年齢を重ねるとともに、視力を大事さを実感することはありませんか?
近年は、LEDの普及によって、ブルーライトが目におよぼす悪影響ばかりがクローズアップされていますが、実はもっと怖いのが紫外線。
ブルーライトは、LED電球やパソコンモニター、スマートホンなどのLED機器を使わなければ目に入ることがありませんが、紫外線は、太陽の光があるところでは必ず目に入っていると考えたほうがいいのです。
しかも、1980年代以降は紫外線量が増えているといいます。
太陽の光がなければ、人間は生きていけません。
しかし、その太陽がもたらす紫外線によって皮膚や目に重大な障害が起こるとなると、太陽光がどのようなものか知っておきたいですよね。
ここでは、紫外線について詳しく説明してから、紫外線が原因で発症する目の病気と、紫外線から目を守る方法を解説します。
目次
1. 太陽光の一部である紫外線とは?
1-1. 太陽から地上に届く3種類の光
1-1-1. 可視光
1-1-2. 赤外線
1-1-3. 紫外線
1-2. 3種類の紫外線とは?
1-2-1. UV-A
1-2-2. UV-B
1-2-3. UV-C
1-3. オゾン層と紫外線の関係
1-4. 日焼けのしくみ
2. 紫外線が目におよぼす影響
2-1. 雪目
2-2. 白内障
2-3. 翼状片
2-4. 加齢黄斑変性症
3. 紫外線から目を守る4つの対策
3-1. 日陰を活用する
3-2. 帽子をかぶる
3-3. 目薬を使用する
3-4. サングラスをかける
1. 太陽光の一部である紫外線とは?
半径が地球の109倍もある巨大なガスの球体である太陽は、内部で水素が核融合反応を起こして、宇宙空間に膨大なエネルギーを放出し続けています。
地球に届く光もその太陽エネルギーであり、紫外線はその光の一部。
まず、紫外線と地球の関係を解説しましょう。
1-1. 太陽から地上に届く3種類の光
太陽が発した光は、地球を覆っている大気圏を通過するときに、いろいろな分子によって吸収、散乱され、目に見える「可視光」と、目に見えない「赤外線」「紫外線」が地上に届きます。
なぜ、そのような違いがあるのかというと、光は電波と同じように周波数をもっている電磁波で、その波長に違いがあるからです。
1-1-1. 可視光
可視光は1666年にアイザック・ニュートンが、「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」という7色に分かれて見えることを発見しました。
もっとも波長の長い光が赤色、短い光が紫色です。
可視光が物体に反射して目の網膜に届くことによって、人間は物体の存在を認識できます。
可視光は植物の光合成反応も担っています。
1-1-2. 赤外線
赤外線は、赤色よりも周波数の低い(波長が長い)光で、赤の外側という意味で「赤外光」「赤外線」と呼ばれます。
赤外線は目に見えませんが、熱として感じるので「熱線」とも呼ばれ、熱中症の原因になります。
温熱作用を利用する暖房器具や、散乱しにくい性質を利用するセンサ、リモコンなどに応用され、赤外線よりも周波数の低い電磁波が電波です。
1-1-3. 紫外線
地上に届く太陽光で、紫色よりも周波数の高い(波長の短い)光が「紫外線」です。
紫の外側という意味で「紫外光」「紫外線」と呼ばれます。
紫外線は、化学的な作用が強いことから「化学線」とも呼ばれ、その作用は殺菌灯などに利用されてきました。
その化学作用は、DNAの損傷をはじめとして、有害作用も大きいことがわかっています。
地上に届く太陽光は、可視光が約52%、赤外線が約42%、紫外線が約6%という割合です。
1-2. 3種類の紫外線とは?
