天道春樹(てんどう・はるき)
高知県高知市生まれ。16歳で運命学に出会い、専門書を取り寄せて研究を始め、東京の中村文聡氏の紹介で、八木喜三朗氏の「観相発秘録」の通信講座を受け、19歳で大阪の「八木観相塾」に学ぶ。
以来、運命鑑定と研究を重ねて現在に至る。TV番組『愛のお悩み解決!シアワセ結婚相談所』(日テレ)でスゴ腕結婚相談員としても大活躍され、雑誌『恋運暦』のレギュラーコーナーやその他書籍出版や講演、ラジオ出演など、各メディアでも多数の実績を持ち、占術界の権威と称されている。また、高知市帯屋町の街頭での運命鑑定、自宅での予約鑑定、大阪市住吉区の「占いサロン天命堂」および東京都杉並区高円寺での鑑定のほか、出張鑑定にも応じている。
主な占術方法 : 人相術/手相術/易占
【HP】天道春樹の人相術
目次
1. 28歳で街頭で占うようになって42年余
來夢 私が天道先生のことを知ったのは漫画でした。先生が漫画に登場されていて……。
天道 流水凜子(ながみりんこ)さんの『オカルト万華鏡』いうたかな……。
來夢 漫画家さんの名前とかタイトルはよく覚えてないんですよ。でも、先生がその漫画の中でおっしゃっていることが素晴らしかったので、どうすればこの先生に会えるのかと思っていたら、私のクライアントが先生のことを存じ上げていたんです。
それで「えっ、紹介して。私、観てもらいたい」と言って、お会いする段取りになったんですが、先生が東京に来られる日程と私の日程がなかなか合わなかったので、お会いできるまで1年越しだったか2年越しでした。
天道 あなたも忙しかったんやね。
來夢 それで、その方に高円寺まで連れていってもらって、初めてお目にかかることができたんですが、あの時に先生から「あなたはこんこんと湧き出ている泉のような人だから、みんなが集まるんだよ」と言っていただいたのをよく覚えています。何か温かい気持ちになって帰ったことも。
天道 そうでしたか。
來夢 私、先生がずっと街頭に出ていらっしゃることがすごいなと思っています。もうどのくらいになるんですか?
天道 20歳で食えんから1回辞めて、28からだから42年余りですか。
來夢 そんなに長く。
天道 いやいや、初めは月に3人ほどしか来んでね。20歳そこそこでしょ、そりゃダメですわ。
來夢 若い占い師さんの前には、普通、お客さんはなかなか座ろうとしませんものね。
天道 偉い先生に習ろうたとか、若いときは全然関係ないんです。お客さんとの対応だけですのでね、そりゃ、苦労しました。そのわりには子だくさんにはなりましたが(笑)。
來夢 20歳で街頭に出て、いったん辞めて、次に街頭で占うようになった28歳までのあいだは何をしてらっしゃったんですか?
天道 うちの父がちょうど大阪で土建をやっていたので、その飯場(はんば)へ行って土方をしたり、事務をしたりしてましたわ。
それはともかくとして、私は人の生き死にを結構見てきたんですよ。飯場の人が戸板で運ばれたりする様子とかね。昨日までピンピンしていたのが今日はこれかと。何か運命というかね、こりゃなんじゃということを思うたりしましたよ。
來夢 それは小学生くらいですか?
天道 小学2〜3年生でしたね。ウインチに巻き込まれたり、ダム工事で墜落したりとか何人も見ました。昔、ダム工事の場合は、何人死ぬか見込んでいたらしいんやけど。
來夢 先ほど子だくさんとおっしゃったんですが?
天道 はい、子供は4人おります。23の時に結婚しましたので。
相手は高校の時に手相を観た子ですな。放課後、教室でね、「観てくれ」て言うてきてね。手相とかを観て「お前は離婚の相がある」と言うた人と連れ添うことになったわけです(笑)。けど、次第に離婚の相がね、なくなって、手相はそういうふうに変わっていくんですね。
來夢 手相って気持ち次第で変わっていきますよね。
しかし23で結婚って、男性からしたら今でも早いほうじゃないですか。何か理由みたいなことがあったんですか?
