまうのです。
肌が荒れているときは、クレンジングの必要がないライトメイクにするか、どうしても使わなければいけない場合は、比較的肌の負担が少ないクリームタイプや、オイルフリーのジェルタイプにしましょう。
それでも、クレンジング剤を肌にのせている時間は40秒以内に抑え、多少ヌルついていてもすぐに洗顔をする、W洗顔が基本です。
界面活性剤は、ほとんどの化粧品に配合されており、洗顔料にも多く含まれています。
洗顔は朝晩の2回、刺激の少ない固形石けんを使って、しっかり皮脂を落とすことが重要です。
皮脂は時間が経つと過酸化脂質になって、毛穴トラブルなどの原因になるので、肌に残すべきではありません。
しかし、肌荒れがひどいときは、ぬるま湯洗顔で様子をみることも必要になります。
2-1-2. 保湿ケアは美容液1本で!
肌が乾燥するのは、角層で水分を保持しているセラミドが減ってしまっているからです。
ですから、セラミドを増やす保湿ケアが必要になります。
角層のバリアがあるために、肌の表面にいくら水をつけても蒸発するだけで、肌のうるおいにはなりません。
これが、ほとんどが水分である化粧水で、肌の保湿ができない理由です。
化粧水をたっぷりつけるのも、スプレーするのも保湿効果はなく、かえって肌がもっている水分まで一緒に蒸発させてしまうので、乾燥を悪化させてしまいます。
セラミドは油溶性ですから、化粧水に配合することは難しく、補給するためには高濃度で配合された美容液が適しています。
洗顔の後は、自分の肌に合った保湿美容液のみ。
これが、自称「敏感肌」の人に最適なシンプル保湿ケアです。
決して、クリームや乳液の油分でフタをしてはいけません。
余分な油分は、毛穴のトラブルを招き、ターンオーバーを乱す原因になります。
皮脂腺が少ない目元や口元の乾燥が気になる場合のみ、少量のクリームを使ってください。
美容液だけのスキンケアについては「保湿美容液でシンプルスキンケア-化粧水が必要ない6つの理由」もぜひ参考にしてみてください。
2-1-3. 肌に負担をかけないUV対策
紫外線は肌に大きなダメージを与えますが、紫外線対策で使用する日焼け止めも、想像以上のダメージを角層に与えてしまいます。
日焼け止めには、有効成分として「紫外線散乱剤」か「紫外線吸収剤」のどちらか、または両方が配合されています。
散乱剤の方が、肌に与える刺激は少ないといわれていますが、毎日使用すれば、どちらも肌のダメージが蓄積し、角層は破壊されてしまいます。
ですから、肌の乾燥や肌荒れが気になるときはとくに、日焼け止めにたよらない紫外線対策が必要なのです。
日常は帽子や日傘を活用し、長時間の外出がわかっているときだけ、十分な効果がある強さの日焼け止めを使いましょう。
日焼け止めを使うと決めた日は、2時間ごとに塗り直し、帰宅してからしっかりと洗い流します。
2-2. 生活習慣を見直す
肌のコンディションは、生活習慣に大きく左右されます。
体によい生活習慣は、どこでも語られるように、適度な運動や快適な睡眠が欠かせない要素です。
ここでは、とくに肌に影響を与える食習慣と、ホルモンバランスについて解説します。
2-2-1. タンパク質とビタミンを重視した食生活
傷んだ角層を修復するためには、ターンオーバーを正常化しなければいけません。
そのために必要なのは、細胞の材料となるタンパク質と、その働きを助けるビタミンを充分に摂る食生活です。
糖質、脂質、タンパク質は三大栄養素と呼ばれます。
糖質(炭水化物)や脂質は、普通の生活をしているとあまり不足することはありません。
逆に過剰摂取になりやすいので注意が必要です。
糖質や脂質を摂りすぎると、タンパク質を硬くしてしまい、血液や血管にも悪影響しか与えません。
野菜中心の食事をしている人は、タンパク質不足に気をつけましょう。
肉類や魚類、大豆などから良質なタンパク質をしっかり摂る必要があります。
ビタミンでは、とくに肌や粘膜を丈夫にしてうるおいを保つ作用があるビタミンAと、保湿作用が高く、紫外線に対する抵抗力も高まるビタミンCが有効です。
2-2-2. 自分のホルモンバランスを理解する
女性の体には28日周期の生理周期があり、生理周期と同期している2つのホルモンの分泌が、肌や体調の変化をもたらします。
このしくみと自分のサイクルを理解しなければ、適切な肌荒れケアはできません。
女性ホルモンには、生理前に分泌される「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と、生理後に分泌が高まる「卵胞ホルモン(エストロゲン)」があります。
生理前は体が保護態勢に入るので、黄体ホルモンの影響で肌は水分を保とうとし、皮脂分泌も盛んになり、肌が敏感な状態になります。
生理後にエストロゲンが分泌される目的は、生理周期を維持して妊娠に向けた体づくりをすること。
この時期の体は女性らしさが強調されて、肌はうるおってふっくらとします。
3. 真性敏感肌の対処法
