ニキビは、見た目がわるくて跡も残りやすいので、何としても治したいですね?
ニキビは10代の人に多い肌トラブルというイメージがありますね。
しかし、最近は20代以上の人にもできる「大人ニキビ」が増えています。
30代40代の人にできるとされた「吹き出物」とは、大人ニキビのことなのです。
大人ニキビはオイリー肌に限らず、乾燥肌の人にも多く、生理前に悪化するといった特徴があります。
ここでは、「ドライニキビ」とも呼ばれる、乾燥肌にできる大人ニキビの原因と、5つの
対策法を解説します。
ドライニキビができるしくみを理解して、正しいケアをしてください。
目次
1. ニキビができるしくみ
1-1. 肌と毛穴の基本構造
1-2. 角層バリアとターンオーバー
1-3. 乾燥肌とは水分が20%をきった状態
1-3. 大人ニキビの様々な原因
1-4. ニキビが成長する段階
2. 乾燥肌のニキビを改善する5つのケア
2-1. 油分を避けて保湿ケア
2-2. 毛穴詰まりを解消するピーリング
2-3. ビタミンCで皮脂の酸化を防ぐ
2-4. ホルモンバランスを改善する生活習慣
2-4-1. 睡眠
2-4-2. 食事
2-4-3. ストレスケア
2-5. 漢方薬で根本改善
1. ニキビができるしくみ
ニキビには、「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という正式名称があり、顔の中では額や口の周りにできやすく、胸や背中の上部などにもできます。
ニキビは炎症で、必ず毛穴に皮脂がつまることによって起こります。
なぜ必ず毛穴で炎症が起きるのかといえば、毛穴から皮脂が分泌されるからで、毛穴と皮脂腺の出口がいっしょになっていることに、ニキビができるしくみのカギがあります。
1-1. 肌と毛穴の基本構造
人間の皮膚は、もっとも外側の部分の「表皮」、その内側の「真皮」、さらに内側の「皮下組織」という3つの層で成り立っています。
表皮は外側から、「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」という4層で成り立ち、その大部分を「表皮細胞」が占めています。
表皮には、外部の刺激から肌を守り、体内の水分を保持する役割があり、その重責の大部分を担っているのが一番外側の角層です。
真皮は、網目状に広がっているコラーゲンが70%を占め、エラスチンやヒアルロン酸がそれを支えて肌の弾力を保っています。
真皮の下は皮下脂肪などがある「皮下組織」です。
肌の表面には汗孔(汗の出口)や毛孔(毛穴)があり、毛孔からは毛幹(毛)が出ていて、真皮部分にある毛孔の根本には、毛球があります。
毛孔は皮脂を分泌する皮脂腺とつながっているので、皮脂は毛孔から排出されます。
皮脂は汗と皮脂膜をつくって肌に広がり、水分の蒸発を防ぐ保湿の一部を担っています。
1-2. 角層バリアとターンオーバー
角層では、角質細胞がレンガのように何層も積み重なり、その間をセメントのように「細胞間脂質」が埋めていて、外部からの水や異物の侵入を防ぎ、肌の水分を保持しています。
これが「角層のバリア」と呼ばれる機能で、角層がなんらかの理由で傷つくと、バリア機能が低下して保持する水分量が減ってしまい、肌が乾燥状態になるのです。
表皮の一番下にある基底層では、次々と新しい表皮細胞が生まれます。
表皮細胞はだんだん上部に押し上がっていき、死んで角層の角質細胞となり、やがて新しい細胞に押し上げられるようにしてはがれ落ちます。
この表皮細胞が生まれ変わる代謝のサイクルを「ターンオーバー」と呼び、若い人では約28日間かかり、年齢を重ねると代謝が落ちてサイクルが長くなります。
1-3. 乾燥肌とは水分が20%をきった状態
角層の細胞間脂質の50%を占めているのは、水と結合して蒸発を防ぎ、肌の水分を保っている「セラミド」という物質です。