紫外線は、周波数が紫色に近い方から、「UV-A」「UV-B」「UV-C」という3つの光に分類されています。
「UVカット」などにも使われる「UV」は、紫外線の英語「ultraviolet」を略したもので、日本語で「A波」「B波」「C波」と呼ばれることもあります。
それぞれの紫外線を簡単に説明しましょう。
1-2-1. UV-A
もっとも紫色に近い紫外線である「UV-A」は透過性が高く、窓ガラスなども透過するので、太陽光があるところには必ず含まれています。
大気圏での影響を受けにくいので、オゾン層で吸収されず、地上に届く太陽光の5~6%を占めています。
1-2-2. UV-B
UV-Aよりも波長の短い「UV-B」は、大部分がオゾン層で吸収されており、地上に届く太陽光の0.2%程度しかありません。
しかし、1光子あたりのエネルギーはUV-Aよりも大きく、皮膚の内部までは浸透しないものの表皮には大きな影響を与えます。
1-2-3. UV-C
UV-Bよりもさらに波長の短い「UV-C」は、オゾン層で吸収されてしまうので、地上には到達しません。
地球上では、殺菌ランプなどから放出されています。
UV-Cよりも波長の短い電磁波は、「X線」や「γ(ガンマ)線」などです。
1-3. オゾン層と紫外線の関係
46億年前に地球が誕生した頃、地球の大気に酸素はありませんでしたが、地上に海ができて光合成をするバクテリアの祖先が増殖すると、海中だけでなく大気にも酸素が増えていきました。
約27億年前から大気にオゾン層ができていくと、生物のDNAに損傷を与える有害な紫外線が吸収されるようになったために動物が地上に進出して、1億年前には現在と同じ大気になったといわれています。
地球で生物が進化することができたのは、オゾン層があったおかげなのです。
ところが、1980年代以降、冷蔵庫の冷媒として開発された「フロン」が大気中に放出されることによって、オゾン層の破壊がはじまりました。
オゾン層が破壊されることで、大部分が吸収されていたUV-Bは、地上まで届く量を増やしたのです。
世界中で、フロンの生産や使用を禁止するなど、オゾン層の保護活動が進められていますが、地球全体を1980年のレベルに戻すには、まだ数十年かかるといわれています。
1-4. 日焼けのしくみ
紫外線が皮膚におよぼす悪影響で、代表的なものが「日焼け」です。
紫外線によって日焼けを起こすしくみを簡単に説明しておきましょう。
紫外線が皮膚に当たると、皮膚のもっとも外側にある「表皮」では、肌や体の内部を紫外線から守ろうとして、メラニンという色素をつくり出します。
日焼けは、紫外線によって皮膚が赤く炎症する「サンバーン」と、色素が沈着して黒くなる「サンタン」があり、沈着する色素がメラニンで、通常は「ターンオーバー」という表皮細胞の生まれかわりによってはがれ落ちてしまいます。
ところが、あまりにも多くのメラニンがつくられてしまうと、いつまでも皮膚に色素が残り、やがてシミとなってしまうのです。
また、DNAの損傷反応であるサンバーンを繰り返すと、皮膚がんの原因になるといわれます。
シミの原因となるサンバーンやサンタンを引き起こすのはUV-Bで、透過性の高いUV-Aは表皮の下の「真皮」にまで到達してコラーゲンなどに損傷を与え、シワやたるみの原因となります。
2. 紫外線が目におよぼす影響
紫外線が皮膚に与える影響は、日焼けの原因が紫外線だということがはっきりしているのに対し、目に与える影響を意識するのは、目が充血する、目が痛いといった、紫外線以外の原因も多い症状なので、正しい知識が必要です。
紫外線が引き起こす目の病気を解説する前に、目でものが見えるしくみと、紫外線がなぜ目に悪いのか、簡単に説明しておきましょう。
虹彩が大きさを調節している瞳孔から入った光は、毛様体が厚さを変えてピント調節している水晶体を通り、透明なゲル状の硝子体を通過して網膜に当たります。
網膜に当たった光は視神経を通じて脳に伝わり、物を見ている像として認識されるのです。
眼球は紫外線吸収フィルターの働きももっており、UV-Bはほとんどは角膜で吸収されてしまいますが、透過性の高いUV-Aは水晶体まで到達し、長時間浴びると網膜まで達することも。
DNAを損傷させるほどの化学作用をもつ紫外線は、眼球にもいろいろな悪影響を与えます。
紫外線障害と呼ばれる目の病気で、代表的なものを紹介しましょう。
