電話応対がどのように行われるのかによって、その会社の印象が左右されます。
たとえば、感じの良い電話応対をする会社や、コールセンターだと「教育が行き届いている」というイメージを受けますよね。
その一方で、感じの悪い電話応対をすれば、本当はしっかりとした会社であっても心象が悪くなります。感じの良い電話応対は、すみずみの社員まで教育が行き届いているという信頼の証なのです。
ビジネスにおける電話応対は、家族や友人との電話とは異なります。マナーに重きをおきながら、業務内容をしっかりと伝えていくスキルが求められます。
さらに、電話でのやり取りは双方の顔を見ることができません。音声だけのコミュニケーションとなるので、「少しの言い間違い」や「マナー不足」が相手の機嫌を損ねることもあります。
今回は、電話応対の基本から応用までをマニュアルとしてまとめました。合わせて、読んでおくとためになるおすすめの書籍もご紹介しています。
まずは、このマニュアルをマスターしてみましょう。そして電話応対に慣れてきたら、あなたの会社なりにアレンジして作成してみてくださいね。
【目次】
1.電話応対・基本のトークスクリプト
1−1 電話を受けるとき
1−1−1 自社にかかってきた電話を取る
1−1−2 相手の名前を伺う
1−1−3 相手を待たせる
1−1−4 電話の声が聞き取れないとき
1−1−5 指名された相手が不在
1−1−6 伝言を受ける
1−1−7 切電のあいさつ
【コラム】覚えておきたい電話での「相づち」
1−2 電話のかけ方
1−2−1 名前を名乗る
1−2−2 取り次ぎをお願いする
1−2−3 指名した人が不在・電話中
1−2−4 伝言をお願いする
1−2−5 問い合わせをする
1−2−6 アポイントメントを取る
1−2−7 謝罪・依頼する
1−3 電話応対の基本を知りたいときに役立つマニュアル本
2.スムーズな電話対応をするために
2−1 電話応対での声の出し方
2−1−1 苦手意識をなくすために
2−1−2 電話応対で好かれる声とは
2−1−3 クレーム対応での声の出し方
2−1−4 母音をうまく使って会話のバトンタッチをする
2−2 正しい呼吸法
2−3 身体の緊張をとって声を広げる
2−4 聞き取りやすい声でゆっくりと話す
2−5 好感度の高い声の出し方がわかるマニュアル本
2−6 クレームに対応する
2−6−1 クレーム電話応対の流れ
2−6−2 クレーム電話でよく使われるフレーズ
2−6−3 クレーム電話で言ってはいけないNGワード
2−6−4 クレーム対応の事例や方法がわかるマニュアル本
3.電話応対の好感度が高い企業とは?
3−1 ケーススタディ
3−1−1 ケース①レストラン カシータ
3−1−2 ケース②ザ・リッツ・カールトン東京
3−2 電話応対の事例が載っている本
1.電話応対・基本のトークスクリプト
1−1 電話を受けるとき
1−1−1 自社にかかってきた電話を取る
【良い例①】「お電話ありがとうございます。◎◎社でございます。」
【解説】
ビジネスの電話で「もしもし」は使いません。「お電話ありがとうございます」の部分は、そのときの状況により変わります。朝10時までであれば「おはようございます」を使っても爽やかです。
【良い例②】「お世話になっております。◎◎社でございます。」
【解説】
ビジネスの場面では「お世話になっております」が頻繁に使われるので、それを電話の中で使ってもよいでしょう。ただし、機械的にならないように臨機応変に言い換えましょう。
<こんなときは?>
・3コール以上電話が鳴ってから取ったとき
⇒「お待たせしました。◎◎社でございます。」
・5コール以上電話が鳴ってから取ったとき
⇒「大変お待たせしました。◎◎社でございます。」
【解説】
ビジネス電話は3コール以内に取るのが基本です。
1−1−2 相手の名前を伺う
【良い例】「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
【解説】
「どちら様ですか?」は失礼なので、言わないように注意します。名前の聞き方次第で失礼な印象になるので、「恐れ入ります」というクッション言葉をつけてソフトに尋ねます。
1−1−3 相手を待たせる
【良い例】「少々お待ちください。」
【解説】
電話を取り次ぐ時など、30秒以内で電話を保留する時は「少々お待ちください」を使います。
<こんなときは?>
・30秒以上待たせてしまうとき
