自分の肌に合ったクレンジングを選ぶのは、難しいことだと思っていませんか?
クレンジングはオイル、ジェル、クリームなど、いろいろなタイプがあって、次々と新しい商品も登場するので、どれが自分に合っているのか悩んでしまいますよね。
しかも、「クレンジングは肌の負担が大きい」「できれば使わないほうがよい」というような発言も目にするので、安心して使えるものなのかどうか心配になっても無理はありません。
クレンジングはメイク落としに使用するものですから、肌の状態だけでなく、メイクのしかたや濃さによって、ベストなチョイスは変わってきます。
ここでは、自分に合ったクレンジングを選べるように、ベースになっている3つの成分と、7タイプのクレンジング剤の特徴を解説します。
目次
1. クレンジング剤のベース成分
1-1. 水性成分
1-1-1. 水
1-1-2. 保湿剤
1-2. 油性成分
1-2-1. 炭化水素
1-2-2. 高級アルコール
1-2-3. 油脂
1-2-4. エステル油
1-3. 界面活性剤
1-3-1. アニオン界面活性剤
1-3-2. カチオン界面活性剤
1-3-3. 両性イオン界面活性剤
1-3-4. ノニオン界面活性剤
1-4. ベース成分以外の成分
2. クレンジング剤7タイプの特徴
2-1. クレンジングオイル
2-2. クレンジングリキッド
2-3. クレンジングジェル
2-4. クレンジングクリーム
2-5. クレンジングミルク
2-6. ポイントメイクリムーバー
2-7. クレンジングシート
1. クレンジング剤のベース成分
クレンジングに限らずほとんどのスキンケア化粧品は、「水」と「油」と「界面活性剤」という3つのベース成分が、70~90%を占めています。
クレンジングも、ベース成分はこの3つから成り立っており、タイプによって、
・水性成分と界面活性剤
・油性成分と界面活性剤
・水性成分と油性成分と界面活性剤
という組み合わせがあります。
それぞれのベース成分の性質や、クレンジングに用いられている主な成分を解説します。
成分表示は、配合量の多いものから表記されていることを覚えておいてください。
1-1. 水性成分
水性成分は、水に溶けやすい性質をもっている成分で、水、エタノール(エチルアルコール)、保湿剤に分類されます。
保湿剤は、保湿作用のほかにも、肌への浸透を高めたり、肌をやわらかくしたりする作用があります。「グリセリン」や「BG」がよく配合されます。
1-1-1. 水
医薬部外品では「精製水」や「常水」などと表記されますが、化粧品に使われる水も、基本的に不純物が取り除かれています。
「温泉水」なども、水の分類に含まれます。
水は蒸発するので、保湿剤と組み合わせることによって、肌の上に残るようにします。
粒子などを化粧品に溶かしこむ溶剤の役目ももっています。
1-1-2. 保湿剤
保湿剤に配合されているアルコールの一種であるグリセリンは、安全性が高く保湿力も強いので、多くの化粧品に使われています。
配合しても感触を変えることなく高い保湿性を発揮しますが、同じ保湿成分のヒアルロン酸やコラーゲン類と併用することによって、保湿効果はさらに高まります。
「温感クレンジング」や「ホットクレンジング」と呼ばれるものは、グリセリンが水と混ざると発熱する性質を利用したもので、こうした商品はグルセリンが多量に配合されているため、成分表示の最初に表記されています。
BGは、医薬部外品では「1,3-ブチレングリコール」とも表記される、アルコールの一種です。
グリセリンと同様に、保湿剤として多くの化粧品に配合されており、べたつかない性質をもっています。
保湿作用とともに、べたつかない性質を利用する触感調整や、菌が繁殖しにくい環境をつくる防腐作用があります。
防腐剤フリーをうたっているものや、防腐剤を減量しているものは、BGの防腐効果を活用しているものが多くなっています。
1-2. 油性成分
油性成分は水に溶けない性質の成分で、スキンケア化粧品では水分の蒸発を防いだり、肌のバリア機能を維持したりする目的で用いられます。
メイク化粧品は、肌になじんで化粧ノリをよくするために、油性成分が不可欠です。
クレンジングにおいては、油性のメイクを肌から浮かせる目的などで用いられます。
クレンジングに用いられる油性成分には、炭化水素、高級アルコール、油脂、ロウ、エステル油などに分類されるものがあります。
1-2-1. 炭化水素
