目がチカチカしたり涙目になったりして、眼球に痛むようになると不安ですよね。症状が続くと仕事をすることもできなくなってしまいます。
もっとも大きな原因となっているのは、テレビやパソコンのモニターを見続けることだと言われています。しかし、仕事でパソコンを使う人は、モニターを見ないわけにはいかないので、症状を悪化させてしまいます。
単なる疲れ目で済んでいれば自分でケアすることもできるのですが、眼精疲労を起こしてしまうと簡単に治すことはできません。
ここでは、疲れ目で悩んでいる人が、自分でできる目のケア9種目を紹介します。毎日の目の疲れを解消して、眼精疲労を防ぎましょう。
目次
1 疲れ目と眼精疲労が起こるしくみ
1-1 疲れ目を放置すると眼精疲労になる
1-2 目のしくみ
1-3 疲れ目が眼精疲労に悪化する原因
2 眼精疲労の症状
2-1 目の症状
2-2 全身に広がる症状
3 疲れ目を解消して眼精疲労を防ぐ9つの方法
疲れ目を解消する方法1 遠近凝視運動
疲れ目を解消する方法2 眼球回し体操
疲れ目を解消する方法3 まばたき体操
疲れ目を解消する方法4 ツボ5点運動
疲れ目を解消する方法5 深呼吸
疲れ目を解消する方法6 ホットアイパック
疲れ目を解消する方法7 アイスアイパック
疲れ目を解消する方法8 液晶モニターとうまく付き合う
疲れ目を解消する方法9 ビタミンの摂取
まとめ
1 疲れ目と眼精疲労が起こるしくみ
まず自分の目の疲れをチェックしてみましょう。
【疲れ目度チェック】
チェック1 1日に5時間以上パソコンを使う
チェック2 遠くがぼやけて見える
チェック3 まぶたが重い
チェック4 目が乾燥する
チェック5 野外に出るとまぶしく感じる
チェック6 思うように睡眠がとれない
チェック7 首や肩がこっている
チェック8 まぶたがけいれんする
チェック9 目の奥が痛む
チェック10 頭痛がする
これら10項目のうち、あてはまるものが2~6項目の人は「中程度の疲れ目」、7~10項目の人は「重度な疲れ目」で眼精疲労の可能性があります。
1-1 疲れ目を放置すると眼精疲労になる
疲れ目と眼精疲労は違います。
軽度な疲れ目は簡単なケアで治すことができます。中程度の疲れ目をケアしないで放置すると眼精疲労に進行してしまいます。眼精疲労になると、簡単なケアでは症状が改善しなくなってしまいます。
一般的に、疲れ目は1~2日ぐっすり眠れると回復しますから、目の疲労が蓄積しません。しかし眼精疲労は、目の疲労が蓄積していくので、目ばかりではなく全身に悪影響を及ぼすのです。
1-2 目のしくみ
(http://www.civillink.net/fsozai/eye.html より引用)
疲れ目のしくみを知るために、目の基本構造を解説します。
人間の目はアナログカメラの構造と似ています。カメラはレンズで屈折した光がフィルムに像を結びます。人間の目では、黒目部分である「角膜」とその奥にある「水晶体」がレンズの役割をします。
角膜を通った光は水晶体で屈折し、「硝子体」を通って眼底の「網膜」で焦点が合うようになっています。網膜はカメラのフィルムに相当します。網膜に投影された光の情報は「視神経」から脳へと伝達されます。
水晶体は、ものを見たときに薄くしたり厚くしたりして光の屈折率を変え、網膜に焦点を合わせるためにあります。その水晶体の厚さを調節しているのが「毛様体」です。
毛様体は筋肉で、近くを見るときは収縮して水晶体を厚くし、遠くを見るときにはリラックスした状態になって水晶体を薄くします。
近くのものを見続けたり、パソコン仕事などで同じ距離のものを見続けたりすると、毛様体に負担がかかって緊張状態になり、リラックス状態に戻すのに時間がかかるようになってしまうのです。
これが眼精疲労を引き起こす原因となります。また、加齢によって毛様体の筋肉が硬くなると、水晶体の厚さを調節する機能が衰えて、焦点が合いにくくなってしまいます。