セラミドと水の分子は交互にサンドイッチ状に積み重なって層を作り、水を保持しています。
セラミドの間に挟まれた水分は、たとえ空気中の湿度が0%になっても蒸発しません。
気温がマイナス20度になっても凍らないという特性もあります。
肌の水分を守っているものには、「セラミド」以外に「天然保湿因子」と「皮脂」があります。その働きはセラミドが約80%であるのに対して、天然保湿因子が17~18%、皮脂が2~3%といわれます。
この割合でわかるように、乾燥肌のもっとも大きな要因は、セラミドの保水機能が低下することにあるのです
さらに、ターンオーバーの機能が低下すると、古い角質細胞がはがれずに残ってしまうので肌はくすみ、カサカサ肌の原因にもなります。
これらの要因で角層の水分量が20%をきった状態を、「乾燥肌」と呼ぶのです。
1-4. 大人ニキビの様々な原因
ニキビの直接的な原因は、毛穴の出口の角質細胞が厚くなり、毛穴をふさいでしまうことにあります。
ふさがれた毛穴に皮脂がつまり、皮膚の常在菌の一種である「アクネ菌」という菌が増えすぎてしまうのです。
しかし、必ずしも皮脂分泌が多いためということではありません。
大人ニキビがオイリー肌でなくてもできるのは、毛穴のつまる要因が皮脂過多だけでなく、いろいろとあるからなのです。
乾燥肌にできる大人ニキビの要因は、まだ皮膚科学ですべてが解明されているわけでなく、人によって様々なのですが、ホルモンバランスの乱れが注目されています。
ホルモンバランスの乱れを改善するためには、規則正しい生活や食事バランスに気をつけて、ストレスを溜めこまないことが重要です。
さらに、油分の多いクリームなどを避けて、肌の水分を高めるスキンケアが求められます。
1-5. ニキビが成長する段階
ニキビの進行過程は、ステージ1からステージ4までに分類できます。
もちろん、ステージ4まで進行せずに途中で治る場合もあります。
「アクネスカー」と呼ばれるニキビ痕が残ると修復しにくいので、早めに治療して痕を残さないことが大事です。
ステージ1
毛穴の出口が角化異常を起こして角質細胞が厚くなり、毛穴をふさいでしまう。
ステージ2
毛穴がふさがれると皮脂が中につまってしまい、皮脂を栄養にするアクネ菌が過剰に繁殖し始める。
「白ニキビ」と呼ばれる状態。
ステージ3
つまった毛穴の中や周囲に白血球が集まって、アクネ菌を攻撃する。
炎症を起こして赤くはれるので、「赤ニキビ」と呼ばれる状態。
ステージ4
炎症がひどくなると、毛穴の壁が壊れて周囲の皮膚組織にも炎症が広がり、肌の表面にできた赤ニキビはつぶれると膿が出る。
毛穴周りの皮膚組織が壊れると陥没が残り、「ニキビ痕」が残る。
2. 乾燥肌のニキビを改善する5つのケア
ニキビは炎症がおさまれば治りますが、問題は痕が残ってしまうことです。
痕を残さないためには早めの治療と、「つぶさない、いじらない」というケアが必要です。
スキンケアやメイクの最中に、つぶさないよう気をつけましょう。
ここからは、乾燥肌にできる大人ニキビのケアで、効果の高いものを5つ紹介します。
すべての人に5つのケアが有効であるとは限りませんが、これらのケアを併用することで多くのニキビは改善するはずです。
2-1. 油分を避けて保湿ケア
ニキビは、余計な油分を与えないスキンケアが基本です。
乾燥肌にできるニキビも、油分を増やさずに、水分の補給をしっかり行うケアが大事です。
乾燥肌は、水分も油分も不足している状態ですが、ニキビができている部分に油分は禁物です。
乾燥肌といえども、朝晩の洗顔で皮脂を落とす必要があります。
皮脂は肌の水分を保持する働きがある一方で、古くなると酸化してニキビを悪化させるのです。
油分を避けた保湿を欠かしてはいけません。
水分が不足すると、毛穴の出口の角質細胞が厚く硬くなってしまうので、肌の保湿をしっかり行って柔らかい状態に保つことが、ニキビの予防になります。
