おでこにポツンとニキビができると、とても憂鬱ですよね。目立つし、さわると痛いし、お化粧もしづらくて困ります。早く治ってほしいのに、案外手強いのも困りもの。
でも、焦って潰したり、思春期と同じニキビ用化粧品で手入れをしたりするのは間違いです。
大人のニキビは、原因もケアの仕方も、若い頃とは少し違います。
大人のおでこニキビを改善する、4つのポイントをお教えします。
目次
3. 思春期ニキビと大人ニキビの違い
3-1. 肌質
3-2. できやすい場所
3-3. 原因
3-4. 日常のケア方法
4. 大人のおでこニキビを改善する4つのポイント
4-1. 睡眠
4-2. 保湿
4-3. ストレス軽減
4-4. 食事
1. そもそもニキビはどうやってできる?
ニキビは一般的に、皮脂の過剰な分泌が原因と言われます。ですが、決してそれだけの単純なものではありません。特に大人ニキビの場合、いくつもの理由が複雑にからみあっています。
まずはニキビがどうやって発生するのか、流れを見てみましょう。
①人の肌は、正常な状態では毛穴が開いていて、内部の皮脂腺から分泌された脂が表面へ滲み出ています。この脂が膜をつくって、外部の刺激から守り、水分の蒸発を防ぐバリアになるのです。しかし、例えば新陳代謝の低下や男性ホルモンの影響で角質が厚くなったり、皮脂が分解されるときの副産物や洗い流せずに残った汚れなどで、毛穴の入口が塞がることがあります。ニキビができる第一歩です。
②毛穴が塞がると、分泌された皮脂が排出されず、毛穴の中に溜まりがちになります。詰まった状態の皮脂を面疱(コメド)といい、この段階で芯だけを押し出せれば、跡にならずきれいに治ることもあります。ただし、無理に押して皮膚や毛穴を傷つけると逆効果なので、注意しましょう。
③詰まった皮脂を餌にして、毛穴の中でアクネ菌が過剰に繁殖し、炎症を起こします。アクネ菌とは、誰の肌にも普通に存在する「常在菌」の1つです。普段は皮脂を養分にして、肌を弱酸性に保ってくれます。でも毛穴に皮脂が詰まると、もともと酸素があまり好きではないアクネ菌にとって最高の環境となり、毛穴の中で過剰繁殖してしまうのです。
④炎症が進むと、毛穴の周囲や内部に白血球が集まってきて、増えすぎたアクネ菌を攻撃し始めます。菌や白血球の死骸は膿になり、毛穴の周囲が腫れて赤くなります。もっとひどくなると、毛穴の壁が壊れて炎症が広がることもあります。
⑤膿が毛穴の中で吸収されたり、排出されたりして炎症がおさまっても、ニキビ跡がクレーターのように残ることがあります。炎症がひどくなるのも、穴がクレーター化するのも、体質の影響が大きいようです。
2. なぜおでこにニキビができてしまうのか
おでこから鼻、あごまでをつなぐT形の範囲は、「Tゾーン」とも呼ばれる、他より皮脂腺が多い部分です。皮脂の分泌が多くてテカテカしたり、化粧が崩れやすかったりと、困っている方も多いでしょう。
分泌される皮脂が多ければ、アクネ菌が繁殖しやすく、当然ニキビもできやすいというわけです。
また、おでこには前髪がかかるため、小さな刺激を受け続けやすい場所です。刺激が続くと、皮膚は防御のために角質を厚くします。
肌の弱い人だと、帽子の縁が触れるのも刺激になるようです。整髪剤の油分がアクネ菌の繁殖につながることもありますし、シャンプーや洗顔料の残りが毛穴を詰まらせることもあります。
もし、おでこのニキビに困ったら、これらをできるだけ取り除いてみて下さい。前髪は上げて、整髪料は控えめに。髪の生え際まで念入りに洗い流しましょう。おでこが触れやすい枕カバーを清潔に保つことも大事です。
3. 思春期ニキビと大人ニキビの違い
ニキビができていく順番は、大人も若者も同じです。でも、思春期ニキビと大人ニキビの間には、いくつか大きな違いがあります。
3-1. 肌質
思春期ニキビ……
皮脂の分泌が多い人にできやすい傾向があります。一般に、女性よりも男性の方が皮脂腺が多く、肌もオイリーです。
大人ニキビ……