水晶体の調節機能が正しく働いて網膜上にきちんと像を結ぶことができている状態を「正視」、網膜の前に焦点が来ている状態を「近視」、網膜の後ろに焦点がずれてしまう状態を「遠視」といいます。
角膜がゆがんでいるために、焦点の像がぼやけてしまう状態を「乱視」といいます。
1-3 疲れ目が眼精疲労に悪化する原因
疲れ目から眼精疲労へと症状が悪化する原因には次のようなものがあります。
(1) 長時間のパソコン作業
同じ姿勢で同じ距離にあるものを見続けると、毛様体など眼球周りの筋肉が緊張して硬くなってしまいます。この状態が頻繁に繰り返されると、目を休めても改善しなくなってしまうのです。
(2) 視力が悪いのにメガネを使わない
眼球周りの筋肉が硬くなっていたり老眼が進んでいったりすると、なんとか焦点を合わせようとして筋肉に負担をかけることになり、筋肉疲労が蓄積されていきます。
(3) メガネやコンタクトレンズが合っていない
メガネやコンタクトレンズを使用していても自分の目の状態に合っていなければ、はやり眼球周りの筋肉に負担をかけてしまいます。
(4) 左右の視力が違う
眼底の網膜に投影される像の大きさが左右で微妙に変わってしまうので、毛様体が疲労していき、調節機能が低下してしまいます。
2 眼精疲労の症状
眼精疲労は立派な病気です。単なる目の疲れでは済まなくなり、様々な症状が現れてきます。
2-1 目の症状
眼精疲労を起こすと、目がしみる、目がかすむ、焦点が合いにくい、目の充血といった疲れ目の症状から、眼球の痛み、まぶしさ、視力の低下、ドライアイという症状へと進行します。
毛様体は固まってしまい、筋肉痛を起こしている状態です。
近年、患者数が激増しているドライアイは、涙の量が減少することが原因です。眼精疲労によるドライアイは、まぶたの筋肉が疲労して硬くなり、涙が出にくい状態になっています。
眼精疲労による不快なストレスが自律神経のバランスを崩すことによって涙の分泌が抑えられてしまい、ドライアイになるケースもあります。
2-2 全身に広がる症状
眼球周りの筋肉と首の筋肉は、肩や背中、さらには腰へとつながる全身の筋肉と密接な関係にあります。同じ姿勢を続けていると、首、肩、背中、腰の筋肉が緊張状態になって血行不良を起こし、こりや痛みを引き起こします。
眼精疲労を起こすと、こうした不快な症状が慢性化してしまいます。さらに、不快な症状が続くことによるストレスが蓄積して、うつ病を発症することさえあります。
3 疲れ目を解消し眼精疲労を防ぐ方法9選
疲れ目を感じたら、眼精疲労を起こす前に改善しましょう。次の3つが疲れ目を改善する原則です。
・目を休ませる
・眼球周辺の筋肉をほぐす
・遠くを見る
これらの原則をふまえ、効果的な9種のケア方法を解説します。
疲れ目を解消する方法1 遠近凝視運動
30センチの距離と3メートル程度の距離に目標物を決めて、5~10秒おきに交互に見るようにします。
この眼球の運動により、毛様体をストレッチすることになって、近距離に焦点がフリーズしてしまっている状態を緩和することができます。
昔から、「遠くを見ると目にいい」と言われてきた理由は、硬くなった毛様体をほぐして目の疲れをとるからなのです。
疲れ目を解消する方法2 眼球回し体操
眼球を上下、左右、左回り、右回りと動かす体操です。この体操によって、眼球周辺の筋肉をストレッチすることができます。
(1)眼球を上下に動かす
ゆっくり2~3分繰り返します。
(2)眼球を左右に動かす
両手を肩の幅で前に伸ばして親指を立てます。
左右の親指を両眼で交互に見ます。
だんだん左右に移るスピードを上げていき、両手の幅も広げていきます。
これも2~3分繰り返します。
(3)眼球を回す
1周5秒くらいかけて、ゆっくり円を描くように両目をまわします。
左回りと右回りのセットを2回繰り返します。
疲れ目を解消する方法3 まばたき体操
とくにドライアイ予防に効果があります。
かたく目を閉じて、パットと開いたら連続で10回まばたきをします。これを3回繰り返します。
