つらい肩こりを本当に自分で治せる方法があったら知りたいですよね?
こりや痛みのない、しなやかな肩を取り戻せたらうれしいです。
肩こりのほとんどは、日常的な習慣が原因になっています。姿勢が悪い、疲労回復がうまくできていない、目を酷使している、過剰なストレス、運動不足と、様々な原因で肩周辺の筋肉が緊張してしまっているのです。
ですから、原因となっている生活習慣を見直して改善することが、根本的な肩こりの解消には欠かせません。根本的な原因を改善する対策のひとつとして、さらに即効性のある肩こりの解消法としても行えるのが「肩こり体操」です。
ここでは基本となる4つの肩こり体操と、症状に応じて行える7つの応用編を解説します。
目次
1 肩こり体操を始める前に知っておくこと
1-1 肩こりの原因
1-2 生活習慣を見直す必要
1-3 体操の3つの効果
2 肩こり体操 | 基本編
肩こり体操の基本1 首の筋肉を伸ばす体操
肩こり体操の基本2 肩の筋肉を伸ばす体操
肩こり体操の基本3 首の筋肉を強化する体操
肩こり体操の基本4 首と肩の筋肉を縮める体操
3 肩こり体操 | 応用編
肩こり体操の応用1 「骨盤矯正体操」で骨盤のゆがみを矯正
肩こり体操の応用2 「血液循環体操」で血行改善
肩こり体操の応用3 「ハンマー投げ体操」で肩関節を動かす
肩こり体操の応用4 「背中伸ばし体操」で背骨のゆがみを改善
肩こり体操の応用5 「寝ながら肩押し体操」で筋力アップ
肩こり体操の応用6 「ゆらゆら体操」で背骨のゆがみを改善
肩こり体操の応用7 即効性の高い「肩甲骨ほぐし体操」
まとめ
1 肩こり体操を始める前に知っておくこと
今日から自宅で簡単にできる「肩こり体操」で、つらい肩こりは劇的に改善します。
でも、ちょっとまってください。肩こり解消の体操を始める前に、知っておきたいポイントが3つあります。
1-1 肩こりの原因
肩こりの直接的な原因は、様々な要因によって肩周辺の筋肉が緊張してしまうことです。本来はしなやかに伸び縮みしている肩周辺の筋肉が緊張のためにギュッと収縮してしまうと、筋肉内の血管が圧迫されて血行不良を起こします。
エネルギーを燃焼したときに出る疲労物質が、血液中に排出されなくなって硬くこわばった筋肉の中に溜まると、さらに血管を圧迫するようになります。この状態になると痛みを知らせる発痛物質が筋肉に蓄積し、その情報を受け取った脳がこりや痛みとして認識します。
これが肩こりの正体です。
しかし、慢性の肩こりには、ほかの重大な病気が原因になっているケースが15%くらいあるとされますから、「いつもと違う」「悪化が続く」といった場合には医療機関で受診する必要があります。
1-2 生活習慣を見直す必要
「肩こり体操」で肩こりの症状を解消することはできます。しかし、それだけでは根本的な原因には対処できません。
肩こりが起こりにくい体をつくるためには、生活習慣の改善が欠かせないのです。具体的には次のような見直しポイントがあります。
・立っているとき、歩いているとき、座っているときに、正しい姿勢を意識しての猫背や首の前傾を改善する
・寝具を自分の体に合ったものにして、睡眠習慣を見直す。
・良質なタンパク質やビタミン、ミネラルを欠かさない食習慣を続ける。
・ストレスを溜めない生き方を身につける。
・パソコンやスマートフォンなどのLEDモニターを長時間見続けない。
・38~40度のぬるま湯に15分間の半身浴を習慣化する。
・適度な運動を毎日続ける。
なかでも、運動不足は肩こりの最大の原因になっているので、適度な運動習慣は大きな効果をもたらします。その運動習慣の基本になるのが、自宅で簡単にできる「肩こり体操」です。
1-3 体操の3つの効果
肩こり体操には3つの効果があります。
肩こり体操の効果1 血流を改善して疲労物質や発痛物質を追い出す
筋肉は心臓に続く「第2のポンプ」といわれます。緊張して収縮状態になると、このポンプが働かなくなってしまうのです。
筋肉をゆるめることによって、筋肉内や周辺の圧迫されていた静脈が広がり、溜まっていた疲労物質や発痛物質を押し流すことができるので、痛みがやわらぎます。