⇒「しばらくお待ちください。」
・1分以上待たせてしまうとき
⇒「数分ほどお待ちいただいてもよろしいでしょうか。」
・5分以上待たせるとき
⇒「こちらから折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか。」
【解説】
相手を待たせるときは、待たせる理由を必ず告げます。
1−1−4 電話の声が聞き取れないとき
【良い例】「恐れ入ります。お電話が少々遠いようですので」
【解説】
相手の声が聞きとれないときは、相手に聞き取れないことを伝えましょう。「声が小さいので……」と伝えると失礼になるので、「電話が遠い」と伝えます。
<こんなときは?>
・電波が悪いところで電話しているとき
⇒「恐れ入ります。少々、電波の状況が悪いようです。」
・周囲がうるさいところで電話しているとき
⇒「お話しの途中に申し訳ございませんが、少々お待ちいただけますでしょうか。」
【解説】
相手の声が聞き取れない状況で無理に聞き取ろうとするのではなく、状況を伝えてスムーズにやり取りできる環境をつくります。
1−1−5 指名された相手が不在
【良い例】「申し訳ございません。△△は外出中のため、戻り次第こちらからお電話させていただきます。」
【解説】
はじめに、不在であることを謝罪しましょう。さらに「外出中」「会議中」「帰宅」などと不在の理由を伝えます。しかし、「**会社に行っていて……」などと不在の詳細まで知らせる必要はありません。
<こんなときは?>
・指名された人が電話中のとき
⇒「申し訳ございません。あいにく△△は他の電話に出ております。」
・指名された人が休みのとき
⇒「申し訳ございません。△△は本日休みをいただいております。」
【解説】
不在の理由を伝えたあとに、「少々お待ちいただけますか」「終わり次第、こちらからお電話させていただきます」などと、相手へ次のアクションを促します。
1−1−6 伝言を受ける
【良い例】「かしこまりました。伝言を承ります。」
【解説】
「伝言をお願いできますか?」と聞かれたときは、目上の人やお客様に使う「かしこまりました」で返事をします。急用なのかも必ず確認して対処しましょう。伝言内容は「伝言を復唱させていただきます」と伝えてから、必ず復唱します。
1−1−7 切電のあいさつ
【良い例】「それでは、失礼致します。」
【解説】
いきなり電話を切るのはNGです。「失礼します」と伝えて、相手が電話を切るまで待ちましょう。「よろしくお願いします」「お電話ありがとうございます」などと挨拶の言葉を付け加えると好感度が高くなります。
【コラム】覚えておきたい電話での「相づち」
ビジネスにおける相づちを意識すると、電話応対がブラッシュアップされます。特に「なるほど」と相づちを打ってしまいがちですが、「なるほど」は目下に使う言葉です。相手によって、正しい相づちを使い分けます。
- 受付 ⇒ 「はい」「なるほど」「かしこまりました」
- 同意 ⇒ 「ごもっともです」「仰るとおりです」
「さようでございます」
- 切り返し ⇒ 「と、おっしゃいますと?」「ところで」
- 喜び ⇒ 「恐縮でございます」「恐れ入ります」
「それは何よりでございました」
1−2 電話のかけ方
1−2−1 名前を名乗る
【良い例】「いつもお世話になっております。△△会社の**でございます。」
【解説】
電話をかけたときの第一声は、「いつもお世話になっております」です。社名と名前は相手から聞かれる前に、自分から伝えるのがルールです。相手が出先だったり、忙しそうだったりしたときは「いまお時間よろしいですか?」と状況確認を忘れずに行いましょう。
1−2−2 取り次ぎをお願いする
【良い例】「恐れ入りますが、経理部の△△様はいらっしゃいますか。」
【解説】
取り次ぎを頼む人も忙しいことが前提なので、「恐れ入りますが」というクッション言葉ではじめます。担当者がわからないときは、部署名と簡単な内容を伝えても良いでしょう。
1−2−3 指名した人が不在・電話中
【良い例①】「それでは◎時ごろにお電話致します。」
【解説】
指名した人が不在のときは、基本的にはこちら側がかけ直します。電話したい相手の都合の良い時間が分かるようであれば、「こちらから改めてご連絡差し上げます」と伝えてもよいでしょう。
【良い例②】「お手数ですが、お戻りになりましたらお電話くださるようにお伝えいただけますか。」
【解説】