炭化水素系の油性成分は、水分の蒸発を防止する作用が高く、低刺激性かつ変質しにくいので、安全性が高いという特徴があります。
クレンジングには、「ミネラルオイル」「ワセリン」「スクワラン」などが用いられます。
1-2-2. 高級アルコール
高級アルコールは、乳液やクリームの硬さ調整をしたり、肌の上での伸び具合をコントロールしたりする目的で配合されます。
クレンジングには、「ステアリルアルコール」や「セタノール」などがよく用いられます。
乳化安定作用がすぐれているので、界面活性剤の原料としても有効な成分です。
1-2-3. 油脂
油脂は、植物の種や動物の体内でつくられる油で、人間の皮脂と構造が似ているため、肌なじみがとてもよいという特徴があります。
水性成分の保湿は、角質層で水分を保持する「モイスチャー効果」ですが、油性成分の保湿は、水分の蒸発を抑えて皮膚をやわらかくする「エモリエント効果」です。
油脂は、このエモリエント効果が高く、肌への負担が少ないという性質をもっています。
クレンジングには、「オリーブ油」「マカデミアナッツ油」「米ぬか油」「アルガニアスピノサ核油」などがよく用いられます。
1-2-4. エステル油
油脂や、「ホホバオイル」などのロウは天然由来なので、産地や季節によって成分にばらつきが出てしまったり、価格が変動したりします。
そこで、同じような構造をもつ油を化学合成したものが、エステル油です。
化学合成油という名称は肌に悪いようなイメージがあるかもしれませんが、変質しにくい、品質が安定している、安価で大量生産が可能といった合成ならではのメリットがあります。
クレンジングには、「エチルヘキサン酸セチル」や「トリエチルヘキサノイン」などがよく用いられます。
1-3. 界面活性剤
「界面」とは境界面のことで、混ざりにくいものの境界面に吸着し、水と油の間を取りもって混ぜ合わせる働きをするのが界面活性剤です。
界面活性剤の分子には、水になじみやすい「親水基」と呼ばれる部分と、油になじみやすい「親油基」と呼ばれる部分が、通常は1つずつあります。
界面活性剤の分子は界面で、水と接する側に親水基を向け、油と接する側に親油基を向けて並び、両者をつなぎとめるのです。
界面活性剤は洗剤や化粧品だけでなく、食品や工業用途で多岐にわたって利用されており、いろいろな働きがありますが、クレンジングに利用されている機能は、主に2つです。
1つは、油を細かい粒にして水中に均一に混ぜる、もしくは水を細かい粒にして油中に均一に混ぜる、「エマルジョン(乳化)」という働き。
もう1つは、油汚れを球状にして肌から離脱させる「ローリングアップ作用」による洗浄です。
ほかに、液体の中に粒子などを均一に分散させる分散安定化を利用するものや、泡を起こす起泡作用を利用するものもあります。
クレンジングには通常、数種類の界面活性剤が配合されており、各種作用を調整したり、相乗効果を狙ったりします。
界面活性剤は、水に溶ける部分(親水基)がもつ性質によって、4つに分類されます。
1-3-1. アニオン界面活性剤
水に溶けるとマイナスの電気を帯びるのが、「アニオン(陰イオン)界面活性剤」です。
アニオン界面活性剤は、乳化、分散などの働きもありますが、なんといっても洗浄力に優れて泡立ちがよいのが特徴です。
石けんには欠かせない界面活性剤で、スキンケア関連では洗顔料やボディソープ、シャンプーなどによく使われます。
洗顔料に近いタイプの、洗浄力が強いクレンジングに配合されることもあります。
成分表示でアニオン界面活性剤の見分け方は、次のようなものです。
・「石ケン素地」などのように「石ケン」を含む
・「〇〇酸Na」「〇〇酸K」「〇〇酸TEA」(ステアリン酸Na、パルミチン酸Kなど)
・「〇〇グルタミン酸Na」「〇〇タウリンK」(ココイルグルタミン酸Na、ココイルメチルタウリンKなど)
1-3-2. カチオン界面活性剤
水に溶けるとプラスの電気を帯びるのが、「カチオン(陽イオン)界面活性剤」です。
プラスに帯電しているので、毛髪、衣服の繊維などマイナスの電気を帯びているものに吸着しやすく、空気中の水分と結びついて吸着部をやわらかくし、静電気を防止します。
カチオン界面活性剤は、リンスや柔軟剤などによく配合されます。
微生物のマイナスイオンに吸着して細胞壁を破壊する、殺菌・消毒作用も大きな特徴で、「逆性石けん」と呼ばれる消毒液や、殺菌剤として制汗剤、石けんなどに配合されます。
カチオン界面活性剤がクレンジングに利用されることは、あまりありません。