効果的な保湿ケアには、セラミドやヒアルロン酸が高濃度で配合された美容液がむいています。
保湿美容液で、乾燥肌のケアと同時にニキビ対策も行えます。
市販されているニキビ用の塗り薬は、アクネ菌の繁殖を抑える「硫黄」や「グリチルリチン酸ジカリウム」などの殺菌成分が配合されていて、肌への刺激が強いので、乾燥肌の人は使用に注意しなければいけません。
2-2. 毛穴詰まりを解消するピーリング
角質ケアのピーリングは、厚くなった角質細胞を取り除くことによって、毛穴をつまりにくくします。
ピーリングには、ピーリング化粧品を使って自宅でできるものと、美容皮膚科で行う「ケミカルピーリング」と呼ばれるものがあります。
どちらも、酸の効果によって表層の角質細胞をはがすケアです。
乾燥肌の人は、ピーリング化粧品の選択に注意が必要です。
自宅で使用するピーリング化粧品は、フルーツに多く含まれることからフルーツ酸とも呼ばれる「AHA(アルファヒドロキシ酸)」を配合したものが主力です。
AHAはとても有効なピーリング成分ですが、角層が傷ついているときには、酸の刺激が強すぎる場合があります。
最近は、比較的肌への刺激が少ない天然酵母やハーブの効果を利用するピーリング化粧品が販売されているので、乾燥肌の人にはおすすめです。
AHAを配合したものよりピーリング効果は落ちるものの、安心して使うことができます。
使用法の注意事項として、ふきとりタイプやこするタイプのものは、肌への刺激が強くなるので、乾燥肌にはむきません。
塗ったままにするタイプは、肌の負担が比較的軽くなりますが、安心して使えるのは洗い流すタイプのものです。
使用頻度は商品にもよりますが、通常は週に1~2回が目安になります。
乾燥肌の場合は、とくにピーリング後の保湿をしっかり行う必要があります。
美容液がしみるようなときは、角層が大きなダメージを負っているので、ピーリングはやめておきましょう。
美容皮膚科で受けるケミカルピーリングは、より高い効果が期待できます。
まず、乾燥肌の状態を医師とよく相談してください。
2-3. ビタミンCで皮脂の酸化を防ぐ
ビタミンC誘導体が配合された化粧品も、ニキビケアに効果的です。
ビタミンCには、抗酸化作用でニキビの炎症を抑える、紫外線による肌のダメージを抑える、皮脂の分泌を抑えるといった働きがあり、スキンケアには欠かせない成分です。
ニキビの原因は、毛穴につまった皮脂が酸化して過酸化脂質になることです。
活性酸素や過酸化脂質を抑制するビタミンCの抗酸化作用は、ニキビの予防として大変効果が高いのです。
さらに、ビタミンCには、ニキビ痕の色素沈着や皮膚陥没を修復する働きもあります。
しかし、ビタミンCは水溶性なので、角層へ浸透しません。
そこで、リン酸と結合させることにより、普通のビタミンCより数十倍も皮膚に吸収されやすくしたものが、ビタミンC誘導体。
「リン酸アスコルビル」と書かれている成分が、リン酸と結合させたビタミンC誘導体です。
ビタミンC誘導体には、ほかの成分と混ざると効果が下がるという特徴があります。
ですから、ビタミンC誘導体が配合された化粧品を選ぶときには、シンプルな化粧水タイプが効果的です。
ドライニキビの洗顔後ケアは、ビタミンC誘導体配合の化粧水をつけ、セラミドかヒアルロン酸配合の美容液で保湿するという方法が最適です。
2-4. ホルモンバランスを改善する生活習慣
ホルモンバランスの乱れは、ニキビができる大きな要因のひとつです。
男性ホルモンが多いとニキビができやすいと言われることがあります。
しかし、男性ホルモンが異常に高くなって生理が止まってしまうような場合を除き、男性ホルモンだけでは、ニキビの原因を説明できません。
生理前に増える黄体ホルモンも、ニキビができる要因になることがわかっています。
ところが、男性ホルモンも黄体ホルモンも体に必要なもので、薬などで下げることはできないという難しさがあります。
