もち麦が健康食として話題になっています。
白米と一緒に炊くことができ、もちもちとした食感で美味しく食べられるだけでなく、ダイエット効果や様々な健康効果が期待できるため、テレビの健康番組で取り上げられると店舗ではもち麦の品切れが続いたといいます。
そんな人気のもち麦とはどのようなものなのか、成分や健康効果、美味しく食べるためのコツや美味しいレシピをご紹介していきます。
目次
1 もち麦とは
1-1 もち麦は大麦の中で「もち性」のもの
1-2 もち麦の栄養成分の特徴
1-3 もち麦と白米の比較
2 もち麦のダイエット・健康効果
2-1 ダイエット効果
2-2 腸内環境の改善効果
2-3 便秘解消効果
3 もち麦の調理法と美味しいレシピ
3-1 もち麦の加熱調理のコツと保存方法
3-2 美味しいもち麦レシピ
3-2-1 朝食におすすめレシピ
3-2-2 昼食におすすめレシピ
3-2-3 夕食にも便利!作り置きレシピ
4 おすすめのもち麦
5 まとめ
1 もち麦とは
1-1 もち麦は、大麦の中で「もち種」のもの
もち麦は、昔からお米売り場で売られている「押し麦」と同じ大麦です。お米に「うるち米」と「もち米」があるのと同様に、お米と同じイネ科の大麦にも「うるち麦」「もち麦」があります。
うるち種ともち種の違い
うるち種ともち種の違いは、グルコースというでんぷんの構造です。
【うるち種】
グルコースが直線状に繋がっているアミロースとアミロペクチンの2種類で構成されています。
【もち種】
グルコースのほとんどが網目状に繋がっているアミロペクチンで構成されています。
でんぷんが網目状に繋がっているアミロペクチンは加熱によって粘性を持つので、もち米やもち麦はもちもちした食感となるのですね。
逆に、うるち麦から作る押し麦は、でんぷんが直線状に繋がっているため粘性が少なく、お米と一緒に炊くとさらっとした食感です。とろろ芋に麦ごはんを合わせることが多いのも、粘度の高いとろろ芋をさらっとした麦ごはんの食感とのバランスで食べやすく美味しくするためです。
押し麦ともち麦の色が違う理由
押し麦は「うるち麦」を精麦(外皮を取り除くこと・お米でいう精米)して加熱し、ローラーで平たく伸ばして乾燥させたものです。外皮は完全に取り除くことが多いので、色は白くなっています。
もち麦はメーカーによって精麦の割合が違います。茶色いものほど外皮を残してあり、白いものは外皮を取り除いてあります。
1-2 もち麦の栄養成分の特徴
もち麦の栄養成分として特徴といえるのは、水溶性食物繊維が豊富なことです。とくに特徴的なのはβグルカンを多く含むこと。
βグルカンとは
βグルカンはきのこ類や大麦、酵母の細胞壁に含まれます。
グルコースの主鎖1に対して3の分岐を持つ構造の「β1.3グルカン」はアガリクスなどに含まれその機能性が注目されてきました。
しかし主鎖1に対して4つの分岐を持つ構造(β1.4)のセルロースは同じβグルカンでもまったく機能性を持たないことが分かっており、正確にいうとβグルカンのすべてが身体に良いということではないようです。
大麦のβグルカンは、「β1.3-β1.4」ですので、機能性を持つ構造が含まれます。
βグルカンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
日本食品分析センター「βグルカン」
βグルカンの効果
βグルカンは、薬剤やサプリメントに応用されています。また、漢方薬の中にはβグルカンを含むものが多く、茯苓、猪苓、霊芝、冬虫夏草などがそれにあたります。
・日常的に摂取することで腸内環境を整える
・コレステロール値を下げる
・がん細部の増殖を抑制する
・免疫力を高める
自然の食物の中では、もち麦などの大麦、きのこ類などに多く含まれるので日常的に摂取することでこのような効果が期待できます。
1-3 もち麦と白米の比較
豊富な食物繊維
もち麦には食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維の量は、100gあたり白米が0.5gに対してもち麦は13gと、なんと25倍もあります。
「食物繊維」というと、ゴボウの筋のような繊維質なものをイメージする人も多いと思います。ところが、食物繊維はネバネバするものからさらさらと水に溶けるものまで、形状はいろいろあります。食物繊維の定義は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」となっています。