相手が忙しい場合や不在にしていることが多いときは、こちらから電話してもすれ違いになることがあります。その場合は相手に電話をかけてもらうのも、ひとつの手です。相手に電話をわざわざかけさせるので、「大変お手数ですが〜」などと恐縮します。
1−2−4 伝言をお願いする
【良い例】「お手数ですが、ご伝言をお願いできますでしょうか。」
【解説】
いきなり伝言を伝えず、相手の了承を取ってから伝えます。伝言をお願いする人も仕事をしているので、「お手数ですが」と配慮するようにします。伝言をお願いした人の名前をしっかり確認しておけば、言った・言わないのトラブル防止になります。
1−2−5 問い合わせをする
【良い例】「△△の件についてお伺いしたので、ご担当者の方におつなぎいただけますか。」
【解説】
問い合わせるときは、どのような用事で電話したのかを明確に伝えるようにします。担当者がわからない場合は「ご担当者の方におつなぎ〜」と表現します。いきなり問い合わせた場合は、相手の都合もあるので「お忙しいところ恐縮ですが」などと気遣いながら伝えます。
1−2−6 アポイントメントを取る
【良い例】「△△の件でお目にかかりたいのですが、ご都合はいかがでしょうか。」
【解説】
「会いたい」は「お目にかかる」という言葉を使ってへりくだります。アポイントメントは、相手の都合を再優先します。しかし指定された日時に予定がある場合は「申し訳ございません。あいにくその日は先約が入っております」と別日を考えてもらいましょう。
1−2−7 謝罪・依頼する
【良い例】「ご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ございません。」
【解説】
すでに押さえてもらっている日時の変更などは、早めに伝えます。「すいません」だと敬意が含まれないので、「申し訳ございません」という言葉を使います。急な変更などは理由をしっかりと述べて、相手の理解を得るようにします。
1−3 電話応対の基本を知りたいときに役立つマニュアル本
●これだけは知っておきたい「電話応対マナー」の基本と常識/著 日本アイラック株式会社
著者の日本アイラック株式会社は、クレーム対応のプロ集団です。そのプロ集団が厳選した相手を不快にさせない、ビジネス電話における「基本のルール」がまとめられています。
実用書をいくら読んだとしても、実践できなくては意味がありません。この本では、実践しやすいようにシチュエーション別での電話フレーズや、電話応対の流れが細かく掲載されています。そのため、はじめて電話応対をすることになる新入社員にもイメージしやすい内容です。
また、使ってはいけない「NGワード」が各章で紹介されています。ついつい言ってしまいがちなNGワードも一緒に覚えてしまえば、電話応対がますます得意になるはずです。
●上手な電話応対が面白いほどできる本 (知りたいことがすぐわかる)/著 櫻井 弘
上手な電話応対によって、自分の仕事に自信を持ちたい人をターゲットにしています。「電話応対とは?」という知識から、電話応対の基礎技術や受け方・掛け方の手順・内容までを紹介しています。
著者は、NEC、パナソニックなどでコミュニケーションの講師として活躍した人物です。図やイラストも豊富なので、まるで著者の講座を見ているかのように内容をスラスラと理解することができます。
巻末には、電話の受け方・掛け方の基本チェックシート付き。新人を育てることになった研修担当の人も、この本があればテキストを作りやすくなるでしょう。
2.スムーズな電話対応をするために
2−1 電話応対での声の出し方
2−1−1 苦手意識をなくすために
電話では声がハッキリと伝わる分、好感度の高い声を出せれば電話応対の印象が良くなります。しかし相手の顔が見えないために、電話応対が苦手な人もいます。苦手意識があると、ひるんでしまい声も出づらく、緊張感によって声のトーンが高くなります。
そこで電話応対の苦手意識をなくすために、「対面の場合と同じ」と考えて電話するようにします。相手が目の前にいるかのように、感謝や謝罪の気持ちと一緒にお辞儀をするなどすれば、声にも自然と気持ちがこもります。
2−1−2 電話応対で好かれる声とは
電話応対では、状況によって変わる声が好かれます。電話応対のシチュエーションはアポイントメントを取ったり、クレーム処理をしたりとさまざまです。これらのシチュエーションは相手に自分の望みを納得してもらう、いわば「交渉」です。