肩こり体操の効果2 関節をやわらかくして首や腕の動きをよくする
硬くなっていた肩関節をやわらかくして、前後、左右、上下ともに広い角度で動かせるようにします。
肩関節は全身の関節の中でもっとも動く範囲が大きい部位です。それだけに複雑な構造になっており、トラブルが起きやすい部位なのです。
肩こり体操の効果3 首や肩の筋力を強化して肩こりが起こりにくくする
筋力をアップする体操によって、肩こりの起こりにくいしなやかな筋肉をつくることができます。首は体重の10分の1程度の重さがある頭部を支え続けており、肩は常に腕の重さを負担しているので、緊張しやすいのです。
ここでいう筋力アップとは、瞬間的に強い力を発揮できるムキムキの筋肉をつくることではなく、頭や腕の重さに耐えられる持久性のあるしなやかな筋肉をつくることです。
2 肩こり体操 | 基本編
基本となる「肩こり体操」は、4つの体操から成り立っています。
誰でもできる体操ですから、4パターンをそれぞれ5~10回、1日1回か2回行ってください。起床後と夜の入浴後に行うと効果的です。
まず、イスに浅く腰かけて軽く背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識して深呼吸をします。
【注意点】
・横から見たときに、耳、肩の先、股関節が一直線になるように座り、首や肩に余分な負担がかからないようにする。
・両手をおへその下に当てて、鼻から大きく息を吸って口からゆっくり吐く深呼吸を5~10繰り返す。
それでは肩こり体操を始めましょう。
肩こり体操の基本1 首の筋肉を伸ばす体操
基本1-1 正面を向いた状態から首を右側にゆっくり倒して、首の左側の筋肉が伸びるのを意識する。
・気持ちのよいところまで伸ばしたら、呼吸を止めずに3秒間キープして元に戻す。
・反対側も同様に行い、5~10回繰り返す。
基本1-2 正面を向いた状態から首を前にゆっくり倒して、首の後ろの筋肉を伸ばす。
・気持ちのよいところまで伸ばしたら、呼吸を止めずに3秒間キープして元に戻す。
・同様に後ろ側へ倒して、首の後ろ側の筋肉を収縮させる。
・5~10回繰り返す。
基本1-3 正面を向いた状態から顔を右に向け、左の肩から首にかけての筋肉を伸ばす
・気持ちのよいところまで伸ばしたら、呼吸を止めずに3秒間キープして元に戻す。
・反対側も同様に行い、5~10回繰り返す。
肩こり体操の基本2 肩の筋肉を伸ばす体操
基本2-1 正面を向いて両肩をゆっくり上げ、首から背中にかけての筋肉に力を入れるよう意識する。
・呼吸を止めずに3秒間キープしてゆっくり下ろす。
・5~10回繰り返す。
基本2-2 正面を向いて両腕を肩よりやや低いところまで上げ、ヒジを軽く曲げる。
・両腕を背中側に動かして肩甲骨周辺(肩から背中にかけて)の筋肉を十分に縮める。
・呼吸を止めずに3秒間キープして両腕を元に戻す。
・5~10回繰り返す。
基本2-3 正面を向いて両ヒジを軽く曲げて、両脇を開く程度に両腕を上げる。
・肩甲骨を使って肩から両腕をやや前方に突き出し、肩甲骨周辺の筋肉を伸ばす。
・気持ちのよいところまで伸ばしたら、呼吸を止めずに3秒間キープして元に戻す。
・5~10回繰り返す。
ここまでを1セットと考え、最後に姿勢を正して深呼吸を5~10回行います。
肩こり体操の基本3 首の筋肉を強化する体操
この体操はストレッチが目的ではなく、筋力をアップさせて肩がこりにくい体をつくるために行います。
基本3-1 正面を向いたまま両手を重ねて額に置き、首の前側の筋肉に力をいれて、手と額で押し合う。
・呼吸を止めずに3秒間キープしたら力を抜く。
・5~10回繰り返す。
基本3-2 正面を向いたまま両手を重ねて後頭部に当て、手と額で押し合い、首の後ろ側と肩全体の筋肉に力を入れる。
・呼吸を止めずに3秒間キープしたら力を抜く。
・5~10回繰り返す。
基本3-3 正面を向いたまま右耳の上に右の手のひらを当て、首の右側から右肩にかけての筋肉に力を入れながら手と頭で押し合う。