もち麦は水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維の療法を含み、とくに水溶性食物繊維は大変多く含まれています。
厚生労働省策定の食事摂取基準[2005年版]によれば、1日あたりの目安量は、30~49歳では男性26g、女性20g、50~69歳では男性24g、女性19gとなっています。エネルギー摂取量とあわせて考え、おおよそ1000kcalに対して10gの食物繊維を取ることが望ましいとされています。
「厚生労働省e-ヘルスネットより」
タンパク質・ビタミン・ミネラルも豊富
白米と比べるともち麦には、たんぱく質は約1.7倍、ビタミンB₁は約4倍も含まれています。
さらに摂取しにくいと言われる亜鉛は白米の約3倍、マグネシウムは約9倍と、もち麦には様々なミネラルも含まれています。
2 もち麦のダイエット・健康効果
2-1 もち麦4つのダイエット効果
もち麦のダイエット効果にはこのようなものがあります。
便秘解消でダイエット
もち麦は、水溶性食物繊維・不溶性食物繊維のどちらも多く含んでいます。
もち麦やきのこ類にも多く含まれるβグルカンという食物繊維は、胃で消化されず腸まで届くため便秘解消に役立ちます。また、もち麦を毎日食べることで腸内環境が改善されて便秘が解消されることもダイエットにつながります。
カロリーオフでダイエット
白米を炊いたごはんは茶碗1杯で約250kcalですが、白米:もち麦を2:1で炊いたもち麦ごはんは約200kcalとなり、約50kcalのカロリーオフになります。
また、もち麦を入れることでよく噛んで食べるようになるため、少量でも満腹感を得やすくなることから主食の量を減らしてもあまり我慢をせずに済みますね。
糖質の吸収を抑えてダイエット
もち麦に含まれるβグルカンという水溶性食物繊維は、食後血糖値の上昇を抑えることがわかっています。そのため、糖質の吸収がおだやかになり、ダイエット効果につながります。
満腹感が持続してダイエット
もち麦の特徴に、腹持ちの良さがあります。白米に3割程度のもち麦を混ぜて炊いた「もち麦ごはん」をごはんの代わりに食べることで、よく噛むようになるため食事のときに満腹感が感じられる上、その後の腹持ちも良く間食を防げますのでダイエットにつながります。
2-2 腸内環境の改善効果
もち麦を日常的に食べることで、腸内環境が改善される効果が期待できます。
最近よく耳にする「痩せ菌」「デブ菌」という言葉ですが、これは腸内の菌のことです。
(2006年ワシントン大学での実験)
腸内を同じ無菌状態にした2匹のマウスのうち、1匹に太った人の腸内細菌を、もう1匹には痩せた人の腸内細菌を移植しました。
その後同じ環境、同じエサで育てたところ、太った人の腸内細菌を移植されたマウスの方が痩せた人の腸内細菌を移植されたマウスよりも、20%も脂肪量が多くなりました。
この実験の結果から特定された脂肪蓄積防止菌がバクテロイデス門です。
太った人の腸には「デブ菌」といわれる「ファーミキューテス門」が多く存在し、痩せた人の腸には「痩せ菌」といわれる「バクテロイデス門」が多く存在します。
もち麦に含まれるβグルカンは腸内の「痩せ菌」を増やすといわれているので、長期間食べ続ければ腸内環境を改善する効果が期待でき、その結果痩せやすい身体になるのですね。
2-3 便秘解消効果
もち麦には水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の両方が多く含まれています。
とくに水溶性食物繊維は私たちが日常食べている食品からは摂取しにくいものです。もち麦のように主食として1食で量を食べることができ、毎日摂取できる食品に水溶性食物繊維が多く含まれているのはとてもありがたいですね。
もち麦の「腸内環境改善効果」についてご紹介しましたが、便秘が解消されることでも腸内環境は良くなりますので、もち麦を毎日食べることで、さらに太りにくい体質に変わることができると期待できます。
3 もち麦の調理法と美味しいレシピ
3-1 もち麦の加熱調理のコツと保存方法
もち麦を毎日食べるために、主食として食べる「もち麦ごはん」と、料理に使いやすい「ゆでもち麦」をご紹介します。