交渉を上手くいかせるためにも、その場面に合った声の出し方をする必要があります。たとえば、クレーム処理をしているのに、セールスをするときのような明るく・元気で・爽やかな声を出したら、相手は誠意を感じませんよね。つまり、声の使い分けが相手の好感度を引き出すキーポイントになります。
2−1−3 クレーム対応での声の出し方
かかってきたクレームの電話が普段の会話と違うのは、相手が感情的になっている点です。そこでクレーム処理の場面では、まず相手の話をよく聞いてあげます。そのあとに「閉じた声」で、「仰るとおりです」などと同意の相づちをするのが効果的です。
「閉じた声」というのは、息をお腹で止めて、ゆっくりと吐き出した声です。「閉じた声」では、感情を抑えながら話すので失言も少なくなります。また相手に誠意が伝わりやすくなります。
相手の感情が落ち着いてきたら、今度は「開いた声」で解決策を提案していきます。「開いた声」は、抑圧をかけない声です。閉じた声と開いた声を使い分けることで、相手に誠意が伝わりやすくなります。
2−1−4 母音をうまく使って会話のバトンタッチをする
場面に寄って、「イ」と「エ」の母音を使い分けていきます。たとえば、「教えてください!」という語尾の母音は「イ」です。このとき余韻が残るので、次の人の会話へとスムーズに流れます。
一方、「話して!」という言葉では「エ」が語尾の母音です。すると感情は伝わりますが、命令しているかのような印象を与えてしまいます。語尾の母音が「イ」か「エ」かによって印象が大きく変わります。
2−2 正しい呼吸法
正しい呼吸法を身につけることで呼吸器官が強くなり、良い声を出せるようになります。呼吸法でのポイントは「吐くこと」を意識すること。逆に「吸うこと」は気にする必要はありません。しっかりと吐ききることができれば、自然と吸うことができます。
下記の呼吸法を20回繰り返すのを習慣づけてください。
①鼻から息を深く吸う
②息を止める
③口を閉じて歯の隙間から圧力をかけて、細く吐き出す。前かがみになって。息を出し切る
④息がなくなったところで、最後の息を吐き出す
⑤最後の息が出たところで上体を起こす
⑥起こすときに口を空けて、鼻と口から同時に息を吸い込む
2−3 身体の緊張をとって声を広げる
身体の緊張を取ってリラックスすることで、表情がなめらかになり声が広がります。そこで、身体をほぐすストレッチを行います。下記のような手段で身体をほぐしてあげましょう。
①前傾して、クビ・両手をだらんとさせ、上半身を完全に脱力させる
②脱力した状態で犬かきをするように両手を交互に回す
③もう一度、上半身を脱力させる
④背骨を一節ずつ立てるように意識して、下から少しずつ上体を起こす
2−4 聞き取りやすい声でゆっくりと話す
会話の出だしは、ゆっくり話すことを意識します。人間の脳は、先頭の言葉を聞いて全体像を把握しようとするからです。ゆっくり話すことで、相手に理解されやすくなります。
また、「間」を入れながら話すことで、落ち着いた印象を与えることもできます。そのためにも自分が話そうとしていることを頭の中で文章化して、句読点を打つイメージをしてみます。読点のあとは0.5秒、句点のあとは1秒ほど間を取るとベストです。
2−5 好感度の高い声の出し方がわかるマニュアル本
●仕事も人間関係もすべてうまくいく 声の出し方 つくり方/著 谷川 須佐雄
「交渉」における声の出し方をまとめた一冊です。ビジネスで有効に働く発声ノウハウが実践しやすいように紹介されています。「良い声は切り替えが大事」と謳っているので、どの場面でどのような声を出すのかを的確に教えてくれます。
また、このような本にありがちなCDの付録がないのは、文章だけでイメージしやすい内容になっているからです。さらにイメージしやすいように、日頃からテレビで見かける著名人の「声」に注目してノウハウを伝えています。
クレーム、部下へのマネジメント、上司への進言など、さまざまな場面で交渉に強い声を身に付けたい人は必読です。
●人に好かれる「声のマナー」41のルールとタブー――1秒で人をその気にさせる声の出し方/著 白石 謙二
多くの人は「良い声になりたい」と訓練をはじめても、日々やることが多く、なかなか習慣化できません。そこで習慣化できるボイストレーニングが紹介されています。日常的にボイストレーニングをすることで、日を増すごとに良い声になっていきます。