2-1. 雪目
角膜は「黒目」と呼ばれる部分。
雪面で反射した強いUV-Bを長時間目にしたり、殺菌灯を直接目にしたりして、角膜が炎症を起こした状態が「雪目」「雪眼炎」と呼ばれる角膜炎です。
電気溶接が原因で同じ症状を起こすものは「電気性眼炎」と呼ばれます。
目が痛い、充血する、涙が止まらないといった症状が現れ、通常は目を冷やして休ませれば1~2日で治りますが、ひどい場合は眼科の受診が必要で、抗生物質や角膜保護の点眼薬を処方してもらい、眼帯で保護します。
スキー場でゴーグルが欠かせないのは、紫外線を防御するため。
一時期流行した「日焼けサロン」で光を直視して、雪目になったケースもあります。
2-2. 白内障
タンパク質からできている水晶体は、紫外線を吸収すると酸化して凝縮します。
繰り返し紫外線を浴びることによって、水晶体が濁ってしまうのが「白内障」です。
白内障は、先天的なもの、外傷やアトピーによるものもありますが、近年、増加している老人性白内障は、長寿命化によって長年紫外線を浴びることが原因といわれます。
水晶体で光が散乱するので、目がかすむ、ものが二重に見える、まぶしいといった症状が現れ、進行すると視力が低下してメガネでも矯正できなくなります。
ごく初期のものは点眼薬で進行を遅らせることも可能ですが、一度濁ってしまった水晶体をもとに戻すことは現代の医学でもできません。
水晶体の中を吸い取り、人口のレンズを挿入する白内障手術が一般的に行われています。
かつては術後の視力矯正が難しかったため、見えなくなるまでまってから手術したほうがよいといわれていましたが、現在は人工レンズの進歩や手術の安全性が高まったことで視力を回復できるようになり、早めの手術をするケースが多くなっています。
2-3. 翼状片
白目の表面を覆っている「結膜」が、目頭の方から黒目に三角形状に入り込んでくる病気が「翼状片」です。
白目の一部が黒目に入り込んでしまったように見えます。
原因は明確になっていませんが、高齢者の場合は紫外線が関係していると考えられています。
結膜の充血や異物感といった症状がなければ放置しても問題はありません。
そうした症状が出た場合には点眼薬を用い、翼状片が瞳孔の近くまで伸びてきて乱視が発生した場合には、手術による根本治療が必要になります。
2-4. 加齢黄斑変性症
「黄斑」は、網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部位で、網膜でもっともよい視力が得られる部分です。
老化によってこの黄斑が委縮したり、異常な血管によって出血を起こしたりして、視力の低下を起こすのが「加齢黄斑変性症」。
欧米では失明原因の第1位で、比較的少なかった日本でも長寿命化によって増加し、失明原因の第4位となっています。
遺伝、喫煙などの生活習慣とともに、加齢黄斑変性症の原因となっているのが紫外線です。
視界の中心部がゆがむ、暗くなる、色がわからなくなるといった初期症状が現れたら、早期の治療が必要で、注射による「抗血管新生療法」、レーザーを併用する「光線力学的療法」、レーザーで網膜を焼く「レーザー光凝固術」が行われています。
3. 紫外線から目を守る4つの対策
紫外線から目を守るためには、目に太陽光を当てなければよいのですが、それでは昼間にものを見ることができません。
太陽光の下では、皮膚の紫外線対策をすると同時に、目の紫外線対策も必要なのです。
近年、目から入った紫外線が皮膚のメラニンを増加させることもわかりました。
皮膚で防御していても、目が紫外線を感知することで脳が紫外線を浴びていると判断し、皮膚で生成するメラニンを増加させてしまうのです。
皮膚の紫外線対策とともに、日常的な習慣としたい4つの対策を紹介しましょう。
3-1. 日陰を活用する
野外で何も道具がないときの唯一の手段であり、また、ほかの紫外線対策と併用できる日陰の活用は、皮膚と目を同時に防御することができます。
しかし、日陰に入るだけでは、完全な対策にはならないことを覚えておきましょう。
一般的に日陰で防御できる紫外線は50%程度といわれます。
体が日陰に入っていても、日向からの反射光や散乱光があるために、とくに日向側は紫外線を浴びてしまうのです。
標高が高いほど紫外線は強くなり、海や川などの水面は紫外線を強く反射しますから、海や山へ出かけるときには、皮膚も目も万全な対策が求められます。