家族にもち麦が苦手な人がいて自分だけがもち麦ごはんにしたい場合はこの「ゆでもち麦」を自分のごはんと混ぜれば良いので作り置きしておくと便利です。
もち麦ごはん
●白米ともち麦の割合について
白米2合にもち麦1合の割合は、炊飯器で美味しく炊きやすい分量です。そして、これまで白米を主食にしていた人にとって抵抗なく美味しく食べられる割合です。
ダイエット効果をより高めたい場合は、白米ともち麦を1:1と同量にすると良いでしょう。ただし、お腹がゆるくなることもありますので最初はやはり白米:もち麦=2:1かそれ以下の割合から始めると良いですよ。
●水加減について
白米2合にもち麦1合の場合、水加減は炊飯器の3合と4合の目盛りのちょうど真ん中にします。つまり、3合より多めの水で炊くということですね。一度この水加減で炊いてみて、お好みで調節してください。
白米1合にもち麦1合で炊く場合、水は2合の目盛りよりちょっと上くらいまで入れて炊いてください。
●炊き方について
白米はいつも通りにとぎます(無洗米ならそのままで大丈夫です)。もち麦は洗わずそのまま加えます。
水加減をして夏は30分、冬は1時間程度お米に吸水させてから炊飯器のスイッチを入れると美味しく炊けます(急いでいるときはすぐに炊いても大丈夫です)。
●保存方法について
白米は常温や冷蔵庫で保存すると味が落ちます。もち麦ごはんは炊けたらすぐに、その時食べる分を残してアツアツのものをラップで包んで粗熱を取り、冷凍保存します。
湯気ごとラップで包むような気持ちでアツアツのものを包むことで水分が逃げず、解凍したときに炊きたての美味しさになりますよ。
ゆでもち麦
●ゆで方について
なべに水ともち麦を入れて火にかけます。沸騰したら吹きこぼれないように弱火にして、15分~20分ほどゆでます。(沸騰させてからもち麦を入れてゆでてもできあがりは変わりません)
15分ほどゆでて、もち麦に透明感がでてくれば火が通っています。20分ゆでるとさらに柔らかくなります。お好みで調整してください。ざるでお湯を切って、軽く水洗いして水気を切ります。
●保存方法について
【冷蔵保存】
ゆでもち麦は、蓋付きの清潔な保存容器に入れて冷蔵庫で3~4日は保存できます。サラダやみそ汁、スープなどに気軽に加えて摂取できますね。
【冷凍保存】
一度にたくさんゆでて冷凍保存すれば3~4週間は持ちます。ジッパー付きの冷凍保存用袋にゆでもち麦を平らになるように入れて冷凍すれば、必要な分だけ折って取り出すことができて便利です。
3-2 美味しいもち麦レシピ
朝食におすすめレシピ
朝食には具だくさんのもち麦入りスープやもち麦雑炊がおすすめです。
●野菜たっぷりの簡単トマトスープ
< 材料(2人分) >
3-1.で紹介した「ゆでもち麦」…大さじ6(お好みで)
玉ねぎ…半分
にんじん…1本
しいたけ…2枚(他のきのこでも)
ベーコン…2枚
野菜ジュース(トマトミックスタイプ)…2カップ
オリーブオイル…大さじ1
コンソメ…1個
ローリエ…1枚
塩・コショウ適宜
< 作り方 >
【1】オリーブオイルを鍋であたため、スライスした野菜としいたけ、ベーコンを炒めます。
【2】野菜ジュースとコンソメ、ローリエ、もち麦を加えて煮ます。
【3】野菜に火が通ればできあがりです。冬はアツアツを、夏は冷やしても美味しいです。
●和風きのこのもち麦雑炊
< 材料(2人分) >
3-1.で紹介した「ゆでもち麦」…大さじ6(お好みで)
お好きなきのこ(しいたけ、まいたけ、えのき、しめじなど)2パック分くらい
長ねぎ…2分の1本
たまご…2個
和風だし(お好みの味のもの)…2カップ
しょうゆ…小さじ2
酒…大さじ1
塩…適宜
< 作り方 >
【1】食べやすく切ったきのこ類を鍋に入れて火をつけ、酒を振って乾煎り(からいり)します。
【2】きのこの香りがしてきたら和風だし、しょうゆ、ゆでもち麦を加えて煮ます。
【3】きのこに火が通ったら、味を見て塩を加えます。溶き卵を回し入れて小口切りのねぎを散らします。
昼食におすすめレシピ
押し麦を入れた麦ごはんはパラパラしておにぎりにしにくく、冷めるとやはりあまり美味しくありませんが、もち麦ごはんはおにぎりにできますし冷めても美味しくいただけます。
●もち麦ごはんの混ぜ込みおにぎり
3-1.で紹介した「もち麦ごはん」にお好みの具を混ぜ込んでおにぎりに。