この本の中には良い声になることのメリットや、声の基礎知識も掲載されています。読み進めていくごとに、「良い声を実践しないばかりに、いかに損しているのか」を実感することでしょう。
2−6 クレームに対応する
2−6−1 クレーム電話応対の流れ
クレーム電話応対は、以下6つのプロセスで行われます。このプロセスを意識して対応します。
①第一印象
第一声は、明るく・はっきりと伝えます。そうすることで誠意が伝わりやすくなります。第一声で好感度を得れば、のちのちの対応がスムーズです。
②確認
相手の話をよく聞きます。決して反論してはいけません。相手の話に耳を傾けることで、相手が何に怒りを感じているのかが見えてきます。相手の感情に合わせた、適切なトーンで相づちを打ちます。また相手の言葉を復唱して、確認するようにします。
③評価
相手が訴えている問題と、その解決策を判断します。緊急度が高い場合は、早急な対応が必要です。また、急ぎの案件でなくとも真摯な対応を心がけます。
④話し合い
相手と解決策を考えます。自分では対応できない案件の場合は、他の担当者に引き継ぎます。
⑤処置と行動
解決策が決まったら切電します。そして、問題の結果を担当部署に伝えて適切な行動を促します。別の担当者が対応しているときでも、電話を引き継いだ者として経過の確認を行います。
⑥情報発信
クレームの問題点を社内で共有します。このとき、個人情報の守秘義務に注意します。社内で課題を共有しておけば、類似の課題を防ぐことができます。
2−6−2 クレーム電話でよく使われるフレーズ
クレーム電話の応対では、以下のような謝罪の言葉が使われます。しかし、形だけの謝罪になれば、相手をますます怒らせることになります。気持ちを込めた謝罪を行いましょう。
・「申し訳ございません」
・「お役に立てず恐縮です」
・「お手数をおかけ致しました」
・「ご不快な気持ちにさせてしまい、申し訳ございません」
・「今後、二度とそのようなことがないように致します」
2−6−3 クレーム電話で言ってはいけないNGワード
【NG】「本当ですか?」
【解説】
相手の発言が間違っているかのように聞こえてしまいます。内容を確認するときはクッション言葉を使いながら、「恐れ入りますが、確認させていただいてもよろしいでしょうか?」などと丁寧に対応します。
【NG】「絶対にありません」
【解説】
予想外のことが起きることを考えて、「絶対」「必ず」などの言葉は使わないようにします。
【NG】「ご理解していただけましたか?」
【解説】
相手の自尊心を傷つけそうな言葉は避けます。もしも内容を理解しているのか確認する必要があるときは、「何かご不明点はございますか?」と尋ねます。
【NG】「ちょっと待ってください」
【解説】
クレーム電話応対の基本は、相手の話を遮らないことです。相手の怒りの感情を遮ると、さらに深刻なクレームに発展することもあります。
【NG】「先から申し上げておりますが、~」「ですから、~」
【解説】
相手がなかなか理解してくれない場合に出てきがちですが、言われた側はカチンとする言い回しです。「同じお話となってしまい恐縮なのですが、~」「左様でございますね、~」など、言い回しを少し変えるだけで柔らかい印象を与えることができます。
2−6−4 クレーム対応の事例や方法がわかるマニュアル本
●場面別 クレーム電話完全対応マニュアル―最初の一言から、トラブルに発展させない受け答えまで/著 尾形 圭子
いくつものパターンに対応できる、クレーム電話処理のマニュアル本です。「そもそもクレームと何か」を読者に問いかけ、さらにはクレーム電話の捉え方について心も持ち方を変えさせてくれます。
電話応対によるクレームは、声だけが頼りです。だからこそ難しい問題の解決策を提示してくれる一冊です。クレーム対応の手順とフレーズが丁寧に解説されているため、新人から電話応対の基本を学び直したい人まで気づきを貰えます。
●現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書/著 援川 聡
著者は元警察官で、転職して流通業界で働いていました。警察官であったことから、悪質クレーマーにも対応できる知識が豊富にあり、この本の中でも紹介されています。掲載されている内容は、実話ベースのお話しです。
「詫び状は書くべきなのか?」「どこまで謝罪するべきなのか?」をクレーマーの心理や、社会通念上の立場から教えてくれます。クレーマーに対応できる具体的なフレーズも満載です。
3.電話応対の好感度が高い企業とは?