ホルモンのバランスを整えるためには、生活習慣を見直して体の中から健康になる以外、方法がないのです。
睡眠、食事などを見直して、ストレスを溜め込まない生活を目指しましょう。
2-4-1. 睡眠
睡眠不足は、免疫力が低下するので、ニキビが化膿する要因になります。
最適な睡眠時間は人によって差がありますが、12時半くらいまでには眠りにつき、少なくとも6時間以上の睡眠時間を保持することが、健康な睡眠習慣の目安とされます。
同じ睡眠時間でも、寝具や部屋の環境を整えることで、さらに睡眠の質を上げることができます。
平日は多少寝不足気味だけど、週末に寝だめして体を休めるという生活を続けることは、ホルモンバランスの乱れにつながります。
毎日の規則正しい生活が、良好な新陳代謝や体内時計を維持し、健康な体の基礎となるのです。
2-4-2. 食事
「バランスの良い食事」という言葉で最初に思い浮かべるのは、野菜を毎日しっかり食べるということだと思います。
しかし、大事なのは野菜のとりかたです。
サラダに使われる生野菜は、ビタミン含有量が少ないものが多く、体を冷やしてしまいます。
乾燥肌やニキビケアを考えるのであれば、ビタミンとミネラルが豊富な緑黄色野菜を温野菜の形で食べるようにしましょう。
新しい肌をつくりだすために必要なタンパク質をしっかりとることも大事です。
毎日、肉類や魚類、大豆などから、良質なタンパク質をとりましょう。
甘いものと脂っぽいものは、ニキビの要因をつくります。
とくにリノール酸は皮脂の分泌を増やすので、揚げ物などは要注意です。
2-4-3. ストレスケア
最近とても多いのが、ストレスが原因になってニキビができてしまうケースです。
適度なストレスには、体の自然治癒力を高めたり、筋力を高めたり、生きる意欲を高めたりという、良い効果もあります。
通常は、いろいろなことで受けるストレスを日々解消しながら生きるのですが、処理しきれないうちに次々とストレスを受ければストレス過多の状態になり、心身に悪影響を与えます。
胃腸の調子が悪くなる、睡眠不足になるといった影響が出てくると、免疫力の低下を招き、ニキビができやすくなります。
ストレスケアは、人によっていろいろな方法があるはずです。
しかし、健全な心と体は表裏一体となって成り立つもの。
睡眠、食生活、運動といった生活習慣を見直して体を健康に保つことが、日々のストレスを溜め込まない強い精神のベースになることは間違いありません。
2-5. 漢方薬で根本改善
慢性化してしまったドライニキビには、漢方薬が有効です。
漢方薬にはホルモンバランスを整えたり、免疫力を高めたりする効能もありますから、根本的な改善を目指すのであれば、検討してみましょう。
漢方薬は市販されているものから、自分の体質に合うものを選んで服用する方法もありますが、病院で処方してもらうと保険が適用されます。
体に合わないものを服用すると副作用があるので、病院での処方が安心です。
皮膚科で漢方を扱う病院は少ないので、内科などで漢方を専門に扱う病院を探して、乾燥肌やニキビに対応してくれるか相談をしてみるといいでしょう。
まとめ
ニキビは間違ったケアをしていると、痕を残してしまうことになります。
セルフケアをしても、治らなかったり再発を繰り返したりする場合は、早めに皮膚科や美容皮膚科を受診しましょう。
皮膚科ではそのときにできているニキビの治療が中心となり、美容皮膚科では赤みやニキビ痕の治療も行います。
ニキビ対策とともに、乾燥肌の対策も同時に進めることが、美肌への近道です。
しっかりとした保湿ケアを基本として、症状に応じたニキビケアをしてください。
【参考資料】
・『いちばん正しいスキンケアの教科書』 西東社 2014年
・『皮膚のトラブルが治らないときの本』 小学館 2009年
・『ようこそ! 私のニキビクリニックへ』 海苑社 2001年