まとめて作って冷凍しておくこともできます。レンジでチンしてそのまま持って行けますから忙しい朝には助かりますね。
・鮭+塩昆布+白ごま
焼いてほぐした塩鮭と、塩昆布、白ごまをお好みの分量混ぜ込んでおにぎりにします。
・梅干し+しらす干し+白ごま
ちぎった梅干し(ペーストでも)と、しらす干し、白ごまをお好みの分量混ぜ込みおにぎりにします。
・混ぜ込み用ワカメ
塩味をつけて乾燥してある、ごはんの混ぜ込み用ワカメを常備しておけば、何もないときでも美味しいもち麦おにぎりができます。
作り置きおすすめレシピ
今話題の「作り置きレシピ」にも、ゆでもち麦を加えるだけで簡単にもち麦料理ができます。
●押し麦入りラタトゥイユ
< 材料(作りやすい分量:約4人分) >
3-1.で紹介した「ゆでもち麦」…大さじ4(お好みで)
玉ねぎ…1個
なす…2~3本(ズッキーニ1本でも)
ピーマン…3個(パプリカ1個でも)
エリンギ…1パック(しめじやまいたけでも)
ベーコン…2枚(鶏肉でも、なくてもいいです)
トマト缶…1缶(紙パック入りでも)
にんにく…1片
ローリエ1枚
オリーブオイル…大さじ2
コンソメ…1個
塩・コショウ適宜
< 作り方 >
【1】フライパンにオリーブオイルとスライスしたにんにくを入れて火をつけます。
【2】にんにくが焦げないうちに乱切りの野菜ときのこ、ベーコンを入れて炒めます。
【3】トマト缶を汁ごと入れ、ローリエ、コンソメ、もち麦を加えて煮ていきます。野菜の水分が足りなくて焦げ付きそうなら水を少し加えます。
【4】野菜がくったりと煮えたらできあがりです。味を見て塩・コショウでととのえます。粗熱が取れたら保存容器に入れて冷蔵庫で保存します。冷蔵庫で3~4日は持ちます。
4 おすすめのもち麦
販売されているもち麦の主な違いは、生産国と外皮の取り除き具合です。
精米していないお米が玄米、八分づき、五分づき、胚芽米、白米、無洗米という順で外皮を取り除く割合が増えていきます。もち麦も同様に、玄麦といって外皮を取り除いていないものも販売されています。
もち麦は、メーカーによって外皮の取り除き具合が違います。外皮が残っているほど色が茶色くなり、取り除かれているほど白くなります。
外皮が残っている方が栄養価は高く、アントシアニンや食物繊維、ビタミン、ミネラルなどが多いのですが外皮があることで玄米同様、味は好みが別れるところです。
一度玄麦を食べてみて、美味しいと感じるようなら外皮のついた玄麦の方が良いですね。
九州産のもち麦(玄麦を押し麦にしてあります)
こちらのもち麦は、玄麦を加熱して押し麦にしてあります。吸水時間が必要になるので、お米を炊飯器で吸水させる際に一緒に入れておき、できれば一晩吸水してから炊くとふっくらと仕上がります。
トップバリュ胚芽もち麦
気軽にスーパーマーケットで購入できて価格もお手頃なのがイオンのプライベートブランド「トップバリュ」のもち麦です。こちらは胚芽を残して精麦してあります。
原産国が記載されていないのがちょっと気になりますね。
5 まとめ: もち麦は日本人向けの大麦です
もち麦は大麦の中でも、食感がもちもちしていて強い香りも味もないという、白米を主食にしている私たち日本人にとってはとても取り入れやすいものだということがわかりました。
大麦には、他にライムギやえん麦(オーツ麦)があり、ヨーロッパやアメリカでは日常的に食されていますが、日本人にはあまりなじみのない食材の上、独特の香りや味があるので日々の食生活に取り入れるのは難しいものです。
様々なスーパーフードが流行していますが、これまでまったく食べてこなかったものを食べる習慣をつけるのは難しいことですし、健康のために取り入れるつもりが「あれもこれも」と摂取することで食べ過ぎにつながる恐れもあります。
しかし、白米のごはん代わりにもち麦ごはんにすることはとても簡単で手間もかかりません。さらに国産のもち麦にあまりこだわらなければ、他のスーパーフードに比べてお金もかけずに健康的な食事に切り替えることができますね。
【参考書籍】
「ヤセたければ、腸内「デブ菌」を減らしなさい!」藤田鉱一郎(ワニブックスプラス親書)
「もち麦ダイエットレシピ」山下春幸(アスコム)
「『もち麦』ダイエット」小林弘幸(KADOKAWA)
「コレステロール・中性脂肪は下げられる」板倉弘重(主婦の友社)