3−1 ケーススタディ
3−1−1 ケース①レストラン カシータ「どのお客様から電話がかかってきたのかがわかる」
東京青山にある「カシータ」というレストランでは、過去1回かかってきた顧客の電話番号をお店側が記憶しています。そのため、利用したことのある顧客から電話があったときは、相手が名乗る前に呼びかけることができます。
一般的には、お店側は顧客の電話番号と名前をひとつひとつ覚えていません。なので、予約のキャンセルや変更を申し出たとき、名前を聞かれたりします。
しかし、カシータでは電話をした顧客が「自分のことを覚えていてくれた」と感じます。どのような顧客も大事にされたいので、その1本の電話によってお店の好感度があがるのです。
電話ではじめて顧客や取引先と接する場合は、電話応対が「企業の顔」としてインプットされます。電話口で対応させる社員の質によって、顧客からの評価が大きく変わることを教えてくれる例です。
3−1−2 ケース②ザ・リッツ・カールトン東京「名前を何度も呼ぶことで機会的な電話応対にしない」
ザ・リッツ・カールトン東京では、フロントに電話をすると1回の電話中で何回も名前を呼びかけてくれます。名前を何度も呼ばれた相手は、姿が見えなくても相手を身近に感じることができます。
企業の多くは、電話口の相手を不快にさせない研修を行います。しかし、「相手を不快にさせない」ということばかりに注目して、機械的な対応になりがちです。
ザ・リッツ・カールトン東京のように、顧客ごとにカスタマイズされた対応ができれば、たとえ高い宿泊料を払ったとしても「しっかりと対応してくれた」と感じてリピーターになりやすくなります。
3−2 電話応対の事例が載っている本
●「感動サービス」を翻訳する! /著 西川丈次
「おもてなし経営研究所」の所長である著者が、「人を感動させるおもてなしとは?」についてまとめた一冊です。およそ20年前に、著者が米国で出会った「おもてなし」。そのおもてなしに感動してから、「感動のサービス」を探し集めたそうです。
顧客からの期待や準備すべきこと、聞くことや迎えることなど、各方面の「おもてなし」が具体的な事例とともに紹介されています。電話応対での事例も豊富です。それぞれの事例は2〜3ページとコンパクトにまとまっているため、読みやすくなっています。
「感動のサービス」と言えば、大げさに聞こえるかもしれません。しかし、この本を読めば、当たり前のことを心を込めてやることだと気付かされるはずです。どの企業でも取り入れやすい事例がたくさんあるので、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
参考文献
- これだけは知っておきたい「電話応対マナー」の基本と常識
(著)日本アイラック株式会社/フォレスト出版
- 仕事も人間関係もすべてうまくいく 声の出し方 つくり方
(著)谷川 須佐雄/あさ出版
- 人に好かれる「声のマナー」41のルールとタブー――1秒で人をその気にさせる声の出し方
(著)白石 謙二/講談社
- 「感動サービス」を翻訳する!
(著)西川丈次/ごま書房新社