・呼吸を止めずに3秒間キープしたら力を抜く。
・5~10回繰り返す。
・左側も同様に行い、5~10回繰り返す。
肩こり体操の基本4 首と肩の筋肉を縮める体操
この体操は、痛みをやわらげる応急手当として、入浴中に行います。
(1) 38~40度のぬるま湯にみぞおちまで浸かり、両膝を立てて両手はひざに置く。
(2) 浴槽に背中をつけて、耳、肩の先、股関節が一直線になるようにする。
(3) 首をゆっくり後ろに倒し、少し痛みを感じるくらいまで後ろを見るようにして、首の後ろ側や肩甲骨周辺の筋肉を縮める。
(4) 十分に縮めたら呼吸を止めずに3秒間キープして首を元に戻す
(5) 5~10回繰り返す。
3 肩こり体操 | 応用編
ここから解説する体操アラカルトは、すべてを行う必要はありません。
「自分の体の状態ではハードルが高い」というものは、少しずつ試すようにしましょう。ムリに行って筋肉や関節などを傷めてしまうと逆効果です。自分の症状に合わせて、メインの肩こり体操と組み合わせてください。
肩こり体操の応用1 「骨盤矯正体操」で骨盤のゆがみを矯正
体の土台ともいえる骨盤にゆがみがあると、柱となる背骨に連鎖し、やがて肩こりをはじめとした全身の不快な症状を引き起こします。
【準備】 骨盤矯正体操には長さ2mほどのゴムバンド、タイヤチューブ、着物の帯などを用意する。
・腰の左右にある腰骨の突き出た部分から、握りこぶし1個分下の位置にゴムバンドの上部がくるようにして体に巻き付ける。
・1周目はゆるく、2周目以降はガマンできる範囲できつく巻いて落ちないようにとめる。
【手順】 (1) 両足を肩幅に開いて立ち、両手を腰骨に当てる。
(2) ヒザを曲げないようにして、大きく円を描くように腰をゆっくり回す。
(3) 右回りと左回り、それぞれ30~50回ずつ腰を回す。
最初は無理をせずに少ない回数から始めて、徐々に回数を増やしていきましょう。
肩こり体操の応用2 「血液循環体操」で血行改善
血液の循環を活性化することにより、肩こりや頭痛以外だけでなく、冷え性やむくみ、自立神経失調症、慢性疲労、耳鳴りなど多くの病気や症状の改善が期待できます。
血液循環体操は、「耳ひっぱり体操」と「肩の上げ下げ体操」の2つを行います。
耳ひっぱり体操
耳には多くのツボが密集しているので、耳を刺激することで全身の血行がよくなります。とくに肩こりや頭痛の改善に効果があります。
【手順】 (1) 両手で耳を持って外側に3秒間引っ張る。ツボの位置などは気にする必要なし。
(2) 両手を耳から離して斜め上に挙げる。
(3) これを8回繰り返す。座っていてもできる。
肩の上げ下げ体操
肩の血流を促進して肩こりを改善します。胸部分の血流もよくなるので呼吸を楽にし、背中の筋肉を強化するので姿勢をよくする効果もあります。
【手順】 (1) 両手を自然に下ろした状態で立ち、手のひらを前から外側に向ける。
(2) ヒジを軽く曲げながら両腕をグーッと前に出し、胸の高さくらいまで上げる。
(3) 両ヒザを曲げながら両手をもとに位置に戻す。
(4) これを8回繰り返す。
肩こり体操の応用3 「ハンマー投げ体操」で肩関節を動かす
上半身を回転させるハンマー投げの動作は、肩関節を大きく動かすので、肩周辺の血流を促進して肩こりの解消と予防に効果があります。さらに、股関節の柔軟性を高めるので、腰痛や膝痛にも効果があります。
【手順】 (1) 両足を肩幅より少し広く広げて立ち、両ヒザを軽く曲げてやや内側に寄せる。
(2) 腰を安定させたらハンマー投げのハンマーをもっているように、両手を上に上げる。
(3) ハンマーを投げるように両手をゆっくりと右回りに回す。
(4) 腰も同時に回転させるようにし、最初は小さくスローな動作から徐々に大きな動作にしていき、30秒間続ける。
(5) 同じ要領で左回転も行う。
肩こり体操の応用4 「背中伸ばし体操」で背骨のゆがみを改善
体の大黒柱である背骨は、健康のカギを握っています。背骨のゆがみは、背中や肩、首の筋肉をアンバランスな状態にして、肩のこりや痛みを引き起こします。