疲れ目を解消する方法4 ツボ5点運動
眼精疲労によいとされる顔面のツボにうち、目と眉毛の近辺にある4つのツボを刺激し、最後に手の合谷というツボを刺激します。
ツボは人によって位置が微妙に違いますから、指の腹で探ってみましょう。周囲よりも少しくぼんでいて、押すと痛みを感じるところです。
(1)太陽(たいよう)
目尻と眉尻の中間からほんの少し後方に寄ったところにあります。こめかみから目尻に向かって指を滑らせていき、目尻の斜め上にあるわずかなくぼみです。
人差し指か中指の腹の部分を当て、少しずつ力を加えて「1、2、3」と2~3秒押したら、「4」で力をゆるめます。ツボから指を放さずに、これを3回繰り返します。
(2)睛明(せいめい)
目がしらのやや上、鼻の付け根との間にある骨のくぼみで、よく目が疲れると無意識のうちにもんでいるところだと思います。
両手の親指か片手の親指と人差し指で「1、2、3」と強く押し、「4」でゆるめてそのまま指を放さず、これを3回繰り返します。
(3)攅竹(さんちく)
眉頭の内側にあるツボです。人指し指を当てて探ると、コリコリとした筋に触れる部分です。両手の人差し指か中指で持ち上げ気味にゆっくり押します。
「1、2、3」と強く押し、「4」でゆるめてそのまま指を放さず、これを3回繰り返します。
(4)魚腰(ぎょよう)
眉の真ん中にあることから「眉中」とも呼ばれます。眉の中央あたりに痛みを感じるポイントがあります。
両手の人差し指の腹を当てて、他のツボより強めに「1、2、3」と押し、「4」でゆるめてそのまま指を放さず、これを3回繰り返します。
次に、両手の中指と人差し指を攅竹と魚腰に当てて、2カ所同時に「1、2、3」と押し、「4」でゆるめてそのまま指を放さず、これを3回繰り返します。
(5)合谷(ごうこく)
人差し指と親指の骨が合流するところから、やや人指し指よりにあるくぼみです。
反対の手の親指で1、2、3」と強く押し、「4」でゆるめてそのまま指を放さず、これを3回繰り返します。
疲れ目を解消する方法5 深呼吸
ゆっくりと深呼吸を3~4回行います。
深呼吸は、交感神経の働きを弱めて副交感神経の働きを強める効果があります。副交感神経が優位になると身体はリラックスし、全身の血行がよくなります。
疲れ目を解消する方法1から5までをワンセットで行うと10分程度の時間を要しますが、中程度の疲れ目を感じている間は毎日行いましょう。
緊急にひとつだけ行うときは、合谷のツボを刺激するといいでしょう。
疲れ目を解消する方法6 ホットアイパック
小さめのタオルを少し熱いかなと感じる50度くらいのお湯につけて絞ります。仰向けになって、そのタオルを5分間両目に当てます。
入浴すると身体の筋肉の疲労が軽減して血行が良くなります。同じ原理で、目を温めると眼球周辺の筋肉疲労が回復します。
筋肉内の血流がよくなると、疲労や痛みの原因となる物質がすみやかに流されて筋肉から排出されます。
疲れ目を解消する方法7 アイスアイパック
こちらは小さめのタオルを冷たい水につけて絞ってから5分間、目の上にのせます。
筋肉のクーリングダウンです。ホットアイパックでゆるんだ眼球周辺の筋肉を元に戻して、残っていた充血を取り除きます。
両方行うのが面倒なときは、ホットアイパックだけを毎晩寝る前に行ってください。安眠効果もあります。
ただし、目の充血がひどいときは、アイスアイパックだけにします。
疲れ目を解消する方法8 液晶モニターとうまく付き合う
パソコン作業が続いて眼球周辺の筋肉が疲労すると、まばたきの回数が減ります。そのために涙の分泌が減って、カスミ目やドライアイの症状を引き起こします。
まばたき体操とは別に、作業しながら意識的にまばたきをするようにしましょう。
パソコンの液晶モニターの明るさを調節して、作業に差しさわりのない範囲で暗くすることも効果があります。目とモニターとの距離は50センチ以上とるようにし、少し下向きの角度でモニターを見るようにします。