また、アニオン界面活性剤とは相反する性質ですから、同じ製品に使うと作用を打ち消し合ってしまいます。
成分表示での見分け方は、「〇〇クロリド」「〇〇ブロミド」「〇〇プロピルジメチルアミン」などが比較的多くなる点です(ステアルトリモニウムクロリド、ステアリルトリモニウムブロミド、ステアラミドプロピルジメチルアミンなど)。
1-3-3. 両性イオン界面活性剤
水に溶けると、マイナスとプラスのどちらの要素も併せもつのが「両性イオン界面活性剤」です。
溶液が酸性であればカチオン、アルカリ性であればアニオン、中性のときは「非イオン(ノニオン)」として働きます。
洗浄力、殺菌力、柔軟効果、帯電防止効果などを併せもちますが、アニオンやカチオンほどの作用はありません。
しかし、洗浄力や殺菌力をマイルドにして刺激性を弱める働きがあるので、化粧品や洗顔料、シャンプーなどには、ほかの界面活性剤の補助成分として配合されます。
クレンジングにも、低刺激をうたうものに、「コカミドプロピルベタイン」や「ココアンホ酢酸Na」などがよく使われます。
成分表示での見分け方は、「〇〇ベタイン」「〇〇オキシド」という表記のパターンに注目することです(ココアミンオキシドなど)。
1-3-4. ノニオン界面活性剤
水に溶けてもイオン(電気を帯びた分子や原子)にならない「ノニオン界面活性剤」は、どんな成分とも自由に組み合わせることができる性質があり、乳化作用に優れ、マイルドな洗浄力と控えめな泡立ちという特徴をもっています。
油性成分と水性成分を組み合わせたものが多く、クレンジングオイルやファンデーションには油になじみやすいもの、クレンジングリキッドやジェルには水になじみやすいものが、よく配合されます。
成分表示での見分け方は、次のようなものです。
・「〇〇ポリグリセリル-数字(オレイン酸ポリグリセリル-10など)」「〇〇ソルビタン(ステアリン酸ソルビタンなど)」
・「〇〇DEA(コカミドDEAなど)」「〇〇MEA(コカミドMEAなど)」
・「PEG-数字」を含む(PEG-60水添ヒマシ油などがあり、数字は大きいほど水になじみやすい)
・「〇〇グリセル(ステアリン酸グリセルなど)」
・「ポリソルベート〇〇(ポリソルベート60など)」
・「ソルベス」を含む(テトラオレイン酸ソルベス-30など)
・「ラウレス」「セテス」「オレス」「ステアレス」「ベヘネス」「トリデセス」「ミレス」「イソステアレス」「コレス」などに「-数字」がつく(ラウレス-4、ベヘネス-30など)
界面活性剤について詳しくお知りになりたい方は、「10分で界面活性剤がわかる!-8つの主な働きと3つの分類法」も、ぜひご覧ください。
1-4. ベース成分以外の成分
全成分中の10~30%にあたる、3つのベース成分以外の成分は、次のようなものです。
・機能性成分(増粘、保湿、美白、アンチエイジング成分など)
・品質向上・安定化成分(防腐、酸化防止、pH調整など)
・香料や着色料
クレンジングには、「トコフェロール(ビタミンE)」「フェノキシタール(パラベンと同じ防腐剤)」「カルボマーK(液体の粘性を高める増粘剤)」などが、よく使用されています。
防腐剤フリーや保湿成分などにこだわるときは、ここを確認するとよいでしょう。
2. クレンジング剤7タイプの特徴
クレンジングには、いろいろなタイプがあります。
今まで、パッケージや価格でなんとなく選んでいたという人も、それぞれのタイプの特徴と配合されている成分の特性が理解できると、肌の状態や、メイクの内容によって使い分けができるようになるはずです。
代表的な7タイプの特徴を解説しましょう。
2-1. クレンジングオイル
クレンジングオイルは、成分のほとんどを占める油性成分でメイクを浮かせ、20~30%配合されている界面活性剤が乳化させて、洗い流せるようにします。
メイクを落とす洗浄力が強いので、肌への密着度が高いウォータープルーフタイプのファンデーションや日焼け止めを使った日などに適しています。
しっかりメイクのクレンジングに向いているので、ライトメイクの状態で使用すると、肌を傷めて乾燥させてしまう可能性があります。
オイルタイプは、成分表示の最初に「ミネラルオイル」や「エチルヘキサン酸セチル」といった油性成分が書かれているので、見分けるのは簡単です。
配合されている油性成分によって、炭化水素系オイル、油脂系オイル、エステル系オイルなどに分かれます。