背骨には脳から伸びている中枢神経の脊髄が中を通っているので、ゆがむと自律神経が圧迫されて体中に様々な悪影響を及ぼします。下にあげるようなポーズは背骨のゆがみを起こしやすいので、日頃から注意しましょう。
・ ほおづえをつく
・ 前かがみの姿勢
・ 座ったときに足を組む
・ いつも左右同じ側でバッグや荷物をもつ
・ 横座り
・ 無理に反り返った姿勢
・ 横向きやうつぶせで寝る
「背中伸ばし体操」は、1日に1回、寝る前か起きた直後に行うと効果的です。
【手順】 (1) 仰向けに寝て、両足を少し広げて伸ばす。
(2) 両手のひらを床につけたまま、息を吸いながら両足を頭の先の方までグルッと180度上げて倒し、指先が床につくようにする。
(3) そのままの姿勢で息を止め、がまんする。
(4) 苦しくなったら、息を一気に吐きながら元の姿勢に戻して10秒間脱力する。
この体操は、できる人だけが行ってください。1日1回でも1分間でも効果があります。ムリに行うべきではなく、肩こりが改善したら継続して行う必要もありません。
肩こり体操の応用5 「寝ながら肩押し体操」で筋力アップ
「背中伸ばし体操」と同じ姿勢から始められるこの体操は、肩周辺の筋肉をやわらかくして、肩こりを起こしにくい体をつくるために行います。
表層の筋肉(アウターマッスル)だけでなく、深層の筋肉(インナーマッスル)もほぐすことができるので、ツボ押しや肩揉みをしても治らない頑固な肩こりにも効果があります。
【手順】 (1) 仰向けに寝て両足を肩幅くらいに広げ、ヒザを直角に曲げて腰を高く浮かせる。
(2) 両腕を胸の前で組み、首と肩で体重を支える。
(3) その姿勢で右肩に体重をかけながら、左肩を浮かせてゆっくりと上半身を右にひねる。
(4) 右肩を支点にして上半身全体を左右にゴリゴリと6回動かす。
(5) 同じ要領で左も行い、これを1日5セットを目標にする。
この体操もできる人だけが行い、自分でできるムリのない範囲で試しましょう。
肩こり体操の応用6 「ゆらゆら体操」で背骨のゆがみを改善
仰向けに寝て行う体操をもうひとつ紹介しましょう。背骨のゆがみを改善する「ゆらゆら運動」です。
「金魚運動」とも呼ばれるこの動作は、器に無造作に入れた米や粉などが、左右にこまかく揺らすことによって表面が平らになるメカニズムを、人体に応用したものです。
【手順】 (1) 仰向けに寝て足を揃え、足の裏は垂直に立てる。
(2) 両手を首の後ろで組み、できるだけ両ヒジを張る。
(3) 魚が泳ぐように体を左右に揺らす。
1分ずつ1日2回行うと効果的です。
肩こり体操の応用7 即効性の高い「肩甲骨ほぐし体操」
肩こりになると肩の上の部分をほぐしたくなりますが、実は肩甲骨の下の部分がこっているケースが多いのです。
肩の背中側にある肩甲骨の下の部分をほぐすのがこの体操です。即効性の高い肩こり解消法ですから、ぜひ覚えておいてください。
【手順】 (1) 自然な姿勢で立ち、左手を肩の上から右の肩甲骨にもっていき、腕の付け根あたりから背骨にかけて指先で揉みほぐす。
(2) 揉みほぐしながら、右手を伸ばしたまま後ろから前へ10回回す。
(3) 前から後ろへ10回したら、同じ要領で反対側も行う。
肩甲骨ほぐし体操は、肩こりがあるときにいつでも行えばいいのですが、朝と夜に1セットずつ習慣化すると、肩こり予防の効果が高くなります。
まとめ
肩こりで悩んでいる人は、基本の肩こり体操を今日から始めましょう。そして、7種の応用編を組み合わせて自分なりのコースを習慣化すれば、肩こりの解消と予防に絶大な効果があります。
さらに血液循環が活性化することによって、基礎代謝や免疫力を高める効果もあります。
肩こり体操と、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化すれば「鬼に金棒」状態。適度な運動習慣を身につけて、肩こりを撃退しましょう。
【参考資料】
『肩こり・首の痛みがみるみる改善100のコツ 決定版』(主婦の友社・2015年)
『NHKきょうの健康 コリ・痛みを解消 肩すっきり体操』(NHK出版・2013年)