カーテンを閉めるなどして、外光が画面に映りこまないようにすることも、目の疲れを軽減します。
疲れ目を解消する方法9 ビタミンを摂取する
13種類あるビタミンには、タンパク質や脂質、糖質など栄養素の体内における働きを助ける役割があります。
13種類のビタミンのうちで目に関係が深いのは「ビタミンA」と「ビタミンB群」です。さらに、「ビタミンC」と「ビタミンE」も疲れ目の改善に効果があります。
(1)ビタミンA
ビタミンAは、「眼のビタミン」と言われるほど、目の正常な機能を保つために必要なものです。角膜や網膜の細胞を正常に保ち、涙を一定量に保つ働きがあります。
不足すると、暗いところで極端に視力が落ちる「鳥目状態」やドライアイが進んでしまいます。
人間は40歳前後から老眼が進行して視力が落ちてきます。鳥目状態とともに、明るい場所から暗い場所に移った際、目が暗がりに慣れる「暗順応」が遅くなってきます。
こうした鳥目状態や暗順応の遅れを改善するためには、とくにビタミンAが必要とされます。
ビタミンAを多く含む食品は、牛豚鶏のレバー、うなぎ、バター、卵黄などの動物性食品や、ほうれん草、かぼちゃ、にんじん、小松菜、ブロッコリーなどの野菜、ブルーベリーなどです。
不足しがちなので、毎日必ずとるようにしましょう。
(2)ビタミンB群
ビタミンB群は、タンパク質、糖質などエネルギー源の吸収を助けて細胞の成長を促進するので、「老化を防ぐビタミン」といわれます。
中でもビタミンB1とビタミンB12には、視神経の機能を高め、視力の低下を防ぐ働きがあります。
ビタミンB1とビタミンB12を多く含む食品は、豚肉、牛レバー、乳製品、うなぎ、さば、いわし、かつお、カキなどの動物性食品や、玄米、ごま、大豆、落花生などです。
これらのビタミンは水に溶けやすいため、一度にたくさん摂取しても汗や尿で排出されてしまうので意味がありません。やはり毎日必ずとることが重要です。
ビタミンB2は脂肪の吸収を促進して網膜の働きを助け、目の充血や視力低下を回復させます。不足すると眼精疲労の原因となり、角膜炎を引き起こすこともあります。
ビタミンB2を多く含む食品は、牛豚鶏のレバー、鶏卵、玄米、干ししいたけ、納豆、のり、わかめなどです。
ビタミンB6は、水晶体と毛様体の主成分であるタンパク質の吸収に欠かせないものです。不足すると、やはり眼精疲労の原因となります。
ビタミンB6を多く含む食品は、大豆、豆類、牛豚鶏のレバー、牛乳、さけ、さばなどです。
(3)ビタミンC
ビタミンCには、水晶体の透明度を保つという重要な役割があります。水晶体が白く濁る白内障の予防にも有効です。
ビタミンCは水に溶けやすく熱にも弱いので、サラダや浅漬けなどでとると効果的です。
ビタミンCを多く含む食品は、ブロッコリー、カリフラワー、パセリ、ピーマン、キャベツ、小松菜、かぼちゃ、さつまいも、ジャガイモ、などの野菜や、レモン、オレンジ、みかんなどの果物です。
(4)ビタミンE
ビタミンEは糖尿病による網膜症の改善に有効とされますが、血行をよくするので身体全体を活性化させるとともに目の疲れを改善します。
ビタミンEを多く含む食品は、ごま油、コーン油などの植物油、うなぎ、さば、まぐろ、いか、玄米、大豆、アーモンドなどです。
まとめ
慢性的な疲れ目で悩んでいる人も、疲れ目を解消する方法1から5までのケアを毎日続けながら、疲れ目を解消する方法6から9までのケアを意識して行うことによって、症状は驚くほど改善するでしょう。
眼精疲労を起こしていて、これらのケアを行っても症状の改善が見られない人は、眼科を受診してください。
様々な体調不良の原因となる眼精疲労を起こさないためには、疲れ目をできだけ予防する生活と、軽度なうちに解消するケアを怠らないことが求められます。
目は、光を感じるかけがえのない器官なのですから、大切にしましょう。
【参考資料】
『眼精疲労はまかせなさい!』(現代書林・2009年)
『眼の疲れをとる本』(講談社・2002年)