とはいえ、ほかの手段と併用することを考えれば、まず日陰をうまく使うことは大事な対策法といえるでしょう。
3-2. 帽子をかぶる
帽子は、顔に当たる紫外線を防御するものと考えられがちですが、目を守るアイテムとしても重要です。
帽子のつばは、日傘と同じように意識的に日陰をつくるもの。
ですから、つばが大きいほど防御効果は高くなります。
前だけにつばのあるキャップの場合、太陽高度が65度のときに、つばの長さが5cmのもので50%、7cmのもので60%の防御効果があるとされます。
「もち運びができる日陰」である帽子は、日焼けや熱中症を予防すると同時に、目を保護することが可能ですが、水面や雪のあるところでは効果が著しく落ちることを覚えておきましょう。
3-3. 目薬を使用する
紫外線による目のダメージをケアする目薬、UVカット効果のある目薬が各メーカーから発売されているので、海や山、スキーへ行くときなどは活用するのもひとつの手段です。
代表的なものを3点紹介しましょう。
自分の体質に合ったものを選び、使用上の注意を必ず確認してください。
・ ロートUVキュア
販売元: ロート製薬
販売価格:10ml / 998円(amazon参考価格)
新陳代謝を高めるビタミンB6、アミノ酸類に加え、炎症を抑える硫酸亜鉛水和物配合で、紫外線が原因である角膜の炎症を鎮めます。
・ バイシンUV
販売元: 武田薬品
販売価格:10ml / 998円(amazon参考価格)
「硫酸亜鉛水和物」の収れん作用により紫外線などによる炎症を効果的に改善、「コンドロイチン硫酸エステルナトリウム」が紫外線を浴びた角膜の表面を保護します。
さらに充血クリア成分「塩酸テトラヒドロゾリン」配合で、紫外線による炎症等が原因の充血にも効果的。
・ サンテ メディカルガードEX
販売元: 参天製薬
販売価格:12ml / 1598円(amazon参考価格)
角膜にうるおいを与えて保護する6つの成分を最大濃度配合するなど、考え抜かれた10種の有効成分をバランス良く配合して、角膜のダメージを修復、保護します。
近年は、アイケアのサプリもいろいろなものが販売されており、中でも網膜を保護する働きがあるルテインを配合したものは紫外線対策として人気があります。
また、加齢黄斑変性の予防を目的としたサプリメントも各種販売されていますので、試してみるのもいいでしょう。
3-4. サングラスをかける
目の紫外線対策として最強のアイテムがサングラスです。
UVカット加工されたサングラスは、まぶしい光だけでなく紫外線もカットしてくれます。
欧米人がサングラスを多用するのは、目の色によって紫外線の防御効果が違うから。
瞳の色は、黒っぽいほどメラニンが多くて紫外線カット効果が高く、青がもっともメラニンの少ない色なのです。
サングラスを使用する際に気をつけなければいけないのが、レンズの色。
色の濃いものは可視光を多くカットするのでまぶしさがなくなり、瞳孔が開きます。
この状態で紫外線が目に入ると危険ですから、レンズの色は状況に応じてできるだけ濃くないものを選び、UVカット効果の高いものが必須となります。
サングラスと帽子の併用で、目に入る紫外線の90%以上を防御することが可能です。
まとめ
紫外線から目を守るためには、サングラスの使用が欠かせません。
メガネやコンタクトレンズも、UVカット効果があるものを活用してください。
反射して目に入る紫外線は、水面や雪で強くなることを解説しましたが、最近、問題視されているのが、都会のビル街における反射光や散乱光です。
ガラスに太陽が反射してまぶしく感じる可視光は、色の濃いサングラスでカットできても、紫外線はあくまでもUVカット機能がなければ防御できないことを忘れないでください。
【参考資料】
・『学んで実践! 太陽紫外線と上手につきあう方法』 佐々木政子 編著 丸善出版 2015年
・『新版 今さら聞けないスキンケアの正解』 吉木伸子 著 主婦の友社 2015年
・コーセー web site
・日本眼科学会 web site
http://www.nichigan.or.jp/public/disease.jsp
・日本眼科医会 web site
https://www.gankaikai.or.jp/health/51/
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