天道 そりゃ運命と言うしかないね。私の母も私の娘たちも、長男はそうではないですけど、次男も20歳ぐらいで結婚しています。孫も若いうちに結婚していて、だから私、ひ孫もおって、このあいだ1歳になりました。
來夢 お子さんも、お孫さんも20歳位で結婚していれば、そうなるんでしょうが、ひ孫さんがおられるとは思いませんでした。
それにしても、23で結婚されて、そして大阪でお父様のそばで仕事をされているにしても、ずっと先生の占い人生を奥様が支えてくれたということですよね。
天道 そうです。18歳の時から私がやろうとしていたことを分かっていたからね。
大阪では土方などをしながら易の本を読んだり、飯場に出入りする人たちや飲みに行ったら水商売の人とか、いろんな人を観て勉強しておったから、そんな私を見ていたと思います。
私は、いろんな人の中に自分の身を置かずに、いつも同じ人と付き合っていてはダメだと思いますわ。街頭で占いをやっていると、昔、ヤクザもよーけ来ていましてね。いろんな人と接していると、こういうのがヤクザの定番というのが分かるようになるんです。凶暴な顔のパターンがあったりしてね。
來夢 すると、ここ数年言われるようになったサイコパス(精神病質者。反社会的人格の一種)なんて、きっと先生が観ればすぐ分かるんでしょうね。
天道 まあ、そうでしょうね。何でもほとんど眼に顕れているし、雰囲気とでね。
私は、私に占いを教えてほしいという人に、実践して初めて私の言うことが分かると言っています。何年勉強していても実践せんことにはダメです。頭でっかちになって。
私が師事した人相学の大家・八木喜三朗(やぎ・きさぶろう 1901~1976)先生は、「あんたら、習いに来ることばっかりじゃなくて、ちゃんと実践をせなあかんで」と言っていましたし、よく怒られましたよ(笑)。
今の人はあまり伝統を知らないんですね。先生だけしか知らんし、一番大切な先生が何を学ぼうとしてきたかを知ろうとしない。何事もルーツがあって、先生が何を勉強したか、どんな本を読んだかがあって今があるんです。
だから、先生いうのは偉いということになってしまい、先生に縛られるみたいな、わけの分からない縛りも出てきています。他を否定するということは自分の否定にも繋がるんですが。
來夢 そうですよね、何かを否定してこちらが絶対って言った時点で間違っていますし、そういうのって、師事する先生次第というのが大きいでしょうね。
天道 縛る、縛らん、分別するかせんか、全部教える人の性格によるでしょ。
しかし、先生もどこかで習うてきてるんですから謙虚でないとねぇ。縛ったら伸びるものも伸びないですよ。人相術には流派いうのは本来ありません。学問的なこともあんまりガンガンやっていませんしね。
2. 念願だった恩師の本を復刻
來夢 先生は、先ほど話に出た八木先生の本の復刻に尽力されていますね。
天道 八木先生の本の復刻は私の念願でした。『観相発秘録』という本で2015年に東洋書院によって復刻されています。
元本は孔版のものやタイプ印刷のもので絶版になって久しく、大変貴重なものとなっていますから、現在では古書店で十万円以上の値がついています。まさに幻の書の復刊と言っても過言ではないでしょうね。
私も一応は男ですからあまり泣いたりしないんですわ。けど、東洋書院の社長さんが復刻を引き受けてくれた時は感無量じゃったし、最初に復刻版を手にした時は泣けたですなあ。
來夢 誰かが手掛けなければ、せっかくの文献がなくなってしまいますもんね。本の復刻は大変な功績だと思います。
そうそう、本と言えば、先生はご自身のブログに大和田斎眼(おおわだ・さいがん)さんの『手相の見方を本で覚えたい人に』という本に大変衝撃を受けたというお話を書かれていますが……。
天道 一番最初に読んだ手相の本で、自分の中にあったものが引き出されたような感じを受けましたね。
來夢 引き出されたというのは?
天道 とにかく理屈抜きでね。手相に自分が何か深い縁があったという感じがしましたわ。読んだ瞬間に大和田先生の波動がビシビシと伝わってきて、それが人相や易に繋がり広がっていきました。
中村文聡(なかむら・ぶんそう)、門脇尚平(かどわき・しょうへい)、出雲又太郎(いずも・またたろう)、沢井民三(さわい・たみぞう)という先生達の本も大抵は読みました。懐かしいから今でも時々読んでいますが、良い本は何回読んでもええもんです。今ではなかなか手に入らんものも多いでしょうが、運が良かったら古本屋で巡り会えるかもしれん。
來夢 先生がブログでそうした貴重な本を紹介されていることも、伝統を引き継いでいくことに繋がりますから大変価値あることだと思います。
3. 思いや行いは絵になって顔に出る
天道 思いや行いは絵になって顔に出るんです。例えば、火事に見舞われる人は、家が焼けている風景がね。
來夢 ということは、「火事になるよ」と伝えても火事になるわけですか?