正しいとされるスキンケアや生活習慣を実践しても、肌が敏感な状態が続くのは、真性敏感肌と思って間違いないでしょう。
自分が生まれつき、肌が敏感であるとか、アトピー性皮膚炎であることがわかっている人も多いでしょう。
真性敏感肌の人のために「敏感肌用化粧品」が売られています。
しかし、なんでもいいというわけではなく、自分の肌の状態や体質をよく考えて使わなければ、悪化させてしまう場合もあります。
3-1. アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎とは、角層のバリア機能が低下した状態に、アレルギーの原因となるアレルゲンや、ストレスなどの環境的要因が重なって、肌が炎症を起こす病気です。
アトピー性皮膚炎には、遺伝的な要因がどこかにあります。
もっとも多いのは、角層の細胞間脂質が少ないことや、天然保湿因子(NMF)の材料になるタンパク質「フィラグリン」が少ないことによって、バリア機能が弱くなっていることです。
そのために、外部から刺激を受けると、湿疹やかゆみなどの症状が起きやすいのです。
ですから、バリア機能を高めることができれば、肌のアレルギー反応は抑えられ、炎症が起きにくくなります。
3-2. 化粧品でアトピー性皮膚炎は治らない
敏感肌用の化粧品でも、アトピー性皮膚炎を治すことはできません。
化粧品で炎症を治すことはできないからです。
しかし、化粧品によってアトピー性皮膚炎を繰り返す速度を遅くすることは可能です。
アトピー性皮膚炎は、肌の炎症を起こし、炎症が引いても乾燥が残ってしまう場合が多いという特徴があります。
その乾燥した肌をしっかり保湿すると、何もしないときに比べて、次の炎症が起こるまでの時間が長くなるというデータがあります。
アトピー性皮膚炎の治療では、皮膚科で塗り薬のステロイドホルモンや、タクロリムス軟膏が処方され、それらで炎症を鎮めた後に保湿をしっかり行うことで、再発を防ぐことができるのです。
3-3. シンプルな保湿ケアが重要
真性敏感肌に必要な保湿化粧品は、やはりセラミドが高濃度で配合された美容液1本です。
できるだけシンプルなスキンケアにして、肌の負担を抑えつつ、バリア機能を回復することが狙いです。
化粧品の成分はナチュラルな天然系がよくて、ケミカルな合成系はよくないと考えるのは間違いです。
「セラミド2」や「セラミド3」などの人型セラミドは合成系であり、天然系の動物由来や植物由来のものよりも保湿効果が高く、ハイグレードな保湿美容液にはヒト型セラミドが数種類使われているものが多くなっています。
3-4. パウダリーファンデーションを活用する
敏感肌でも紫外線対策は欠かせません。
しかし、日焼け止めや化粧下地は肌に強い刺激を与えるものが多いので、安心して使うことはできません。
それではメイクもしない方がいいのかというと、決してそんなことはありません。
メイクをすることによって、アトピー性皮膚炎のストレスが軽減されて、症状が落ち着いたという、日本香粧品学会の研究結果があります。
もちろん、炎症の症状が激しく出ているときはメイクをしない方がいいのですが、そうでないときは、敏感肌用のクリームを下地代わりに使い、パウダリーファンデーションを重ねるベースメイクがおすすめです。
パウダリーファンデーションは、日焼け止めに劣らないUVカット効果があり、しかもクレンジングの必要がないものも多く売られています。
3-5. 症状が悪化したら皮膚科を受診する
アトピー性皮膚炎の人は、すでに皮膚科に通院しているという人も多いでしょう。
そういう人は、ドクターと相談しながら化粧品を使っていることでしょうが、大切なことは、少しでも合わなかったり、違和感があるものはすぐに使用を中断して、肌の様子を2~3日見ることです。
毎日、注意しながらスキンケアやメイクをしていても、荒れる、かゆくなるという症状が出たときには、早く受診をして、自分に合う化粧品を探しましょう。
「皮膚科医がすすめる美肌のつくり方-皮膚科学にもとづく12のルール」の記事もご参考に。
まとめ
敏感肌用の化粧品は、グリチルリチン酸などの抗炎症成分や、ホホバオイルなどの抗菌成分が配合されているものもあります。
化粧品には「全成分の表示」が義務付けられていますから、人任せにすることなく、必ずすべての表示内容を確認しましょう。
化粧品の成分表示は共通な名称が用いられるので、いくつも見ているうちに、自分に合うものや合わないものがわかってくるはずです。
日本化粧品工業連合会のサイト(https://www.jcia.org/n/)に、「全成分表示名称検索」があり、成分名を入力すると詳細を検索することができるので活用してください。
【参考資料】
・『化粧品を正しく使えばあなたはもっとキレイになる。』 幻冬舎 川島眞 2014年
・『いちばん正しいスキンケアの教科書 吉木メソッドで美肌になる!』 西東社 吉木伸子 2014年
・日本化粧品工業連合会 web site