乾燥肌の人も要注意。皮脂腺から分泌される脂には、肌の水分を保護する働きがあります。肌が乾燥してくると、もっと脂を出して肌を守ろうと、皮脂腺の働きが活発になります。その結果、バランスの悪いオイリー肌になり、ニキビができやすくなるのです。
3-2. できやすい場所
思春期ニキビ……
皮脂の多いおでこなどを中心に、顔中に散らばってできる傾向があります。主に細かい白ニキビです。小鼻の横など、特に皮脂分泌が多い場所では、悪化して膿むこともあります。
大人ニキビ……
あごや、皮脂腺の少ないフェイスライン沿いに、ぽつりと発生します。膿を持って大きくなり、治まったあとも色素が沈着して残りやすい傾向があります。乾燥が強くなりがちなフェイスラインは、大人になってからトラブルが起きやすい要注意ゾーンです。
3-3. 原因
思春期ニキビ……
もともと皮脂腺が多い、毛穴が小さくて詰まりやすいなどの、遺伝要素に左右されます。スナック菓子やチョコレートなど、油分・糖分の多いものの食べ過ぎや、夜更かしなどで悪化することもあります。
大人ニキビ……
主にストレスや不規則な生活の影響で発生します。ストレスでホルモンバランスが崩れると肌が荒れ、バリア機能が低下します。炎症を小さなうちに抑えることができず、ニキビが悪化します。女性の場合、生理前にニキビが悪化しやすいのもこのためです。
3-4. 日常のケア方法
思春期ニキビ……
しっかり洗顔して余分な皮脂や汚れを流した上で、イオウなど、皮脂を抑える成分が入った化粧水や塗り薬で手入れするのがおすすめです。
大人ニキビ……
逆に、イオウ入り化粧品を使うのは控えた方が良いでしょう。イオウは殺菌力に優れ、角質を柔らかくする力がありますが、揺らぎやすい大人の肌には効果が強すぎるのです。市販品を選ぶときは必ず、大人ニキビ用の化粧品を使いましょう。
4. 大人のおでこニキビを改善する4つのポイント
おでこに一番ニキビができやすいのは、皮脂の分泌量が増える思春期ですが、大人になってからも引き続き気をつけたい部分です。
しかも大人ニキビは、一度できると悪化しやすいのが困りもの。できれば早めに抑えたいし、予防したいものですよね。
そのために、気をつけたいポイントが4つあります。
4-1. 睡眠
睡眠は、大人のニキビケアでとても重要な要素です。おでこだけでなく、あごや背中など、他の場所にできたニキビでも同じです。
睡眠不足はホルモンバランスの乱れを招き、肌の免疫力を低下させます。ニキビを予防し、健やかな肌を手に入れるためには、毎日6時間以上の睡眠をとりたいところです。
10時頃に就寝するのが理想ですが、現代の生活では難しい人も多いでしょう。せめて毎日決まった時間に寝るようにすると、体のサイクルが整い、肌の再生を促す成長ホルモンが分泌されやすくなります。
4-2. 保湿
もう1つ、睡眠と同じくらい重要なのが保湿です。
思春期の若い肌に比べ、大人の肌は保湿力が衰え、乾燥しがちです。肌が乾くと角質が荒れて硬くなり、また、水分の蒸発を防ごうとして皮脂腺が脂の分泌量を増やします。結果的に肌はオイリーになり、アクネ菌が繁殖してしまうのです。
洗顔で汚れを流したあとは、油分の少ない美容液で保湿をしっかり行いましょう。最近はアクネ菌の栄養になりづらい油分だけでつくられた美容品(ノンコメドジェニック)もありますから、試してみるのも良いでしょう。
4-3. ストレス軽減
大人のニキビは、体内バランスの乱れが大きく関係しています。
できるだけストレスを軽くするよう、工夫してみて下さい。
精神的にも肉体的にも、ストレスの原因となるものからは遠ざかるのが一番ですが、そうもいかない場合は、上手に気分転換を。例えば軽く運動したり、ゆっくり湯船に浸かったりすると、毛穴も開きやすくなるのでおすすめです。
4-4. 食事
ニキビの予防と改善のためには、日々の食事をおろそかにしてはいけません。薬のような速効性はありませんが、身体のバランスを内側から整えれば、ニキビの改善だけではなく、身体全体の健やかさが期待できます。