2-2. クレンジングリキッド
クレンジングウォーターとも呼ばれるリキッドタイプのクレンジングは、成分の基本的な構成が洗顔料と似ています。
主成分は水性成分で、成分表示は最初の方に「水」「グリセリン」「BG」などがあり、ノニオン系界面活性剤が多く配合されているのが特徴です。
テクスチャーはサラサラとして液状のものが多く、たいていは濡れた手でも使えるので、バスルームで使用できる便利さがあります。
また、界面活性剤が多いので洗浄力が強く、ベースメイクが濃いときに向いています。
2-3. クレンジングジェル
ジェルタイプのクレンジングは比較的新しいタイプで、リキッドタイプに増粘剤を加えて使いやすくし、メイク汚れとなじませるときの摩擦を抑えたものからはじまりました。
ジェルタイプには水性と油性があり、水性にもオイルインとオイルフリーがあります。
油性のジェルはメイクとのなじみがよいので、ハードメイク向きです。
水性のオイルフリーのものは、刺激性が抑えられている分、洗浄力が弱めなのでナチュラルメイク向き、水性のオイルインは一般的に中間的な性質です。
2-4. クレンジングクリーム
クリームタイプは油性成分が多く、かつてはティシュで拭き取るものが主流でしたが、今は水性成分と界面活性剤を配合して洗い流すタイプも増えました。
界面活性剤が少なめで、洗い流すタイプのクレンジングクリームは、肌への刺激が弱くてほどよい洗浄力があるので、とくに肌が乾燥気味のときや、敏感肌に向いています。
成分の基本構成は、保湿クリームなどと似ていますが、拭き取ったり洗い流したりするので、肌への有効成分は、配合されていてもあまり期待できません。
2-5. クレンジングミルク
乳液状のクレンジングミルクも、クリームタイプと同じように、油性成分が多めで水性成分と界面活性剤が配合されています。
なめらかなテクスチャーと、肌になじみやすいのが特徴で、洗浄力、刺激性ともに抑えめのものが多いのですが、中には強い洗浄力をもつものもあるので、成分表示でアニオン界面活性剤の有無を調べましょう。
「ステアリン酸K」などのアニオン系があれば、洗浄力が強めであると考えられます。
2-6. ポイントメイクリムーバー
メイクに濃い部分がある場合に、その部分に合わせてクレンジングを選ぶと、肌への刺激が強くなってしまいます。
目元や口元にはポイントメイクリムーバーを活用して、肌の負担を抑えましょう。
ポイントメイクリムーバーには、目元専用、口元専用、目元口元両用があります。
ただし、ポイントメイクリムーバーは界面活性剤の作用が強力なので、使用前にはパッチテストを行い、肌に合わない場合はすぐに使用をやめましょう。
2-7. クレンジングシート
美容医療の専門家や、皮膚科の医師のほとんどは、クレンジングを「肌に悪いもの」と発言しています。
その中でも、使ってはいけないアイテムとしてあげられるのが、「クレンジングシート」です。
クレンジング剤を染み込ませたコットンで、肌をこすることになるクレンジングシートは、どうしても肌への刺激が強くなりがちなのです。
しかし、突然の宿泊などでは、あると重宝するアイテムです。
デイリースキンケアで使うものではなく、バッグに忍ばせておく緊急アイテムと考えましょう。
まとめ
クレンジングの使用でもっとも大事なことは、肌の状態やメイクの濃さによって使い分けることです。
メイクが濃い日はオイルタイプやジェルタイプ、ライトメイクの日や、肌が乾燥気味のときは洗い流すクリームタイプやミルクタイプというように、それぞれのタイプや製品の特長を活用して使い分けられたら、肌の負担も少なくすることができます。
ベース成分の概要がわかれば、タイプごとの特徴もだんだん理解できるようになります。
ただし、ここで解説したのは一般的な例なので、実際に製品を選ぶときにはタイプだけで判断せずに、成分表示を確認してください。
界面活性剤は日進月歩の研究が続けられていて、次々と新しいものが開発されます。
クレンジングも、低刺激で洗浄力の高いものへと進歩を続けることでしょう。
「美白によいクレンジングと洗顔-知らなければいけない10の真実」という記事でもクレンジングについて詳しくご紹介しておりますので、ぜひご参考にしてみてください。
【参考資料】
・『化粧品成分表示のかんたん読み方手帳』 永岡書店 2017年
・『トコトンやさしい界面活性剤の本』 日刊工業新聞社 2010年
・『コスメティックQ&A事典』 中央書院 2011年