天道 いや、それは防ぎようがあるんです。
事故みたいなもんは間が悪い時に起きるんです。運が悪い時は、まるでそれが運命であるかのように、待ってましたとばかりにね。例えば火災保険の契約の更新を忘れていた時とか、生命保険をやめた後とか。
來夢 なるほど、魔が差したような時に。
天道 そう。だから日頃ぼーっとしてないで、心に余計な隙を作らないようにしておかにゃいかんということですよ。
來夢 先生のところには、いろんな方が来られると思いますが、それこそ“座れば当たる”じゃないですけど、人相や手相を観る前に、座ったときにもう、大体のことは分かってしまったりするんですか。
天道 基本的には顔でね、顔の形と色、眼で観るんですけども、動作とか服装とかを全部見て感じ取るのは非常に大事なことで、あとは雰囲気ですね。
座り方もそうですが、大体、人となりというのは所作に出るもので、生来と異なるふるまいをとりつくろっている人というのは顔と合わんですよ。つまり、所作と顔は合うんです。おとなしそうな優しい顔をしているのに、動作が荒っぽいのは似合わへんでしょ。
來夢 そうですね。違和感を感じますしね。
天道 人の表情というのも、ぱっと見たときにいろいろパターンがあって十人十色どころじゃないですわ。
私は小さい時に家庭の中でどうであったかを観るようにしていますが、両親が仲良くてすくすくと育った人と、そうでない人とでは明らかに違っていて、家庭が円満でなければ、やはり顔の寂しさとか暗さ、目の怒りなどとして顕れるものです。
家庭を持たないとか、幸せな家庭のイメージが湧いてこないという人が最近多いし、先日、観た人なんか「幸せって何ですか」とか、感謝などということ自体分からないと言うてまして、当然、顔は無表情なわけです。
來夢 人生にあまり悲しいことも楽しいこともないんでしょうかね。
天道 そう、あまり生きたくもないという無気力さを漂わせています。
來夢 無機質な感じで。
天道 感謝をするとか、ありがたいと思う感情が分からんというところまで来てますので、顔の表情にぬくもりがありませんね。
來夢 そういう場合、言葉のかけ方は結構微妙じゃないですか?
天道 そう、微妙ですよ。でも、感じたとおり観たとおりに伝えるのが基本で、強く言うのか優しく言うのかといったさじ加減は、経験からですよ。若い頃は、ガンガン言って怒られたりしましたけれど(笑)。
私がまだ若い頃、高知にはヤクザが1000人位おったんですよ。街頭に出るのもちょっとややこしかったけど、彼らに観たとおりのことを言うと、「そこまで言わんでもええやろう」と、怒られることがよくありましたね。
初めから観たことを上手に伝えるのは難しいですわ。慣れですよ。怒られたりしながら、これはちょっと言いすぎかなぁいうて、言葉変えていかんと。
來夢 やはり経験は力ですね。
4. 無表情な人が増えていくのは困りもの
天道 今、無表情な人が増えてきていて、ちょっと難しい時代に入っています。表情がなければキャッチボールができませんからね。
たとえば皮膚が薄くて色白で表情がなければ、自分の世界の中だけで生きている独身相なんですよ。
以前、無差別に路上で人を刺したという事件がありましたが、感情が表に出てワーワー言ううちはまだええんです。全く無表情で顔が凍りついたようになるのは異常です。これから似たような犯罪が増えてくるような気がしてなりません。
來夢 ゲームの世界にはまっている人が増えていることも関係するでしょうね。
天道 ゲームに夢中になっておったら手元しか見えんでしょう。自分を外界から遮断している状態だから、まわりのことなど関係ないわけですわ。
來夢 あと、ネットの中だけで楽しんでいたりするから、現実の世界でコミニケーションをとることができないというのもありますね。
天道 そうそう、それも大きな要因でしょう。
來夢 そうすると当然、表情は豊かになりませんね。
天道 無表情な親に育てられた子供は、どうなるかということまで考えてしまいます。
來夢 そうですよね。3世代後になって怖ろしいツケが来かねません。
天道 歩きスマホをやっている人をよく見かけますが、あれは五感をスマホに規制されている状態でしょう。しかし、歩きながらだから危険ということも含めて、周りの喧騒の中にいるから感性が養われるということを忘れてはならないでしょうね。
スマホのゲームに熱中していれば、電車に乗っていても席を譲ろうか譲るまいか考えもしないし、何も周りから得るものがないでしょう。いろいろ考えたり迷うたり、強気になったり弱気になったりして誰しも成長していくわけですから、成長する機会を自ら失うようにするのは、だいぶ変やと思いますし、無表情な人が増えていくのは困りものです。
來夢 そのとおりですね。五感を働かせて人は成長していくわけですからね。
※所作と顔は合い、思いや行いは顔に出る─その②に続く
前回の【來夢の「占いの達人」】はこちら ⇒Vol.6 未来への途(みち)示してくれた算命学─その①