肌や粘膜の修復力を上げるビタミンA(にんじん、かぼちゃ、レバー他)や、新陳代謝を促すビタミンB6(マグロ、カツオ、鶏ささみ他)、皮脂の分泌を抑制し、適正に保つビタミンB2(卵、乳製品他)などを意識的に摂りましょう。
食物繊維(さつまいも、きのこ他)をたくさん摂って腸内環境を整えるのも、美肌につながります。
逆に控えたいのは、油分や糖分の多いもの。チョコレートやファストフード類などは、ニキビが気になるときは避けた方が良いでしょう。
5. 手強いニキビは医者の手を借りる
くり返しできて治りづらいニキビなら、自分で手入れをするより、早めに皮膚科へ行くのをおすすめします。
膿を持つニキビは毛穴が塞がっていて、せっかく薬を塗っても奥までなかなか浸透しません。病院では塗り薬だけでなく、抗生物質(抗菌薬)やビタミン剤などの内服薬を一緒に出してくれることが多いようです。外からだけでなく、内側からもケアした方が効果が高いのです。
また、ニキビ跡のクレーター化や色素沈着を軽減するための方法もあります。例えばイオン導入(ビタミンCなどの美容成分を塗った肌に微弱な電流を流し、肌の奥まで有効成分を浸透させる方法)やピーリング(薬剤をつかって角質をはがし、皮膚の再生を促す方法)、レーザー治療などです。
専門医ならではの処置を受ければ、自己流の努力を続けるより、早く綺麗に改善されていくことでしょう。
6. 漢方薬で身体の芯から改善する
大人のニキビを予防するには、漢方薬でゆっくりと体質改善するのもおすすめです。
ニキビができやすい女性は、日頃から頭痛や肩こり、冷え性などに悩まされていることが多いもの。漢方薬の助けを借りてこれらを改善すると、ニキビの治療にも効果が出てきます。
漢方医学では 「皮膚は内臓を写す鏡」と言われています。
ニキビの治療で用いることが多い漢方薬を、いくつか挙げてみます。
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
赤ら顔で、ニキビの炎症も強い場合に使います。
・清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
顔に赤みがあり、炎症の強い赤ニキビで、かつ、脂ぎった感じが強い場合に使います。上半身や顔面の熱、炎症を抑える作用が期待できるので、ニキビ治療に幅広く使われます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
顔色が赤~ややくすみのある色で、ニキビも青黒い感じがする場合に使います。生理不順や肩こり、のぼせ、足の冷えなどを伴う人に適用します。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
顔色が悪くて艶もなく、あまり隆起していないニキビに処方します。色白で冷え性で痩せ型の、あまり体力がない人に向いています。
漢方薬は本来、ひとりひとりの体質に合わせて処方されるものなので、専門の漢方医に相談するのが一番です。
でも、薬局で市販されている万人向けの商品もあるので、試してみるのも良いでしょう。
まとめ
大人のおでこニキビは、乾燥からくる過剰な皮脂分泌、食生活やホルモンバランスの乱れ、睡眠不足やストレスによる免疫低下など、さまざまな原因が複雑にからみあっています。
そのため、対策も1つではありません。できてしまったニキビの治療、肌のバリア機能の回復、ストレスの多い生活を見直し、体内バランスを整えるなど、さまざまな手立てがあります。
まずは睡眠と保湿を十分に。ビタミンの多い食事をとって、ストレスに飲み込まれないよう上手につきあうことが、大人ニキビの改善と予防につながります。
【参考資料】
・『素肌美人になれる 正しいスキンケア事典』 吉木伸子他 高橋書店 2010年
・『素肌美人になるためのスキンケア美容医学事典』 吉木伸子 池田書店 2011年